ブータンの基本情報
今回は「ブータン」という国の国旗にスポットを当ててご紹介させていただきますが、まずは「ブータン」がどのような国なのかをはじめに知っておきたい、という方も多いでしょう。「ブータン」が世界のどの辺に位置する国なのか、どのような由来や歴史をもつ国なのか、また何語が第一言語なのか、宗教は何なのかなど、まずは色々予習していきましょう!
ブータンの位置・場所
まず初めに知っておきたい「ブータン」の情報は、何と言っても「どこにある国?」という事ではないでしょうか。
今回ご紹介する国旗の国「ブータン」は、簡単に説明すると、チベット自治区の下、そしてインドの上にある小さな小さな国です。
「ブータン」はどれくらい小さな国かというと、日本の九州ぐらいの大きさしかありません。とても小さな国ではありますが、非常に幸福度の高い「幸せの国」と呼ばれています。
ブータンの歴史
その国の国旗には、その国が歩んできた歴史が色濃く反映されているものですが、「ブータン」という国の歴史は一体どのようなものなのでしょうか。
一説によると、「ブータン」という国は、紀元前の約4000年前からすでに人が住んでいたと言われているのだそうです。
しかし、19世紀から20世紀にかけておきた自然災害などでその証拠となる文献はほとんど失われてしまったそうです。
そのため、「ブータン」の歴史は伝説や昔から伝わる神話や民話などを頼っている部分が大きいそうです。ですが、「ブータン」の国旗にも描かれているように「雷龍の国」と言われる「ブータン」には、そういった神秘的な歴史要素があるというのも、多くの観光客が心惹かれる理由なのかも知れません。
ブータンの宗教
雷龍の国「ブータン」の宗教は、チベット仏教です。「ブータン」に仏教が伝来したと言われているのが7〜8世紀ころではないかと言われているそうです。
「ブータン」の宗教は、国で定められたチベット仏教ですが、民族によって派閥が大きく分けて3つあると言われています。
チベット仏教は日本と同じ「大乗仏教」ですが、伝来したルートが違います。日本に入ってきた仏教はインドから中国へ、そして日本へ伝来したため、中国色に変換された仏教が入ってきたそうです。
一方「ブータン」のチベット仏教は、インドから直接伝来したために、インドで始まった仏教の教えが色濃く残り、幅の広くインドの教えを取り入れた仏教になっているのだそうです。日本でも「山には山の神様がいる」という山岳信仰という教えがありますが、「ブータン」でも自然の形あるものすべてに崇拝の念を抱いているのだそうです。
ブータンの言語
チベット自治区の下にあり、インドの上にある「ブータン」では、チベットの方言にあたる「ゾンカ語」という言語が公用語となっています。
公用語はゾンカ語、と定められてはいますが、実は「ブータン」の国内ならどこでもゾンカ語が通じるわけではないのです。
元々、「ブータン」には公用語というものがありませんでした。しかしゾンカ語が「ブータン」の公用語として定められた由来は、70〜80年代以降の「ブータン」の近代化強化やアイデンティティ強化の為の一つだったそうです。
比較的「ブータン」の中で話す人が多かったゾンカ語を公用語と定めたそうですが、地域によって話す言語が異なり、24もの言語が「ブータン」には存在するそうです。中ではゾンカ語よりも英語やネパール語、ヒンディー語の方が通じるという地域もあるそうです。
ブータンの国旗の特徴や意味
では、「ブータン」という国の歴史や場所、宗教や言語といった基本を調べたところで、次は「ブータン」の国旗の特徴や意味などが気になる方も多いでしょう。
「ブータン」の国旗は、鮮やかな色合いと、その「雷龍の国」と言われる所以ともなる架空の生き物「龍」が印象的な国旗となっています。では、その国旗の意味や由来を紐解いていきましょう!
ブータンの国旗の色の意味
まず「ブータン」の国旗で目をひくのは、やはり鮮やかな色合いです。半分に塗り分けられた左上部分のサフラン色は「国王の権威」を意味します。
そして右下のオレンジ色はチベット仏教の信仰と、宗教的実践という意味があるそうです。「ブータン」は正式には「ブータン王国」と言う名の通り、国王が存在する国です。
2019年現在では「ブータン」は立憲君主制となっていますが、1907年から2008年までの間は絶対君主制と言う制度が取られていました。
しかし国王の絶対的権力と言う物を自ら少しずつ縮小して現代の「ブータン」へ導いたのは、前国王の第4代ジグメ・シンゲ・ワンチュク国王でした。そして退任した現在でも国民から尊敬され、愛され続けているのだそうです。
ブータンの国旗の龍の意味
続いては、「ブータン」の国旗の真ん中に、とても印象的に力強く描かれた「龍」についてご紹介いたします。
「ブータン」の国旗に描かれた龍は、真っ白な色をしています。その白い色で描かれた龍にもきちんとした理由があるのです。
力強く描かれた「ブータン」の国旗の龍の白い色には「清浄と忠誠」と言う意味が込められているのだそうです。
ブータンの国旗の龍が持っているものは?
雷龍の国「ブータン」の国旗に描かれた龍の手足は、よく見ると何かをしっかりと掴んでいます。その何かとは、実は宝石なのだそうです。
宝石の意味は、もちろん他の何者でもなく「富」を象徴しています。龍の白い色は「清浄と忠誠」を、そしてその龍が掴む宝石は「富」を意味すると言うのが、「ブータン」の国旗に隠された深い意味だったのです。
ブータンの国旗の歴史や由来
続いては、「ブータン」国旗や歴史、現在の「ブータン」の国旗にいたるまでの経緯などをご紹介いたします。
複雑な歴史がある国であればある程、国旗のデザインが頻繁に変わったりするものですが、「ブータン」の国旗が現在のデザインに落ち着くまでにはどのような経緯があるのでしょうか。
ドゥルク・ユル(雷龍の国)に由来するブータンの国旗
「ブータン」は「雷龍の国」と言われる事からもわかるように、「ブータン」にとって龍はなくてはならない存在です。
その龍が描かれた由来の一つに、ブータンにとって非常に影響力の強いチベットの人々が「龍の地」と「ブータン」を比喩した事が挙げられます。
そのほかにも山に囲まれた「ブータン」ならではの由来もあります。雨季になるとモンスーンがベンガル湾からヒマラヤ山脈に向けて吹き抜けてきます。その時に起こる激しい雷が、山間に轟く龍の声に聞こえたと言う事です。
東洋ではしばしば龍は神様の化身であったり、権力を象徴する生き物であったりしますので、そういった意味でも「ブータン」の国旗にぴったりだったのかもしれません。
昔のブータンの国旗の龍は逆向きだった!
現在の「ブータン」の国旗に描かれている龍は右側を向いていますが、実は1949年から1956年の間に「ブータン」の国旗として使用されていたデザインは、今とは違いました。
その頃の「ブータン」の龍は現在の向きとは逆の左向きでした。また、1949年に国旗が変わる前までは黄色一色の国旗に龍が描かれたものが使用されていました。
そして現在のデザインに近い黄色と赤色の2色に右向きの龍が描かれた国旗は、1956年から1969年まで使用されましたが、まだ現在の国旗とは違うデザインでした。
そして1969年になると、現在の「ブータン」の国旗として使用されているデザインに移り変わったのだそうです。
ブータンの国旗の色の変化
前項でお伝えした「ブータン」の国旗の移り変わりですが、実は変化していっているのは龍のデザインだけではなかったのです。
初めは黄色一色に左向きの龍が描かれた物が使用されていたとご紹介いたしましたが、その後の2色に塗り分けられた国旗になってからも、現在の「サフラン色とオレンジ色」とは少し違いました。
現在の色になるまでの国旗は、サフラン色も今より少し暗めの色合いが採用されていて、オレンジ部分はオレンジではなく赤が使用されていました。国旗のデザインの変化とともに、色もまた変化していっているのです。
ブータンは幸福な国って本当?
今回ご紹介する「ブータン」と言う国は、国のGDPではなく、GNHを重視する国であると言う事を念頭に置いておくことが大切です。
GDPとは「Gross Domestic Product」国内総生産の略、そしてGNHは「Gross National Product」国民総生産の略となっています。
GDPと言う一定期間で発生した国内の収入よりも、GNHと言う一定期間に国民が手にした収入を重要視すると言う国の方針が、国民の心の豊かさを作っているのでしょう。
日本に比べればもちろん不便な事も沢山ありますが、「ブータン」の国民達は色々な物を持っていることが幸せなのではなく、人として当たり前の生活が送れることが幸せなのだ、と感じているのです。
神を信じ、国王を尊敬し、無償で医療や教育を誰もが平等に受けることができる国の福祉への手厚さなどが、国民へ幸福感を与え続けているのでしょう。
ブータンの国旗に似ている国旗
では続いて、今回ご紹介している「ブータン」の国旗に似ている国旗をご紹介いたします。世界には一見同じような国旗がたくさんありますが、「ブータン」と似ているのはどの国の国旗でしょうか?
もしかしたら、その国の歴史やその国旗のデザインの由来も似ているのかもしれません。では、気になる「ブータン」の国旗に似ている国をご覧ください!
赤い竜が描かれている「ウェールズの国旗」
実は、「ブータン」のように龍が描かれている国旗は「ウェールズ」の国旗でした。白と緑に塗り分けられた国旗の真ん中には、大きくて真っ赤な龍が描かれています。
この龍が描かれた由来は、歴史上の昔の王たちが龍をモチーフとして使用していたから、マーリンと言う預言者の予言で、赤い竜が出てきたからなどの由来があるようです。いずれも「ブータン」の国旗の由来とは少し意味が違っている印象を受けますが、龍をモチーフとしているといった点では似ていると言えるかもしれません。
うろこが細かいブータンの国旗は世界的にも複雑な国旗の1つ!
私たち日本の国旗は、白地に赤い丸が一つと言う非常にシンプルなデザインですが、世界には自分の国の国旗を描いてみなさい、と言われてもなかなか正確に書くことが出来ないのでは?と言うほど複雑な国旗が数多くあります。
今回ご紹介した「ブータン」の国旗もそのうちの一つと言えるでしょう。鱗が何枚あるか、手足の位置はどうなっているかなど、なかなかすぐには覚えられそうにありません。
デザインが複雑な世界の国旗を紹介
ではここで、世界の国旗で複雑なデザインが採用されている国の国旗をご紹介していきましょう。
もちろんその複雑な国旗の意味や由来、歴史などを知れば、「なるほどな」と納得することができるでしょう。
アルバニアの国旗
アルバニアの国旗は、真っ赤な国旗の上に、双頭のワシが中央に力強く描かれています。一見シンプルにも見えますが、ワシのデザインは非常に細かく美しさを感じられます。
時代の流れによって、そのデザインが少しずつ変化はしていますが、ベースとなる双頭のワシは変わらないようです。
このワシは、15世紀にオスマン帝国から一時的に独立を勝ち取った際に活躍した英雄「スカンデルベク」の紋章にちなんだものなのだそうです。
カンボジアの国旗
続いては、日本人からも観光旅行先として人気の「カンボジア」の国旗をご紹介いたします。カンボジアの国旗に使われている色は、青と赤、そして白です。
カンボジアの国旗には、カンボジアといえば「これ!」と言うくらい歴史的にも貴重な遺跡「アンコール・ワット」が描かれています。
その国の国旗を知らなくても、アンコール・ワットが描かれた国旗をみたらすぐに「カンボジアの国旗」とわかるかも知れません。
スリランカの国旗
スリランカの国旗は、パッとみただけで非常に複雑なデザインをしています。使用されている色も4色で、描かれているライオンも細かく描かれています。
赤地に描かれたライオン(シンハ)は、シンハラ族の象徴だそうです。緑とオレンジの帯の色は少数派のイスラム教徒とヒンドゥー教徒を意味しているのだそうです。
また、ライオンの周りに描かれた菩提樹の4枚の葉は、多数派の仏教徒と言う意味が込められているのだそうです。
モンテネグロの国旗
最後にご紹介する複雑なデザインの国旗は、モンテネグロの国旗です。こちらは、国旗のデザインを見ながら真似して描いたとしてもなかなかうまく書けないかもしれません。
黄金のような黄色で縁取られた国旗の中には、上品な赤い色を背景として、双頭のワシ、王冠、そしてライオンが描かれています。
1797年までヴェネツィア共和国に属していたモンテネグロの国旗には、ヴェネツィア共和国の象徴である「聖マルコ」のライオンが描かれています。
国旗を通してブータンの国を知ろう!
今回ご紹介した「ブータン」は、神秘的な国とも言えるかもしれません。国旗からもその神秘的な雰囲気が受け取れるでしょう。世界一幸福な国、と言われる素晴らしい「ブータン」には、今日も世界中から多くの観光客が訪れています。もちろん日本人からも人気の場所ですので、「ブータン」へ訪れての国旗の意味を直に感じてみるのもおすすめです!