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雄大な大自然と共存する雌阿寒岳
標高1449mの雌阿寒岳は、山麓を原生林に囲まれて、抜けるような青さの北の空と相まって見事なコントラストの山容を見せています。その雌阿寒岳は、比較的緩やかな傾斜を持ち、登山初心者にも気軽に登れる山として人気です。ここでは、多くの生き物と原生林が共存する大自然の中にある雌阿寒岳へのおすすめの登山ルートを紹介していきます。
雌阿寒岳の基本情報を把握しよう
北海道の百名山で大自然の宝庫でもある阿寒岳は、雄阿寒岳、雌阿寒岳、阿寒富士の山からなり、一般的に阿寒岳というと、この雌阿寒岳を指します。標高1499mあり、北海道の山の中では比較的登山道の整備が整っていて登山ルートからの周辺の眺めも良く、家族連れなどの初心者向けとして多くの登山者が訪れるおすすめの山です。
雌阿寒岳の年間を通しての気候
雌阿寒岳の登山適時は、5月中旬から10月中旬までで、11月上旬から4月下旬までは冬山の積雪期です。5月上旬から6月上旬の春山の残雪期には新緑、6月下旬から8月にかけての夏山には高山植物、9月上旬から10月上旬の秋山には紅葉、と四季折々の大自然の景観を初心者でも楽しめます。雌阿寒岳の登山届出先は、北海道警察釧路方面本部地域課です。
大自然が織り成す雄大で神秘的な雌阿寒岳
雌阿寒岳は、阿寒摩周国立公園の中にあり、周辺には阿寒湖やオンネトー湖等のブルーの湖沼とグリーンの原生林、世界有数の透明度を誇る摩周湖、周囲の峠や山から一望できる屈斜路湖などが横たわっています。雌阿寒岳は、登山だけでなくトレッキングやキャンプ、カヌー、ドライブ、温泉巡りなどそれぞれに雄大で神秘的な大自然を満喫できます。
違った表情を見せる冬の雌阿寒岳
雌阿寒岳の冬山登山は、夏場とまた違った展望を見せてくれる醍醐味に溢れています。特に雌阿寒岳山頂から見る周辺の白い山々や凍結した阿寒湖などの眺めなど、最高のパフォーマンスが見れます。雌阿寒岳は、年間通して登山可能ですが、雌阿寒温泉からオンネトーまでの区間が冬季通行止めになるので、冬場は雌阿寒温泉からアクセスしましょう。
冬の雌阿寒岳山頂からの様子を紹介する動画です。2015年1月3日にYoutube上に公開されています。360度撮影されているので周囲の様子がよく分かります。撮影時のカメラワークは、かなり手ブレが激しいので、おそらくこの日は風が相当強いのではないかと思われます。雌阿寒岳はご覧のように遮るものがないので、夏場でも相当な風の強さです。
雌阿寒岳登山その1:野中温泉ルート
最初に紹介する雌阿寒岳登山ルートは、初心者にもやさしく最も多くの人が利用する雌阿寒温泉、通称野中温泉ルートです。基本情報は、登山口からの標高差794m、山頂までの距離は約3.3km、標準時間は休憩なしで、上り2時間、下り1時間10分です。途中の水場や山小屋はなし。トイレは駐車場にあり、山中では携帯トイレの使用を推奨しています。
雌阿寒岳野中温泉ルートは、他のルートと比べると若干勾配がきついですが、距離が短いため初心者でも手軽にアクセスできます。通年を通して登山可能ですが、安全に登山ができるのは、残雪が少なくなる5月下旬ぐらいがおすすめです。雌阿寒岳は年によっては、夏山登山でも残雪が多い場合もあり、その場合は冬山装備が必要で難易度が高くなります。
野中温泉近くの公共駐車場から国道241号線方面へ道路沿いを300mほどアクセスすると雌阿寒岳登山口になり、しばらくは天然のアカエゾマツに囲まれた森林浴を楽しみながら進みます。北海道を代表する樹種であるアカエゾマツは、岩礫地や蛇紋岩地などの条件の厳しい場所で育ち、凛々しく天に向かって伸びる神秘的な形容を見せています。
雌阿寒岳の森の中で特徴的な現象のひとつが、朽ちた倒木の上に若い木が育つ倒木更新。親木から飛んで地面に落ちた種の多くは、雑草が生えていて十分な太陽光を浴びることができず育ちません。運よく倒木の上に落ちた種は、朽ちた倒木が養分を供給し表面に生えた苔がスポンジ状になって湿度を保ち、300年近くの年月をかけ世代交代が行われます。
しばらく進んでいくと、3合目あたりでアカエゾマツからハイマツに替わってきます。ハイマツのハイは、highではなくて「這い」のことで、低く横に這うように枝分かれしている松で、このハイマツから上には高木が育たないという指標になってます。下を振り返るときれいな水色をしたオンネトー湖と雄大な森林帯が眼下に広がっています。
やがて大沢と呼ばれる沢地形が現れ視界が開けてくると4合目付近です。赤茶けた地面の火山礫が広がり、周囲には硫黄の匂いが立ち込めてきます。雌阿寒岳尾根には、風遮るものがなくなり吹きさらしの状態になるので、休憩をする場合は、大きな岩の陰などに座ることをおすすめします。初心者の方は防風、防寒対策をしっかりと準備しておきましょう。
オンネトー湖が見えるのは8合目あたりまでで、9合目付近で外輪山に辿り着きます。雌阿寒岳山頂付近は目標となるものがないため、特に残雪が残る時期や雲が立ち込める視界不良時には注意が必要です。足場はザレ場で、特に斜面がきついところや残雪が残っていて足場が確認できないところでは、転倒の危険もあるので初心者の方は注意が必要です。
9合目の標識を過ぎると右手に赤沼を見下ろすことができます。雌阿寒岳の大自然が造りだす異次元の世界には、思わず目を奪われてしまいます。下まで降りていってみたく成りがちですが、急な崖になっていて危険な箇所からはロープが張ってあります。特に初心者の方は、独断で判断して降りていかないよう、雌阿寒岳のルールを守りましょう。
9合目をしばらく進んでいくと1499mの雌阿寒岳山頂へたどり着きます。雌阿寒岳登山の最適シーズンは5月下旬から10月下旬と言われていますが、6月に入ってからも気温は氷点下になることもあります。特に初心者の方は十分な装備を整えることをおすすめします。雌阿寒岳積雪の時期の雪に囲まれた火山口もまた違った雰囲気がしておすすめです。
雌阿寒岳の山頂付近からのドローンによる空撮映像です。2017年9月17日にYoutube上に公開されています。雌阿寒岳外周から火口を望む様子がよく分かります。噴煙とガスがかなりこもっていますが、それなりに全体の雰囲気はつかめます。雌阿寒岳外周から火口へ下りる箇所はかなりの急斜面になっていて、細心の注意が必要な様子が見て取れます。
雌阿寒岳の野中温泉登山口までのアクセス
道東自動車道札幌南IC及び新千歳空港ICから阿寒ICまでのアクセスは、265km、約3時間です。阿寒ICから野中温泉登山口までは、国道240号線、通称まりも国道を経由し、距離にして約64km、時間にして約1時間ほどでアクセスできます。レンタカーを借りてすぐに高速道路に乗ってしまえば、楽に雌阿寒岳へアクセスすることが可能です。
雌阿寒岳登山その2:オンネトールート
次に紹介するのは、オンネトー野営場から雌阿寒岳頂上へアクセスするルートです。登山口からの標高差が約857m、雌阿寒岳山頂までの距離は、約4.2km、標準時間は休憩なしで、上り2時間20分、下り1時間40分です。途中急勾配になっている箇所がありますが、野中温泉ルートと同様、短時間でアクセスできる初心者におすすめのルートです。
オンネトー野営場横の登山口からスタートし、1合目から5合目まではアカエゾマツが広がる森林を進みます。5合目辺りは木の根がびっしりと生えていますが、足場になるので傾斜のある箇所でも問題なく上ることができます。ただし、雨の日や残雪が残っている時は、滑りやすくなっているので油断は禁物です。足元には十分注意が必要です。
6合目からはハイマツが広がるザレ場に入ります。右手にはボタ山のような阿寒富士が見えるので、途中、時間に余裕があればこの阿寒富士へアクセスすることもできます。7合目に入ると森林限界になり視界が開け雄大な景色を眺めることができます。ここまで約2時間です。遮るものがないので防寒着など予め装着しておくことをおすすめします。
雌阿寒岳火山口が見える9合目まで来ると、野中温泉ルートと同様に外輪山を越えて雌阿寒岳山頂へアクセスします。野中温泉ルートが雌阿寒岳の北側からアクセスするのに対し、オンネトールートは、雌阿寒岳の南側から阿寒富士との間を進み回り込むようにアクセスします。9合目付近からは、赤茶けたガレ場と噴煙が上がる火口が広がります。
赤沼ともうひとつあるのがきれいな水色をした青沼です。赤茶けたガレ場に絵具で描いたような美しさです。雌阿寒岳には、もともとはもうひとつ小赤沼という沼があり、全部で3つありましたが、1980年代後半から火山活動の活発化により地熱が上昇し、小赤沼は現在、消滅してしまっています。現在、残っているのは、この青沼と赤沼の2つだけです。
雌阿寒岳オンネトー登山口までのアクセス
阿寒ICを下りて国道240号線、通称まりも国道を北へ進んで行き、阿寒湖を通り過ぎた先の国道241号を左折します。さらにその先の県道664号線を左折し、雌阿寒温泉方面へ向かいます。オンネトー湖を過ぎたあたりにオンネトー茶屋があり、そこを左折した先にオンネトー野営場駐車場があります。そこまで約80km、所要時間は約1時間20分です。
雌阿寒岳おすすめ登山ルートその3:阿寒湖畔
最後に紹介するのは主に3つあるルートの中で最も長い距離の阿寒湖ルートです。上記2つとは反対側の雌阿寒岳東側からアクセスします。勾配がなだらかで初心者でもゆっくりと火山の景色を眺めながらアクセスできます。登山口からの標高差が、約764m、山頂までの距離は、約6km、標準時間は休憩なしで、上り3時間、下り2時間です。
阿寒湖登山口からスタートし、しばらくはアカエゾマツが生い茂る森の中を進みます。3合目あたりまでは笹の葉が多いところがあって登山道が見えない箇所があります。急登りを上がって振り返ると阿寒湖と雄阿寒岳が見えます。そしてしばらく進み4合目付近から剣ヶ峰が見えてきます。その先、ハイマツのトンネルを抜けると視界が開けてきます。
5合目から7合目あたりまでは、ハイマツとザレ場が続き、7合目付近の斜面から振り返るときれいなフップシ岳が見えます。このルートは行程が長めなので、あまり無理をせずせっかくですからこの辺りで休憩して、雄大な北海道の大自然をゆっくりと眺めてください。また周辺のガンコウランの実やイワブクロの花など高山植物も見ものです。
ハイマツ帯を過ぎ剣ヶ峰の脇を通り山頂近くまで来ると、だだっ広い火山礫の地帯に入ります。赤茶けた砂礫 のところどころに赤くペイントされ、コース表示されていますが、地形が単調なため視界が悪い時は、ミスコースしないように注意が必要です。正面に雌阿寒岳の火口が見えてきますが、ここからの勾配はややきつくなっています。
頂上がひとつ同じでも、コースが違うだけでまるで趣の違った景観になります。野中温泉ルートは、力強く頂上を目指す感のあるルートですが、こちらの阿寒湖ルートは、標高差も低く勾配もゆるいので、のんびりとした登山を楽しみたい人や初心者にもおすすめのルートです。人があまり入っていない分、阿寒の森の奥深さを肌で感じることができます。
雌阿寒岳阿寒湖畔登山口までのアクセス
阿寒ICを下りて、国道240号線、通称まりも国道を北へ道なりにしばらく進みます。阿寒湖を通り過ぎてすぐに左折し、しばらく進んだ先にあるのが阿寒湖畔登山口駐車帯です。阿寒湖畔登山口駐車帯までの距離は、約64.7km、所要時間1時間40分です。わずかですが約4台停められる無料の雌阿寒温泉公共駐車場があります。
雌阿寒岳登山の際はヒグマに注意
北海道にしか生息しないヒグマは、全道で一体どれくらいの数がいるかというと、2015年に北海道庁が発表した推測数によると10600頭に上ります。北海道では、山地・丘陵の森林地帯や、その間の天然草本類の発達地などで棲息しているとされ、この中には沢地、沼湿地、森林限界上部の山岳地も含まれますから雌阿寒岳も例外ではありません。
ヒグマは孤独性の強い動物で、特に人間に強い警戒心を持ち、人を避けて生活しています。ヒグマの好む場所は、通常は人と遭遇しがたい所で、採餌があって休憩ができ、冬ごもりの穴も確保できる所です。人間側の注意でヒグマとの遭遇は避けることはできます。雌阿寒岳入山前に監視員などからヒグマ情報を聞き、その指示に素直に従ってください。
雌阿寒岳登山の際の服装
雌阿寒岳登山の基本は日帰りなので重装備は必要ありませんが、登山靴、登山用ザック、アウターは必須です。特に雌阿寒岳の山頂付近は遮るものがなく風が強いのと、気温も夏場でもかなり冷えますので防水、防寒用アウターが必要です。ザックに詰めるのは、雨具、ヘッドライト、地図、コンパス、防寒具などまずは日帰り登山の標準的な装備です。
雌阿寒岳周辺の見どころその1:オンネトー湖畔
オンネトー湖は、阿寒湖の南西方面にある雌阿寒岳の噴火で堰き止められた堰止め湖です。湖の周囲は4kmあり、オコタンペ湖、東雲湖と共に北海道三大秘湖の一つと言われます。水の色が季節や場所、風向、天候によってコバルトブルーやエメラルドグリーンに見えることから五色沼とも呼ばれ、北海道で最も水の色が美しいと言われています。
雌阿寒岳周辺の見どころその2:雌阿寒温泉
雌阿寒温泉は、北海道足寄郡足寄町にある温泉で、オンネトー温泉とも言われます。阿寒摩周国立公園内の標高約720mの山奥にある秘湯として知られ、オンネトーの入口に野中温泉本館、野中温泉別館、景福があり、珍しい泉質の温泉が人気のおすすめ温泉地です。景福は現在休業しており、野中温泉本館と別館の利用が可能です。
雌阿寒岳周辺の見どころその3:阿寒湖
阿寒湖は、北海道東、釧路市にある北海道で5番目に大きい淡水湖で、阿寒摩周国立公園の中に含まれます。また東側には雄阿寒岳がそびえ、静かな淡水湖とともに雄大なパノラマが眼前に広がっています。また、冬季は湖面が全面氷結するため、ワカサギ釣りやスケート、スノーモービルなどのウインタースポーツが盛んに行われています。
阿寒湖では、阿寒湖内を1時間25分かけてゆったりと周遊できる遊覧船があります。湖内には唯一上陸できるチャウルイ島や阿寒湖最小のヤイタイ島、マリモ観察展示センターなどがあり、周辺の景色を眺めながら周遊します。料金は、大人1900円、小人990円となっていて、マリモ展示観察センターの入館料も含まれています。
阿寒湖内に浮かぶチュウルイ島には、特別天然記念物のマリモの生態をじっくりと観察して学べる施設、マリモ展示観察センターがあります。マリモは淡水性の緑藻の一種で、通常は岩などに付着し糸状体の形態になっていますが、阿寒湖のマリモは美しい球状体になっています。現在は、阿寒湖北側のチュウルイ湾が世界唯一のマリモ群生地です。
阿寒湖温泉街の近くには、北海道最大のアイヌコタンと呼ばれるアイヌの集落が約30戸あり、120人程度がそこで暮らしています。そこでは、アイヌの伝統舞踊を公演する演舞場のオンネチセや、アイヌ生活記念館、森と湖の藝術館というアイヌの伝統文化を紹介する2つの資料館、木彫製品などを販売する土産物店などが並んでいます。
雌阿寒岳周辺の見どころその4:ペンケトーとパンケトー
古代阿寒湖はもともと大きな湖でしたが、雄阿寒岳の噴火によって堰き止められ、阿寒湖とペンケトー、パンケトーという3つの湖に分かれました。そのペンケトーとパンケトーという2つの湖は、周囲をうっそうとした森に囲まれ、ひっそりと佇んでいます。一般人の立入が禁止されているため手つかずの自然が残されている湖です。写真はペンケトー。
雌阿寒岳周辺の見どころその5:摩周湖
摩周湖は、古くから景勝地として知られていましたが、交通の便が不便なことから、長らく全国的にも観光客が訪れるところではありませんでした。しかし1966年に歌手布施明が歌った「霧の摩周湖」が大ヒットし、一躍その知名度が高まりました。その霧は、太平洋上を北上する温かい湿った空気が北海道沿岸で急激に冷やされるために発生します。
摩周湖は、雌阿寒岳から約70km北東へ車で約1時間15分の距離にあります。河川の流入、流出がない閉鎖湖で、世界ではバイカル湖についで2番目に透明度の高い淡水カルデラ湖です。その透明度から摩周ブルーと呼ばれます。また湖内は阿寒国立公園の特別保護地区に指定されていて、開発行為や車、馬、船などの乗り入れは厳しく制限されています。
週末は釧路空港まで気軽にひとっ飛び
東京羽田空港から釧路空港までは、各航空会社から毎日8便が運航されていて、1時間40分のフライト時間です。土日の週末を利用して1泊2日の雌阿寒岳登山と温泉を楽しむ旅など、気軽にリフレッシュできておすすめです。その他、札幌新千歳空港、札幌丘珠空港、大阪伊丹空港、関西空港、中部国際空港の各主要都市からも直行便が出ています。
大自然の宝庫である雌阿寒岳を目指そう
活火山としての雌阿寒岳の火口は、人智の及ばない大自然の営みの壮大さを目の当たりに見せてくれます。日本でも有数の活火山である雌阿寒岳は、今のところ火山の噴火は沈静化しており、その登山ルートは多くの登山家や初心者にも人気のルートです。北海道釧路、阿寒へ旅行の際は、ぜひ一度雌阿寒岳の雄大な大自然を感じてはいかがでしょうか。
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