キルギス人と日本人は似てる?
日本人がキルギスを旅行する時、現地のキルギス人と間違えられて話しかけられるという光景がしばしばあるそうです。
「キルギス人と日本人は顔や見た目が良く似てる」と言われていますが、そればかりでなく、遺伝子や性格にも共通性があるようです。
ここではそんなキルギスと日本、両国の共通性について、キルギス人、日本人、それぞれの祖先や「似てる」と言われるポイントなどの情報を交えながら紹介します。
キルギスと日本には似た神話があり共通点が多い
キルギスと日本には、古(いにしえ)の祖先の時代からそれぞれ似た神話が存在してきました。キルギスの神話では、「キルギス人と日本人は兄弟で、肉の好きな人がキルギス人となって残り、魚の好きな人が海を渡って日本人となった」というものです。
一方、古事記や日本書紀に代表される日本の神話では、「弟の山雪彦は獣を獲り、兄の海雪彦は魚を捕っていた」というもので、「どちらの神話も似てる」と言われるのは頷(うなず)けますし、キルギス人と日本人は顔や見た目も良く似ています。
キルギス人と日本人が似てる理由
「キルギス人と日本人が似てる」と言われることにはそれなりの理由があります。日本人の祖先は古代セム系ユダヤ(イスラエル)人であった」という説があります。これは日ユ同祖論という説ですが、古代セム系ユダヤ人はシルクロードを通って日本に来たと言われており、その道すがら、キルギスに移り住んだ人と日本に渡った祖先がいるという説もあります。
実際に、日本の天皇家の菊家紋がイスラエルの壁画に残っており、逆に、日本の神社にイスラエルのマークが残されているという事例があり、それらの事実からも、日ユ同祖論は真実性が高いことが裏付けられています。
祖先のルーツが同じという噂もある
以前は、「日本人の祖先は縄文人だ」という説が強かったのですが、近年の研究成果では、この説が後退しています。
先述の「イスラエル人がシルクロードを歩き、途中で中央アジアのキルギスに定住した人と海を渡って日本人となった人がいる」という説は、キルギス人の間でも信じる人が多く、「大昔にはキルギス人と日本人の祖先は兄弟だった」と伝えられているようです。
キルギスとはどんな国か
それでは、「日本人と似てる」と言われるキルギス人が住み暮らすキルギスとはどんな国なのでしょうか。
キルギスの正式名称は「キルギス共和国」です。通称キルギスは中央アジアに位置する旧ソビエト連邦の共和制国家で、首都はビシュケクです。
「中央アジアのスイス」とも呼ばれるキルギスは、日本ではあまり知られていませんが、広大な大自然が広がり、温暖な気候とも相まって、秘かな観光地としての人気が高まりつつあります。
キルギスでは、国民の7割がキルギス人で、他の3割は、ロシア人やウズベク人など、40以上の部族からなります。
キルギス人はどんな人々か
多くのキルギス人は日本に対して友好的で、日本人に対しても関心が強く、親日派の人が多いようです。それには次のような理由があります。
キルギスは、1991年にソビエト連邦の崩壊とともに独立しましたが、それまで援護を受けてきた母体が消滅したため、経済的に大変困窮しました。1992年、その窮状を知った日本は、キルギスと外交関係を結び、多大な援助をスタートさせました。
これがキルギス人に親日派の多い理由の1つですが、それ以前にも、第二次世界大戦で旧ソ連の捕虜となった日本人たちがロシア自治区であったキルギスに連れてこられた際、その捕虜たちの親切で慎ましい態度に接したキルギス人たちが、日本人に対して尊敬の念を抱くようになったことも親日家の多い理由に挙げられています。
キルギスは中央アジア諸国の中では民主的な国
キルギスは、1991年にソビエト連邦が崩壊すると同時に誕生した共和制国家で、同時期に独立を果たしたカザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンとともに中央アジアを形成しています。
独立当時キルギスタンと呼ばれていたこの国は、その後キルギス共和国に国名を変えましたが、その大自然や湖に恵まれた地形から「中央アジアのスイス」とも呼ばれており、中央アジアの国々の中で最も民主的な国家と言われています。
日本人はビザなしで入国できる
日本人からも親しまれているキルギスは、中央アジアの中ではビザ無しでも入国できる唯一の国ですが、直行便が無く、何回か乗り継ぎをしないと入国できないというデメリットがあります。
首都ビシュケクは標高800メートルの高地にあり、東京などの気候と比べるとかなり寒い気候となります。日本人の給料の5分の1以下と言われるキルギスでは、物価の安さでも定評があります。
キルギス人は中国55少数民族の一つ
キルギス人はキルギス共和国を中心として中央アジアに暮らすテュルク系民族で、彼らは自らを「クルグス」と呼んでいます。
キルギス共和国には約260万人のキルギス人が暮らす他、周辺である旧ソビエト連邦から独立した国々や、中国の新疆ウイグル自治区などにも数十万人に及ぶキルギス人が住んでおり、中国55少数民族の1つにも数えられています。
国家語はキルギス語
キルギスの言語は国家語であるキルギス語で、クルグス語とも呼ばれています。また、旧ソビエト連邦の1部であったキルギスでは、ロシア語も公用語となっています。
キルギス語の文字は、キリギス国内ではキリル文字が使用されており、中国の新疆ウイグル自治区ではアラビア文字が使われています。それ以外の国や地域では、一般的にはキリル文字かアラビア文字のどちらかが使われています。
料理は羊肉・馬肉・牛肉が多い
キルギスでは、お客様を自分の家にお招きして、料理でもてなしをするのが美徳とされているようです。その時に捌(さば)かれる肉は羊肉や馬肉、牛肉が多いそうです。
キルギスの代表的な料理としては、うどんのような茹で麺に肉とトマト、タマネギなどを煮込んで作られたスープをかけて味わう「ラグマン」が良く知られており、レストランや食堂でも探すことができます。
また米を肉やニンジン、タマネギなどと一緒に炊き上げる中央アジア風炊き込みご飯「パロー」も良く出されるおもてなし料理の1つです。
その他にも、スパイスで味付けをした羊肉や牛肉の串焼き「シャシリク」はハイキングなどで良く使われる夏の定番料理です。また、辛くて酸っぱい冷麺「アシュラン・フー」も、キルギス以外では味わえない夏に人気の料理です。
キルギスの治安
キルギスでは、殺人や強盗、窃盗などの重犯罪、犯罪やスリ、置き引きといった軽犯罪が後を絶たないため、観光旅行などでキルギスを訪れる場合は、最深の注意が必要です。
外務省のデータによれば、キルギスは、エリアによっては「危険レベル3」つまり「渡航は止めて下さい」という指示が出るほど危険度の高い国となっているため、旅行を計画する前に現地情報をしっかりチェックしておくことをおすすめします。
暴力・強盗がある
キルギスの犯罪件数は、年間30000件と言われており、暴力や強盗などの重犯罪が起きる可能性も十分あります。
昼間は治安の良いところでも夜になると一変することが多いため、夜の一人歩きや不必要な外出は避けた方が無難です。
窃盗が多い
キルギスでは、スリやひったくりなどの窃盗による軽犯罪も頻繁に起こっています。特に日本人を含む観光客は、そのターゲットになりやすいため注意が必要です。
窃盗が行われる場所としては、公共の交通機関やお土産物などが並ぶバザールなどでの被害が多く見受けられるため、多額の現金や高価なバッグなどは持ち歩かないようにすることが大切です。また、移動中のバスの中では、バッグを背負わないで前に抱えるような工夫が必要となります。
偽警察による窃盗もある
キルギスの首都ビシュケクのバザールで起こった事件の1例ですが、現地の警察官から職務質問され、所持品のチェックをされた際に、持っていた現金が抜き取られたという事件がありました。これに似た事件は多発しているようです。
もし、観光をしている際に警察官から声をかけられたら、まず、その人が本物の警察官かどうか確かめるため、身分証の提示を求めることをおすすめします。
観光客・女性の1人歩きは危ない
キルギスでは、日中でも女性の1人歩きは控えた方が無難です。日本では、1人旅による海外旅行を計画している女性が多いようですが、海外の事情を深くリサーチしないで、日本の治安を基準に行動する安易な女性がまだまだ多いようです。
日本ほど安全な国は他にはありません。特にキルギスは、犯罪が頻繁に起きる国であることを十分自覚する必要があります。
誘拐婚の風習が残っている
キルギスでは女性を誘拐して結婚を迫るという誘拐婚(アラ・カチュー)の風習が現在でも残っています。
誘拐婚は、結婚したいと思っている男性が、ある女性に狙いを絞り、誘拐して自分の家に連れて行き、結婚を申し込むというもので、付き合っているガールフレンドの場合もあれば、会ったことがない女性の場合もあります。中には、他に付き合っている彼氏がいながら違う人に誘拐される女性もいます。
連れてこられた女性は泣き叫んで抵抗する場合が多く、それを年配の女性が説得する例が一般的です。家に連れ込まれたことで清純さを失ったと見做される女性たちは、ほとんどが諦めて求婚に応じるようですが、中には自殺する女性もいるようです。
驚くべきことに、キルギスではこの誘拐婚が全体の6割から7割を占めているそうです。誘拐婚は法律では禁じられているのですが、警察官もキルギスに残る伝統として見逃がしている場合がほとんどのようです。
キルギス人と日本人の共通点
「キルギス人と日本人は似てる」という情報が多数ありますが、では、この2つの人種にはどんな共通点があるのでしょうか。
キルギス人と日本人は、古の祖先の時代から、どちらもモンゴロイド系の人種として存在しており、シャイなところや、集団行動を取りやすいところなど、共通の性格が見受けられます。
同じモンゴロイドという人種で顔が似ている
キルギス人は、日本人同様、黒い髪や黒い瞳、黄色の肌を持つモンゴロイドという人種に分類されています。
キルギス人と日本人は遺伝子が一致しているという説がありますが、これは遺伝子の一致している人が一部いるというだけで、全体が一致している訳ではないため、説得力のある説とは言えません。
始めはシャイ
「祖先を共にする」と言われるキルギス人と日本人の性格上の共通点は、どちらもシャイなところです。特に、初めて会った人の場合は、すぐに打ち解けて話すことが苦手な人が多いようです。
このシャイな性格は、キルギス人や日本人が属するモンゴロイドという人種特有の性格なのかも知れません。
勤勉・謙虚なところが似ている
キルギス人は、一般的には勤勉で、こつこつ真面目に仕事をしたり勉強するといった努力型の人が多いようです。
またその他にも、日本人同様、あまり自己主張を積極的にしないで、人の和を重んじる人が多いようです。
集団で行動するところが似ている
キルギス人が集団で行動することが多いのも日本人の性格と良く似ています。何か物事を決める際も、「みんながやっているから自分もやってみよう」と思って実行に移すことが多いそうです。
キルギス人と日本人の特徴の共通点について幾つか取り上げてみましたが、「似てる」ところがこれほどたくさんあるというのは、今更ながら驚きです。
キルギス人と日本人の違い
では逆にキルギス人と日本人の違うところは何でしょうか。キルギスではキルギス人が70%を占めますが、30%については、ロシア系、ウズベク系、ドイツ系、韓国系、チベット系など、40以上の種族が住んでいます。
「キルギス人は日本人に似てる」といっても、種族によってそれぞれ顔立ちも異なるため、キルギスに暮らす人の中には似ていない人もたくさんいるのです。
日本よりも時間にルーズ
キルギス人は、その育った環境によるところが多いのでしょうが、時間にルーズなところがあります。例えば、キルギス人は待ち合わせの時間に対して、2時間ぐらいは平気で遅れてきます。
また、バスが遅れることは当たり前で、発車時刻を過ぎても出発しないことがしばしばあり、そんなことにいちいち腹を立てていてはこの国で生活していけません。時間をきっちり守る日本人とはこの点で大きく異なりますが、これは文化や社会環境による違いと考えられます。
イスラム教国独自の文化がある
キルギスはイスラム教国のため、大部分の人はイスラム教を信奉しています。イスラム教の教えでは、親を敬うことが重要視されており、その意識は日本人よりはるかに強いようです。そのため、キルギスでは、親の言いつけや希望にしっかり従うという習慣があります。
特に女性の場合は、20歳を過ぎても、結婚するまでは家を出ないという慣習が強く、友達と住んだり、親と離れて1人で暮らすのは敬遠されがちです。
おもてなしに対する意識が違う
日本では、「今度1度家に遊びに来て」と言われた場合、通常は社交辞令で、実際にその人の家を訪ねることはほとんどありませんが、キルギスでは、友達や親せきの家を当たり前のように訪ねます。
そして訪ねた家では必ずと言っていいほど食事やお茶、果物などが供されます。キルギスのおもてなしは、世界でも有数の手厚さと言えます。
出稼ぎ文化がある
キルギス人の平均給与は5万円程度で、その内、アパートの家賃が3万円から4万円ほどかかります。つまり、給与だけで暮らしている人は極少数で、ロシヤやドバイ、カザフスタンなどの国や地域に出稼ぎに出る若者が多数を占めます。
キルギスの若者は、出稼ぎで得た賃金の大部分を家族に送金しています。キルギス国内のGDPの内、約4割が出稼ぎ先からの送金によって生まれています。
キルギス人と日本人は顔と真面目さが似ている
「キルギス人と日本人は似てる」と良く言われますが、この2つの人種は、顔や見た目のみでなく性格や考え方も含めて「似てる」と言われています。その理由としては、同じモンゴロイド系という人種であるところから来ているようです。
ここではそんなキルギスと日本について、歴史や祖先、「似てる」ポイントなどの情報を取り入れながら説明してみました。キルギスを訪れる折には、是非、キルギス人と日本人の共通点を探してみて下さい。