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神湯として有名な熱海の走り湯へ行ってみよう!
静岡県熱海市と言えば、古くから湯治の場として有名です。中でも相模湾が一望できる伊豆山には、横穴式源泉「走り湯」と呼ばれる大変珍しいものがあります。その横穴の洞窟からは、奥で沸き立つ源泉の蒸気がもうもうと立ちこめており、近くには気軽に楽しめる足湯もあります。それでは、約1300年前に発見されて以来、数々の名将が足を運んだ「走り湯」へのアクセスや駐車場などをご紹介します。
熱海の走り湯をご紹介
「走り湯」は、伊豆山の伊豆山神社の麓にある奥行約5メートルの珍しい横穴式源泉です。これは洞窟の中から温泉が吹き出す間欠泉で、全国的も大変珍しい物です。その昔、この源泉からは温度約70度で一日約7000トンの湯が湧き出し、滝のように海に流れ込んでいた事から「走り湯」と名づけられたそうです。
「走り湯」は今から約1300年前の養老年間(奈良時代)に発見されました。伊豆山に鎮座する伊豆山神社の「神湯」として信仰の対象にもなっており、洞窟の斜前には「走り湯神社」も鎮座しています。鎌倉時代以降は走湯権現=伊豆山権現と箱根権現の二箇所を参拝する「二所詣」が大変人気だったそうです。
熱海の伊豆山走り湯温泉は、四国松山道後温泉、神戸六甲山有馬温泉共に日本三大古泉に数えられる歴史ある温泉だそうです。この源泉は、塩分を多く含んだ泉質で特に硫酸カルシウムやマグネシウム等が多く、傷や腫れ物や水虫などの皮膚病他、リウマチや神経痛、冷症、婦人病などに効果があるそうです。
発見当時から人気があった「走り湯」は乱掘の結果、現在では源泉の湯量、水温も以前よりは劣るものの、走り湯の温泉組合などの努力により、洞窟奥の石槽にはもうもうと湯気が立つほどの熱い源泉を注いでいます。関東大震災で一時は湧出が完全に止まった事があったそうですが、現在もここから湯を引く温泉宿が7軒営業しており、相模湾を眺めながら入れる足湯もあります。
熱海の走り湯を発見した修験道の開祖とは?
最初に「走り湯」を発見したのは、自然を信仰の対象とする修験道の開祖の役小角(えんのおづぬ)です。鬼神を操る事ができるほどの法力を持っていたと言われる役小角は、天皇に謀反しようとしていると周囲に陥れられ伊豆大島へ流刑になりました。しかし、役小角は凄い法力で伊豆大島から度々抜け出している内に、この「走り湯」を発見したと伝えられます。
熱海の走り湯は神の湯
役小角は、伊豆山から五色の湯煙がたちのぼるのを発見し「走り湯」にたどり着いたと言われています。山壁から熱い湯が噴出し、自然光できらきらと輝いて見える光景はさぞかし神秘的だったことで事でしょう。役小角は噴出す湯の近くで茅葺の粗末な家を造り、そこで修行をするようになったそうです。
言い伝えでは、その時、湧き出す湯の上に金色の文字で「無垢霊湯、大悲心水、沐浴罪滅、六根清浄」と浮かんだと言われています。この意味は、「無垢な霊場の慈悲の湯に沐浴すれば罪が滅び、六根(五感+意識)が清らかになる」という事だそうです。修験道の開祖でもあった役小角の人気も加わり、この「神の湯」は「走り湯権現」として多くの信仰者が訪れる事となったそうです。
熱海の走り湯は源頼朝の「出世の湯」
「走り湯」には鎌倉幕府の初代征夷大将軍である源頼朝の伝説も残っています。平治の乱で平清盛に敗れた源義朝の三男である源頼朝は13歳から21年間、伊豆に流されてそこで過ごしたそうです。頼朝は源氏を再興させる事を一度は諦めていたそうですが、この走り湯から引いた温泉に浸かり、再起を決意し幕府創建に至ったとのことです。
その事から「走り湯」に入って決意したことは必ず成し遂げられるとの言い伝えられ、「走り湯」は「出世の湯」としても人気を得て、歴代の将軍にも愛されたそうです。また、源頼朝は「走り湯権現」の信仰も深く、「走り湯」を詠んだ「伊豆の国山の南に出づる湯の早きは神のしるしなりけり」等、いくつかの和歌が伝えられています。
熱海の湯を愛した徳川家康と走り湯
1590年の豊臣秀吉の小田原攻めの際に伊豆山は焼き打ちされてしまい、社も温泉も無くなり一度は荒廃してしまったそうです。しかし、走り湯の人気は根強く、徳川家による江戸城の改修や造営などでは、この伊豆山から船でたくさんの大石を運んでおり、その際に多くの怪我人が出たそうですが、「走り湯」に入ると大変治りが良かったという言い伝えが残っています。
その後、徳川家康が湯治の湯とし愛した熱海温泉がこの走り湯より優勢になったようですが、そのような中でも「走り湯」を神湯とする伊豆山神社へ参る際に、大名や歌人、そして、1604年には徳川家康も入浴をしたと伝えられています。走り湯は大変貴重なものとされ、江戸時代にはまだ一般に人は走り湯に直接入ることが許されず、波打ち際か旅籠での入浴しか出来なかったそうです。
荒廃した後も「走り湯」の人気は高く、同一の信仰を持つ人々による「講」のグループが遠方から訪れては旅籠で入浴する事が多くあったと言われています。また、その入浴の際は、「無垢霊場、大悲心水、沐浴罪滅、六根清浄」と唱えながら入ることが戦後まで続いていたそうです。
熱海の走り湯洞窟側の「走り湯神社」
走り湯の洞窟の場所には、「走り湯神社」と言う小さな社があります。走り湯は伊豆山神社の「神湯」であり、病を治し、長寿を授けるとのご利益があると言われています。「走り湯神社」の御祭神は日本神話に登場する天忍穂耳尊(あまのおしほみみのみこと)です。この神様は、天照の子とされていて、稲穂の神、農業神として信仰されています。
熱海の走り湯と火山が作り出した素晴らしい地形
海から熱い湯が湧き出ることから「熱海」とされたと伝えられるほど、この伊豆半島の伊豆半島東部の一帯には海底に沈んでいるものも等大小合わせて100以上の火山があるそうです。この火山群は伊豆東部火山群と呼ばれ、そのほとんどは一度噴火すると二度と噴火しない単性火山というものです。
地殻変動を繰り返し伊豆半島が今の様な形になったのが60万年前、その後約20万年前までは火山活動が激かったそうです。伊豆東部火山群は、今ではほとんどの火山は活動を終えていますが、この「走り湯」の温度や湯量もそんな周りの火山の影響で変わるそうです。そんな源泉が湧き出る洞窟の中は、自然のエネルギーに満ち溢れるとともに、歴史や伊豆半島の成り立ちなどを残す史跡として1977年に熱海市指定史跡に指定されています。
熱海の走り湯の洞窟の中へ入ってみよう!
伊豆山神社の参道837段の階段の途中、その16段目の右方向奥に「走り湯」はあります。洞窟の入り口には「熱海市指定文化財史跡 走湯温泉跡」と、書いてあります。もうもうと湯気が立ち上る洞窟に踏み込むには少々気が引けますが、洞窟の長さは5、6メートル程度です。高さは150センチ程度なので少しかがむように入らなければいけません。
洞窟に一歩入れば、充満している蒸気で、目がねやカメラも一瞬で曇ってしまいます。洞窟奥の壁際には小さな鳥居があり、その手前の深い石槽に源泉が音を立てて勢いよく流れ出しています。源泉は暑さで蒸気が立ち、その光景は小さいながらもダイナミックです。現在は自噴ではなく、源泉から引き込んだ湯が、毎分140リットル噴出しているそうです。
洞窟中は薄暗く、狭い為、子供連れの方は手を繋ぐなど安全に配慮して下さい。また、石槽に手などは浸けない様にして下さい。轟々と音を立てながら出てくる湯はこの石槽から、洞窟の右側に配置された樋の中を源泉が流れ、伊豆山神社への階段に沿って張り巡らされたパイプを通り、周りの温泉宿へと送られていきます。
熱海の走り湯を気軽に楽しめる足湯と絶景の眺め
「足湯」は、「うみのホテル中田屋」の隣にあり、小さな展望デッキのような形をしています。ここからは、相模灘から伊豆山港、初島、房総半島などを一望出来、素晴らしい眺望が「走り湯」に浸かりながら楽しめます。この足湯は3人か4人程度が使用できる大きさで、屋根はありません。また、足湯は全員が海に向かって座れる様になっています。
足湯の利用時間は時期により異なります。4月1日から9月30日までが9時から17時、10月1日から3月31日までが9時から16時となっています。行かれる際は足拭きタオルも忘れずに持っていきましょう。多くの名将が愛した湯が料金無料で楽しめますので、是非、立ち寄ることをおすすめします。
熱海の走り湯と伊豆山神社の赤白二龍
麓に「走り湯」がある伊豆山神社の神威の源は、湧き出る霊湯の「走り湯」で、「走湯権現」「伊豆山権現」として信仰されてきました。こちら手水舎には、「赤白二龍」と呼ばれる紅白の龍の口から清めの水が流れ出ています。この「紅白ニ龍」は、赤龍は「火の神」白龍は「水の神」とされ、温泉を生み出すものであり、強運の神として信仰されています。
毎年5月14日に「走湯神社例祭」では、伊豆山神社の宮司が伊豆山神社の境外社である「走る湯神社」で、走り湯温泉組合や伊豆山温泉の旅館関係者とともに神事を執り行います。1300年続く、自然の偉大な力の宿る神湯が、この先も途切れることなく続くように願いをこめます。
熱海の走り湯の駐車場は?
走り湯の駐車場は路駐?
残念ながら、「走り湯」の洞窟や足湯の辺りには専用の駐車場も民営の駐車場もありません。殆どの方は「走り湯」の看板のある道に路場駐車しているようです。また、短時間であれば、伊豆山神社へと繋がる参道の階段の前にも駐車出来るそうです。「走り湯」の看板は「うみのホテル中田屋」のすぐ横にあり、このホテルのフロントにお願いして、駐車場を使わせていただく事も可能だそうです。
熱海の走り湯までのアクセス
車でのアクセス
車での「走り湯」へのアクセスは熱海ビーチライン(熱海海岸自動車道)で伊豆山出口すぐです。伊豆山出口の目印は道路脇にある「ホテルニューさがみや」です。「ホテルニューさがみや」の横に「うみのホテル中田屋」があり「走り湯」の看板があります。車でのアクセスなら相模湾を見ながらの快適なドライブが楽しめます。
駐車場からは階段でアクセス
駐車場からはすぐに階段があります。この階段は、「走り湯」までが16段、そして220段目に国道を挟み、648段目に市道、そして837段目の伊豆山神社の本殿へと続いています。走り湯まではともかく、もし伊豆山神社まで行かれる場合はかなりの急勾配なので、脚の弱い方は大変です。伊豆山神社には約30台の駐車場がありますので、そちらを利用する事をおすすめします。
電車でのアクセス
「走り湯」は熱海駅から徒歩でアクセスしても十分行ける距離にあります。熱海駅からは海側の「家康の湯」方向へ出て、国道135号線を通り、エッソ伊豆山SSの手前で右折すると徒歩約25分ほどで到着します。駅からバスでのアクセスなら東海バスの伊豆山・湯河原方面行に乗り、エッソ伊豆山SSの向かい側にある「逢初橋」で下車し徒歩約10分です。また、タクシーでは熱海駅から約5分程度です。
熱海の走り湯が楽しめる周辺施設
うみのホテル中田屋
眼下の海を見下ろせる「うみのホテル中田屋」は「走り湯」から引湯している創業200年の老舗温泉宿です。走り湯の目の前にありアクセスも大変便利な場所にあります。露天風呂や、大浴場、岩盤浴等が楽しめ、日帰り入浴も可能です。また、うみのホテル中田屋は無料で「走り湯資料館」なども併設しており、歴史や写真等が展示されています。宿泊しない方でも見られるので、是非行ってみて下さい。
源泉で作った「走り湯御玉」
「うみのホテル中田屋」で購入したいのが、「走り湯」の源泉で作った温泉卵「走り湯御玉」です。海のミネラルが自然に添加された塩味加減は絶妙です。卵も雄雌の交配で生まれる有精卵のみを使用しているそうです。こちらでは是非、源泉を使って作られた自然の美味しさを味わってください。
熱海の走り湯が安く楽しめるただ1軒の共同浴場
伊豆山浜浴場
ピンク色の外観の「伊豆山浜浴場温泉」は今でも男湯と女湯の間に番台がある古い共同浴場です。アクセスは「走り湯」から伊豆山参道を上がって行く途中にあり、料金は大人350円、子供100円で14時半から21時半まで営業しているそうです。訪れるのも地元の人々ばかりですが、現在この浴場だけが「走り湯」の共同浴場として運営されている穴場の浴場です。駐車場もあるので便利です。
住所:静岡県熱海市伊豆山579-37 電話番号:0557-80-0210
熱海の走り湯では洞窟と足湯を楽しもう
いかがでしたか?伊豆半島へのドライブや伊豆山神社への参拝の折に「走り湯」の足湯は気軽に楽しめておすすめです。伊豆半島には火山帯が造り出した独特で美しい地形がありますが、この「走り湯」もその一つで自然の凄さを感じられる場所です。熱海に行った時は、多くの名将や人々に愛され、様々な言い伝えと共に残るこの「走り湯」と「足湯」に是非行ってみてください。
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