世界遺産・カルナック神殿を見学しよう!
エジプトと言えば首都カイロにあるギザのピラミッドやスフィンクスを思い浮かべる人が多いのではないかと思いますが、カイロからナイル川沿いに南下した観光都市ルクソールにも、歴史的な建築物のカルナック神殿やルクソール神殿があります。
ここではそんなカルナック神殿について、見どころや行き方、世界遺産、おすすめの観光スポットなどの情報を交えつつ紹介します。
世界遺産・カルナック神殿のあるルクソール
ルクソールはエジプト南部にある古代都市で、カイロから600キロメートルほど南のナイル川東岸にあります。この都市は、紀元前16世紀から紀元前11世紀にかけて、王であるファラオたちが支配した古代エジプトの都・テーブがあったところです。
ルクソールには何世紀にも渡って首都が置かれましたが、紀元前7世紀に行われたアレキサンダー大王の遠征後のプトレマイオス軍によって完全に破壊され、ローマ帝国の支配下となった歴史があります。
カルナック神殿周辺地域は世界遺産に認定
ルクソールを代表する建築物として、カルナック神殿とそこから2.5キロメートルほど離れた場所にあるルクソール神殿の2つの巨大遺跡の一部が現在でも残っています。また、ナイル川の西岸には、歴代の王族たちが眠る墓・王家の谷と王妃の谷があります。
カルナック神殿を含めたこれらの場所は、「古代都市テーベとその墓地遺跡」として、ユネスコの世界遺産に登録されています。
カルナック神殿とルクソール神殿
カルナック神殿にはアメン神が祀られていますが、その神殿から南に2.5キロメートルほど離れた場所にはルクソール神殿があり、この場所にはアメン神の妻ムート神が祀られています。
この2つの神殿はかつてはつながっていたそうです。カルナック神殿とルクソール神殿の第一塔門の前には、スフィンクスが並ぶ参道があり、それぞれの神殿に向かうように並んでいます。これはかつてそこに道が造られていたことを意味しています。
ちなみに、カルナック神殿のスフィンクスは頭が羊の形をしていますが、ルクソール神殿のスフィンクスは頭が人の形をしています。
ルクソール神殿には、ラムセス2世の坐像2体とオベリスクが設置されています。このオベリスクは高さ25メートル、重量254トンという巨大なもので、ハトシェプスト女王のオベリスクに次ぐ大きさを誇っています。ラムセス像は顔面が破損しています。
神殿にはオベリスクがもう1本立っていたのですが、ナポレオンが引き抜いてパリに移送し、現在、コンコルド広場の中央にに聳えています。そして神殿には台のみが残されています。
世界遺産・カルナック神殿とは?
カルナック神殿は、4000年ほど前にテーベにある空気の神・アメン神を祀るために建てられた神殿で、テーベ侯がエジプト全体を支配するようになるとともに、地方神だったアメン神も太陽神ラーと統合され、エジプトの最高神となります。
ラムセス2世をはじめ、歴代の王も神殿や像を寄進するようになり、当初小さかった地方の神殿は、巨大な建造物になっていきました。
全盛時のルクソール神殿は、東西に540メートル、南北に600メートルの壁で囲まれたスケールの大きい神殿で、世界最大の神殿建造物と言われています。
第1塔門を入ると第1中庭があり、その場所から第2塔門と大列柱室が見えます。第2塔門の前では巨像の神官が向き合っていますが、以前には無かったもので、修復時に造られたものと考えられます。第1中庭には大きな石柱が何本も立ち、廊下になっていたようですが、現在では1本のみ残っています。
世界遺産・カルナック神殿への行き方
カルナック神殿のあるルクソールへの行き方としては、カイロから飛行機かバス、電車でアクセスする行き方が一般的です。ナイル川クルーズに申し込んでアクセスする行き方もあります。
まず飛行機による行き方について説明しましょう。飛行機の場合は、エジプトの首都カイロからエジプト航空他の飛行機に約1時間ほど乗れば、ルクソールの空港にアクセスできます。格安のフライトを探せば、往復2万円強で飛ぶことができます。
バスまた電車での行き方を選択する場合は、カイロからルクソールまで約10時間ほどかかります。寝台列車を利用すれば比較的楽にアクセスできる行き方となります。
ただし、電車での行き方を選ぶ場合、外国人に対しては窓口ではチケットを購入できないため、宿泊するホテルに代行で購入してもらわなければなりません。カイロでは、「サファリホテル」や「ベニス細川家」といったホテルが代行してくれますが、通常より料金が高くなることは覚悟する必要があります。
次にルクソール駅からカルナック神殿への行き方について説明しましょう。ルクソール駅に着いたら、駅前の乗り合いバスに乗車してカルナック神殿までアクセスします。
バスのドライバーに「カルナックテンプル」と言えば、150円程度で目的地にアクセスすることができます。ルクソールは、見どころが多い割にはそれほど広くない観光スポットなので、短時間でアクセスできます。
世界遺産・カルナック神殿の見どころ1:神殿建造物
カルナック神殿の第1塔門を入ると、まず第1中庭があり、そこから第2塔門と大列柱室が見えます。第1中庭には当時、石柱が何本も連なる廊下がありましたが、現在は土台のみが並んでいます。遺跡の下部は、過去に起こったナイル川の氾濫によって砂漠に埋まってしまっていたものと考えられています。
第一塔門
カルナック神殿に入って前に進むと、まず羊の頭をしたいくつものスフィンクスが目に入ります。観光スポットの見どころの最初となるこのスフィンクス群は、きれいな姿のまま残されており、第一塔門の前まで並んでいます。
この羊の頭はアメン神の聖獣羊を現しています。遺跡の入口が第一塔門となります。この塔門は高さ43メートルを誇るエジプト最大の門で、末期王朝時代に造られたとされていますが、この塔門は未完成だったようです。
ラムセス2世の第一中庭
第一塔門をくぐった先は、第2の観光スポットとなるラムセス2世の第一中庭に続いています。この見どころの多い庭では、ラムセス2世の巨像が王女を従えて聳え立っています。
第一中庭の建造物のほとんどが壊れてしまっていますが、当時はこの場所に礼拝堂があったようです。
ラムセス2世は、第18王朝末期の王・ツタンカーメンの後の第19王朝の王で、この王の時代にエジプトは再度世界帝国に返り咲き、リビアやヌビア、パレスチナまで勢力を伸ばしていきます。ラムセスという名称は、エジプトの神ラーによって生まれたという「ラー・メス・シス」のギリシア語読みとなります。
その先に第二塔門があり、その門をくぐると、エジプト最大の列柱室があり石柱の森とも呼ばれる見どころたっぷりの観光スポット・第二中庭があります。
至聖所
カルナック神殿の至聖所は、トトメス3世が建立した聖域の中に造られており、その中には上下エジプトを象徴するパピルス柱が建てられています。この見どころの多い至聖所は、まだカルナック神殿が小部落の神殿として造られた時代の最初の建物で、その後歴代の王たちにより、大規模な寄進がすすめられました。
トトメス3世はエジプトの第18王朝6代目の王で、対外遠征を再開後、エジプト史上最大の王国を築いたファラオです。ツタンカーメンの時代は更に100年ほど後になります。
また、神のエジプトを象徴するロータス柱、アメン神の姿をしたツタンカーメン像、ツタンカーメンの王妃・アンク・セン・アメンの像なども見られます。
トトメス3世の祝祭殿
カルナック神殿の最も奥、至聖所の先にトトメス3世の祝祭殿があります。この建物の中には、後になってからキリスト教徒によって描かれた聖人の絵画や十字架の形に変えられた古代の像などが残されています。
また祝祭殿の裏には、ハトシェプスト女王の植物園と呼ばれる場所があり、エジプト以外の異国の植物のレリーフが残されています。貿易にも力を入れ、海外に想いを馳せたハトシェプスト女王ならではのレリーフと言えます。
聖なる池
トトメス3世祝祭殿の南側には観光スポットの1つ・聖なる池があります。この池は王や神官たちが神儀を行う前に身を清めた場所で、この池の手前に倒れたオベリスクが置かれています。
このオベリスクはハトシェプスト女王のオベリスクの片割れで、美しいレリーフが描かれています。またそのそばには、スカラベ(ふんころがし)があります。スカラベは、古代エジプトでは神の化身と云われ、強力なパワーを持つ存在だったようです。スカラベの周りを時計周りと反対方向に3度廻ると幸せになれるそうです。
世界遺産・カルナック神殿の見どころ2:オベリスク
カルナック神殿の観光スポット・列柱室を出たところにオベリスクが2本立っています。オベリスクはギリシャ神話に由来するもので、「針」や「小さな串」を意味しており、一般的には、神殿の入口の両側に太陽の象徴として立てられています。
オベリスクは通常、神殿のモニュメントとして立てられており、1枚の石で造られています。現在では、世界に7本しかない貴重なものとなっています。
カルナック神殿のオベリスクに使われている石は、エジプト最南部のアスワンから切り出されており、当初は4本立っていたようです。
現在カルナック神殿に残されている2本のオベリスクの内、1本はトトメスI世のもの、もう1っ本はハトシェプスト女王のもので、女王のオベリスクは対になっており、残る1本は観光スポットの1つ「聖なる池」と呼ばれる場所に倒れた状態で置かれています。
もう1本は4世紀頃、東ローマ帝国によって運び出され、コンスタンチノープル、つまり現在のトルコ・イスタンブールのブルーモスク隣の競技場跡にその姿を見ることができます。
ハトシェプスト女王のオベリスクは保存状態が良いのですが、それにはこんな話があるそうです。
トトメス3世は先代の王妃に当たるハトシェプスト女王の物を壊しまくったそうですが、オベリスクは神にささげたものだけに壊せなかったため、見えないよう壁で囲ってしまいました。その壁が結果としてハトシェプスト女王のオベリスクをきれいな状態で保存することになったという皮肉とも言える逸話が残されています。
世界遺産・カルナック神殿の見どころ3:大列柱室
カルナック神殿のハイライトとも言える観光スポット・第2中庭は、列柱室と呼ばれています。この列柱室では、柱の上部が花が開いたようになっている石柱が中央に12本あります。この石柱は、パピルスの茎と花のイメージから開花パピルス柱と呼ばれています。その周りを柱の上部がつぼみ状になっている未開花パピルス122本が取り巻いています。
列柱室はラムセス1世が建設を始め、セティ1世がその事業を引き継ぎ、ラムセス2世によって完成されたとされています。
カルナック神殿の観光スポット・列柱室の石柱は、1本が高さ15メートルもあり、周囲は大人が12人ほど手を繋いでやっと抱えられるほどの大きさで、柱周りには、王や王妃、神のレリーフなどが刻まれています。
このような巨大な柱が134本も立てられた背景には、王の権力や富を誇示する意図や王を神格化する意志が働いたのではないかと考えられています。
世界遺産・カルナック神殿の音と光のショー
カルナック神殿では、夜になると「音と光のショー」を見ることができます。カルナック神殿は幻想的な光に照らされ、入口から聖なる池までの見どころ溢れる神殿内を、音楽と物語を聞きながら歩くことができます。
ライトアップされた神秘的なカルナック神殿を舞台に、古代エジプトの神々の物語が語られます。勿論日本語ではありませんが、雰囲気は十分伝わります。
世界遺産・カルナック神殿から程近い王家の谷
王家の谷はナイル川の西岸にある岩山の中にある岩窟墓群です。この谷には古代エジプトで一世を風靡した歴代の王様たちの墓が並んでおり、24の王墓など、64もの墓があります。
その中には、ツタンカーメンやラムセス王、メルエンプタハ、タウセルトなどの歴代の王や、若い貴婦人・セトナクト、サプタハなどの墓もあります。
また、王家の谷の反対側の谷には、紀元前16世紀にトトメス2世死後、古代エジプト初の女王となったハトシェプスト女王の葬祭殿があります。
世界遺産・カルナック神殿周辺の気候
カルナック神殿のあるルクソール周辺は、5月末から9月にかけて気温が40度を超え、50度近くになることもあります。そのため、この時期はルクソールへの旅行はおすすめできません。また、3月後半から5月にかけては気候自体はまずまずですが、ハムシーンと呼ばれる砂嵐に遭遇することがあります。
ルクソールのベストシーズンは2月から3月の前半、または9月から11月となります。この時期の気温は20度前後から30度以下と比較的過ごしやすい気候となります。
世界遺産・カルナック神殿へ行こう!
エジプトの南部に位置するルクソールは、今から3500年も前に古代エジプトの王たちが躍動し一世を風靡した、古い歴史を持つ地域です。そんなルクソールを代表する観光スポットがカルナック神殿で、それと対を成す形でルクソール神殿があります。
ここではそんなエジプトの世界遺産・カルナック神殿について、おすすめの観光スポットや見どころ、行き方などの情報を取り入れながら説明してみました。エジプトへの旅を計画する際は、是非この情報をお役立て下さい。
RELATED
関連記事
RELATED
- エジプトのピラミッドの場所は?謎の古代遺跡を見に行こう!その行き方は?
エジプトの首都カイロ近郊のギザには有名な三大ピラミットがあり、エジプトのシンボルになっています。エジプトには、約140基の...
Marine-Blue
- エジプトの言語は?英語は通じるの?旅先で困らない使える言葉ご紹介!
世界中から多くの観光客が訪れ、日本からの旅行者も多いエジプト。そんなエジプトでは英語は通じるのでしょうか?エジプトで英語は...
なつ
- ギザの大スフィンクスはエジプト世界遺産!三大ピラミッドも合わせてご紹介!
エジプトの首都カイロ郊外に位置する「ギザ」の砂漠の大地には、古代エジプトのファラオクフ王、カフラー王、メンカウラー王の三大...
rikorea
- エジプトの首都カイロ観光おすすめ7選!歴史地区で世界遺産を堪能!
世界的に有名な歴史地区、世界遺産の宝庫である「エジプト」は、世界中から多くの観光客が集まる大人気観光地です。特にエジプトの...
rikorea
- アブシンベル神殿!湖から移動した遺跡!その見どころと行き方ご紹介!
世界初の世界遺産「アブシンベル神殿」は、紀元前1250年頃、ラムセス2世によって造られたという世界最大の岩窟神殿です。水没...
rikorea
- 紅海はアラビアの人気ダイビングスポット!まったりリゾートステイもおすすめ
紅海は、世界屈指のダイビングスポットとして世界のダイバーの憧れの地です。紅海の透明度は、他のダイビングスポットが全く歯がた...
川島 剛
- ルクソール観光!神殿のライトアップが幻想的!見どころや入場料は?
カルナック神殿の付属神殿として造られた「ルクソール神殿」が神秘的すぎると観光客から大人気です。「古代都市テーベとその墓地遺...
rikorea
- 王家の谷は岩窟墓!ツタンカーメンも眠っていた?場所や入場料まとめ!
古代エジプトの新王国時代の王たちが眠る「王家の谷」。王家の谷は岩窟墓となっており、大変貴重な遺跡です。かの有名なツタンカー...
rikorea
- アスワンハイダム(エジプト)は世界遺産発祥の地!周辺観光スポット紹介!
かつて、エジプトのナイル川の洪水をコントロールするため「アスワンハイダム」が造られました。これにより多くの貴重な遺跡が水没...
rikorea
- エジプト旅行の危険な事!治安・物価は?安全に楽しむ情報まとめ!
ピラミッドやスフィンクス、砂漠のラクダなど、エジプトは魅力いっぱいの国です。治安など日本とはさまざまな面で違いが存在します...
PeppoTigSola
- ハッサン・ファトヒーの残した村を訪ねる!エジプト生まれの建築家の足跡!
エジプトが誇る建築家「ハッサン・ファトヒー」をご存知ですか。日干し煉瓦などの伝統的な建築技法を近代建築に取り入れ、様々な遺...
飯島かさほ
- エジプトの壁画!神話の神や謎の文字!実物を見に行く前の予備知識!
エジプトと聞いて誰しもが思い浮かべるのが、ピラミッド。そのピラミッドや遺跡に遺る、古代エジプト文明の謎を紐解く鍵となる数々...
田前希美
- エジプト観光!おすすめ世界遺産・名所11選!現地のお土産も!
エジプトは、一生に一度は行きたい場所として名前が挙がる人気観光地です。アラブの春でムバラク政権が崩壊して以降、政情への不安...
南真州
- エジプト「ダハブ」はダイビングスポットで有名な村!行き方や治安は?
エジプトというとピラミッドや砂漠のイメージが強い方も多いかと思いますが、エジプトのダハブという都市は、ダイビングスポットで...
neko master
- エジプト料理のおすすめスポットは?現地の食文化や伝統食を知りたい!
古代エジプトの伝統を受け継いできたエジプト料理は、ペルシア、古代ローマ、古代ギリシャ、トルコと交流が深く、食材の伝来と共に...
zukzuk22