ガリバー王国は現在どうなっている？廃墟となった跡地の実態を探る！

世界遺産･富士山の裾野地域、現在の富士河口湖町にあった富士ガリバー王国は、開園してわずか4年で閉園してしまった短命のテーマパークでした。なぜ既に閉園したガリバー王国が今でも知られているかというと、その跡地が未だに廃墟として存在し、しかもなぜか話題になってしまっているからです。そんな富士ガリバー王国の現状をまとめてみました。

富士ガリバー王国は、1997年夏にゴルフ場やホテルとともに一大テーマパークとして開園しました。敷地面積370,000m²という広大なもので、雄大な富士山を眺めながら家族で楽しめるおとぎの国でした。

物語の世界を体現すべく、身長45mのガリバー像が横たわるガリバー島は、インスタスポットならぬ人気の写真撮影スポットでした。

他にもガリバー王国内には北欧の街並みを再現した北欧村、ボブスレーやリュージュを体験できるボブスレーランド、うさぎや羊、ワラビーなどの小動物と触れ合えるふれあい牧場など、数多くのエリアに分かれて様々な楽しみ方ができるテーマパークでした。園内にはお土産店や飲食店なども入って、一日中遊べる普通のテーマパークだったのです。

現在の住所では富士河口湖町とご紹介していますが、開園当時の地名は、山梨県西八代郡上九一色村。雄大な富士山のふもと、富士ケ嶺地区にあり、澄んだ空気とおいしい水、大自然に豊かな恵みにかこまれた素晴らしい環境にあります。現在、旧･上九一色村は市町村合併の際に南北に分かれ、北部は甲府市へ、南部は南都留郡富士河口湖町となっています。

が、おそらく30代以上の世代には気になる地名であることでしょう。「上九一色村」に聞き覚えがありませんか?

1995年3月20日に東京で起こった、「地下鉄サリン事件」をご存知でしょうか。当時、宗教団体であったオウム真理教が起こした前代未聞の化学物質を使った同時多発テロでした。サリンという特殊な有毒物質を教団内で製造し、テロに使用したのですが、そのサリンを作っていた教団施設が山梨県の上九一色村にあったのです。

サティアンと呼ばれる教団施設がいくつも建ち並ぶ姿や、警察などの強制捜査の様子が当時はテレビ中継などもされていて、この「上九一色村」という地名は、全国的にとても悪いイメージとともに広まってしまっていました。ものすごい勢いのネガティブキャンペーンをされてしまったのです。

地下鉄サリン事件の関係者はじめ教団内の首謀者もすべて逮捕され、オウム真理教関連の事件は一応の幕引きを見せたわけですが、時代を騒がす衝撃の大事件だっただけに、そのインパクトが後を引いて残り続けます。上九一色村といえば、「富士山」よりも「オウムのあれ」という感じの印象が根付いてしまい、なかなか払拭できずにいました。

悪いイメージを払拭できずにもがく上九一色村に、新潟中央銀行が出資する「富士ガリバー王国」の計画が持ちあがり、一気に盛り上がりました。1997年7月、ゴルフ場やホテルなどとともに開園した富士ガリバー王国ですが、開園当時からなかなか客足が鈍かったようです。さらに、1999年には経営母体であった新潟中央銀行が破綻してしまったのです。

出資元の破綻により一気に経営が危うくなってしまったことに加え、当初からの地名の深刻なダメージが払拭しきれていなかったことや、近隣の競合施設「富士急ハイランド」がかなり人気が高かったことなども原因とされています。また、富士急(鉄道会社)が運営する富士急ハイランドとは異なり、非常にアクセスも悪かったことも一因でしょう。

富士ガリバー王国への当時のアクセス方法は、中央自動車道を利用の場合、河口湖インターチェンジから降りて、そこから車で約30分。その30分は、青木ヶ原樹海の中を通る道を走るものでした。オウムの印象がまだある場所まで、心霊スポットの中の道を通る、というさらなるダークなイメージが想像できます。

また、東名高速道路を利用の場合はさらに長く、富士インターチェンジを降りて、そこから車で60分。当時は新東名もなかったですし、長い道のりです。田子の浦の方が近い富士インターチェンジから、富士宮を通り抜け、富士山を眺めながら南北方向に通り過ぎるイメージです。富士山は大きいです。遠いに決まっています。

こうした負のスパイラルを受け続け、2001年の10月に閉園となってしまった富士ガリバー王国です。閉園後もなかなか買い手がつかなかったり、やっとついた買い手が破産してしまったり、と受難続きとなり、廃墟と化してしまったわけですが、今度はその廃墟が心霊スポットなどとされ、話題に上ってしまいました。

確かに、心霊スポットと言われても仕方のないくらいの廃墟ではありました。何しろ、身長45ｍの巨人が無表情で横たわっていますし、その周囲は雑草が生い茂り、そこら中に侵入者たちの落書きが施される始末です。ガリバー像の顔や体にされた落書きはかなりひどいものでした。

物語の中の設定だからとはいえ、巨大なガリバー像が地面に縛り付けられているのです。それだけでも十分に心霊スポット的な要素ありそうなのに、さらにそこに流れる時が味付けてしまった、生えっぱなしの雑草。雨風にさらされてしまって薄汚れた色合い。メンテナンスをする人もいない訳ですから仕方ないです。

『ガリバー旅行記』は、少年時代によく読まれる絵本としても知られており、誰もがある程度のお話は知っています。せっかくの施設や敷地がありながら、ここまで廃墟と化し、しかも心霊スポット扱いされてしまうのが正直なところ、残念でなりません。

ただ、この見事なまでの廃墟っぷりがあったからこそ、アメリカの廃墟マニアの知るところとなり、サイトで紹介されるようになったのです。奇しくも、閉園後にダークなイメージのまま知名度が上がってしまいました。

実際に、富士ガリバー王国に残っていた鏡を使った迷路の部屋は、「ほんとにあった怖い呪いのビデオ15」の中の10話目にある「ニューロシス」のロケ地として採用されています。心霊スポットとしてのイメージはこのビデオから来てしまったのかもしれません。

たった4年しか営業していなかったために、外観は遠目に見ればきれいに見えていた時期もありましたが、やはり流れる歳月と、人の手の入らない建物は自然と朽ちてしまうものなのでしょう。

経営破綻からの閉園後、不動産業者によって再開発の予定があがり、一度は敷地内にあったすべての廃墟と化した建造物たちは撤去されました。ただ、次の具体的な土地活用計画が進まないままその不動産業者も倒産し、行きつく場を失ってしまっています。現在の富士ガリバー王国は、テーマパークでも廃墟でもない何かの跡地、として残るのみとなっています。

富士ガリバー王国はなくなってしまいましたが、もともと富士ケ嶺地区は、富士山を中心とした自然の豊かさをたっぷり味わうことのできる魅力的な地域でした。人の作ったものはなくなっても、自然の恵みがなくなるわけではなく、周辺地域には見どころも数多くあります。ここで、周辺地域のおすすめ観光スポットをいくつかご紹介致しましょう。

富士山周辺にある富士五湖のうちのひとつで、最も北に位置します。古くから湖畔は観光開発されていて、平成に入ってからは温泉も採掘されたことから、富士河口湖温泉郷もできています。土産物店やホテル･旅館の整備も進んでおり、湖面に映る逆さ富士の撮影スポットとしても人気です。

富士ガリバー王国と、当時は競合施設とされていましたが、現在では全国的に有名な一大テーマパークへと成長を遂げています。アクセスも良く、また設備面でも遊具面でも大変充実しています。特に絶叫マシーンや、最大級のお化け屋敷進化バージョンなど、注目を集めるアトラクションが数多くあります。

富士山の北西部に広がる青木ヶ原は、「富士山原始林及び青木ヶ原樹海」という名で国の天然記念物に指定されており、世界遺産登録された地域にも含まれています。樹海と言うと、先にもお伝えしたような自殺の名所としてのダークなイメージが先行してしまいがちです。

ですが実は、青木ヶ原樹海案内の公認ガイドと同行さえしていれば、自然の魅力に溢れた最高の森林浴スポットでもあります。美しい緑の世界を堪能できます。遊歩道も整備されており、鳴沢氷穴(なるさわひょうけつ)、富岳風穴(ふがくふうけつ)といった洞窟探索できるポイントもあります。

かつて存在した、富士ガリバー王国についてご紹介してきましたがいかがでしたか?わずか4年で閉園してしまったガリバー王国ですが、廃墟となり、心霊スポットと言われたかつての朽ちた建物たちも今はすでになく、現在は跡地が残るだけ、というのが真相です。

過去の遺物や暗い印象にとらわれることなく、現在の富士ケ嶺地区に目を向けてみましょう。国の天然記念物や、世界遺産の登録地域としての歴史ある自然豊かな素晴らしい部分が輝いて見えませんか。旅の楽しみは、その土地の良いところを自分の目で見られること。ぜひ今一度、新しい気持ちで富士ケ嶺地区を訪れてみてください。