パワースポットの巨大な地下迷宮「田谷の洞窟」
神奈川県横浜市栄区田谷町に全長1kmにも及ぶ人工洞窟「瑜伽洞」があります。瑜伽洞は通称「田谷の洞窟」といい、巨大な地下迷宮となっている洞窟は、今なお修業の場として使われている霊場で、日本でも珍しい地下伽藍です。今回は横浜の人気のパワースポットである田谷の洞窟について、見どころやおすすめのスポットも含めご紹介します。
田谷の洞窟とは?
横浜にある定泉寺の田谷の洞窟は、真言密教の修業として鎌倉時代初期に作られ始め、江戸時代に至るまでに徐々に拡張された、上下三段、全長1kmにも及ぶ人工洞窟です。江戸時代に地震か何かが原因で洞内が部分的に崩落し、一時閉鎖されていましたが、天保元年(1830年)に洞内の整備と工事が行われ、入洞が可能となりました。
しかし、明治時代に、政府による激しい廃仏毀釈運動から逃れる為に、再び閉鎖しました。そのおかげで、田谷の洞窟は今もなお当時の貴重な姿のまま、存在しています。
関東大震災の際にも被害を受けたりと、何度も存在を危ぶまれましたが、1927年に一般公開が始まりました。
横浜にある人気パワースポット
田谷の洞窟がある真言宗大覚寺派田谷山定泉寺は、1533年開創。本尊に阿弥陀如来、不動明王、弘法大師を祀り、厄除けや招福のご利益があるとされています。
田谷の洞窟は元鶴岡八幡宮の二十五坊の修禅道場の1つで、洞内には修行僧がノミを使い、手彫りで刻んだ装飾や数百体の仏像彫刻があります。
蝋燭を灯し、洞内に一歩足を踏み入れると、そこはもう別世界。厳かな雰囲気に満ちた洞内の空気はひんやりとしていて、遮断された静寂と闇の中、外界の喧騒から離れ、自分自身と向き合うことができます。
田谷の洞窟は横浜のパワースポットとしても人気がありますが、運気が上がる類のパワースポットではなく、本来の自分に戻ることができるパワースポットと言えます。
定泉寺の境内にあるおすすめ観光スポット「田谷の洞窟」
定泉寺は天文元年(1523年)、鶴岡八幡宮が鶴岡八幡宮寺と呼ばれていた頃、神社に奉仕する為の供僧たちの修行道場として創建されたのが始まりとされています。
本堂にある厄除け木魚を厄年の人は年齢の数、その他の人は21回叩くことで厄除けを祈願し、歓喜大黒天の鈴を振って招福を祈願することもできます。
境内は鎌倉幕府の武将和田義盛の子、朝比奈三郎義秀の館跡と伝えられ、修行大使、子安地蔵尊、子授けの玉石、輪導院(朝比奈弁財天)等の諸堂があります。又、無数の子安地蔵尊が安置されていて、多くの花が供えられています。
そんな定泉寺の境内にあるおすすめ観光スポットが、田谷の洞窟です。洞窟は定泉寺の創建よりも古く、現在も修行道場として使われている厳粛な空気の中を、蝋燭を灯しながら歩きます。小学生くらいのお子さんにとっては冒険をしている気分も味わえます。
田谷の洞窟と周辺の見どころ
横浜にある定泉寺の人気のパワースポットである田谷の洞窟と、その周辺の見どころをご紹介していきます。
田谷の洞窟はもちろん、定泉寺の周辺には歴史を感じられるおすすめスポットがあります。横浜観光の際の候補にはなかなか挙がらないかもしれませんが、歴史好きな方には見どころ満載で、田谷の洞窟と合わせて回るのにおすすめです。
沢山の仏像や壁画がある田谷の洞窟
横浜観光にもおすすめで人気のパワースポットである田谷の洞窟は、現在でも修行道場として使われていますが、一般の人でも洞窟内の拝観ができます。
田谷の洞窟の洞内には本尊である一願弘法大師をはじめ、四国や関西、関東、秩父の各札所本尊、両界曼荼羅諸尊、十八羅漢等、数百体の御仏が修行者の手で刻まれ、無数のノミ跡も見られます。
洞内の全国百八十八札所の壁画を参拝することで、巡礼の代替えにもなるとされています。又、本尊一願弘法大師の横からあふれ出す金剛水と呼ばれる霊水は、病気治癒のご利益があるとされていて、念仏を唱えながら患部に擦り込むと回復の効果があるとされています。
他にも、地下2階部分まで掘り下げて描かれた蛟龍の天井画は圧巻で、洞内の見どころとしておすすめです。
遺跡護良親王御しるしお鎮の松
次に、定泉寺の田谷の洞窟の周辺にある見どころの1つ「遺跡護良親王御しるしお鎮の松」をご紹介します。
東海道を少し入った、定泉寺から車で約20分程の、横浜市戸塚区の梶尾町にある王子神社の境内にある、老松の巨木の根の跡がそれで、松自体は明治時代に落雷で焼損しています。
護良親王とは後醍醐天皇の王子で、鎌倉幕府倒幕計画に貢献した一人です。倒幕後、共に倒幕運動に参加していた足利尊氏と対立した為、自ら征夷大将軍となり足利尊氏を排除しようとするも、失敗に終わります。逆に、足利尊氏に皇位簒奪の疑いがあると噂を流され、幽閉された後、北条氏に政治利用されることを恐れた足利直義によって暗殺されました。
護良親王を慕っていた侍女がさらし首になっていた護良親王の首を夜中に盗み取り、王子神社に逃げて来て、埋葬する前に松の根元に一時的に首を隠し奉ったとされています。
御料馬控處(ごりょうばひかえどころ)の碑
次にご紹介する定泉寺の田谷の洞窟の周辺にある見どころの1つは「御料馬控處の碑」です。「遺跡護良親王御しるしお鎮の松」と同じく、王子神社にある碑で、神社の入り口横にひっそりと建っています。
王子神社にこの「御料馬控處の碑」に関する諸説明はありませんが、御料馬とは主に天皇家や将軍家が使用した馬を意味し、この碑は参拝の際に御料馬を控えさせていた厩舎があったか、この石碑に馬をつないでいたと推測されます。
四つ杭跡の碑
次にご紹介する定泉寺の田谷の洞窟の周辺にある見どころの1つは「四つ杭跡の碑」です。こちらは王子神社の近くにあり、昭和62年と比較的新しいものですが、護良親王と深く関係がある場所です。
護良親王の首は梶尾についた際、井戸で清められた後に王子神社に埋葬されました。その井戸は「首洗い井戸」として横浜の観光スポットの1つとしてガイドブックや広報誌でおすすめされています。そして、首洗い井戸の傍に建っているのが「四つ杭跡の碑」です。
護良親王の首を井戸で清めた際、杭を4本打って祭壇を作り、供養したとされ、石碑の裏には由来が刻まれているので、ぜひ読んでみて下さい。
東海道を戸塚方面から進むと、旧東海道沿いに「史蹟への小径」の碑が建っていて、それに従って進むと首洗い井戸、四つ杭跡から王子神社までの散策コースになっています。
田谷の洞窟の注意点
横浜で人気のパワースポットである田谷の洞窟を拝観する際の、注意点をいくつかご紹介します。
田谷の洞窟は見どころも多く、観光スポットとしておすすめですが、今でも修行道場として使われている、神聖な場所でもあります。
蝋燭1本を灯して洞内を拝観する為、冒険気分ではしゃいでしまう人もいますが、洞窟前に書かれている注意書きをよく読み、心静かに拝観して下さい。
洞内の写真撮影は一切禁止
田谷の洞窟は人気のパワースポットであり、観光スポットとしてもおすすめされているので、記念に写真を撮りたいと思う人も多いかと思います。しかし、田谷の洞窟の洞内は写真撮影が禁止されています。
何度も繰り返しますが、田谷の洞窟は今なお修業の場として使われているだけでなく、霊場でもあります。当時の修行僧たちが命懸けで掘った仏像や壁画の数々は、貴重であると同時に唯一無二の神聖なものなので、一切撮影は禁止です。
田谷の洞窟の入り口前での撮影は可能なので、記念撮影やSNSに投稿する写真の撮影は入り口前で行って下さい。
洞内の温度は外界よりも10度以上は低いので服装に注意
田谷の洞窟の洞内は常時15度から17度に保たれている為、冬場は寒さを感じることはありませんが、真夏となると洞内と外界の温度差は10度以上も低くなるので、服装には注意が必要です。
田谷の洞窟の長さは1kmあり、洞内を巡って出てくるまでに約20分から30分ほどかかります。我慢できない寒さではありませんが、夏場は軽く羽織るものを持参しておけば快適に洞内を巡ることができます。
又、洞内は足元が大変滑りやすく、入り組んでいる場所や穴もあり、天井も低い為、足元は動きやすいスニーカー、服装も軽装をおすすめします。
田谷の洞窟はどうしてできたの?
定泉寺の創建は室町時代の天文元年ですが、田谷の洞窟ができたのはそれよりも古く、鎌倉時代初期とされています。
地質は粘板岩の巨大な一枚岩を掘って作られており、幾度かの大地震にも耐えています。重機のない時代ながら、合理性を兼ね揃えた構造からは当時の土木技術の一端が伺われ、その点からも貴重な存在と言えます。
定泉寺が創建後は、田谷の洞窟は真言密教の修業の場として使われていますが、それ以前にも、洞窟にまつわる様々な逸話があるとされています。それらを踏まえ、田谷の洞窟はどうしてできたのかをご紹介します。
いろんな説がある
田谷の洞窟が掘られた所以には、色々な説があるとされています。洞窟自体は、古くは古代人が住んでいた横穴式住居だったという説や、古墳だったという説もありますが、確かな資料は残っていません。
しかし、この洞窟が真言密教の修業の場として使われるようになったのには、きっかけがあります。
鎌倉時代初期、定泉寺の敷地には幕府の行政機関の長官であった朝比奈三郎義秀の館が設けられていて、洞内に弁財天を勧請しました。1213年に起こった御家人最大の反乱「和田合戦」の際、三郎義秀は洞窟を通って落ち延びたとされています。
三郎義秀が行方不明になった後、洞窟は鶴岡八幡寺の僧侶たちによって守られ、真言密教の修業の場として使われるようになりました。
田谷の洞窟の基本情報
横浜という街自体、関東でも人気の観光地で、見どころがたくさんありますが、横浜観光のついでに定泉寺の田谷の洞窟も立ち寄ることが可能なのでしょうか。
又、定泉寺の開門時間と田谷の洞窟の拝観可能時間は違うのか、アクセス方法や駐車場の有無も含め、横浜の人気のパワースポット定泉寺の田谷の洞窟の基本情報についてご紹介します。
アクセス方法
まず、田谷の洞窟がある定泉寺へのアクセス方法をご紹介します。最寄り駅はJR東海道本線、根岸線、横須賀線、湘南新宿ライン、湘南モノレール江ノ島線の「大船駅」です。
大船駅西口から神奈中バス「戸塚センター行き」に乗車し、「洞窟前」停留所で下車すれば、定泉寺はバス停の目の前にあります。バスの乗車時間は約20分です。
又、徒歩の場合は大船駅から約30分なので、時間に余裕のある場合はゆっくりと散策がてら歩くのもおすすめです。
横浜駅から大船駅までは電車で約15分程なので、観光スケジュールがぎちぎちでなければ、横浜観光のついでに田谷の洞窟に立ち寄ることは可能です。
住所 | 神奈川県横浜市栄区田谷町1501番地 |
電話番号 | 045-851-2392 |
田谷の洞窟が公開されている時間
次に、田谷の洞窟が公開されている時間をご紹介します。定泉寺の開門時間は9時から16時30分で、田谷の洞窟の拝観時間も9時から16時30分となっています。ただし、田谷の洞窟の拝観最終受付は16時となっているので、注意が必要です。
これは、田谷の洞窟は長く、個人差はあれど拝観に約30分前後を要する為で、もしゆっくりと田谷の洞窟を拝観したいという場合は、16時前には拝観受付を済ませておくことをおすすめします。
見学料金
次に、田谷の洞窟の見学料金をご紹介します。定泉寺の本堂の拝観料は無料ですが、田谷の洞窟を拝観するには、見学料となる拝観料が必要となります。
田谷の洞窟の入り口近くに受付があるので、そこで拝観料を納めると、田谷の洞窟の由来書と蝋燭を1本頂けるので、洞窟前にある手燭台に蝋燭をつけ、入口にある種火で蝋燭に火を点け、洞窟内を進みます。
拝観料は大人400円、中高校生200円、小学生100円、未就学児は無料です。拝観後、蝋燭の残りは持ち帰ることができます。
駐車場情報
次に、定泉寺の駐車場情報をご紹介します。自家用車でのアクセス方法は、県道23号原宿六ツ浦線(環状4号線)田谷交差点を戸塚・金井方面へ300mです。
駐車場は定泉寺向かいの陶郷・日昭住販の有料駐車場が定泉寺の駐車場となります。駐車料金は1時間500円で、参拝割引等はありません。
パワースポット!田谷の洞窟へ行こう!
以上、横浜の人気のパワースポットである田谷の洞窟についてご紹介しました。ドーム状になっている洞内は天井部にまでびっしりと仏像や梵字、壁画がびっしりと彫られていて、誰しもがその神聖な空気に思わず背筋を伸ばすはずです。
静寂の中、蝋燭の火に集中しながら薄暗い洞内を巡るという非日常体験をした後は、いつもの世界が何とも違って見えるはずです。特に、洞内から外界へ出た瞬間の何とも言えない解放感と清々しさは、体験した人にしか分かりません。
田谷の洞窟内はもちろん、定泉寺の境内や周辺にも見どころがあるので、ぜひ横浜観光の際にはルートに組み込んでみて下さい。
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