エルサルバドルの治安・観光の際の注意点は?
エルサルバドルは中央アメリカに位置し、公式な名前はエルサルバドル共和国といい、首都はサンサルバドール (San Salvador)です。北はグアテマラ、西はホンジュラス、南は太平洋に面した小さな国で、日本の九州の半分くらいの国土に約649万人が暮らしています。
エルサルバドルの文化はスペインと先住民の影響を強く受けており、音楽、ダンス、美術をはじめ、伝統的なアートや工芸品も人気があります。また世界遺産の「ホヤの遺跡」や美しい自然に恵まれた国立公園などの観光地があり、旅行先としても人気です。
今回はそんなエルサルバドルの治安や危険地域、旅行の際に注意したい点などについてお伝えしましょう。
エルサルバドルで多い犯罪は?
かつてエルサルバドルは南米の国々の中でも犯罪率が高く、治安が悪い国でしたが、2015年をピークに犯罪率が減少傾向にあります。犯罪率は改善されつつあり、他の南米諸国と同程度の治安と言えます。
しかし依然として一部の地域では治安が悪く、エルサルバドルを旅行する際は注意が必要です。エルサルバドルではスリや窃盗の他、殺人事件や強盗などの重犯罪も多発しています。
殺人事件
かつてエルサルバドルは殺人事件の発生率が非常に高く、治安が悪い国の一つでした。特に2014年から2018年までの5年間は、人口10万人あたりの殺人事件発生率が世界で最も高く、治安の悪い国として旅行者に敬遠されていました。
また女性を標的とする殺人事件の発生率は、中南米諸国の中でエルサルバドルが最も高く、2017年には10万人に1人が事件に巻き込まれたという報告がありました。
しかし2019年以降、エルサルバドルでは政府や警察の取り締まりによって殺人事件が減少し、治安の改善が見られています。同時に女性を狙った犯罪事件も減少しつつあります。
ホテルでの犯罪
エルサルバドルでは多くの旅行者がホテルに宿泊しますが、ホテルでの犯罪も少なくありません。宿泊中、ホテルの部屋に置いておいた現金や航空券、パスポートなどが外出中に盗まれるという犯罪が多発しています。
外出の際にしっかりと鍵を掛けたとしても、合鍵を使って部屋の中に入られてしまうこともあります。朝食を食べに出た短い時間に盗まれるということもありますので、注意が必要です。
またエルサルバドルの安宿では、部屋に置いておいた寝袋や靴なども盗まれることがありますので、持ち物はしっかりと管理するようにしてください。
路上・路線バスなどでの窃盗・強盗
エルサルバドルで外国人旅行者が犯罪に遭う場所として、市場(メルカド)、路線バス車内、ショッピングモールの駐車場などがあります。これらの場所は治安が悪くスリや置き引きが多発しており、気が付かない間に財布やスマホなどが盗まれていることがあります。
特にエルサルバドルの市場では殺人事件を含む凶悪犯罪が多発しており、治安が悪い場所の一つとされていますので、旅行の際には十分に気を付けてください。
またエルサルバドルでは、路上や路線バス車内では昼夜問わず犯罪が発生しており、治安がよくありません。そのためなるべく徒歩や路線バスでの移動は避け、タクシーを使うのがおすすめです。
ギャングによる犯罪
エルサルバドルのギャングによる犯罪は、長年にわたって治安上の大きな問題となっています。エルサルバドルには、主に2つのギャンググループがあり、犯罪活動は暴力的で広範囲に及んでいます。
特にエルサルバドルの都市部や一部の地域で深刻な影響を及ぼしており、抗争による殺人や傷害事件が頻発しているのが現状です。またギャングは路上や路線バス車内で強盗を行うことがあり、旅行者が被害に遭うこともあります。
さらにギャンググループは、ドラッグ関連の犯罪にも関与していますので、特に治安が悪いとされる地域には近づかないようにしてください。
エルサルバドルの地域ごとの特徴
エルサルバドルは治安が悪いというイメージがありますが、近年は治安が改善されており、旅行者が安心して観光できる地域もあります。ここからはそんな地域をご紹介していきましょう。
またその一方で、依然として治安が悪く危険な地域もあります。旅行者が避けたほうがいい地域もご紹介していきますので、エルサルバドルを旅行する際は注意してください。
観光ができる地域
サンタ・アナはエルサルバドル第2の都市です。標高640mに位置し比較的涼しく、治安がいいことから旅行者にも人気の地域です。美しい湖などの観光名所があり、外国人旅行者も多く、安心して観光ができます。
エルサルバドルの西部にあるアワチャパンも、治安のいい安全な地域としておすすめです。周囲には自然公園や滝などがあり、外国人旅行者が滞在するホテルも多くあります。
ウスルタンはエルサルバドルの南東部にある地域で、のどかな街並みが広がっています。治安がよく、エルサルバドルが初めての旅行者でも、安心して観光ができるでしょう。
危険な観光地
海外安全ホームページでは危険度の高い地域として、メヒカノス市やアポパ市、コロン市、ケサルテペケ市、サン・マティアス市、サカテコルカ市、シウダ・デルガード市、パンチマルコ市、アギラレス市、サンサルバドル市セントロ地区の10地域をあげています。
これらの都市の危険度はレベル2「不要不急の渡航は止めてください」ですので旅行は避けたほうがいいでしょう。またサン・ビセンテ市は危険度がレベル1「十分注意してください」になっています。
治安が悪い地域
エルサルバドルで最も治安が悪い地域は、首都のサンサルバドルです。全国の犯罪のうち3分の1がサンサルバドルで発生していると言われ、特に旧市街区(セントロ)では凶悪事件が多く起こっています。
旧市街区は教会や劇場など観光名所が多く、安宿が多く集まっているため、旅行者が多いのですが、ギャングの抗争が多発している地域なので、なるべく立ち入らないようにしてください。
またサンサルバドル周辺にあるイロパンゴ、ソヤパンゴ、デルガド、メヒカノスも治安が悪く、凶悪犯罪が多く起こっています。外国人旅行者が事件に巻き込まれるケースも多くあります。
エルサルバドルはなぜ治安が悪い?
エルサルバドルは世界で最も治安が悪い国の一つで、これまで見たように旅行をするのには危険な地域も多くあります。これほどまでにエルサルバドルの治安が悪くなってしまった理由は、どこにあるのでしょうか。
エルサルバドルのチアが悪い理由は、長く続いた内戦やギャング集団の存在、貧困問題などです。ここからはそれぞれの問題について見ていくことにします。
内戦で使用された銃が残っているため治安が悪い
エルサルバドルの治安が悪い理由の一つは内戦です。エルサルバドルでは1980年代に内戦が激化し、長い間戦いが続きました。この内戦は、政府と社会主義勢力が激突したもので、左翼と右翼に分かれ激しい戦いとなりました。
内戦は12年にわたって続き、10万人以上がなくなったといわれています。また内戦中に大量の武器が国内に流失し、内戦が終結した後も治安がよくなることはありませんでした。
さらに経済状況の停滞やギャンググループによる犯罪などの影響で、エルサルバドルの治安は、世界最悪と言われるまで悪化してしまいました。
ギャングがいるため治安が悪い
エルサルバドルの治安が悪い理由はもう一つ、ギャング集団の存在があります。エルサルバドルには「マラス」と呼ばれるギャング集団があり、エルサルバドルで起こる、ありとあらゆる犯罪に関わっているとされています。
マラスはアメリカに居住していた中米移民が結成したギャング集団で、本国に強制送還された後、存在感を強めていったものです。エルサルバドルには多くのマラスがあり、代表的なものでは18Sや18Rなどがあります。
マラスの取り締まりは厳しく行われていますが、都市部にはマラスがはびこり、治安が悪い地域が多くあります。危険な場所も多いので、エルサルバドルの旅行中は常に治安に注意してください。
貧困率が高いため治安が悪い
エルサルバドルの治安が悪い理由はまだあります。エルサルバドルは経済格差が大きく、深刻な貧困に苦しむ人が多くいます。
経済的な不平等が様々な社会的な問題を引き起こし、都市の一部ではスラム化が進んでいます。そのような地域では犯罪率が高く、治安もよくありません。
エルサルバドル政府は貧困撲滅のために社会福祉プログラムや経済支援策を導入していますが、貧困問題の改善はあまり進んでいないのが現状です。
エルサルバドル観光の注意点
エルサルバドルの治安が悪い地域や犯罪にタイプ、エルサルバドルの治安が悪い理由などをお伝えしましたが、ここからはエルサルバドルを旅行する際に注意するべき点をご紹介していきます。
ここでご紹介するのはエルサルバドルに限らず、海外旅行をする際の基本的な注意点となりますので、他の国々を旅行する際も同じように気を付けてください。
夜は一人で出歩かない
エルサルバドルは全国的に犯罪率が高く、日中よりも夜のほうが犯罪率が高くなります。夜間は薄暗く視界が悪くなるため、スリや強盗などの犯罪に遭う率が高くなります。そのためエルサルバドルでは夜の一人歩きは避けるべきです。
エルサルバドルでは旅行者が一人で歩いていると、巡回している警察官に一人歩きをしないよう注意されることがあります。それほど危険が高いということなので、出歩くのは日中だけにしておいたほうがいいでしょう。
もしどうしても外出しなくてはならない時は、徒歩ではなく近距離でもタクシーを使うようにしてください。タクシーに乗る時の注意点は、後ほどご紹介します。
観光警察がいない地域にはいかない
エルサルバドルでは、国内の19の観光名所に武装した観光警察が置かれて、周囲をパトロールしています。観光警察がいる場所では、日中であれば安全に観光を楽しむことができます。
しかし観光警察が置かれている地域は限られていて、観光警察がいない場所では旅行者を狙ったスリや強盗などが多く発生しています。観光地を訪れる際には、観光警察が置かれているかどうか確認してから出かけるのがおすすめです。
また観光警察が置かれている場所でも、夜はパトロールが手薄になります。人気の夜景スポットでも、夜間の観光はできるだけ避けたほうがいいでしょう。
無許可のタクシーに乗らない
エルサルバドルの首都サンサルバドールなど治安が悪い地域では、徒歩や路線バスは使わず、なるべくタクシーを使って移動するのがおすすめです。しかしエルサルバドルでは、タクシーを利用する時にも注意が必要です。
タクシーは必ず正規登録されたタクシーを使ってください。正規のタクシーは車体が黄色で、ナンバープレートがAから始まっています。エルサルバドルでは、白タクと呼ばれる無許可操業のタクシーも多く走っています。
しかし白タクは運転手や車両の審査も無く、運転手とギャング集団がつながっている可能性もあるので、利用は避けるようにしてください。
話しかけられた際には警戒する
エルサルバドルに限らず、海外旅行をしていると現地の人に話かけらることがあります。中には巧な日本語で話しかけられることもありますが、相手を信用して犯罪に巻き込まれるケースもあるので注意が必要です。
海外では、親切そうな人に誘われて市内観光をしてもらったが、後で法外な料金を請求されたということも起こります。また街で出会った人と盛り上がり喫茶店に行ったら、お金を巻き上げられたということもあるので、気を付けるようにしてください。
穏やかで優しい人が全て悪い人というわけではありませんが、エルサルバドルのように治安が悪い国では、話しかけられた際には警戒したほうがいいでしょう。
エルサルバドル観光の準備
ここからはエルサルバドルを旅行する前に、準備するべきことをご紹介していきます。海外旅行保険やポケットWi-Fiのレンタル、ホテルの手配など、エルサルバドルの旅行には多くの準備が必要です。
残念ながらエルサルバドルは治安の悪いので、安全に旅行をするためにはしっかりとした準備が必要となります。
海外旅行保険に加入する
エルサルバドルに限らず、海外旅行をする際は海外旅行保険に加入するのがおすすめです。特にエルサルバドルのような治安が悪い地域に旅行に行く場合は、思わぬ事態が起こる場合があります。
病気やケガをして高額の医療費を要求されたり、物を壊して損害賠償を請求されたりするかもしれません。また旅行中に盗難や事故にあったり、飛行機の遅延などが起こったりすることもあります。
海外旅行保険はそのような事態についてカバーしてもらえるもので、安心して旅行ができます。さらに海外旅行保険は日本語によるサポートを行っていて、現地の言葉が通じない場合でも安心です。
ツアーはガイド付きにする
エルサルバドルのような治安が悪い地域に海外旅行に行く際は、ガイド付きのツアーに参加するのがおすすめです。個人旅行でも、現地で参加できるガイド付きツアーがたくさんありますので、市内観光や観光地めぐりなどに利用するといいでしょう。
治安が悪く危険な地域を訪れる際は、個人よりもガイド付きツアーのほうが安心です。トラブルがあった場合でも、ガイドが仲介をしてくれることがあります。また要所を抑えた案内をしてもらえるので時間の節約にもなり、暗くなる前に戻ってくることができます。
観光客らしい恰好は避ける
エルサルバドルは、残念ながら治安が悪い国ですので、観光をする際には目立つ服装を避けるのがおすすめです。観光客らしい服装をしていると目につきやすく、犯罪に狙われやすいので危険です。
なるべく現地の人と同じような服装をするのがおすすめですが、なければTシャツやズボンなどシンプルで落ち着いた色合いの服装がおすすめです。
また女性は肌の露出度が高いと狙われる可能性が高くなります。胸元や肩を出したり、短パンなど足を出したりするような服装は避けてください。
さらにカメラやスマホなど高価なものは、人の目に触れるような場所には出さないことが必要です。特にスマホで写真撮影をする際には、周囲に気を付けましょう。
緊急時の連絡先を確認する
もしもエルサルバドルで危険な事態に巻き込まれてしまったら、慌てずに連絡をするようにしてください。エルサルバドルの緊急時の連絡先は、警察が911、救急車が2222-5155、また在エルサルバドル日本国大使館が2528-1111となっています。
また海外旅行保険のパンフレットには緊急時の連絡先が掲載されていますので、すぐに連絡ができるように確認しておきましょう。その他にも、国際電話のかけ方などをチェックしておくようにしてください。
ホテルは地域で選ぶ
エルサルバドルは治安がよくないので、ホテル選びにも注意をする必要があります。これまで見たように、治安が悪い地域ではホテル内の犯罪も多く起こっています。
首都サンサルバドールの旧市街地には安宿が多くありますが、セキュリティが悪く安心して宿泊をすることができません。エルサルバドルで宿泊をする際は、比較的安全な地域にあるホテルを利用するようにしてください。
またランクの高いホテルであれば、セーフティーボックがあったり警備員が配置されていたりと安全性が高くなります。料金が高くても防犯対策がしっかりとしているホテルを選ぶようにしましょう。
ポケットWi-Fiを用意する
海外旅行ではスマホで地図やメールをチェックすることが多いので、インターネット環境を整えておくことが大切です。エルサルバドルでスマホを利用する際は、ポケットWi-Fiをレンタルすると便利です。
エルサルバドルでは、空港やホテル、ショッピングモールなどで無料Wi-Fiが使用できますが、無料Wi-Fiには通信内容が盗まれるなど危険性が潜んでいるので、ポケットWi-Fiを使用するといいでしょう。
またエルサルバドルでは移動中や街中では無料Wi-Fiが使えないことが多く、調べものができないことがあります。常に快適な状態でスマホを使えるようにするためには、海外旅行用のポケットWi-Fiをレンタルしましょう。
エルサルバドルでの健康被害
ここからは、治安面以外で注意したい点をお知らせします。エルサルバドルは日本とは異なり、衛生事情は不良となっています。蚊を媒介とした感染症や、不衛生から起こる食中毒などが多く発生していますので、旅行をする際は健康に気を付けてください。
またエルサルバドルの病院は、医師や看護師の不足、医療機器の故障、医薬品の不足などが見られ、高度な治療を受けることができない可能性もあります。
感染症に注意する
エルサルバドルを含め南米旅行をする際は、感染症に注意することが重要です。エルサルバドルで多く見られる感染症はデング熱、ジカウイルス感染症、マラリアなどです。
デング熱はネッタイシマカなどの蚊を媒介として感染し、発熱、頭痛、筋肉痛、発疹などの症状が現れます。デング熱に有効なワクチンや治療薬はないので、蚊に刺されないように注意してください。
またエルサルバドルではジカウイルス感染症も発生しています。ジカウイルス感染症も蚊を媒介として感染し、発熱や発疹、頭痛などの症状がみられます。
妊娠中に感染すると、胎児が先天性障害を起こす可能性があるため、妊娠の可能性のある方はしっかりとした対策をしてください。
水道水に注意する
エルサルバドルの水道水には不純物が多く含まれていて、飲むことはできません。飲料や調理には市販のミネラルウォーターを使うようにしてください。
またエルサルバドルでは食中毒がよく発生していますので、外食をする際は衛生的なレストランを選ぶようにし、氷や生水を飲まないようにしましょう。
エルサルバドルは治安の悪い地域が多い
エルサルバドルは残念ながら危険な地域が多く、旅行をする際は気を付けるべき点がたくさんあります。本記事ではエルサルバドルの治安が悪い地域や比較的安全なエリア、旅行中の注意点や準備などについてお知らせしました。参考にして、安全な旅をしてください。