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コーカサスに息づく歴史ロマンと自然
コーカサス三国というと、あまり聞いたことがないかもしれない。ナゴルノ・カラバフ紛争で治安の悪い地域も一部あるせいかもしれないが、コーカサス三国を全体的に見ると渡航しても十分大丈夫なところが多いのである。コーカサスのどの国をとっても圧倒される建造物、世界遺産にも登録されたものがあり、その壮大さには圧倒されることだろう。
ワイン発祥の地:ジョージア
コーカサスのみならず、世界でも有数のワイン生産地・発祥の地であるジョージア。ワイン好きなら行ってみたいと思うであろうこの国は、1991年にソビエト連邦から独立した。数年前までの呼称「グルジア」なら、聞いたことがあるかもしれない。コーカサス山脈の南側、黒海の東側にあるこの国にはどんな観光スポットがあるのだろうか?
コーカサス「ジョージア」の観光スポット1:ムツヘタの文化財群
コーカサスの観光地として最も人気の1つ、ムツヘタで有名なのは6世紀に建てられたジワリ修道院、スヴェティツホヴェリ教会(上の画像、11世紀)である。スヴェティツホヴェリ教会には4世紀にキリスト教を国教に定めた王様と王妃の墓があるという。南コーカサスではよくある四葉型の建物であり、今でも各種式典に使われることがある。
ムツヘタへのアクセス
ムツヘタにアクセスするには、地下鉄ディドゥベ駅で下車、駅前にあるバス停からバスに乗るといい。この辺でお客さんを待っているタクシーの中には、何も知らない観光客と見ると「バスはないからタクシーで連れて行きますよ」と言う人がいるらしいが、嘘なので無視しよう。バス停は駅を出てから真っすぐに歩いていき、市場と建物の向こうにある。
コーカサス「ジョージア」の観光スポット2:ゲルゲティトリニティ教会
ここは、ゲルゲティ三位一体教会とも言われる。美術における、あのルネッサンスと同時代に最初の建物が建てられたという人気の観光スポットである。現存の建物はそれより4世紀ほど後に改築されたようだ。ソビエト連邦支配下の時代は宗教関連の行事が禁じられていたが、観光スポットとしては当時から人気だったらしい。
日本では江戸時代。ペルシャ、オスマントルコからも侵攻を受けていた時、グルジア正教会の象徴「葡萄十字」がこの頃あったこともある。541年まではスヴェティツホヴェリ教会、一度アルメニアに奪われたのち取り戻され、安全な場所にとこの教会に移された。転々としたのちに現在はジョージアのトビリシ・シオニ大聖堂(上の写真)に保存されている。
教会から見えるコーカサスの山々は必見。雲で山頂が見えないこともあるが、あまりに雄大なコーカサスの山は人々の心を惹きつけてやまない。山道の運転に慣れていない人はツアーで行くのが無難だ。ツアーだと4WDでグルジア軍道を走りながら山々を眺めるツアーも人気だ。ジョージア専門の旅行会社「SakuraLTD」などでも様々な場所へ観光に行ける。
住所 | Georgia,Tbilisi,GuramRcheulishviliSt.1 |
電話番号 | +995-595-331239 |
コーカサス「ジョージア」の観光スポット3:ワインの名産地カヘティ
2013年にUNESCOの無形文化遺産として登録された、伝統的な素焼きの壺でのワイン醸造技術。カヘティ地方は、ワインに使われるブドウ栽培に適した気候だ。コーカサスの中でもワイン生産が盛んな地域である。クレオパトラがこの国のワインを飲みながら涙にくれることもあったといわれ、「クレオパトラの涙」とジョージアワインが呼ばれることもある。
カヘティへのアクセス
コーカサスの中でも人気があるから、ツアーにもよく組み込まれている。トビリシ空港から車でのアクセスは72km、1時間余り。EuropeSt、KakhetiHwyを進んでS5を63km。乗り合いタクシーなら、イサニ駅からだ。山あいを通るコースで1時間半程度かかる。4人乗り合いなら12ラリ、3人乗り合いなら10ラリとなる。ラリは現在、2年前よりも円高である。
コーカサスの南側ジョージアでテロに遭遇したら
ジョージアの治安。こんな報道でもない限り、治安に関して心配することもないのだが。海外安全HPでは現在もジョージアのかなり多くが安全レベル1、渡航可能にはなっている。しかし2018年の8月初旬、テロリストらによる犯行予告映像がこの国の治安に対する安心感を揺るがした。2017年の終りごろのテロリストの掃討作戦への報復を誓う内容だったのだ。
外国人や観光客がターゲットだと言ってはいないようだが、注意に越したことはない。なお外務省の海外安全HPでは西部のアブハジア自治共和国、南オセチアの北半分が「渡航は止める」ロシアとの国境付近は「不要・不急の渡航は止める」である。もしテロに遭遇した場合は警察官の指示をしっかり守り、下の連絡先在ジョージア日本大使館に知らせることだ。
住所 | 7D,KrtsanisiStreet,Tbilisi,0114,Georgia |
電 話 | (+995-32)275-2111,2114 |
ゾロアスター教発祥の地:アゼルバイジャン
コーカサス三国の中でジョージアの東に隣接するアゼルバイジャン。塩水の湖、カスピ海とも接している。この国にも人気の観光スポットとなっている世界遺産がある。首都バクーやシルバンシャー宮殿、首都郊外に位置する火の信仰の聖地アテシュギャーフ寺院があり、展示室で当時の僧房の様子を垣間見れる。
コーカサス「アゼルバイジャン」の観光スポット1:アテシュギャーフ寺院
ここはゾロアスター教、紀元前7世紀の開祖ゾロアスター、有名なドイツ語読みではツァラストラが開いた火の宗教の寺院だ。石油が産生される地域なので、地中から出てくる天然ガスなどに自然着火して現れた火を尊いものとし、崇拝したのである。尊いとされる火を寺院の真ん中に置いて、周囲を囲った寺院なのだ。
火の周囲の建物の中には、古い時代の行者を模した、一瞬本物?と思う人形が置いてあるのでびっくりすることがある。石で造られた僧房は、内部が生活用具・壁画その他を展示してあり、丁寧にたどって歴史ロマンに浸っているとなかなか時間がかかる人気スポットである。寺院から空港までタクシーで行ける。
アテシュギャーフ寺院へのアクセス
アテシュギャーフ寺院に一番近い空港は、バクー市街郊外にあるヘイダル・アリエフ空港。市街からおよそ24kmほどのアクセスのところ。地下鉄koroglu駅の近くのバスターミナルに行き、184番バスsaraxani行きに乗車して終点で下車する。料金は0.2マナト、乗車時間は30分ほどである。
コーカサス「アゼルバイジャン」の観光スポット2:首都バクー
アゼルバイジャンの東、カスピ海を望む首都バクー。世界遺産に登録されているのは旧市街の城壁の中である。このバクーという街の存在が歴史の記録から確認されるのは10世紀になってからである。もともとゾロアスター教徒の数が多かったようだが、現在はほとんどの人がイスラム教徒で、ソ連時代より大幅にアゼルバイジャン人の割合が高くなっている。
現在のイランにあった王朝の支配、オスマン・トルコ帝国など多くの民族が入れ替わり立ち替わりしたことで中近東・ロシアなどの文化が入り混じった文化を持っている。この城壁内にある、世界遺産保護区域にあるものとして、メフメト・モスク、12世紀のイスラム教系の学校、カースム・ベクの隊商宿、シルヴァン・シャー宮殿(2枚目の写真)なども人気だ。
コーカサス「アゼルバイジャン」の観光スポット3:ゴブスタン国立保護区
この地域が保護区になったのは今から50年ほど前のことだ。首都バクーから40マイルほど南西に位置する、先史時代の生活を伝える岩絵群が数多く残る、コーカサスでも人気のスポットである。世界遺産に登録されたのは2007年。動物、ラクダの隊商、宗教儀式など多彩なものを描いた岩絵は実に60万点、平均して5千年から2万年を遡るものだという。
保存状態が優れている岩絵からは、旅をする人々、狩りや踊る人々など当時の生活が生き生きと見て取れる。何度もこの地を訪れたノルウェーの人類学者、ヘイエルダールをご存じだろうか?2002年に亡くなった彼は自身のプロジェクトのため、この保護区を40年以上にわたって研究したのだった。
ゴブスタン国立保護区へのアクセス
ゴブスタン国立保護区に車でアクセスするなら、およそ1時間程度。バクーからバスやタクシーでもアクセスできる。88番・124番のバスに乗ってラウンドアバウトで乗り換え。ラウンドアバウトから195番のバスに乗り換えてゴブスタンへ行く。バスを降りたら、体を動かしたい人は歩き、タクシーでもアクセス可能だ。
コーカサスの東側アゼルバイジャンの治安
こちらも、一部の地域が渡航は止めるようにという危険レベル3の地域がある。ナゴルノ・カラバフを含む、アルメニア国境付近、アルメニア領で分断された西端の領土の東側が渡航できない治安状況の地域である。アゼルバイジャンの東の方、首都のバクーを含む地域はレベル1の治安なので、バクーの世界遺産を見に行くならひとまず安心だ。
しかし、渡航できる治安の地域に行く場合でも、大規模な宗教行事のときは気を抜かないようにしたい。テロなどの標的になりやすいからである。これまで日本人がこの国で殺害された事件はないが、シリア・チュニジアなどではそうした事件が起こっている。治安の悪い地域の紛争の原因となっているのはナゴルノ・カラバフ自治州での紛争である。
この地域・周辺の地域にはアルメニアの占領が続いている。1994年に停戦合意があったが仲介・和平への政治的な努力があってなお、停戦に違反して事件を起こす人間がいるという。停戦の合意が成立した後でも小規模な武力衝突が発生している。くれぐれも西側の国境付近、治安の悪い地域には行かないようにしたいものだ。
初めてキリスト教を国教とした国:アルメニア
コーカサス三国の中で一番南に位置しているアルメニア共和国。エレバンを首都に持つこの国も、1991年にソビエト連邦から独立した国の一つだ。この国もジョージア同様ワイン製造が盛んだが、アルメニア・コニャックというブランデーの方が有名かもしれない。また、世界遺産になっている人気スポットとして3つの修道院と教会群・考古遺跡がある。
フラズダン川が街中を流れ、南の方にはアララト山が聳える首都エレバン。首都になったのはロシア帝国が崩壊した1918年からである。建築家アレクサンドル・タマニアンの仕事により、近代都市へと変貌を遂げた。標高1000mほどで夏は40度近くの気温にもなるが、冬の寒さは-15度以下のこともある。過ごしやすい季節の観光をおすすめしたい。
コーカサス「アルメニア」の観光スポット1:セヴァン湖
アルメニアの最大の湖で世界でもかなり高地にある指折りの一つ、それがセヴァン湖だ。標高は1900mのところにある。一部がフラズダン川へと流れ込み、クラ川へと流れ込んだのちカスピ海へと向かっているが、乾燥地帯なのでかなりの割合の水が蒸発してしまうという。ソ連時代に灌漑に使われたのち水量を減らしてしまい、面積が狭くなっている。
ここに伝わる悲恋の伝説がある。水位が高かった昔、湖の中の島に住んでいた女性と本土側に住む男性が恋に落ちた。男性は女性がともしてかかげる火を目印に島へ渡っていたが、その関係に反対して仲を裂こうとする女性の家族が火を消してしまった。そのせいで男性は目印を見失って溺れ死んでしまったという話だ。
セヴァン湖へのアクセス
セヴァン湖へのアクセスは北バスステーション(NorthernBusStation)から行くとバスでは600ドラム、時間にして1時間程。エレヴァン駅からだとキリキアバスターミナルから259番バスが出ている。市の中心、MestropMashtotsAveを通過しBarekamutyun駅の交差点を通ってくるバスだから、近くに泊まっているなら途中から乗車した方がいい。
コーカサス「アルメニア」の観光スポット2:エチミアツィンの大聖堂
アルメニアは、301年歴史上初めてキリスト教を国教と定めている。言い伝えによると、最初の啓蒙者であるグレゴリオスが、キリストが空から降臨して金色の槌で地面にさわるというビジョンを見たことが建設のきっかけだという。現在の建物は、6世紀に建築が高度に発達した時代のものである。ここも人気の観光スポットである。
エチミアツィンの大聖堂へのアクセス
エレヴァン市内からは、バスに揺られること1時間ほどで教会に行ける。この辺りのバスや車はときどき側面に穴が開いていたり、ちゃんと動きはするが日本人だったら修理して外見をましにするであろう状態のものが、そのまま走っていたりする。地元の人は気にしないで利用している。
中央バスターミナルから向かうのなら、マッシュルートカの15番・23番・68番の車で行ける。モスクの正面、美しいイランのタイルで飾られた壁の前に、いろいろな方面に行くマッシュルートカが集まる。車体に英語表記はあまりない。なお、アルメニア語での「エチミアツィン」の表記は「Էջմիածին」となる。
アルメニアの治安
アゼルバイジャン同様、ナゴルノ・カラバフ紛争が未解決なのでアゼルバイジャンとの国境付近は治安がよくない。しかしほとんどが海外安全HPの情報では、もっとも治安が安心なレベル1、渡航が可能となっている。人気の観光地エレヴァンの治安に至っては夜に出歩くことも大丈夫、子供や女性が夜一人で歩いていることもあるようだ。
コーカサスの息吹を味わいに行こう
皆さんの好きなものは何だろうか?ワインなどのお酒?それとも古びたドラマチックな建物?コーカサスの国々にはたくさんの魅力が詰まっているから、どんな興味でも満たしてくれる。そこから伝わってくるいにしえからの人類の息吹は、きっとあなたを感動させることだろう。
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