オジサンは上品な味わいの高級魚
皆さんはオジサンという名前の魚をご存知でしょうか?「オジサンって魚がいるの知ってる?」とCMでも取り上げられているので、どこかで小耳に挟んだことがある人もいるかもしれません。
魚の名前にしてはちょっと滑稽ですが、「オジサン」という響きに惑わされてはいけません。実はオジサンは上品な味わいの高級魚なのです。
オジサンは意外にも正式名称
ちょっと変わった名前の魚、オジサンですが、オジサンは長い名前を略したわけでも、愛称でもなく、正真正銘の正式名称です。魚の図鑑などで調べると、きちんと「オジサン」という名前で検索できます。
オジサンとはどんな魚?
ちょっと変わった正式名称であるオジサンは一体どんな魚なのでしょう。気になるオジサンの名前の由来や生態、生息地など詳しくご紹介していきましょう。オジサンの市場の取り引き価格や熱帯魚としての価値なども要チェックです。
オジサンの名前の由来
魚にどうしてオジサンという名前がついたのか、その由来は気になるところです。実はオジサンの名前の由来は、多くの人が想像するように、シンプルにオジサンの顔が人のおじさんに似ているというところからきています。
オジサンには顔の前に髭があり、正面から見た顔つきがまるで人のおじさんのように見えます。そこからオジサンと呼ばれるようになったのだそうです。
また、一説にはお爺さんが転じてオジサンになったとも言われていますが、真相は定かではありません。
ちなみに英語ではManybar goatfishと言われ、直訳すると「多くの棒があるヤギ魚」という意味になります。日本では髭の象徴といえばおじさんですが、英語圏では髭の象徴はヤギのようで、オジサンの属するヒメジ科の魚は全てgoatfishと呼ばれています。
また、ManybarはMany(多くの)+bar(棒)で、これはオジサンの体の特徴である体側の5本の横縞模様を指しています。
鹿児島奄美大島ではオジサンのことをカタヤス、沖縄ではエルカタカシと呼んでいて、他にもハタスやヒゲイチといった呼び方もあるようです。
オジサンの生態
おじさん似が名前の由来になっているオジサンは、スズキ目ヒメジ科の魚です。体長は20~30cm程、大きいものでは40cmになるものもいます。
全身はベースが赤から紫で、そこに明暗の縞模様が数本入り、頭部にも目を通る暗色の縦縞が1本入っています。オジサンの見分け方は、第2背びれの下に暗色班のような横縞模様があることです。
口は突き出ていて、下顎部分にオジサンの最大の特徴でもある髭が2本ついています。この髭は、泳いでいる時に体の下の方に沿って畳まれていることが多く、見えません。
オジサンの髭には感覚器がついていて、海底の砂を掘ったり、石を動かしながら中にいる甲殻類や軟体動物、有孔虫などの生物を探し当て捕食します。大きいオジサンは小魚などを追いかけて捕食することもあります。
オジサンの普段の体色は黄色がかったクリーム色です。しかし、活発にエサを探している時や繁殖の為に求愛する時は赤くなったり、紫がかった色になります。更に、求愛時には髭を高速で激しく震わせアピールもします。
繁殖は、雌雄で海中を上昇し、放精抱卵で行われますが、雄はそのために縄張りを作り、違う雄が縄張りに近づくと、エラと髭を折りたたみ高速で違う雄を追い払います。
オジサンの生息地
人のおじさんに似ていることが名前の由来になっているオジサンはインド洋や西太平洋に分布しています。日本では駿河湾より南の西日本や南日本に生息しています。水深140m程度の砂礫底やサンゴ、サンゴ礁域などで多く見られます。
オジサンの市場取引価格
かつてオジサンは、雑魚に分類され、たたき売りのような状態で処分されていました。しかし、近年注目をあびるにつれどんどん値段は上昇しています。
築地市場では1kgあたり1500円程度の値段で取引されていて、一気に高級魚の仲間入りを果たしています。平均すると1匹の大きさは25cmくらいなので、一匹500円前後がオジサンの相場です。
熱帯魚としての値段
オジサンは食用ではなく、観賞用の熱帯魚として取引されることもあります。熱帯魚として飼育されるオジサンは体長が小さめのもので、1匹あたり1000~1500円で販売されています。サイズは小さいですが食用よりもさらに高値がついています。
熱帯魚としてのオジサンは、髭が水槽の底をかき混ぜる働きをするため、水槽の掃除屋として大活躍します。熱帯魚店などではサイドスポット、メニーバーゴートという洒落た名前で販売されていることもあります。
オジサンを釣る方法
オジサンは生息地では年間を通して釣れる魚ですが、特に活性の高い夏から秋にかけてが釣りやすくなります。自分の行動範囲に入ってきた動きのあるものを口で攻撃するので、イソメやゴカイなどを餌にして釣ることができます。
また、ルアーを使う場合はワーム、スプーン、プラグなどに反応します。引きがとても強く、ルアーで釣るのが楽しい魚です。
沖縄なら個人でも釣れる魚
オジサンは時期によっては関東の一部でも釣れることがありますが、沖縄では年間を通してよく釣れます。オジサンは沖釣りなど船を出して釣ることもありますが、沖縄なら岸壁からでも釣れる可能性が高く、個人でもオジサン釣りを楽しめます。
オジサンを美味しく食べるポイント
おじさん似が名前の由来になっているオジサンは、食用としてなかなかの高値で販売されている高級魚です。名前を知られていなかった時には雑魚として扱われていたオジサンですが、実は美味しい魚です。オジサンの美味しい食べ方のポイントをご紹介しましょう。
皮ごと美味しく食べられる
おじさん似が名前の由来になっているオジサンは、身だけでなく、皮も美味しい魚です。皮自体に旨味があるだけでなく、厚い皮と身の間には適度な脂肪があるので甘みを感じることもできます。
体の表面にはウロコがついていますが、大きくて薄いため簡単に取り除くことができ、皮ごと食べるのがおすすめの魚です。
一年中美味しい
一般的に魚は産卵前に体内に栄養と脂肪を蓄え、最も美味しくなります。春が産卵期だとすると、魚は冬に脂肪を蓄えます。冬は水温も下がる為、魚自身の身を守るためにも脂肪が蓄えられます。
そんな旬の時期が決まっている魚が多い中、オジサンは一年中美味しい魚です。特に産卵期と関係なく一年中安定した美味しがが堪能できる理由は、1年を通して水温が高い場所に生息して冬を越すための特別な脂肪を蓄える必要がないからだと言われています。
美味しく食べるには内臓の処理が重要
オジサンを美味しく食べるためには、鮮度の良いオジサンを選ぶことはもちろんですが、最大のポイントは内臓の処理です。オジサンは海底の甲殻類などを主食にするため、内蔵は独特の臭みがあります。
内臓の臭みが身に移らないように、丁寧かつキレイに内臓を取り除かなければ、せっかくの美味しいオジサンが台無しになってしまいます。内臓を取り除いたら血合いをしっかり水で洗い流しましょう。
店で販売されているものでも、まれに臭みが身にうつってしまっているオジサンもあるので、十分気をつけて購入する必要があります。
おすすめの食べ方
高級魚として販売されているオジサンのおすすめの食べ方をご紹介しましょう。ぜひ内臓をきれいに処理して、臭みのないオジサンでチャレンジしてみてください。
自分で釣ったオジサンを使う場合は、釣った現地でエラと内臓を処理してキッチンペーパーに包んでラップをし、冷蔵室のチルドで1~2日寝かせると旨味が増幅され、さらに美味しくなります。
体表のエラは手の指を使って簡単に取り除くことができますので、キレイに取り除きましょう。おすすめの食べ方3選をご紹介です。
刺身
オジサンのおすすめの食べ方のひとつは刺身です。オジサンの刺身は、名前からは想像もつかないほどの美味しさです。オジサンを初めて食べる時にはぜひ刺身にチャレンジしてみてください。オジサンは皮が美味しいので、ぜひウロコを落して皮付きのまま刺身にしてみてください。
炙り
刺身にしたオジサンは軽く炙るのもおすすめの食べ方です。刺身が沢山ある時にはぜひ一部炙ってみてください。炙りに使うガスバーナーがないときは、湯引きでもOKです。酢飯を作って炙ったオジサンの刺身を握り寿司にする食べ方も絶品です。
火を通して食べる
オジサンは火を通すのも美味しい食べ方のひとつです。煮る、焼く、蒸すなど、しっかり火を通した食べ方は刺身とは違った身や皮の食感を愉しむことができます。揚げ物や煮物、ムニエルなど、癖のない白身魚なので、どんな食べ方でも美味しく食べることができます。
オジサンのおすすめレシピ
刺身でも火を通しても美味しい、名前の由来も面白い高級魚のオジサン。住んでいる地域によってはなかなか手に入りにくい魚かもしれませんが、手に入った時にはぜひ色々な食べ方で愉しんでみてください。美味しく食べられるオジサンのおすすめのレシピ6選をご紹介します。
オジサンの湯霜作り
高級魚オジサンの湯霜作りは、下処理したオジサンを3枚におろし、腹骨と中骨を取り除きます。氷水と熱湯を用意し、皮を下にしてキッチンペーパーをかけ、上からそっと熱湯をかけてすぐに氷水で冷やし、一口大にカットして完成です。
オジサンのカルパッチョ
名前の由来も面白い高級後のオジサンはカルパッチョもおすすめです。下処理し、3枚におろしたオジサンは皮を挽いて薄めの削ぎ切りにします。
削ぎ切りした刺身を皿に綺麗に並べ、上から全体にソースを回しかければ完成です。以下ソースの分量をご紹介します。魚の大きさや量に合わせて調整してください。
ソース材料
- オリーブオイル:大さじ1
- レモン汁:大さじ1
- 塩昆布のみじん切り:大さじ1
- 胡椒:少々
- 塩:少々
オジサンのムニエル
刺身も美味しい高級魚のオジサンですが、ムニエルも絶品です。下処理して三枚におろし、中骨を取り除いたオジサンは、更に半分の大きさにします。皮はそのままでOKです。両面に塩コショウをし、小麦粉をまぶします。
フライパンにバターを溶かし、十分熱したらオジサンの皮面から焼きます。焼き色が付いたら、反対側もカリッと焼き上げ、皿に盛ってパセリを散らしたら完成です。バターがない場合はオリーブオイルや他の油でも十分美味しくできます。
材料一匹分
- 塩コショウ:少々
- 小麦粉:適量
- バター:適量
オジサンの煮つけ
高級魚のオジサンは煮付けも絶品です。淡泊な白身魚ですが甘辛いタレが絡みご飯もすすみます。皮は旨味もありますが、煮付けるとプルプルとした食感も愉しめます。
鍋に魚と調味料をすべて入れて20~25分位、途中表裏を返しながら煮付けます。途中、タレを回しかけながらゆっくり味を染み込ませます。オジサン一匹分のタレの材料をご紹介します。
材料一匹分
- 醤油:大さじ1
- 麺つゆ:大さじ3
- みりん:大さじ3
- 水と酒:100mlずつ
オジサンの清蒸魚
オジサンの清蒸魚をご紹介します。清蒸魚とはチンジュンユイと読み、姿蒸しのことです。しっかり蒸しあげた魚に白髪ネギ、ゴマ油をかけて仕上げます。
ふわっとしたオジサンの肉質が癖になるおすすめのレシピです。蒸すことで旨味も凝縮され、オジサンの美味しさを思う存分堪能できます。
オジサンはウロコと内臓を取り除きます。生姜の1かけは薄切り、もう1かけは千切りにし、薄切りしょうがの方はオジサンの腹の中に入れます。魚全体に紹興酒をふりかけ蒸し器で15~20分程蒸します。
白ネギを千切りにし、水に10分程さらしキッチンペーパーで水気をふいておきます。ナンプラー以下の材料を全て混ぜ合わせタレを作ります。
蒸しあがった魚にタレをかけ、白髪ネギをのせたらゴマ油を煙がでるまで熱し、全体に回しかけます。この時、ゴマ油に火が付かないように注意しましょう。
材料一匹分
- しょうが:2かけ
- 紹興酒:大さじ2
- 白ネギ:15cm
- ゴマ油:大さじ2
- ナンプラー:大さじ1
- シーズニングソース:大さじ2
- 砂糖:小さじ1~2
- 鶏ガラスープ:小さじ1
オジサンの油淋鶏風
名前の由来も面白いオジサンの油淋鶏風をご紹介します。柔らかい白身がサクサクの衣に包まれて何とも美味です。
作り方は、三枚におろしたオジサンの腹骨を削ぎ切りし、中骨に沿って包丁を入れ骨を切り取ったら、一口大にします。
塩、胡椒、紹興酒をまぶして10分程おき、その間にタレの材料を全て混ぜ合わせておきます。10分後、魚に片栗粉をまぶしたら170℃の油で揚げます。
材料2人分
- オジサン:半身
- 白ネギみじん切り:2分の1本
- しょうがのみじん切り:1かけ
- にんにくのみじん切り:1かけ
- 醤油:大さじ2
- 酢:大さじ2
- 砂糖:大さじ1
- 水:大さじ1
オジサンは刺身でも火を通しても美味しい高級魚
いかがでしたでしょうか。おじさんに似ていることが名前の由来になっている高級魚のオジサンは、刺身はもちろん、火を通しても美味しい魚です。内臓を上手に処理して色々なレシピでぜひ美味しいオジサンを堪能してください。
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