謎めいたムスタン王国について知りたい!
正直言って、ムスタン王国なんていう国、知らなかった、という方が大半ではないでしょうか。歴史の表舞台にもなかなか出てくるはずもありません。何しろ、つい最近まで外国人は入ることさえ叶わなかった、秘境中の秘境だからです。謎めいたムスタン王国についてもっとあれこれ知りたい方、必見です。
ムスタン王国とは?
ムスタン王国について随分興味が湧いてきた、という方のためにより詳しくご紹介してまいりましょう。そもそも、その聞いたこともなかったムスタン王国とはどこにあるのか、どのような王国なのか、「ネパールの秘境」なのに王国とはどういうことか。疑問をひとつずつ解消していきましょう。
ネパールの秘境と呼ばれている場所にあるムスタン王国
ネパールはアジア内陸部にある国で、南をインド、北を中国と接し、北部地域は世界の尾根とも呼ばれるヒマラヤ山脈を擁しています。首都カトマンズはネパール国内のほぼ中部、ヒマラヤ山脈の南山麓に位置します。今回ご紹介するムスタン王国は、ネパール国内でも北部、世界に名だたるヒマラヤの名峰の中へ入りこむような位置にあります。
海外旅行にはずいぶん慣れた方にとっても、秘境の旅。秘境中の秘境。それも、最近観光旅行できるようになったばかりの国です。秘境好きの旅行者にとってこれほど人気を集める要素はありません。
チベットとネパールの国境に位置している
ネパールは北部を中国と接している、とご紹介しました。今回ご紹介するムスタン王国は、中国の中でも少し特殊な地域、「チベット」地域と接しています。ムスタン王国はネパール北部、チベットとの境に位置するような場所に位置しているのです。文化的には、チベットにより近い形で伝承されています。
中国に属する、本来のチベット地域は、様々な政治的要因などで入境する際の条件が急に変更になっていたりします。そして、外部との接触が増えたことでやはり経済的にも文化的な面でも少しずつ変化してきています。
その点、今回ご紹介するムスタン王国に残るチベット文化は、鎖国政策によって、外部からの干渉も影響も少なかったために、チベットよりもチベットらしい生活を今に残しているのです。
ムスタン王国は2008年まではネパールの自治王国だった
ムスタン王国は、かつてネパール政府より高度な自治権を与えられていた文字通りの王国でした。2008年、ネパール政府の方針転換により藩王制が廃止されたことから国王が退位し、現在はネパール連邦民主共和国ダウラギリ県ムスタン郡、と区分されています。そんな大きな出来事からまだ10年も経っていない、というのは驚きです。
ムスタン王国はチベット文化が色濃く残っている人気の観光スポット
ムスタン王国は、ほんの10年ほど前まで、外国人の入国を禁ずる鎖国のような方針をとってきていました。そのため、高度に伝承されてきたチベット文化を今に受け継ぐ文化的にも大変貴重な地域なのです。そもそも、ムスタン王国の「ムスタン」とは、チベット語で「肥沃な平原」を意味する言葉なのです。
そんな古き良き伝統的なチベット文化を今に受け継ぐムスタン王国は、現在、外国からの観光客の受け入れ態勢も徐々に整い、魅力的かつ神秘的ですらある観光スポットが数多くあります。
ここからは、ムスタン王国の観光スポットについていくつかご紹介してまいりましょう。謎に満ちたムスタン王国のことを知れば知るほど、行ってみたくなります!
ムスタン王国の見どころ【旧ムスタン王国の首都ローマンタン】
まずひとつめにご紹介するムスタン王国の人気観光スポットは、かつてムスタン王国の首都だったローマンタンです。標高3760mのところにあります。富士山(標高3776m)の頂上付近とほぼ同じ標高にあるローマンタンは、都市のまわりをぐるりと城壁で囲まれた城塞都市で、かつての王宮やチベット仏教の僧院が見られ、観光客に人気があります。
古き良きチベット、チベットの外のチベットともいわれるほどにチベット文化の影響を色濃く残すムスタン王国の首都は、やはり風景のあちこちにチベットを感じることのできる素敵な街です。
1992年までは外国人の立ち入りが禁止されていたムスタン王国
鎖国政策をとっていたムスタン王国では、1992年まで実際に外国からの旅行目当ての観光客であっても、かたくなに入国を拒んでいました。ですが、外国文化が入らなかった分、チベット文化を継承した伝統的な暮らしの有りようを現在みることができています。
それにしても、鎖国政策なんて聞くと随分昔のお話と思われがちですが、1992年とは。かなり近い過去のお話です。ムスタン王国であった地域に入境できるようになってからまだ30年経っていないのです。
旅行する場合・ローマンタンへの行き方は?
さて。では、ムスタン王国のかつて首都であった街、ローマンタンへの旅行を考えた際に、まず検討しなくてはならないのがどうやって行くか、です。
交通手段については後程詳しくご紹介致しますが、ローマンタンへのアクセス方法は基本的にネパール側から訪れることが主流です。最寄りの空港は、ローマンタンから直線距離で約50km先にあるジョムソン空港で、そこからは陸路となります。
ムスタン王国の見どころ【ムクティナート】
ふたつめにご紹介するムスタン王国の人気観光スポットは、ムクティナートと呼ばれる地域です。ここは聖地としても崇められるほどの土地で、究極のパワースポットとも言えるでしょう。秘境でパワースポット。観光で訪れる人に人気なのも納得です。ムスタン王国を訪れるなら、ムクティナートは、絶対にはずせない人気の観光スポットなのです。
ムスタン王国でトレッキングにおすすめのスポット
ムスタン王国へ観光旅行で訪れる、というのはごく最近の話です。ムスタン王国が外国からの観光旅行に門戸を開放された当初は、「ムスタン王国への旅行」イコール「上級者向けトレッキング」だったのです。
ムクティナートは、ムスタン王国を訪れる人が基本的にトレッキングができる、トレッキングを好む人、と考えると、絶好のトレッキングスポットと言えることでしょう。素晴らしい景色の中、トレッキングを楽しんだ先に、聖地を訪れる、という素敵な目的地があるのですから。
ヒンズー教とチベット教にとっての聖地
ムクティナートはヒンズー教と仏教、双方の聖地と呼ばれる場所です。ヒンズー教の神、ブラフマーやシヴァとともに崇められるヴィシュヌ神が罪から解放された場所、とされている地です。
実は、ヴィシュヌ神は、仏教とも密接に関わりのある神様なのです。上座部仏教という東南アジアを中心に信仰されている仏教の宗派の中では明確に神、として出てきます。また、日本の仏教の中でも、13世紀ころの宗教家、日蓮によってまとめられた文献の中でヴィシュヌは毘紐天として登場します。
ムスタン王国の見どころ【洞窟】
みっつめにご紹介するムスタン王国の人気観光スポットは、洞窟です。洞窟と言っても、ただの洞窟ではないのがムスタン王国の秘境らしさを際立たせる要因です。
岩山などの麓を自然にくり抜かれたような場所なのではなく、意図的に、岩肌をくり抜き、洞窟としてあるのです。しかも、その人為的に作られた洞窟の場所もまた特徴的なのが、ムスタン王国の人気観光スポットである理由です。
住居として使われたと見られる洞窟の存在
ムスタン王国の、何世紀も前に人為的に作られた洞窟は、実はかつて住居として使用するために掘られた、とされています。現在は使われてはいないのですが、チベット仏教の古文書や経典などがおさめられた書庫のような洞窟もあったようです。現在も調査は進められているのですが、ムスタン王国の一帯には1万以上のこういった洞窟が存在します。
地上から50メートルのところにある
書庫や住居として使用されていた洞窟、というのならばそれほど珍しいものとは思われないかもしれません。が、ここ、ムスタン王国の洞窟は、その場所が謎のままなのです。なんと断崖絶壁の上部にあるのです。地上から50mの断崖絶壁に、どうやってそんな洞窟を掘ったのか、住んでいたのか、書物を収めたのか。すべてが未だ解明されていない謎です。
そんな謎に満ちた洞窟です。せっかくはるばるムスタン王国を訪れるのであれば、見ないわけにはいきません。ここもまた、秘境にある謎に満ちた、はずせない人気の観光スポットのひとつなのです。
ムスタン王国【日本からの行き方】
実際に、ネパールの秘境と言われるムスタン王国へ行くにはどのようなルートを辿るのでしょうか。先の、「首都ローマンタン」の項でも少し触れましたが、途中から陸路、となるのがが秘境と言われる一番の理由かもしれません。とにかく、行くことがすでに冒険の始まり、のようなイメージと思って頂くと良いでしょう。
バンコクを経由してネパールのカトマンズに入る
日本からまずはネパールの首都カトマンズを目指します。カトマンズまでは直行便がありません。カトマンズへ向かう方がよく利用されるのはタイの首都バンコクを経由するタイ国際航空を利用するルートです。日本各地からバンコクへのフライトは運航していますので、あとはバンコク発カトマンズ行きのフライトとの乗り継ぎ時間を検討することになります。
タイ国際航空のサービスには定評があり、乗継に利用するバンコクのスワンナプーム国際空港も、非常に巨大なハブ空港としての機能を有する利便性の高い空港として有名です。
カトマンズ→ポカラ→ジョムソン空港
カトマンズに到着後は、さらに空路で移動が続きます。ネパールの国内線を利用してポカラへ向かいます。ポカラはヒマラヤの山々へのトレッキングのベース地として、また山間の美しい湖をたたえるリゾート地としても有名な街です。
ポカラからはさらに飛行機を乗り継ぎ、ムスタン王国最寄りのジョムソン空港へと向かいます。ここまで、カトマンズからジョムソンまでの空路は、ネパール国内線の大手航空会社、イエティ航空会社が運航しています。ただし、地理的に気象条件も厳しく、なかなか予定通りのフライトが飛ばないこともあります。
ジョムソン空港から歩いてムスタン王国
ジョムソン空港に到着したら、ムスタン王国でしょうか。いいえ、違います。ここからさらに陸路なのです。しかも、トレッキング。要は徒歩でムスタン王国へ向かうのです。ムスタン王国自体が標高の高い地域にあるため、高山病予防の観点からも時間をかけて少しずつ高地に体を慣らしながら進みます。
ジョムソン空港から徒歩でムスタン王国へ向かう場合は、移動に最低5日はトレッキングにかかっていました。当然のことながら、旅行者のみでそれだけの距離を行けるはずもなく、専門のガイドに依頼することになります。以前は、悪路であったこともあり、入境手段はこの徒歩でのトレッキングか、ホーストレッキング(乗馬)のみでした、
現在では道路の舗装が進み、四輪駆動車での往来が可能となっています。が、高地順応は必須のため、直行できる、というわけではないことをご理解ください。
秘境好きの方にとっては、このムスタン王国へのハードル高い移動ルートも人気のひとつなのでしょう。総じて言えることは、とにかく、かなり日程的に余裕を持った旅行を計画することが大切です。
名立たる世界の名峰に抱かれるムスタン王国
ムスタン王国のあるネパール奥地は、世界の尾根と言われるヒマラヤ山脈にあります。そもそもネパールの国土全域がヒマラヤ山脈の一部といっても過言ではありません。そんなムスタン王国周辺は、観光客にも登山家にも人気の、世界的に有名な名峰がずらりと並ぶ雄大な景色を望める地域なのです。
ただし、常に注意を払わなければならないのが高山病です。標高が高い地域に順応していないまま訪れることで現れる様々な体調不良の症状ですが、治療が遅れると命にかかわることもあります。
ここまでご紹介してきたムスタン王国が、どれほどの高所か知ったうえで再度当記事を読んで頂くとより実感が湧くかもしれません。
ダウラギリ山群
かつてムスタン王国であった地域は、現在、ネパールのダウラギリ県ムスタン郡と呼ばれます。ムスタン南西方向にはダウラギリ山群が形成され、その最高峰は8167mで、世界第7位の高さです。ダウラギリとはサンスクリット語で「白い山」という意味を持ちます。
世界でも登頂がとても困難と言われる山のひとつで、急な斜面や強風など、登山技術もかなりの非常に高度なレベルを要する登山になりますが、登山家憧れの人気の名峰なのです。
アンナプルナ山群
ムスタンの東側地域に位置するのがアンナプルナ山群です。アンナプルナはサンスクリット語で「豊穣の女神」を意味しています。
第一峰は8091m、世界第10位の山です。ヒマラヤ山脈に属する連峰のひとつで、ダウラギリと同様、非常に登頂が難しい山であることでも有名です。北側斜面は雪崩が多く発生し、南側は技術的に大変な困難を要する大岩壁となっており、世界中にある8000m級の山々の中でも最も登頂者数の少ない山です。
ネパールの秘境・ムスタン王国へ観光旅行しよう!
ネパールの秘境、ムスタン王国について様々な情報をご紹介してまいりましたが、いかがでしたか?大自然に抱かれるように存在するムスタン王国は、世界に名だたる名峰を望む、独特な文化を今に残す素晴らしい観光スポット満載の地なのです。秘境好きな方には、ぜひともおすすめしたい旅先のひとつです!