義経ゆかりの地「安宅の関」見どころガイド
源義経と弁慶にまつわる物語「勧進帳」の舞台となった「安宅の関」が観光スポットとして実在するのはご存知でしょうか。今回は、勧進帳のストーリーは知っているけれど安宅の関には行ったことがないという人のために、安宅の関の見どころをたっぷりとご紹介します。また、安宅の関周辺のおすすめ観光スポットや、各交通機関でのアクセス方法の情報も満載です。
「安宅の関」は小松市の歴史スポット
「安宅の関」は石川県小松市の日本海に面した場所にあります。小松市に一歩入ると、あちこちで義経や弁慶の銅像、勧進帳のワンシーンを再現した人形などを見かけます。晩年の義経の伝説は石川県内だけでも90以上も残されていますが、その中でも最も有名なのが小松市の安宅の関の逸話と言われています。安宅の関は1939年に「安宅の関跡」として石川県史跡に指定され、小松市が誇る一大観光スポットとなっています。
そんな安宅の関は「日本の歴史公園百選」にも選ばれた安宅公園の敷地内にあります。安宅公園の中には、安宅の関の跡を示す石標の他、パワースポットとして知られる安宅住吉神社や、勧進帳の世界を体感できる勧進帳ものがたり館などがあって見どころ盛りだくさんです。また、安宅公園の隣は安宅海水浴場となっており、観光客だけでなく海水浴のレジャー客も多く訪れます。
安宅の関は有名な歌舞伎の演目「勧進帳」の舞台となった場所です。勧進帳は江戸時代から現在に至るまで演じ続けられていますが、2016年には実際に安宅の関に特設舞台が作られ特別公演が行われました。弁慶役は市川海老蔵、富樫役は中村獅童という豪華俳優による特別な勧進帳は正に夢舞台となりました。市川海老蔵はこの公演に際し、「小松で勧進帳をやることは寺社仏閣に奉納するのと同じような意味がある」とコメントしました。
安宅の関が舞台の「勧進帳」とは
勧進帳は元々、能の「安宅」という演目を歌舞伎化したものだそうです。初めて歌舞伎で勧進帳が演じられたのは1840年のこと。主演は市川海老蔵の祖先に当たる七代目市川團十郎でした。それ以来、勧進帳は市川宗家の十八番として時代を超えて人々の心を捉え続けています。市川宗家の勧進帳に対するこだわりは並々ならぬもので、過去には勧進帳を無断で演じた役者が破門になってしまうという事態もあったそうです。
勧進帳とは、寺などに寄進を募る書類のことです。源平合戦の後、頼朝から追われる身となった義経は弁慶と共に平泉へ逃亡を図ります。弁慶は山伏に、義経は荷物持ちに姿を変えて安宅の関所を通過しようとしますが、関守の富樫左衛門に止められてしまいます。この時弁慶が機転を利かせ、持っていた巻物を勧進帳に見立てて朗々と口上を読み上げます。この「勧進帳読み上げ」のシーンは、歌舞伎勧進帳の名場面の一つとなっています。
こうして関所の通行を認められたかに思えた義経一行ですが、荷物持ちの顔が義経に似ているという事で再度止められてしまいます。そこで弁慶はその場で主君の義経を杖で打ち据え、疑いを晴らす事に成功。関所を離れた所で弁慶は打ち据えたことを泣いて詫び、義経は逆に弁慶の機転を褒めます。そして、弁慶が富樫へお礼の舞を披露した後に立ち去る場面の「飛び六方」は、勧進帳のフィナーレを飾るにふさわしい見せ場の一つです。
安宅の関では勧進帳の名場面が銅像に
安宅の関は、広い敷地の公園内に様々な史跡や観光ポイントが点在しています。中でも観光客に人気の高いスポットは、弁慶、義経、富樫の3人の銅像が並ぶ場所です。若かりし頃は怪力の乱暴者として悪名高かった武蔵坊弁慶でしたが、義経との出会いをきっかけに忠義の士としてその才能を発揮し、安宅の関では忠誠心と知恵で主君を守り抜きました。安宅の関の弁慶像は、七代目松本幸四郎をモデルとして制作されたそうです。
弁慶と義経の前に立ちはだかる富樫左衛門泰家は歴史上さほど有名な人物ではありませんが、勧進帳の世界では義経を抜いて存在感の高い役柄となっています。弁慶の嘘に気づいていながら主従の絆の強さに心打たれ、情けをかけて安宅の関を通す富樫の人情が勧進帳の人気のポイントですが、昔の演出では、富樫は弁慶にまんまと騙された凡庸な人物として描かれていたそうです。ちなみに銅像のモデルは二代目市川左團次だそうです。
弁慶と富樫の銅像は昭和15年に完成しましたが、源義経の銅像はそれからずっと後の平成7年に建てられたそうです。座して静かに控える義経が加わる事により、弁慶が義経を杖で打ち据える場面がより鮮明に思い浮かぶようになりました。義経の銅像といえば壇ノ浦古戦場にあるような甲冑姿の勇壮な銅像が有名ですが、安宅の関ではいつもとイメージの違う義経を見ることができます。
安宅の関に刻まれた「智仁勇」とは
さて、3人の銅像をとくと見た後は、下に刻まれている「智仁勇」の言葉に注目です。右から読むのでご注意下さい。「智」は弁慶の知恵、「仁」は富樫の人情、「勇」は義経の勇気を表しており、古くから多くの日本人に感動を与え続けてきた勧進帳のテーマがこの3文字に込められています。揮毫は、金沢出身の政治家で安宅の関史跡の寄進者でもある永井柳太郎氏です。観光で訪れたらぜひここで記念写真を。
安宅の関の見どころ【安宅住吉神社】
安宅の関は安宅公園の一帯を指すことが多いですが、実際に安宅の関があった跡地は安宅住吉神社の境内にあります。全国白砂青松百選の一つに選ばれている松林の中にいくつかの石柱と立て札がある場所で、石川県指定史跡となっています。安宅住吉神社の境内は12000坪という広大な敷地で、安宅の関跡の他にも与謝野晶子と鉄幹夫婦の歌碑、塩田紅果の句碑、森山啓の文学碑など見どころがたくさんあり、多くの観光客が訪れています。
安宅住吉神社の創建は782年という歴史のある神社で、2回の遷座を経て1647年に現在の場所に落ち着きました。安宅住吉神社では巫女さんの無料ガイドで社殿の中の宝物を見たり、安宅の関の説明を聴いたりすることができます。巫女さんのガイドは予約不要なので、安宅の関を詳しく知りたい人にはおすすめです。
安宅住吉神社は弁慶と義経が無事に突破した安宅の関にちなみ、難関突破の神様として知られています。安宅住吉神社の境内には弁慶が勧進帳を読み上げる姿の銅像があり、弁慶にあやかろうと手を合わせる人もいるのだとか。小松市内には様々な場所に弁慶の銅像がありそれぞれ顔つきが異なるので、小松市で銅像巡りをするのも一つの楽しみ方です。
安宅住吉神社の境内にある「神亀石」は、亀の化石と見まがうほど亀にそっくりな形が印象的な石です。その昔、安宅の浜辺にいた亀を神様のお使いと考えた舟方が、亀に御神酒を飲ませて住吉神社へ案内したところ、亀は神社の前で動かなくなり、次の日には石に生まれ変わって永遠に神様に仕える身となったという伝説があります。亀の背中を左、右、左の順で撫でて祈ると、延命長寿と末広がりの幸福がもたらされると言われています。
6月末の大祓の日に参道に登場する「茅の輪」は、くぐり抜けることで1年の半分の厄を払、加えて残りの半年の無病息災を祈願する行事です。くぐり方は、まず正面で一礼してから茅の輪をくぐり、茅の輪の左側を回り正面へ戻ります。次にもう1度正面で一礼し、茅の輪をくぐったら今度は右側から正面へ戻ります。その次は、一礼してくぐった後もう1度左から正面へ戻ります。そして最後に一礼し、本殿へ向かうのが作法だそうです。
安宅の関のお土産に難関突破お守りを
安宅住吉神社では、義経と弁慶が安宅の関を突破したことにちなんで難関突破のお守りを受けることができます。義経を打ち据える弁慶の絵が描かれた絵馬に願い事を書いて住吉神社に納め、御利益にあやかりたいものです。絵馬の初穂料は800円です。また、1月1日から1月15日までの間はお正月の年頭祈願が行われており、祈願すると鎌倉時代から伝わる富樫家厄除け面を授かることができます。祈願料は5000円から受け付けているそうです。
弁慶の姿が刺繍された難関突破のお守りは、観光客だけでなく受験生や就職活動中の人、出産を控えた妊婦さんなど様々な人に人気があります。身近で頑張っている人へのお土産にもおすすめ。お守りの初穂料は800円、家に飾っておく木札は初穂料2000円です。お守りや木札は、1年経ったらお礼をこめて安宅住吉神社へ納めましょう。
安宅の関の見どころ【勧進帳ものがたり館】
歌舞伎ファンならぜひ訪れておきたい観光スポットが「勧進帳ものがたり館」です。勧進帳ものがたり館は3つのゾーンに分かれており、「勧進帳シアターゾーン」では、こまつ芸術劇場で上演された市川團十郎主演の歌舞伎勧進帳のダイジェスト版を見ることができます。分かりやすい解説がついているので歌舞伎初心者でも楽しめる内容です。また、勧進帳の上演で使われたものと同じデザインの衣装も展示されています。
「義経・弁慶発見ゾーン」では、義経と弁慶のプロフィールやエピソードがパネルやクイズ形式で説明されていて、小学生の夏の自由研究にもおすすめです。「安宅発見ゾーン」では、安宅の歴史や昔の風景などの写真が展示されています。営業時間は9時から17時までで、水曜は定休日です。入館料は大人300円、小人150円となっています。
安宅の関のレストラン【勧進帳の里安宅ビューテラス】
勧進帳ものがたり館に併設されている「勧進帳の里安宅ビューテラス」は、美しい日本海の景色が一望できるレストランです。メニューはうどんやそばといった麺類の軽食から、バランスの良い定食まで豊富です。かき氷やソフトクリーム、ドリンクメニューも揃っていてゆっくり食事や休憩が楽しめます。また、お土産もここで購入できます。
勧進帳の里安宅ビューテラスのおすすめメニューは「小松うどん」です。小松うどんとは小松市のご当地グルメで、小松市内で製麺されたうどん、白山水系の水を使用する事などが定義されています。だしはうるめ、むろあじ、さば節、昆布からとった海の香りたっぷりの味わいです。安宅ビューテラスの営業時間は9時から17時までで、水曜は定休日です。
「安宅の関」基本情報
安宅の関は曜日や時間に関係なくいつでも入場することができ、入場料金も無料です。ただし小松市は雪の多い場所のため、降雪時には入場できなくなる場合があるのでご注意下さい。混雑することがあまりなく空いている日が多いそうなので、ゆっくりと観光できます。
住所:石川県小松市安宅町タ140-4 電話番号:0761-22-2404
安宅の関へのアクセス【飛行機】
安宅の関は小松空港や小松駅からのアクセスが良いので、加賀や金沢へ向かう前に立ち寄るのにおすすめです。小松空港へは羽田、成田、札幌、仙台、福岡、那覇から飛行機が運行しており、便数も多いです。羽田空港から小松空港までの飛行時間は1時間5分となっています。
小松空港から安宅の関まではバスが運行しています。EVバスで安宅住吉神社行きに乗車し終点で下車します。1日の本数が少なく、平成29年12月時点のダイヤで8時28分発、10時43分発、15時8分発の3本のみとなっているので、この時間を逃したらタクシーを利用するのがおすすめです。
安宅の関へのアクセス【電車】
安宅の関の電車の最寄り駅はJR小松駅です。小松駅はJR北陸本線の駅で、東京から新幹線でアクセスするなら北陸新幹線で金沢駅まで行き、金沢駅で北陸本線に乗り換えて小松駅へ向かいます。所要時間は3時間から3時間30分です。金沢駅から小松駅までは在来線と特急が運行しています。なお、小松駅は今後北陸新幹線の停車駅になる予定だそうです。
大阪や京都方面から電車でアクセスする場合は、特急を利用します。大阪駅始発のJR東海道本線特急サンダーバードなら乗り換えなしで小松駅へアクセスできます。大阪駅からの所要時間は2時間27分です。また、福井駅からはJR北陸本線の特急しらさぎで約30分です。
安宅の関へのアクセス【バス】
安宅の関へのバスでのアクセスは、JR小松駅西口から運行している小松バス安宅線を利用します。安宅漁港行きまたは長崎行きに乗車し「安宅関前」バス停で下車します。本数は2時間に1本程度となっています。JR小松駅西口から小松バス空港線も運行していますが、こちらは1日に3本となっており、8時15分発、10時30分発、14時55分発です。
安宅の関へのアクセス【車】
安宅の関への車でのアクセスは、北陸自動車道小松ICが最寄りとなります。安宅関交差点を安宅海岸方向へ進むと駐車場へ到着できます。駐車場は安宅住吉神社に約100台、安宅ビューテラスに40台収容可能となっています。安宅の関の周辺は海岸沿いに道が走っており、ポタリングやツーリングの人気スポットにもなっています。
安宅の関で義経の歴史に触れてみよう
石川県小松市の歴史スポット「安宅の関」をご紹介しました。美しい日本海と松林に囲まれた風光明媚な安宅の関は、歴史と自然を堪能できる穴場の観光スポットです。金沢や加賀の観光コースの一つに加えてみてはいかがでしょうか。
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