日本の面白いお祭りに参加しよう
日本では古来より、種々の地域において様々な形式のお祭りが行なわれて来ました。秋田竿燈祭りのように全国的に知られ、国の重要無形民俗文化財に指定されているような歴史のある祭りもあれば、競い合って大切なものを奪い合うような勇壮な裸祭りなどもあります。ここでは、日本各地にある、意外性を持つ奇想天外な祭りや面白い祭りに的を絞って御紹介したいと思います。
日本の面白い祭りその1:御柱祭
御柱祭りは長野県諏訪市で行なわれる祭りで、諏訪大社最大の行事です。正式には「式年造営御柱大祭」と云い、長野県指定の無形民俗文化財に指定されています。諏訪大社は諏訪湖の周辺4カ所にお宮を持つ神社で、信濃の国一の宮です。全国各地にある諏訪大社の総本社であり、国内にある最も古い、歴史ある神社の一つとされています。
山の中から選ばれた16本のモミだけが御柱となり、里に引き出され、7年毎の寅と申の年に諏訪大社の四隅に建てられます。諏訪と茅野の市街地の外れに上社があり、諏訪湖畔の下諏訪に下社があります。16本の巨木は、上社本宮、前宮、下社春宮、秋宮4か所にそれぞれ4本ずつ立てられます。
宝殿を造り変え、御柱を選び、山から曳いてきて境内に立てるまでの一連の行事が御柱と呼ばれています。山から切り出した巨木を氏子たちが人力で曳くのですが、この「山出し」の神事では、男たちが巨大な丸太にまたがって急斜面を下りたり、裸で川を渡ります。大変勇壮な行事ですが、同時に毎年のように死者がでるほど危険を伴う神事となっています。
日本の面白い祭りその2:鍋冠祭り
鍋冠(なべかぶり)祭りは滋賀県米原市にある筑摩神社で行なわれるお祭りです。日本三大奇祭の一つに数えられ、米原市の無形民俗文化財に指定されています。平安時代の「伊勢物語」にも登場する「筑摩の鍋冠祭り」は1200年の伝統を持つ歴史あるお祭りで、筑摩神社の春の祭礼として、毎年五月三日に行なわれます。
7歳から8歳の少女が緑の狩衣(かりぎぬ)に緋の袴をつけ、張り子の鍋をかぶり、平安の昔を偲ばせる雅やかな姿でお旅所から神社まで練り歩きます。古来、婦女の貞操を守る祭りという説が定説ですが、一方で、筑摩神社の祭神は食物を司る神々であることから、神前に作物などを供えるとともに、近江鍋と呼ばれる特産の土鍋を貢物としたのが鍋冠祭りの始まりではないかとも言われています。
日本の面白い祭りその3:キリスト祭り
青森県三戸郡新郷村にキリストの墓と呼ばれるお墓があります。そしてイエスの霊を慰めるキリスト祭りが、毎年6月の第一日曜日にキリストの里公園で開催されています。「ゴルゴダの丘で処刑されたはずのキリストが、実は密かに日本に渡り、新郷村で106歳の天寿を全うした。」というキリスト渡来説があります。また、この地にやってきた研究家たちによって昭和10年にキリストの墓が発見されたということです。
新郷村では、この地で一生を終えたとされるキリストの霊を慰めるため、1964年以降キリスト祭りを行なうようになったとのことです。慰霊祭は神官による祝詞奏上、玉串奉納、獅子舞、ナニャドヤラというこの地に伝わる盆踊りの奉納という形式で執り行われます。ちょっと不思議な光景ですが、信者たちにとっては神聖な神事なのです。日本各地を探せば意外な祭があるものですね。
日本の面白い祭りその4:御田植え祭り
御田植祭は愛媛県今治市大三島にある大山祇神社の祭りです。毎年旧暦5月5日に島内13地区から選ばれた小学生16名の早乙女たちが、白衣に赤襷(あかだすき)、手甲脚絆の清楚な装いで、古式にのっとり、厳粛に田植えの儀式を行ないます。また、大祭には、一力士が、目に見えない稲の精霊と相撲を取る一人角力(ひとりずもう)が行なわれます。
大山神社は日本総鎮守と呼ばれ、全国各地に一万社余りの分社を持つ歴史のある神社で、境内中央の樹齢約2600年の神木である大楠始め、神社内の楠群は、日本最古の原始林社叢の楠群として国の天然記念物に指定されています。また、御田植祭大祭で行なわれる一人角力も、現在、愛媛県の無形民俗文化財に指定されています。このユニークで意外な行事は日本の各地で話題を呼んでいます。
日本の面白い祭りその5:悪態祭り
#愛宕神社 は思ったより立派な神社でした。あと 1 時間ぐらいで #悪態祭り の始まりです。 pic.twitter.com/ErNHAhF9AF
— Hirotoshi Okumura (@okumura1967) December 15, 2013
悪態祭りは茨城県笠間市泉の愛宕山山腹にある愛宕神社の奥社、飯綱神社で行なわれる歴史のある祭りです。この祭りは参詣人の悪口が行事最中に飛び交う「悪態祭り」と呼ばれる奇祭です。その由来については、愛宕神社は、「悪退祭り」が正しい呼び名で、怨霊や疫病を退治することから来ているとしていますが、一方で、領主が住民の日頃の不平不満を悪態の中から探ろうとしたという説もあります。
ほこらで神主さんの祈祷が終わった瞬間に、いっせいにお供え物に手を伸ばす参加者たち!ここから激しいお供え物の奪いあいが始まります…!お供え物を手に入れるとご利益があるんだそうですよ。 #悪態まつり pic.twitter.com/woE2DfbZ4A
— 地図とガイドブックの昭文社 (@mapple_twi) December 22, 2015
愛宕山には昔天狗が住んだという伝説があり、飯綱神社には十三天狗を祀った祠があります。13人の氏子総代たちが白装束に烏帽子を着けて天狗に扮し、16カ所の祠に供物を供えます。見物客は、「このバカヤロー!」などと悪口を言い合い、天狗に邪魔されながらお供え物を奪い合います。供物を取った人や、悪態の言い争いに勝利した人には、無病息災、家内安全、五穀豊穣の御利益があるとされています。
日本の面白い祭りその6:パーントゥ・プナハ
日本一恐ろしい伝統行事!度肝を抜く沖縄の「パーントゥ祭り」とは | RETRIP[リトリップ]https://t.co/2ruf4W2PhT pic.twitter.com/4B9K5QP4DU
— Scarecrow拉致被害者の即時救出を (@Patrioticbullet) October 26, 2016
パーントゥ・プナハは沖縄県宮古島島尻地区で行なわれる悪霊払いの歴史的な伝統行事です。1993年に重要無形民俗文化財に指定されています。宮古島の歴史について書かれた「宮古島庶民史」によれば、バーン(食む)とビトゥ(人)が訛った言葉であるという説が述べられています。来訪神は3体で、選ばれた島尻地区の青年が扮します。
パーントゥとなった3人には仮面が着けられ、ンマリガーと呼ばれる泉の底から取った泥が塗りたくられた体には、キャーンと呼ばれるつる革が巻きつけられています。そしてこの3体の神様が、誰彼構わず人や家屋に泥を塗りつけて回るというもので、意外にもこの泥を塗る行為は悪霊を連れ去るという厄払いになります。かなり奇祭ですが、住民や観光客はこの祭りを大いに楽しんでいます。
日本の面白い祭りその7:六郷の竹打ち
あ。職場の先輩と、俺の地元のお祭りについて語ったのだが、画像見せるの忘れた。#六郷 #竹うち pic.twitter.com/y0SEizv84O
— nao (@15nao_) February 6, 2015
六郷の竹打ちは秋田県美郷町六郷地区で開催される行事です。この行事は2月15日に行なわれますが、オーストラリアのテレビ局が世界の危険な祭り第3位に選んだほどの奇祭です。この六郷のお祭りは2月11日に始まる六郷のかまくらから、11日の蔵開き、天筆書初、15日の竹打ち、そしてその青竹を焼く天筆焼きまでの一連の行事が国の重要無形民俗文化財に指定されている歴史のある行事です。
六郷の竹打ちは、南軍北軍に分かれ、意外にも、長い竹で本気になって叩きあう非常に危険、且つ勇猛な行事です。もともとは火で打ちあった年占いの「鎌倉竹合戦」が伝わったとも云われる福を呼ぶ行事です。竹打ちの最後の方で、書初が書かれた青竹を焼く天筆焼きが行なわれ、豊作、安全、繁栄を祈るこのお祭りもフィナーレを迎えます。
日本の面白い祭りその8:丹生祭
丹生祭は和歌山県日高郡日高町の丹生神社で行なわれる歴史あるお祭りです。丹生神社は1204年に寒川朝玄によって建てられた神社で、神楽の舞獅子などが踊る古式豊かな祭りです。この丹生祭は江戸時代から伝承されてきたもので、毎年体育の日の直前の日曜日に催されています。県の無形民俗文化財に指定されており、笑い祭りとして呼ばれている有名な奇祭でもあります。
白塗りにピエロのようなメイクを施し、赤、青、黄色の派手な衣装で、鈴を片手に「笑え、笑え」と人々に強いる鈴振りが現われます。その後に12名の枡持がみかんなどを串に刺して入れた一升枡を持ち、宮へ行列をする途中、「笑え、笑え」と囃します。また、一方で、神輿の一行が川に差しかかった時、突然担ぎ手が「永楽じゃー!」と絶叫しながら川の中へ神輿ごと飛び込みます。
この祭りの由来については神世の昔、神無月の頃、出雲で行なわれた会議に丹生都姫命(にふつひめのみこと)が遅刻してしまい、落ち込んだ姫を慰めるため、村人が「笑え、笑え」と祭りを行ない、笑顔を取り戻した姫が無事出雲へ出立したという言い伝えがあるそうです。日本各地にあまたある祭りの中でも、とりわけ意外性のあるユニークなお祭りです。
日本の面白い祭りその9:面掛行列
[御霊神社例大祭]面掛行列.①④旗竿を持つのは子供たちの役割.役目を仰せつかり子供たちの顔にも社会参加の誇りが宿る.②③並び矢筈(やはず)の家紋は、鎌倉武士団を率いた鎌倉権五郎景正とその係累の梶原氏のものである.御霊神社は権五郎景正を祭神としている. pic.twitter.com/MzDr8oWteO
— シナモン (@yamkam1020) September 19, 2016
面掛行列は神奈川県鎌倉市坂ノ下の御霊神社で行なわれる行列行事で、面をかぶった男たちが街を練り歩く奇祭でもあります。この行列は「はちみっと行列」と云われ、祭神の鎌倉権五郎景政の命日に当たる9月18日の例祭で行なわれます。鶴岡八幡宮の放生会で行なわれていた「舞楽面の面掛行列」に倣ったものとされており、神奈川県の無形民俗文化財にも指定されています。
◆鎌倉市/本日の御霊神社の面掛行列は中止です!
— 長嶋竜弘 (@nagasi) September 18, 2015
正午~例祭、13:00~鎌倉神楽、はとりおこなわれます #鎌倉 #御霊神社 #面掛行列 #例祭 #鎌倉神楽 #鎌倉市 pic.twitter.com/irTb15gw4g
面掛行列は白装束の氏子に担がれた神輿が天王唄に合わせて坂ノ下の街を練り歩く古式にのっとった行事です。行列の中心である「阿亀」の大きなお腹は、豊年、豊漁の祈願を、子を産む形に象徴させたものと云われています。源頼朝が村の娘を特に可愛がったため、その一族が力を持ち、頼朝の外出時に顔を見られないように面をつけたのがこの行列の始まりだとも伝えられています。
日本の面白いお祭りを見に行こう
日本各地には数えきれないほどたくさんのお祭りがあります。それだけ古くから各地に根をはり、民衆に親しまれ、愛されてきたかけがえのない行事と言えるでしょう。ここでは意外性のある面白おかしい奇祭を中心に取り上げてみましたが、日本の各地にはまだ他にも、意外性とおかしみを持つ奇祭が多数あります。是非そんな楽しいお祭りに出かけてみて下さい。