坪尻駅にでかけよう
日本にある徳島の秘境、坪尻駅。とても駅とは思えない静かな佇まいの駅舎の前を走る一両の電車は何とも趣があります。四季折々の季節の中を走り抜ける電車はマニアの間でも大人気。そんな話題の秘境へあなたも出かけてみませんか?都会の喧騒や人間関係を忘れて自然の声に耳を傾ければいつもとは違った世界が見えてくるかもしれません。
坪尻駅のある徳島県
阿波踊りでも有名な徳島県は四国4県の中で南東部に位置、その中で三好市池田町は丁度香川県との県境にあります。徳島県の北部はかつて粟が多く主格されたことから粟国と呼ばれていました。吉野川や那賀川、四国山地、紀伊水道など自然がたっぷりと残っていて鳴門の渦潮や祖谷渓、大歩危・小歩危等の観光資源などもあります。
徳島で最も有名なのは400年の伝統がある阿波踊り。吉野川北岸地域では野菜の生産が盛んです。有名なスダチだけでなく、ウンシュウミカンやニンジンなども各地に出荷されています。水産業では鳴門市のタイやチリメンジャコ、アユやワカメ、海苔なども有名です。畜産では阿波畜産3ブランドの阿波牛、阿波ポーク、阿波尾鶏などもあります。
そんな徳島にあるのが四国旅客鉄道の1つの路線、営業キロは200㎞ほどにもなる土讃線の中の一駅の坪尻駅です。かつて土讃本線と呼ばれていた路線は1988年に土讃本線から土讃線に代わりました。坪尻駅は徳島県と香川県の県境にある猪ノ鼻峠付近の標高272mの地点のアクセスが非常に不便な場所にあります。
秘境「坪尻駅」
坪尻駅の周辺は山林や川しかなく、「木ヤ床」の集落までは200mほどの獣道をひたすら30分ほど歩きます。停車せずに通過する普通列車もあり、地元の利用者は現在0人。鮎苫谷川沿いの谷に駅が位置するので車では駅にアクセスすることができず、駅にたどり着くには徒歩しかありません。
駅舎を出たところの東側と西側にそれぞれ山道が1本ずつあり、駅舎の南側にある踏切を東側へ渡って10~20分程度ある黒国道32号に、西側へ行くと市道へと続いています。途中の道は近隣住民手作りの道で舗装はされていないので足元は悪く、途中崖下に落ちる危険性のある場所があったり、季節によってマムシやハチの出ることもあります。
かつて川底だった場所を住民たちのたっての願いで水を流すトンネルを掘削して川の流路を変えた上で川底を埋めて駅が設置されたというまさに秘境中の秘境駅。川底だったことに思いを寄せると秘境感もひとしおです。徳島の穴場スポットです。
坪尻駅人気の秘密1:「メディアの影響」
坪尻駅がテレビ番組などで秘境として取り上げられた10年程前から徐々に観光客が増えていきました。1997年に取り上げられた番組は「探偵ナイトスクープ」。それ以来定期的に2010年ナニコレ珍百景で2014年にも同番組が取り上げ、2016年には「世界の何だコレ?ミステリー日本の謎を大調査SP/消えた秘境が徳島に眠る?」でも取り上げられました。
坪尻駅人気の秘密2:「整備された無人駅」
秘境の無人駅ではありながら駅舎などは綺麗に掃除されていたり、周辺の草はしっかりと刈り取られていたりと決して荒れ放題な状態ではなく、駅としてしっかりと機能しています。小さく、利用者の少ない駅としての役割をきちんと果たしている点やその佇まいがSNS映えするのもちょっとした人気の秘密かもしれません。
坪尻駅人気の秘密3:「ほっこりする駅舎」
駅舎の中にはベンチもあり、お知らせやいくつもの掲示板があります。実はこんな山間にありながらしっかりとスマホも使えるという便利さ。更に駅の中にはスタンプ台などもあり、そのスタンプ台が一度紛失して再び戻ってきたという経緯が書かれた掲示物もあります。駅ノートや辞書、小説や漫画等が置いてあり、時間を潰す人への配慮もしてあります。
坪尻駅人気の秘密4:「感じる人の営み」
無人の秘境駅といえども人が足を向けるのには底に人の営みを感じるから。駅舎の中の掲示物や手が加えられた駅構内。かつてしっかりとここに暮らしがあったことを彷彿とさせるような人の営みが坪尻駅にはしっかりと残されています。定期的に更新される掲示板は今でもしっかりとここで誰かが生活し続けていることを思わせます。
坪尻駅人気の秘密5:「四国まんなか千年ものがたり」
四国の観光列車「四国まんなか千年ものがたり」は坪尻駅にも停車してしばらくの時間滞在藻するとあって、電車マニアの人の撮影スポットにもなっています。豪華列車に乗りながら四国の美しい景色を見て、観光地や秘境なども楽しめる「四国まんなか千年ものがたり」はかなり人気で予約は難しいのだとか。一度は乗りたい夢の電車。
坪尻駅人気の秘密6:「四季折々の風景」
周辺に山しかないだけに四季折々の風景はとても魅力的。メタリックな電車が多くの木々に囲まれた中を走っている様子はマニアでなくとも目が留まる風景です。春の桜や夏の新緑、秋の紅葉と冬の雪景色、それぞれのシーズンで趣ある風景は絶景といっても過言ではありません。あなたの好きな季節にぜひ訪れてみては。
坪尻駅人気の秘密7:「SNS映え」
こじんまりとした駅舎はまるで日本昔話の舞台にでもなりそうな、歌人たちが名句を詠みそうな雰囲気があります。SNS時代にはぴったりの撮影スポット。駅弁でも買って、たまにはこんなサビれた風情いっぱいの場所に出かけてみるのも悪くありません。アクセスの不便さがこの時代では逆に新鮮なもの。他にはないおすすめの撮影スポットです。
坪尻駅人気の秘密8:「ワンマン一両列車」
今ではすっかり珍しくなってしまったワンマン一両電車も人を引き付ける一つの魅力。メタリックな電車に施された爽やかな水色がまるでオモチャの電車のように可愛らしく走り抜けます。運転士さんは切り替えのたびに場所を変えながら運行していきます。そんなちょっと非効率的な作業もまた魅力です。
坪尻駅人気の秘密9:「スイッチバック方式の駅」
坪尻駅はスイッチバック方式の地上駅です。1面1銭の為に坪尻駅で普通列車同士が行違う場合はどちらかの列車が必ず通過することになります。通過する時の制限速度は時速100㎞で、通過する列車は横を高速で走り抜けていきます。
下りの普通列車は引き上げ線に一旦待機してから駅に侵入する形になり、このようなスイッチバック方式の駅は日本でもそれほど多くないことから、更に注目の駅となっているのが坪尻駅というわけなのです。マニアにはたまらない駅。
スイッチバック式の主な駅
日本のスイッチバック停車駅で坪尻駅と同じ通過可能形のものは姨捨駅(篠ノ井線)、桑ノ原信号場(篠ノ井線)、初狩駅(中央本線)、二本木駅(えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン)、鐘釣駅(黒部峡谷鉄道本線)、中在家信号場(関西本線)、滝山信号場(山陰本線)、そして坪尻駅と同じ土讃線の新改駅があります。
坪尻駅人気の秘密10:「異次元のやすらぎ」
夏場ひとりで駅舎のベンチに座り虫や鳥たちの声だけを聴く時間は何物にも代えがたいものです。暑い日差し、鬱蒼とした緑、うるさいほどに泣き叫ぶセミの声、時折聞こえる小鳥たちのさえずり。そんな中3時間に1本、坪尻駅に停車する列車が、がたんごとんと音を立ててやってきます。都会の喧騒を離れてこのような空間に身をおくのも隠された楽しみのひとつです。
その他の秘境駅
坪尻駅は秘境駅へ行こう!というサイトで紹介されている「周囲に人家が少なく大自然の真っ只中にある駅」でベスト6に選ばれている駅です。そのサイトの備考には無人地帯であること、車道がないこと、原液のスイッチバック駅であること、国道まで徒歩15分の荒れた急坂を上って行かなければならないことが記されています。
そこでの秘境度は最高レベル。更に外部からのアクセスの難易度を記す外部到達難易度と鉄道遺産指数が高く秘境駅ベスト6入りです。そのサイトでベスト5にランクインしている駅名と特徴についてご紹介します。これらの駅はマニアの間ではかなりの訪問率だそう。
赤岩駅
第5位は福島県の奥羽本線にある赤岩駅。赤岩駅は福島県の二ある無人地帯にある駅で未舗装の林道を通ってアクセスします。元スイッチバック駅で新幹線も通りますが、全列車が通過します。駅舎はなく、物置型の待合室があります。周囲には人家は一軒もなく新幹線が通るとかなりミスマッチな違和感のある光景が広がります。
ベスト4にランクインしているのは長野県にある飯田線の田本駅。坪尻駅と同じく無人地帯で断崖絶壁にある駅です。集落までは徒歩20分の険しい急坂を上っていきます。下界から閉ざされた空間で絶壁の駅とも呼ばれています。ホームへは構内踏切を利用していくようになります。山形新幹線の開業前は赤岩、板谷、峠、大沢の4駅連続スイッチバックが有名。
小和田駅
ベスト3にランクインしているのは静岡県にある同じく飯田線の無人地帯にある小和田駅。古い木造駅舎でハイオクがあるどこか寂し気な駅。集落は山道を1時間程歩いたところにしかなく、途中は落ちたつり橋などもあり秘境感半端ない駅です。もちろん自動車ではアクセスできず、秘境駅ブームの火付け役的存在です。
かつては周辺に集落がありましたが現在はダム建設により水没しています。駅舎は古くて味わい深く、かつては有人駅であった様子。表はゆったりと天竜川が流れています。電車以外でのアクセスは不可能、一般の人はめったに来ないという秘境中の秘境。マニアでなくても一度は訪れたくなる雰囲気たっぷりのほっこりした駅です。
尾盛駅
2位にランクインしているのは同じく静岡県の大井川鉄道にある尾盛駅。無人地帯で外界からの道はなく電車でのアクセス以外は不可能な駅。不快山の中にアリ、山犬の遠吠えなども聞こえてきます。クマ出没の危険もあり、待合室は開放されているというちょっと怖い秘境駅。
淡式1面1銭のホームを持つ地上駅で使用されていないホーム上の建物は倉庫として使われています。駅周辺には民家は全くなくその上に通じる公道などもありません。人間の営みがほとんど感じられない駅でスリル満点。かつてはダム建設関係者の為に多数の宿や小学校などがあったのだそう。
小幌駅
見事1位に輝いている秘境駅は北海道の室蘭本線にある小幌駅。トンネルに挟まれた断崖絶壁の駅で、もちろん無人地帯。外界からのアクセスは鉄道以外にはなく、これぞリアルな秘境。駅舎とも呼べないほどの掘立小屋があり、駅には2面2線の短いホーム画ありますが両側を長いトンネルにはさまれています。
駅からは国道が見えますがそこに到達できる道はありません。1943年に列車交換のための信号場として設置され、当時室蘭本線と函館本線では石炭をはじめとする太平洋戦争中に急増した軍需輸送に対応する為に新設され、それが後の1987年に駅になりました。一日に計6本の普通列車が停車しますし、多くの特急列車や貨物列車が通過します。
新改駅
補足として坪尻駅と同じスイッチバック方式の駅の秘境としてもうひとつ、四国、高知県香美市にある同じ土讃線の新改駅をご紹介しておきましょう。新改駅もまた集落からは遠い無人地帯の山深い場所にあります。下りの列車は急な下り勾配が続きます。ワンマン列車も運行していて列車がホームに親友後は運電子が下り胞ノ運転台に移動して運行を再開します。
駅までは車道があり、車でのアクセスは可能ですが車道もまた狭い屈曲路になっています。珍しいスイッチバック方式の駅なのでマニアが訪れることも多い駅です。この駅は通学生と高齢者が利用しています。路線バスは廃止されているので未だに必要とされている現役の駅です。
大畑駅
おまけにもうひとつ。スイッチバック駅の秘境駅として熊本県にある肥薩線の大畑駅をご紹介しておきます。こちらは人家が主変に2~3軒ほどありますが周囲は山深く。日本で唯一のループ線の中のスイッチバック駅ということで有名です。
古い駅舎がとても良い雰囲気で旅人を迎えてくれるので只今人気上昇中。あらゆる列車の通過藻許さないスイッチバック駅で秘境駅としては21位になっています。開業当時は蒸気機関車が走り、そのために設けられた駅とされています。
信号所と給水所としての役割が大きい駅で、源氏でも周辺には人家がなく大きな集落に出るには徒歩で1時間近くかかります。ホームから構内踏み切りを渡って駅舎に行くことができ、木造の駅舎は開業当時の雰囲気をそのままにリニューアルされた部分などもあり、懐かしい風景を楽しみたい人たちの間でも人気の無人駅になっています。
秘境駅で異次元のひとときを
いかがでしたでしょうか。アクセスの不便さが逆に新鮮な徳島県の秘境、坪尻駅。たっぷりと時間をかけてかつて賑わっていたと言われる町に思いを馳せながらしばし滞在してみるのはいつもとは違った豊かな時間を過ごせるかもしれません。四国に旅行の際はぜひ徳島へ足を伸ばして、スイッチバックも珍しい、秘境、坪尻駅へお出かけください。
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