日本三大うどんとは?
日本人は昔から3という数字が好きなようです。その証拠に「日本三大○○」というものが多数あります。でも日本三大はたいてい、3つに納まりません。日本三大うどんの場合は讃岐、稲庭次ぐ3番めは激戦区です。水沢、氷見、五島など、選ぶ人の好みや郷土愛に左右されるようです。各地の個性的なうどんの魅力と、うまい名店を紹介します。
日本三大うどん1:王者の風格・讃岐うどん
電柱よりうどん店の数が多いといわれる香川県。うどんといえば讃岐といっても過言ではないでしょう。讃岐うどんの他のうどんとの違いはコシの強さです。ツルツルでシコシコの讃岐うどんの秘密は塩です。うどんを打つ際に塩を入れることによってグルテンが生成され強い麺ができるのです。塩はゆでるときに抜けてしまいます。
谷川米穀店
— けぃ (@queens_sakura) June 26, 2017
冷たい 小
お米屋さんなのにうどん屋さん。
お醤油とお酢、自家製の青唐辛子の佃煮を入れて食べる。
青唐辛子の佃煮の入れすぎ注意!
美味しかったー(*´∀`) #讃岐うどん #谷川米穀店 #冷たい小 pic.twitter.com/l2mmk5bWxA
香川県は温暖な気候で日照時間が長く、穀物の栽培に適した地域でした。扇状地で水はけの良い地形のため良質な小麦が収穫できたのです。さらに瀬戸内海の恵みの塩と小魚がとれました。塩はうどん打ちに、小魚はうどんの出汁に不可欠ないりこの材料です。讃岐はうどん作りに適した場所だったのです。
ルーツは弘法大師
うどんの製法は弘法大師が中国から持ち帰ったといわれています。他にもいろいろな説がありますが、讃岐では断然、弘法大師推しです。江戸時代元禄期には金刀比羅宮の参道にうどん屋が並ぶ様子が絵に描かれています。また、旅籠の店先がうどん屋になっている場合が多く、金刀比羅参りとうどんという組み合わせが定着したようです。
セルフ店が多い讃岐うどん
讃岐うどんというと、麺を注文してトッピングを自分で取って清算した後で好みのダシと薬味を自分でのせるというセルフサービスのイメージがあります。香川には街の製麺所がたくさんあり、一般家庭や食堂にうどんを卸していました。お客さんがその場で食べるようになり、うどん屋さんに変わっていきました。
元々は小売店だったので接客スタッフもおらず「人手がないから自分でやって」ということです。この製麺所うどんができたことで、出来たての讃岐うどんが供されることになりました。うどんのスタイルは製麺所ごとに特徴があり、食べ方もお客さん任せだったことも讃岐うどんの多様性に影響しているのではないでしょうか。
日本三大うどん「うまい讃岐うどん」を食べる!
山越うどん
綾川町の山越うどん。釜玉発祥の店として有名です。食堂から製麺所、そしてうどん店と業態を変えてきました。もちろんセルフ店です。釜玉はお客さんが持参した卵を溶いて「釜揚げ入れて」と注文したのが始まりだそうです。お店のイチオシは「かまたまやま」釜玉に山芋のすりおろしが乗っており、うまいです。
がもううどん
坂出市のがもううどん。ここも元は製麺所でした。メニューはうどん小が150円、大が250円、特大が350円、あとは天ぷら、揚げ、温泉玉子(100円)と生玉子(50円)を使って自分でうどんを創ります。揚げを入れてきつねうどんにするのが人気です。ちょっと薄めのお揚げは汁がしみてうまいのです。
郷屋敷
高松市牟礼町にある旧家を改造したお店です。登録有形文化財である建物で見事な庭を見ながらうどんをいただくことができます。うどん店というよりは料亭のような趣です。うどん会席などもあり、結婚式場としても人気がある名店です。多様ななお店があるのも讃岐うどんの魅力です。
日本三大うどん2:秋田の至宝・稲庭うどん
稲庭うどんは秋田県の稲庭地方(現・湯沢市)で作られるうどんです。讃岐うどんとの違いはその製法にあります。讃岐うどんは手打ち・足踏みという伝統的な手打ちなのに対し、稲庭うどんは素麺のように二本の棒の間に麺を通して伸ばす、手延べ製法でつくられます。手延べならではの滑らかな食感が特徴です。
稲庭うどんは4日間をかけて熟成、乾燥を繰り返しながら伸ばしていきます。麺の形状はやや平べったく、うどんとしてはとても細いのが特徴です。讃岐うどんと違い、コシの強さというよりは滑らかな食感です。製法は長く佐藤家の一子相伝とされていたため、他の地域のうどんと違いスペックの差が小さいのが特徴です。
稲庭うどんは高嶺の花
稲庭地方は秋田でも寒冷地です。このため米よりも寒さに強い麦が作られてきました。この良質な麦を利用して作られたのが稲庭干しうどんです。製法も徐々に洗練されていき寛文5(1665)年には秋田藩主佐竹氏への献上うどんとなりました。高価なもので庶民の口に入ることはなかったそうです。
日本三大うどん「うまい稲庭うどん」を食べる
稲庭うどんの場合、乾麺を購入して自宅で調理して食べることも多いようです。香川とは違い、うどん店の数はそれほど多くありません。食べ方はお好みにより胡麻だれか醤油だれで冷たい麺をいただくのがスタンダードですが、温かい麺はもちろん鍋のシメにも使ってもうまいものです。
佐藤養助・総本店
佐藤養助商店は万延元(1860)年に稲庭うどん宗家佐藤吉左衛門から製法を教わったという老舗の名店です。本来は一子相伝なのですが、家系断絶に備えたそうです。まさに元祖稲庭うどん、海外も含め18店舗を展開しています。伝統の二味せいろのほか、タイカレーつけうどんを提供するなど現代の味も追求しています。
寛文五年堂・秋田店
稲庭うどん乾麺と生麺食べ比べセット (@ 寛文五年堂 秋田店 in 秋田市, 秋田県 w/ @maimidaisuki @mh_as19940207) https://t.co/FqZtMOyZvt pic.twitter.com/ZwCtO6vzZt
— リンサニティ (@mmcloud) May 13, 2017
やはりうどん製造の寛文五年堂による直営店、ここの目玉は幻の生麺です。完全に乾燥させずに職人さんの感覚で生の風味を残したうどんです。乾麺より少し太めでもっちりしているのが特徴です。夏季限定で稲庭そうめんも供されます。お酒好きには刈穂や太平山、秀よしといった秋田のうまい銘酒とともにうどんを楽しむことができるのが魅力です。
日本三大うどん候補1:水沢うどん
水沢うどんは近くの水澤寺(水澤観音)への参詣客にふるまったうどんが始まりとされています。金刀比羅宮と讃岐うどんの関係と近いものがあります。こちらはやや太めの麺でコシが強く透き通る感じの白い麺です。食べ方は讃岐や稲庭とは違い、ほとんどがざるうどんです。水沢には13軒の店があり、それぞれつけダレに工夫をこらしています。
上州はうどん王国
上州は古くから小麦の栽培が盛んで、もてなし料理といえばうどんでした。水沢でも参詣客へのもてなしにうどんを出したのは当然のことだったのです。桐生のひもかわうどんや館林を中心とした上州うどん、埼玉県ですが加須うどんなどが有名です。その背景があったからこその水沢うどんなのです。
日本三大うどん候補:水沢うどんがうまい店
天正10年創業という田丸屋さん、水沢うどんを代表する名店です。独特な三角形のざるに乗ったうどんはお好みで醤油と胡麻のツユを選ぶことができます。おすすめは胡麻ツユです。お土産うどんについてくるツユはすべて醤油なので、胡麻ツユはお店でしか味わうことができません。また舞茸の天ぷらも絶品です。
大澤屋・第一店舗
大澤屋の水沢うどんと大澤屋にあっ縦も岡本太郎氏作手の椅子。お松家にもありますね。たぶんこれが元ネタじゃないかなぁ pic.twitter.com/14i1CQVTmI
— 妖怪1252置いてけ (@gin012tonberi) December 4, 2016
水沢に2店舗出店している大澤屋、第一店舗には岡本太郎さん作の手の椅子が置いてあります。他にも作品や写真が展示されています。大澤屋の売りは釜揚げうどんです。ざるうどんしか出さない店も多い中、暖かくてうまいうどんという選択肢はありがたいものです。釜揚げでも水沢うどんのコシの強さは変わりません。
日本三大うどん候補2:氷見うどん
氷見うどんは宝暦元(1751)年に高岡屋という店が輪島そうめんの製法を取り入れて作り始めたとされています。製法は稲庭うどんと同じ手延べ麺ですが、生地のうちに手打ち麺のようにしっかりとこねる工程があり、手打ちと手延べのいいとこ取りともいわれます。細麺と太麺があり、食べ方はざるやかけ、釜揚げなどお好みによりさまざまです。
かつては幻だった氷見うどん
お土産にもらった:heart:️
— もーヒマラヤン (@yozuti1) May 21, 2017
やっぱ氷見うどんは、高岡屋が一番やね! pic.twitter.com/GOYHTvs6BO
氷見うどんは稲庭うどんと同様に加賀藩主・前田氏への献上うどんでした。製造にも手間がかかり高価なこともあり庶民が気軽に口にできるものではありませんでした。日本海沿岸にこうした高級な手延べうどんが存在することについて、北前船による交易が影響しているのではないかという説もありますが、定かではありません。
日本三大うどん候補:氷見うどんがうまい店
うどん茶屋・海津屋
日曜日のおひるごはんは氷見のなごみさんでカレー鍋うどん!
— ちくわ (@chikuwasaaaan) March 14, 2017
コシの強い太いうどんはお鍋でアツアツがおいしいね。 pic.twitter.com/ZoH2h0w86n
氷見うどんといえば海津屋といわれる有名店です。おすすめはかき揚げうどんで、富山湾の海の幸を使った分厚いかき揚げとノドごしのよいうどんとの組み合わせは絶品です。メインは細麺ですが、お好みにより太麺もセレクトできます。海津屋さんはうどんの製造販売もしており、お土産うどんの購入もできます。
かなや麺業の直営店で、元は工場の倉庫だったところをリフォームして開業しました。おすすめは氷見カレーうどん、地元がB級グルメとして力を入れている氷見カレーとのコラボ商品です。しっかりとした太麺に熱々のカレーが絡んで、身体の芯から温まります。珍しい生タイプの氷見うどんを食べることができます。
日本三大うどん候補3:五島うどん
長崎県五島列島の五島うどんも手延べうどんです。稲庭、氷見と合わせて「日本三大手延べうどん」と言ったりもします。製法は生地を切って麺状にして、棒にかけて延ばしながら乾燥させます。麺状にするときに打ち粉ではなく五島特産の椿油を使用します。食べ方としては鍋を囲んで食べる地獄炊きがポピュラーです。
遣唐使が伝えた五島うどん
稲庭や氷見との違いは圧倒的な歴史です。五島うどんのルーツは諸説ありますが、遣唐使の寄港地であった頃に中国から伝えられた「索麺」が元だとされています。元寇のときに捕虜となり五島に住み着いた中国人が伝えた説などもあります。古くから日本と中国の中継地点であった五島ならではのエピソードですね。
日本三大うどん候補:五島うどんがうまい店
竹酔亭
ますだ製麺の直営店、メニューには地獄炊きの文字はありません。予約限定商品ですので、できれば前日までに予約を入れておきましょう。地獄炊きは厨房で作るのではなく客席で作ってくれます。特製のアゴだしは絶品です。ますだ製麺ではアゴの粉を練り込んだアゴうどんなど変わりうどんも作っており、購入することができます。
五島うどんの里
お昼ご飯は五島うどんの里で。かき揚げうどん定食mgmg。ここは出汁が美味しいのよね。天かすが最初から入ってるのに賛否両論かもだけど。 #上五島 #五島うどん #あごだし pic.twitter.com/KtnbFOMiJC
— まーぼちん (@marbochin) July 8, 2016
五島うどんの里は、うどんの製造工程見学や製造体験ができるアミューズメント施設です。五島観光の立ち寄りスポットとしておすすめです。ここの食堂では本格的な五島うどんを味わうことができます。数量限定の湯かけ鯨のうどんという珍しいメニューもあります。売店では各社のうどんを購入することができます。
中部地方に伝わるうどん
きしめん
きしめんが日本三大うどん(候補)に入るかどうか、難しいところですが中部地方の代表うどんとしてご紹介します。きしめんの成立は江戸時代とされ、鰹節のダシに地元のたまり醤油で味つけし、揚げとネギと削り節を載せます。好みによってはカレーきしめんなどもあります。平打麺なので茹で時間は短めです。
急に暑くなってきましたね。
— 【公式】東海ウォーカー編集部 (@TokaiWalkers) May 23, 2017
たまには冷たいランチもいいかもしれません。
先日、名古屋・東区の「川井屋本店」で食べた「ころきしめん」は、冷たい麺とあっさりおツユが見事にマッチ。値段も580円とリーズナブルでした。店は大正10年創業という老舗。和を感じる落ち着いた雰囲気です。【勝野】 pic.twitter.com/FlCyq5s5ot
川井屋本店は大正10年創業の名店です。純和風の建物は高級感を感じさせます。創業以来、続けている手打ち麺は厚みすら感じさせる歯ごたえとのどごしの良さを楽しむことができます。看板メニューはえびおろしきしめん。県外客にも大人気のこのお店、きしめんが苦手という人でも考えが変わるかもしれません。
味噌煮込みうどん
名古屋のソウルフード、味噌煮込みうどん。麺には塩を使用しないのが特徴で、名古屋の赤味噌と白味噌をブレンドした味噌を使用します。一人用の土鍋でうどんを煮立ててそのまま食べるという、すいとんやほうとうと似たような調理方法です。空気穴がついていないフタは取り皿兼用で使用します。
味噌煮込みうどんの有名店に「山本屋本店」と「山本屋総本家」があります。ちょっとややこしいですね。違いとしては本店のメニューは味噌煮込みうどん一本なのに対し、総本家はきしめんや味噌おでんなど名古屋メシが置いてあります。どちらにするかは地元の人でも好みや気分によって使い分けているようです。
伊勢うどん
うどんの概念を根底からひっくり返すのが三重県伊勢市の伊勢うどんです。二度茹でするという直径約1センチの極太麺にはコシというものはなく、たまり醤油を使ったタレをかけていただきます。一見、辛そうに見えますが甘みが際立っています。伊勢参りの参詣客には胃に優しいお粥のようなうどんが好評でした。
さすがにシルは飲めない
— こーみん (@koisan_go) May 1, 2017
伊勢うどん まめやさん pic.twitter.com/CawuQqbicQ
まめやは大正12年創業の老舗で、三重県産の地粉「あやひかり」で自家製麺を行っていることで有名です。打ち上がった麺は1時間茹でたあと1晩寝かせることでふわふわツルツルの食感が出るのです。店内には昭和初期のお品書きが飾られています。清酒15銭、うどん6銭などの値段を眺めて当時に思いを馳せてみては?
博多のうどんはこんな感じ
日本にうどんを伝えたのは聖一国士で、福岡にはうどん発祥の地の碑が建っています。博多のうどんは、やわやわです。時間にシビアな博多商人がすぐに食べられるよう、茹で置きしたうどんを用意しておき短時間で提供するためといわれています。トッピングは魚のすり身を揚げた丸天や、ごぼうの天ぷらが代表的です。
飾り山見物中のランチは、櫛田神社近くの「かろのうろん」で「肉とじうろん」(880円)。
— ウラデカ (@uradeka1) July 1, 2017
明治15年創業の老舗で「角のうどん」が訛った店名。
店内一切撮影禁止なので、写真は店頭に飾ってある食品サンプルです。https://t.co/rQQz8ntNZw pic.twitter.com/SsVAGqpiBV
かろのうろんは「角のうどん」がなまった店名です。創業は明治15年で福岡のうどん屋さんとしては最古であり、名前のインパクトも会って最も有名なお店です。こちらのお店では茹で置きの麺は使っていませんが、やわやわのうどんの食感と澄んだお出汁との相性は変わりません。
関西のうどんはこれが人気
関西といえばうどん、というイメージがありますね。京・大阪のうどんは昆布だしを味わうもので、麺よりだしがメインなのです。うどんにはだしをしっかりと染み込ませるために柔らかく、コシはありません。また、最近は全国チェーンの串かつ店の展開に伴い、河内地方のかすうどんが知名度を上げはじめています。
道頓堀今井は、大阪の繁華街で、きつねうどんは日に600杯出るという人気店です。真昆布からとるダシはその日の天候などに合わせて店長がとります。鰹節では主張が強すぎるので鯖節とウルメイワシを使用します。繊細にとったダシをうどんにたっぷりと含ませていただきます。これが関西のうどん文化なのです。
奥深いうどんの世界を楽しもう
いかがでしたでしょうか。日本三大うどんとはいいながら、3つに絞ることができるものではありません。さらに各地方に個性的なうどんが群雄割拠しています。日本の郷土食であるうどん。攻める讃岐、稲庭、氷見、五島勢と受けて立つ土着うどん勢。現代はうどん戦国時代なのかもしれません。
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