島根県の石見神楽を大調査
島根県は神々にゆかりのある土地として有名で、世界遺産でもある出雲大社などのパワースポットを多く有している観光地としても人気があります。「石見神楽」そんな島根県に古くから伝わる伝統芸能です。こちらではそんな石見神楽について、その歴史や演目、観覧スポット、見どころなど様々な情報をご紹介していきます。
神楽とは?
島根県の伝統芸能である「石見神楽」ですが、神楽とはいったいどういうものなのでしょうか。神楽は元々「神座」(かむくら)が語源と言われており、神座に神々を降臨させ、人間のお祓いをしたり、神と交流をしたりするための宴の場でした。その際に歌ったり踊ったりしたものが神楽の原点と言われています。
神楽が初めて日本の文献に登場したものが「古事記」や「日本書紀」に書かれている「岩戸隠れの段」という神話です。この神話のあらすじはとても有名で、スサノオノミコトの悪事に激怒した姉のアマテラスオオミカミは天の岩戸という洞窟に隠れてしまいます。アマテラスオオミカミは太陽の神ですので、世の中は闇に包まれ、退廃していきます。
そこで、退廃した世界を救うためにアメノウズメノミコトという芸能の神がアマテラスオオミカミが隠れている洞窟の前で踊ると、アマテラスオオミカミがその様子が気になり、岩の扉を開けてしまうというお話です。ここでアメノウズメノミコトが舞ったものが神楽の始まりとされています。
神楽殿について
神楽は神々のために行われますので、基本的には神社で行われるものです。そして神社の場合には神楽を行うための「神楽殿」(もしくは「神楽堂」)が神社の境内にあることも多いです。しかしながら、神事としてだけでなく、最近は日本の伝統芸能を普及させる目的で観光用に公民館などで行われたり、便宜上寺院などで行われたりします。
神社の境内に神楽殿を設置するようになったのは平安末期で、鎌倉時代には独立した神楽殿や、拝殿を兼ねるものも登場します。独立した神楽殿は正方形で、高舞台といって一段高くなっており、匂欄と呼ばれる柵がついているものもあります。神楽にとって神楽殿は非常に重要です。有名な神社の観光などをする場合にも注目のスポットになります。
石見神楽の歴史
神楽は神をまつるためのものですので、島根県の石見地区だけのものではありません。しかし石見神楽が現在の形になったのには長い歴史があります。石見神楽の原点は平安末期から室町時代です。石見神楽は元々民間信仰の農業の神様への神楽である「大元神楽」が原型とされています。この大元神楽は現在では国の指定重要無形文化財になっています。
そののち、江戸時代の中期ごろになると姫や鬼、大蛇などの面を付けて舞う神楽である「佐蛇神楽」が石見地方の伝わり、神事として始まった神楽は演劇のようになっていきました。その後、時代の流れの中で神聖なものであった神楽はどんどん俗的な芸能のようになっていきました。
そんな俗化した神楽に再度品格を与えるような形に改訂したのが、明治10年代、そのあとも俗化するたびに神聖化するための改訂が行われ、現在の「石見神楽」の形になりました。現代の石見神楽は品格をなるべく保ちながら、現代でも見どころたっぷりのものになっています。
石見神楽の見どころ
石見神楽の一番の見どころはやはりダイナミックな演出です。特に石見神楽の中でも一番有名な演目は「大蛇(オロチ)」です。これはスサノオノミコトが「ヤマタノオロチ」を退治するところを題材にしたものでは17メートルもある大蛇がスサノオノミコトと対決する演目です。対決は火花が散り、大迫力の演出です。
石見神楽には様々な演目があり、迫力満点の演目もあれば、七福神の恵比寿様が登場するコメディー風のものもあります。恵比寿様の演目では恵比寿様が鯛を釣る様子を演じているのですが、タイの餌として舞台上に蒔く餌は実は飴で、子供たちがこの飴に群がる様子がお決まりの演目です。ただ見ているだけでなく、参加型の演目があるのも醍醐味です。
石見神楽の演目
前述で石見神楽の見どころについて、様々な演目が楽しめるところを挙げましたが、石見神楽の演目は現在では30演目以上あります。それらの演目の多くは「古事記」や「日本書紀」などの神話をオリジナルにしているものです。そのほかにも、神様にお願いする際や、祝い事の席などで行われる演目もあります。
石見神楽の音楽
石見神楽はとてもダイナミックなところが見どころですが、これは石見神楽の音楽のテンポに秘密があります。通常、神楽といえば「六調子」というテンポなのですが、石見神楽は「八調子」というテンポになります。六調子と八調子を聴き比べると八調子は六調子より少し早いテンポになります。
石見神楽は通常の六調子より少し早い八調子を使用することにより、演目にスピード感を与えてくれるためにスリリングな場面や見どころなどでより迫力がでるという効果があります。石見神楽は神楽としての品格を保ちながら、より一般の人が楽しむことができる様な工夫が施されているところもおすすめの見どころポイントです。
石見神楽の衣装
石見神楽で使用するお面や衣装はとても特徴的で、見どころの一つでもあります。きらびやかで豪華な衣装は一着数百万円以上するものも少なくありません。石見地方にはこれらの衣装を手掛ける専門店がいくつかあり、今もなお伝統芸能である石見神楽を支えています。これらの業者の存在は石見神楽の存続のためにとても重要な役割を果たしています。
石見神楽で使用するお面や小道具などは石州和紙の伝統技術が使われてるものもあります。石州和紙は、無形重要文化財にも指定されるほどの伝統工芸技術です。石見神楽を見学するときは衣装やお面、小道具などの繊細さにも注目しながら見学するのもおすすめです。
石見神楽はどこで見られる
石見神楽は島根県内のいくつかの場所で見ることができます。しかし、それらの神楽は公演される目的が少々違います。1つめは観光客が手軽に見られる「定期公演」そして地元の人が中心に行う本格的な「奉納神楽」、そして様々なタイプの神楽を一度に見られる「神楽大会」です。それぞれのメリットやスケジュール、見どころなどをご紹介しましょう。
石見神楽の定期公演
観光客一番おすすめなのがこちらの「定期公演」です。島根県の石見地方の太田市、江津市、浜田市、益田市、津和野町の5つの市町の12スポットで週末に公演が行われています。上演時間はいずれのスポットでも1時間から2時間ほどなので、観光スケジュールが合えば、立ち寄ってみるのがおすすめです。
大田市にある鑑賞スポットがのが大森町街並み交流センター、温泉津温泉「龍御前神社」です。そして江津市にある鑑賞スポットが有福温泉「湯の町神楽殿」、パレットごうつ、神楽の里「舞乃市」です。浜田市の鑑賞スポットは、アクアスはっしー広場、道の駅「ゆうひパーク浜田」、旭温泉「あさひ荘」、三宮(さんくう)神社になります。
さらに益田市の鑑賞スポットは益田駅前ビルEAGAで、津和野町の鑑賞スポットは津和野町民センター、太鼓谷稲成(たいこだにいなり)神社、道の駅「津和野温泉なごみの里」になります。ほとんどのスポットが500円から1000円ほどの観覧料がかかりますが、無料のところもあります。スケジュールは月1回のところや毎週末上演するところもあります。
太田市「定期公演」上演スケジュール
『大森町並み交流センター』での2018年の上演スケジュールは、2018年5月3日から5日、6月30日、7月1日/14日/15日、8月11日から13日、9月15日/16日/22日/23日、10月6日/7日、11月23日/24日です。上演時間は午前11時と午後1時半の2回公演で、料金は500円です。中学生以下は無料です。
『温泉津温泉 龍御前神社』では毎週土曜日に石見神楽が上演されています。時間は夜の8時から9時で料金は1000円です。中学生以下は無料です。コチラで上演される石見神楽は奉納神楽に近い雰囲気で見ることができるのでとてもおすすめです。
江津市「定期公演」上演スケジュール
『有福温泉 湯の町神楽殿』の2018年のスケジュールは、2018年4月14日/28日、5月5日/26日、6月9日/23日、7月14日、8月4日/11日/18日、9月8日/22日、11月3日/10日/17日/24日、12月8日/22日、2019年1月12日、2月9日、3月9日/23日で全て土曜日の開催です。時間は午後8時半から9時半です。料金は500円です。
『パレットごうつ』では、2018年2月25日、3月25日、4月15日、5月13日、6月10日、8月12日、9月9日、12月9日、2019年1月13日、2月10日、3月10日です。7月28日は夜公演を予定しています。時間は午前11時と午後1時の2回公園です。料金は500円で中学生以下は無料です。『神楽の里 舞乃市』は毎月第3日曜日の午後5時からです。料金は500円です。
浜田市「定期公演」上演スケジュール
『三宮神社(大祭天石門彦神社)』では毎週土曜日の開催ですが休演もありますので、事前に確認しましょう。時間は午後8時から午後9時です。料金は500円で中学生以下は無料です。『アクアスはっしー広場』は2018年の4月から11月初旬までは毎週日曜日と祝日の開催です。時間は午後1時から3時で無料鑑賞できます。
『道の駅 ゆうひパーク浜田』は毎月第2げ日曜日の上演です。時間は午後1時から午後3時までです。観覧は無料です。『旭温泉 あさひ荘の休憩棟』では、2018年9月8日から11月17日までの毎週土曜日の午後8時半から上演されます。料金は500円で中学生以下は無料です。
益田市「定期公演」上演スケジュール
益田市で石見神楽を見るなら『益田駅前ビル EAGA 3階大ホール』がおすすめです。2018年のスケジュールは9月から12月は除く毎週土曜日に上演されています。お盆の間(8月11日から14日)にも上演があります。時間は午後7時半から午後9時までです。料金は500円で中学生以下は無料です。
津和野町「定期公演」上演スケジュール
『道の駅 津和野温泉なごみの里』では毎月第1日曜日と第3日曜日の午前11時からと午後2時からの2回の上演があります。こちらの観覧は無料です。『太皷谷稲成神社』では8月と9月の間だけ、毎週土曜日の午後8時から9時くらいまで上演されます。料金は500円で小学生以下は無料です。
石見神楽の奉納神楽
せっかく島根県に来たのならば、本格的な石見神楽を見たいと言う場合は、「奉納神楽」がおすすめです。この奉納神楽は地元の人が中心になった神楽で、地元の神社のお祭りの前などに神様に石見神楽が奉納されます。本来の神楽の目的のために行われる神楽はとても荘厳で神聖な気分になります。
本格的な「奉納神楽」は夜通し上演されます。特に毎年9月から11月の秋祭りの時期に開催される奉納神楽は一晩中上演されているので、人々は一晩中お酒をいただきながら奉納神楽を鑑賞します。島根には様々な観光スポットがありますが、このような形で1晩を過ごすのもとてもおすすめです。
石見神楽の神楽大会
島根県の観光の目的を石見神楽にするならば、「神楽大会」を見に行くのもおすすめです。神楽大会では様々な神楽団体の神楽を1日でいくつも見ることができます。神楽大会では団体により演出の方法が違うので、さまざまな雰囲気の神楽を楽しむことができます。
例えば、島根県の浜田市で行われる「日本石見神楽大会」は浜田市の花形イベントです。1990年から開催されているこの大会では1日で10以上の演目を見ることができます。開催スケジュールは「日本石見神楽大会」のホームページなどで確認できますが、従来の開催スケジュールでは11月の第3日曜日に開催されています。
昨年の実績を見ると、公演スケジュールは朝9時から午後4時30頃までで、高校生以上は1500円、小中学生は500円の入場料がかかります。動画は撮影できませんが、静止画の撮影はできますので、迫力あるシーンの撮影をすることが可能です。演目も人気の物ばかりですので、とてもおすすめです。
石見神楽鑑賞時の注意
観光客に向けて上演される石見神楽の定期公演の場合は、気軽な気持ちで楽しむことができますが、本格的な「奉納神楽」などを見学する場合は、地元の人の大切な行事に他人が踏み込むわけですから、より慎重になる必要があります。地元の人以外の人が参加しても良いのかどうかの確認もしましょう。
見学が許可されたら、地元の人のルールにのっとって、神様に参拝することを忘れずに行いましょう。一番いい場所を大人数で独占したり、大声で騒いだりしてはいけません。写真撮影や動画撮影が可能なのかどうかもきちんと確認しましょう。奉納神楽を厳かに見学するのも観光の良い体験になります。
御花とは
素晴らしい舞いに感動した場合には御花といってチップのようなものを渡すことができます。御花には贈るものや送り方に少しだけルールがあり、例えば舞初めには、日本酒を持っていきます。現金の場合は3000円前後が相場の様です。ほかにも権現様(獅子舞等)に頭をかじってもらった時に渡したりもします。
通常はのし袋などに入れて「御花」などと表書きをして、渡します。御花は楽屋に持っていくのが一般的ですが、会場の受付などに預ける場合もあります。御花は強制ではありませんので、出す、出さないも自由ですし、金額も基本的には自由です。
石見神楽を見に行こう
いかがでしたでしょうか。島根県の伝統芸能である石見神楽をご紹介してみました。神々の国、島根県では多くの観光スポットがありますが、石見神楽はこの地でしか見ることができないので、観光旅行の際にはおすすめです。観光スケジュールの中にぜひ石見神楽を組み込んでみてください。
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