「日航亭 大湯」は徳川家ゆかりの日帰り温泉！アクセスに料金や駐車場は？

昭和の時代には憧れのリゾート地として君臨していた熱海は、今では首都圏からのアクセスが良い気軽な旅行先として人気となっています。今回は、そんな熱海にある日帰り温泉「日航亭大湯」をご紹介します。徳川家康もお忍びで訪れたと言われている温泉はどんな温泉なのでしょうか。日航亭大湯の利用料金や営業時間といった基本情報から、アクセス方法や便利な駐車場の情報までたっぷりとご紹介します。

日本有数の温泉地として有名な熱海は、源泉の数も湧出量も多い地域です。中でも「熱海七湯」と呼ばれる7つの源泉は、良質な温泉が自噴する名湯として多くの人に愛されてきました。日航亭の敷地内に湧き出す大湯も熱海七湯の一つに数えられ、1200年以上も昔の奈良時代に噴き出したのが始まりと言われている大変歴史の深い温泉です。

日航亭大湯は昭和16年創業という老舗の温泉で、かつては温泉旅館として営業していたそうです。現在は日帰り温泉となって営業時間が限られていますが、2本の源泉から1日8万リットル湧き出すという豊富な湯量と、水を加えない源泉掛け流しの良質な温泉が評判を呼び、多くの観光客や温泉マニアで賑わっています。

熱海の大湯をこよなく愛していた人物といえば徳川家康です。源頼朝を尊敬していた家康は、頼朝と縁の深かった熱海の伊豆山神社へ足を運び、伊豆山神社から程近い大湯へも湯治に訪れていたそうです。熱海の大湯は、家康が関ヶ原の合戦前に入浴し見事勝利を収めたことから「出世の湯」とも呼ばれています。日航亭大湯の玄関前にある石門には、徳川家の家紋が描かれています。

家康は大の温泉好きとして有名です。戦国時代には熱海の大湯に本陣が敷かれ、負傷した兵たちが温泉で傷を癒したのだとか。その後、家康が天下統一を果たして泰平の世が訪れると、武士から庶民に至るまで一大湯治ブームが巻き起こります。江戸からのアクセスが良い熱海には家康を始め全国の大名が湯治に訪れ、その数は江戸時代200年余りの間で65名にも及んだという記録が残っています。

家康は、熱海に来られない人のために温泉のお湯を桶に汲んで運ばせたこともあるそうです。熱海の大湯を珍重する家康にならい、家康亡き後も歴代の徳川将軍は熱海に湯治に訪れたり、江戸城まで温泉を桶で運ばせたりしていました。これが有名な「御汲湯」で、始めたのは4代将軍家綱。8代将軍吉宗に至っては8年間でなんと3643回の湯桶を運ばせたそうです。こうして、熱海の大湯は徳川将軍家御用達の温泉としての地位を確立しました。

徳川家康を魅了した大湯とはどのような温泉なのでしょうか。色はかすかに黄味がかった透明で、匂いは優しい潮の香りがします。手触りはほんのり柔らかさがあります。源泉の温度は98度を超えほぼ熱湯と言っていいほどの高温ですが、温度調節は水を加えず注ぐお湯の量のみで調整し、湯船の温度は41度から42度に保たれています。循環ろ過もしない源泉掛け流しの贅沢な温泉です。

泉質はナトリウム・カルシウム－塩化物温泉。塩化物成分が肌をコーティングするので、温泉から上がった後も温かさが長く続きます。また、天然保湿効果のあるメタイケイ酸も豊富に含まれており、肌がしっとりする美人の湯です。温泉から上がった直後は塩分のせいで少しべたつきを感じますが、乾くとサラサラの肌触りに変わるので真水で流さずにおいた方が効能が長続きするのでおすすめです。

家康を始め多くの大名が湯治に訪れたという大湯の温泉の効能は、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進など多岐に渡ります。日航亭大湯のスタッフの話では、杖をついて日航亭大湯を訪れた人が帰りには杖なしで歩けるようになり、杖を忘れて帰ってしまうほどなのだそうです。

日航亭大湯のお風呂は、男湯と女湯が日替わりで交代します。受付のあるロビーを通ってウッドデッキの渡り廊下を進むと、のれんのかかった温泉の入口があります。いずれも露天風呂と内湯が1つずつありますが、奥の方の温泉が広めに造られています。また、サウナ室も備えています。脱衣所には脱衣かごとコインロッカーがあります。貴重品はコインロッカーに入れましょう。コインロッカーの料金は100円です。

奥側のお風呂は広々と開放的な露天風呂と、大きな窓の内湯があります。お風呂はちょうど露天風呂と内湯を壁で仕切ったような造りになっていて、つなげた直径は10mという広さ。一度に20人程度入浴できるほどの大きさです。露天風呂には趣のある屋根がついているので、雨の日でも温泉を楽しめます。四季折々の緑に囲まれた露天風呂でのんびり癒されましょう。

手前側のお風呂は、小ぢんまりとしているもののしっぽりと過ごせそうな落ち着いた雰囲気です。こちらは内湯と露天風呂がつながっていて、露天風呂には竹垣が囲ってあるので外から見えることはありません。なお、お湯が熱いからといって水を入れるのは禁物です。加水なしの源泉掛け流しにこだわった由緒正しい大湯であることを忘れずに、温泉を楽しみましょう。

日航亭大湯には、2つの大浴場の他に貸し切りできる家族風呂があります。家族風呂は内湯のみですが、かつては大浴場として使われていたという浴槽は家族全員で入っても十分な広さ。家族風呂は予約不要で、空いていれば自由に利用することができます。営業時間中はいつでも利用でき、時間は40分間です。貸し切りの料金が無料というのもうれしいポイントです。利用の際は鍵をかけるのを忘れないようにしましょう。

温泉に入った後は、30畳の大広間で休憩ができます。床の間や縁側を備えた風情ある大広間で、手入れの行き届いた庭園を眺めながらのんびりと過ごせば、昭和の時代にタイムスリップしたようなノスタルジックな気分になれそうです。ごろごろ寝転ぶも良し、テレビを見るも良し。まるで田舎のおばあちゃんの家のように寛げる空間です。また、5名まで利用できる有料の個室もあり、料金は2時間3000円となっています。

休憩所にはマッサージチェアや将棋盤も置いてあり、思い思いに楽しむことができます。また、ランチタイムにはカレーライスや定食、うどんなどの食事を注文することができ、1000円以下の料金で食べられるメニューも多いです。ランチの営業時間は11時30分から14時までとなっています。駅弁などの持ち込みも可能です。なお、飲み物やおつまみはロビーの自動販売機や受付で購入できます。

日航亭大湯の利用料金は、大人1000円、小人500円となっています。時間制限はありませんが、再入場はできないのでご注意下さい。なお、JR熱海駅直結のラスカ熱海1階にある観光案内所では、日航亭大湯の利用料金が100円割引となるクーポンを配布しているそうです。観光案内所の営業時間は9時から20時です。また、JAF優待もあり、JAF会員証の提示で利用料金が100円割引となります。これら2つの料金割引は併用できません。

受付では入浴に必要なグッズを販売しています。タオルはレンタルも購入もでき、フェイスタオルをレンタルする場合は1枚50円、購入する場合は1枚200円です。リンスインシャンプーとボディシャンプーはお風呂に備え付けてありますが化粧水などは用意されていないので、持参するのがおすすめです。また、館内着も有料となっています。

日航亭大湯の営業時間は9時から20時までとなっています。営業時間別の混雑状況は、土曜の営業時間中では14時から17時にかけて最も人が多くなる傾向にあります。また、日曜の営業時間中では13時から16時にかけて人が多くなるようです。平日では、どの営業時間帯も比較的空いています。定休日は火曜で、火曜が祝日にあたる場合は翌日がお休みとなります。

住所:静岡県熱海市上宿町5-26 電話番号:0557-83-6021

日航亭大湯のある熱海までは電車でのアクセスも便利です。東京駅からのアクセスは、JR東海道本線快速アクティーを利用すると1時間34分で熱海駅に到着します。料金は1940円です。また、東京駅から東海道新幹線を利用した場合は、新幹線ひかりの乗車で所要時間が38分と早く到着できます。料金は3670円です。

熱海駅からのアクセスは、駅を出て右に商店街沿いを進み、田原本町の交差点を右側に進んで大通りを道なりに15分ほど歩くと到着します。熱海駅からはバスも発着しており、海沿いの観光スポット「お宮の松」なども通るのでおすすめです。バスの場合は東銀座バス停で下車します。また、徒歩でのアクセスなら熱海駅からJR伊東線に乗り換え、隣の来宮駅から歩く方が近くておすすめです。

日航亭大湯へ車でアクセスする場合は、湯河原方面から延びる国道135号線を進みます。東海岸町交差点付近から熱海銀座商店街へ入り直進し、熱海ニューフジヤホテルを過ぎたところにある熱海ニューフジヤホテル第3駐車場の表示を目指して一方通行の道へ進むと、突き当りに日航亭大湯があります。

熱海のドライブをもっと楽しむなら、熱海海岸自動車道、通称熱海ビーチラインを利用するのもおすすめです。湯河原から熱海の「お宮の松」手前までの約6kmの道のりですが、海沿いを走るドライブコースは爽快です。通行料金は普通車300円で、ETCには対応していないようです。

日航亭大湯の専用駐車場は、日航亭大湯をそのまま過ぎた突き当りにあります。収容台数はおよそ20台程度で、駐車場にはラインが引いていないので混雑時には譲り合って利用しましょう。駐車場は無料で利用できます。

専用駐車場が満車の場合は、近くの有料駐車場を利用しましょう。最寄りの駐車場は、熱海ニューフジヤホテルとスルガ銀行の交差点を左折した所にある「タイムズ相石パーク熱海銀座町駐車場」です。料金は60分200円で、収容台数は22台です。

日航亭大湯を訪れたらぜひ立ち寄りたい見どころの一つが「大湯間歇泉」です。日航亭大湯の手前左側にあり、一見するとただの岩場ですが、実は世界の三大間歇泉の一つに数えられる名所です。ちなみに他の2ヶ所は、アメリカのイエローストーン公園にある「オールドフェイスフル」と、アイスランドの「グレートガイザー」です。

かつては地面が揺れるほど激しく温泉と蒸気を噴き出していた大湯間歇泉ですが、大正12年の関東大震災を境に噴出が衰えてきたそうです。昭和37年に熱海市の文化財として保存が決まり、現在では4分に1回のペースで人工的に温泉が噴出されるようになっています。噴出はおよそ3分間続くそうです。近づきすぎると熱い温泉のしぶきが飛んでくるので気をつけましょう。

熱海の大湯の守り神と言われているのが、日航亭大湯の隣にある「湯前神社」です。創建は749年とされていて、ちょうど熱海の地に温泉が湧き出した頃からずっと熱海の温泉を守り続けてきたことになります。かつては湯治に訪れた徳川家康を始め、多くの大名たちも参拝したという由緒正しい神社です。境内には、久留米藩7代藩主の有馬頼徸が湯治に訪れた際に寄進した石灯篭と石鳥居があります。

湯前神社にお祀りされているご祭神は「少彦名神」という医薬の神様です。大国主神と共に日本中を回って国土を開拓したといわれる神様で、病気平癒や安産など健康に関わる事にご利益があるのだとか。家康が参拝したというのも納得です。境内には大湯温泉が湧き出しており、手水の役目を果たしています。ただし大湯の源泉は98度の熱湯であることを忘れずに。下の方に触れば火傷せずに済みそうです。

湯前神社では、熱海の大湯の湯脈がいつまでも続く事を祈念して、春と秋に例大祭が行われます。例大祭では、江戸城へ温泉を運んだ「御汲湯」を再現した「湯汲み道中」というパレードが名物となっています。湯汲み道中は熱海駅から湯前神社まで続きます。また、御汲湯の桶を乗せた御神輿が熱海市内を練り歩いたり、湯前神社の前で献湯祭が行われたりと、多くの人で賑わう町を挙げてのお祭りとなっています。

熱海にある「日航亭大湯」をご紹介しました。歴史の深い熱海の大湯を贅沢な源泉掛け流しで堪能できる日航亭大湯は、心身の疲れを癒してくれる場所。湯治や御汲湯で賑わった江戸時代に思いを馳せながら、優しい潮の香りの温泉で温まってみてはいかがでしょうか。