最上稲荷に行ってみよう
近年、御朱印集めがブームとなっていることもあり、観光の時に寺社参拝をするという方も多いのではないでしようか。そのような方で岡山に行ったらぜひ訪れてほしいのが最上稲荷です。岡山県周辺では日本三大稲荷の1つに数えられる最上稲荷について、アクセス、駐車場情報やお守り、御朱印情報のほか、近くの温泉などについても紹介します。
最上稲荷とは
最初に、最上稲荷(さいじょういなり)ですが、「稲荷」という名前がついているため、知らない方は神社だと勘違いしてしまうかもしれません。鳥居などもあり、神社だと信じている方も多いかもしれませんが、実は最上稲荷はお寺で、正式名称は「最上稲荷山妙教寺」と言う、日蓮宗の寺です。
普通「稲荷」といえば神社なのに、なぜ最上稲荷はお寺なのでしょうか。それは明治の神仏分離令が出された時に、特別に「神仏習合」の祭祀形態が許されたからなのです。ですからお寺ではありますが鳥居があったり、本殿が神宮のような形式になっていたりと、両方の特徴を持つのです。
最上稲荷はどこにある?
最上稲荷があるのは岡山県岡山市です。住所で言うと岡山市北区高松稲荷という場所で、この周辺が高松という地区であることから、最上稲荷のことを「高松稲荷」と呼ぶ場合もあります。
日本三大稲荷というと、まず挙げられるのが伏見稲荷大社(京都市伏見区)ですが、残りの2つに関しては諸説あります。その中にあって最上稲荷は岡山県周辺で三大稲荷の1つにカウントされています。地元の人たちにとっては古くから信仰を集めた寺院の1つであることは確実でしょう。
最上稲荷へのアクセス
それでは最上稲荷へのアクセスを紹介しましょう。最上稲荷は前述したように岡山県岡山市にあります。とはいっても「岡山」駅からは少し距離があります。岡山駅に着いたら運動公園口(西口)から約15キロあり、徒歩で行ける距離ではありません。タクシーを利用して20分ほどかかります。
距離的に近いのは JR吉備線(桃太郎線)の「備中高松」駅となります。第二次世界大戦前はここから最上稲荷門前まで延びる路線がありましたが、現在はここが最寄りとなっています。駅からは2キロほどあるのでタクシーを利用すると5分ほどですが、徒歩でも30分程度で行くことができます。
岡山駅は東海道・山陽新幹線のすべての列車が停車するなど、岡山の中心駅ですから、遠方からのアクセスでも問題ないでしょう。一方吉備線は普通列車のみの路線ですが、岡山駅が起点となっており、1時間に1本ないし2本が運転されています。
飛行機でアクセスしたいという場合の最寄りは「岡山空港」になります。実は最上稲荷は岡山空港と備中高松駅の中間あたりに位置しており、岡山空港からでも8キロほど、タクシーで10分ほどでアクセスすることが可能です。
タクシーを利用してのアクセスが多いということで、車でのアクセスを考える方もおおいでしょう。車でアクセスする場合の最寄りは岡山自動車道の「岡山総社」ICです。ここからの距離は約5キロで、車で10分ほどです。
ICを降りたら国道180号線を岡山方面に進んでいくと、大きな鳥居が見えてきます。これが最上稲荷の目じるしとなります。
最上稲荷に駐車場はある?
公共交通機関を利用してアクセスする場合はあまり考えなくてもよいですが、車でアクセスする場合、気になるのが駐車場の問題です。最上稲荷には駐車場はあるのでしょうか。
最上稲荷の周辺には、有料ではありますが約5000台分の大型駐車場があります。これだけ駐車場があれば、参拝に車を利用しても特に心配はいらないと推測できます。しかし初詣や節分など、参拝者が多くなるシーズンは周辺の道路がとても渋滞すると言われます。
さらにこの時期には交通規制もかかるため、駐車場があるにしても車でのアクセスは多少時間がかかるかもしれません。もしこの時期に車でアクセスするのであれば、時間に余裕を持たせることをおすすめします。もしくは公共交通機関を利用するとよいでしょう。
最上稲荷の由緒
寺伝によると、最上稲荷の創建は約1200年前に遡ります。752年、報恩大師という僧が孝謙天皇の病気平癒の勅命を受けました。大師は龍王山中腹にある八畳岩で祈願をしたところ、白い狐に乗った最上位経王大菩薩が八畳岩に降臨しました。大師はその尊影を刻み、祈願を続けたところ、天皇の病は無事に平癒しました。
さらに785年、今度は桓武天皇が病となります。この時も大師が祈願をすると無事に病気が平癒しました。桓武天皇はそれを喜んで、寺院を建立することを申し出ます。そこで大師は霊地を求めていたところ、最上位経王大菩薩がふたたびあらわれます。
最上位経王大菩薩は「備中国の龍王山麓に堂宇を定めるべし」と伝えたため、大師はこのことを桓武天皇に伝えます。天皇はその進言を受けて祈願所をつくりました。これが龍王山神宮寺です。
しかし、羽柴秀吉の中国侵攻の際、神宮寺は焼失してしまいました。そこで1601年、この地を治めた旗本花房職之が関東から日円聖人を招き、稲荷山妙教寺と改め、日蓮宗の寺として再興しました。
先ほど述べたように、明治の神仏分離令が出された時、岡山県内で唯一廃仏毀釈の難を逃れたところと言われており、現在も神仏習合の形態を残す寺として、多くの参拝客が訪れています。
最上稲荷の見どころ1:仁王門
それでは最上稲荷の見どころについていくつか紹介していきましょう。まずは仁王門です。最上稲荷の仁王門は1950年に山火事にあって焼失したため、1958年に再建されたものです。先ほど最上稲荷は神社ではなく寺院だと言いましたが、ここでまた不思議な光景を見ることになります。
一般のお寺の仁王門というと、両脇に仁王がある、朱塗りなどの門を連想します。ところが最上稲荷の仁王門はなんとインドの殿堂様式で建てられています。石造りで屋根が丸い形をしているところは、一瞬ここが日本のお寺なのかと目を疑ってしまうかもしれません。2009年、登録有形文化財に指定されています。
なぜこのような石造りのものにしたのかというと、前述したように1950年の山火事で仁王門も仁王像もすべて焼失したからです。しかし逆に言うと、この山火事は近隣一帯を焼いたものであったにもかかわらず、仁王門のみの被害ですみました。
仁王がお寺を救ったと考えた当時の住職は「二度と火災に遭わないように」と考えました。するとある学者から石造の仁王門を提案され、それを受けて作ったのだそうです。
最上稲荷の見どころ2:本殿
最上稲荷には本殿が2つあります。現在本殿として使われているのは霊光殿という建物で、1979年に開山千二百年記念事業の一環で建てられました。現在行われている行事はここが多いですし、また一般に最上稲荷に参拝する場合はここで参拝します。
ここには長さ約12メートル、総重量1.5トンにも及ぶ大注連縄がかけられています。一般的に注連縄というのは神域と現世を隔てる結界をあらわすものとして神社にかけられるものです。このあたりも最上稲荷が神仏習合であることを示すものと言えるでしょう。
一方、旧本殿の霊応殿は1741年に再建されました。新本殿が造られた際に曳家工法を使い、本殿の奥の文化財ゾーンと呼ばれる場所に移動されています。最上稲荷の中では最古の建物であり、2004年に一部が岡山市重要文化財に、2009年にはすべてが登録有形文化財に指定されました。
最上稲荷の見どころ3:最上尊霊地
神社の中には御神体の山の上に「奥宮」と呼ばれるものがあるところがあります。最上稲荷は寺院ではありますが、「奥宮」に相当するものがあり、それが最上尊霊地になります。最上尊とは本尊である最上位経王大菩薩のことです。
この最上尊霊地は先ほど述べた旧本殿の西側の道を登っていくルートです。途中には由緒のところで紹介した八畳岩のほか、お題目が刻まれた題目岩、報恩大師が修行の時に座ったところ、清水が湧きだしたという巌開明王などがあります。僧侶の修行道場としても使われる場所です。
最上位経王大菩薩は慈悲のご利益があるとされ、衆生の苦しみを救うと言われます。山を登ることになるので少し大変ですが、上からは大鳥居、備中高松城址などが一望でき、絶景スポットでもあります。可能ならばチャレンジしてみてください。
最上稲荷の見どころ4:縁の末社
最上稲荷でもう1ヶ所、外せない場所があります。それが「縁の末社」です。最上稲荷の本殿と旧本殿の間あたりに位置しており、その名前から推測できるように、縁結びのご利益があるとされている場所です。
ここには縁引天王と離別天王が祀られています。この名前でわかるように、良縁を結び、悪縁を切り離すご利益があるとされています。良縁悪縁というのは男女の縁に限ったものではなく、広い意味での人間関係、さらには病気や悪癖にも効果があるとされているのです。縁結びと縁切り、両方を参拝するのが江戸時代からのならわしです。
最上稲荷の見どころ5:祭り
せっかくならば、なにかイベントがある時に最上稲荷に参拝してみたいと言う方には、節分と最上位経王大菩薩年次祭の日がおすすめです。初詣などももちろんですが、この2日はやはり参拝客が多く訪れ、駐車場もたくさんの車で埋まるようです。
まず節分は厄除けということで、全国で豆まきが行われます。最上稲荷でも豆まきが行われ、タレントなども参加して約10万袋の福豆がまかれるそうです。福豆を手にすることができれば、きっと福をキャッチできるでしょう。
もう1つの最上位経王大菩薩年次祭というのは9月中旬に行われる大祭です。この日は本殿に祀られている注連縄にお手綱がぶら下げられます。このお手綱をつかむことで最上尊の手とつながりご縁が得られるとされているのです。
またこの日は、最上尊が降臨したときの場面を現しているとされている寒松庭が無料公開されるほか、先ほど述べた八畳岩までの登拝の案内も行われます。このようにさまざまなご利益が期待できるので、この日に行くのもおすすめです。
最上稲荷のお守りは?
寺社に参拝した後、そのご利益をいただくためにお守りはいかがでしょうか。最上稲荷では本殿に行く手前に幸運ショップゆかりという売店があり、ここでお守りや縁起物などの授与が行われています。
お守りは一般的なタイプのもののほか、ストラップやキーホルダーのタイプのものもあります。こういったタイプはお守りをふだんから身近につけておくことができるという点で人気があるようです。
また、最上稲荷では、お守りなどをインターネットや電話で送ってもらうことができます。遠方などで参拝が難しいという場合など、こちらを利用することも可能です。ただし年末年始から節分の時期は窓口が混雑するため、お守りが送られてくるまで少し時間がかかるとのことです。
それから、お守りという点で見逃せないのが、先ほど紹介した縁の末社です。毎月7日、縁の末社では僧侶の案内で両縁参りを体験するプランがあります。このプランには参拝の他に法話と茶菓の接待、そしてこの日だけの縁御守という特別なお守りをいただくことができるのです。
このお守りは特にご利益があるとされているので、特に悪縁を絶ちきり良縁を得たいという方はこのプランに参加して、ぜひこのお守りを身につけてみてはいかがでしょうか。
最上稲荷の御朱印は?
最上稲荷はオリジナル御朱印帳、御朱印ともにあります。中でもオリジナル御朱印帳はネットで購入することもでき、種類も多くあります。何度も述べているように、最上稲荷は寺院なので、お寺の御朱印をいただく御朱印帳を用意して、御朱印の授与を受けるようにしてください。
最上稲荷のオリジナル御朱印帳のデザインは2種類です。仁王がデザインされているものと稲紋がデザインされているもので、仁王のタイプが3種類、稲紋のタイプが2種類の合計5種類の御朱印帳から選択できます。もちろん最上稲荷で購入することもできるので、参拝される方は実物を見て選ぶのもいいでしょう。
御朱印も複数の種類があります。手書きのタイプが2種類、スタンプのタイプが3種類あります。手書きの御朱印は御首題が揮毫されるものと、「妙法」が揮毫されるものとがあります。御朱印はいずれも、中央に「岡山高松 最上稲荷 如来秘密 神通之力 最上位経王大菩薩」、左肩に「日本三大稲荷」、左下に「最上稲荷山妙教寺」とあるものです。
スタンプタイプの御朱印は「最上位経王大菩薩」、「八大龍王尊」、「三面大黒尊天」の3種類があります。この文字が中央にスタンプで捺され、中央の御朱印はそれぞれに関係したものが捺されています。
なお、日付と寺院名はどちらも手書きで揮毫されていますが、御首題は「最上稲荷山妙教寺」、他のものは「最上稲荷総本山」です。これは最上稲荷が一時期日蓮宗から独立して最上稲荷教となったことによるものです。
最上稲荷の後は温泉でも
最上稲荷を参拝した後、温泉で疲れを癒すのはいかがでしょうか。実は最上稲荷のそばには温泉があり、参拝とセットで楽しむのには最適なのです。
この温泉は「稲荷山温泉 稲荷山健康センター」と言います。最上稲荷から降りてきたところにあり、宿泊もできる温泉となっています。天然温泉でさまざまなタイプの温泉が揃っており、中でも薬湯風呂と露店風呂は特に人気だそうです。県内最大級のサウナもおすすめです。
宿泊もできる温泉ですから、もちろん駐車場も完備されています。無料駐車場が約300台分あります。またJR岡山駅、備中高松駅行きの無料送迎バスもあるので、最上稲荷に公共交通機関を利用してアクセスした方も帰りは安心です。最上稲荷参拝後はぜひこの温泉で、癒しの時間をお過ごしください。
最上稲荷でご利益をいただこう
最上稲荷は神仏習合の珍しいお寺で、仁王門や鳥居など、他のお寺では見られないものが多くあります。また縁の末社は良縁結びのご利益が期待できると人気の場所でもあります。また駐車場なども完備され、帰りに温泉で癒されるというプランもあるなど、楽しみもたくさんあります。ぜひ最上稲荷で心身ともに癒されるひとときを楽しんでください。
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