クサフグの刺身を食べてみたい
寒くなってくると出回る魚の一つにフグがあります。どんな食べ方でもおいしくいただけるということで人気の魚ではありますが、やはり値段がすることと、毒の問題が心配ではないでしょうか。そこで釣りでよくかかるクサフグについて、さばき方や食べ方、毒の問題などについて紹介します。
クサフグとは?
クサフグはその名の通り、フグの仲間です。背中が緑色っぽい色をしていることからこの名前がつけられました。別名ナゴヤフグ、スナフグと呼ばれますが、その理由については後で述べます。
体長は10センチから25センチ程度なので、大きな魚ではありません。ちょうど手のひらにのるくらいのサイズのかわいい魚です。泳ぎも他のフグと同様にあまり上手ではないようで、水中をぷかぷかと泳ぐ姿は癒されます。緑の背中に丸い白い斑点があり、腹は白く、怒るとぷくっと膨らむ姿も愛らしいです。
フグというと海釣りの魚というイメージが強いですが、クサフグは一応は海水魚ではあるものの、浅い岩礁や砂地、汽水域などにいるほか、時には河川の中流域という、ほぼ真水というところにまで遡上することもあると言われます。アユの友釣りなどをしていてクサフグがかかったということもよくあるようです。
クサフグはどこにいる?
クサフグが生息しているのは北海道道南から沖縄までの沿岸、朝鮮半島や中国大陸の南部にまで広がります。ほぼ日本全国に生息しているといってよいでしょう。
先ほど述べたように、クサフグは海の浅いところや汽水域にいることが多いため、日本全国の港や堤防のあたりにはよくいる魚です。また淡水にもいるため、釣りに行く方にはお馴染みの魚の一つと言えます。
クサフグ釣りはいつできる?
では、釣りでクサフグがかかるのはいつごろなのでしょうか。クサフグそのものは季節を問わず釣りでかかる魚ではありますが、特に可能性が高いのは5月から8月と言われています。これは後で述べますが、クサフグの産卵がこの時期に沿岸で行われるためです。そのため、釣りに行くと狙わなくてもクサフグが釣れると言われています。
クサフグの生態は?
クサフグの生態として知られていることに、海水魚でありながら淡水で釣れるということと、産卵の時の光景が特殊であるということがあげられます。この2点は他のフグには見られない珍しいものと言えるでしょう。
なぜ淡水のところにいるのかということなのですが、クサフグには他の魚と違って頑丈なうろこを持っていません。そのため体についた寄生虫や雑菌を自力で落とすことが難しいので、淡水の浸透圧を利用して古い粘膜と一緒に剝がすのだと言われています。フグは真水に入ると粘液がでるので、これを利用するのだそうです。
クサフグでよく知られているのが産卵です。5月から8月ごろの新月や満月の時に岸に押し寄せて産卵するという習性があり、まずメスが産卵したあと、集まったオスが一気に精子を放出するため、波打ち際が白くにごったようになるという、珍しい姿が観察できます。
クサフグは釣りの定番の魚?
さて、このようにクサフグは釣りでは定番の魚と言えるのですが、実は釣りをする方の間ではクサフグは人気のある魚ではありません。いやむしろ、「外道」と言われ、敬遠されがちな魚でもあります。
クサフグが釣り人にあまり好まれないのにはいくつかの理由があります。理由の1つめはクサフグの「性格」に関係します。クサフグは好奇心が強く、なんでもかじってしまうという性質があります。それだけに釣り人の餌にすぐ食いつくイコールよく釣れるということになるのですが、他の魚を狙う方にとっては邪魔な存在です。
しかもクサフグは硬い歯を持っており、なんでもかみちぎってしまいます。餌はもちろんですがルアーや釣り糸などの釣り道具もみんなかみちぎってしまうのです。餌を取られるだけならまだしも、釣り道具を破壊されてしまうのでは、迷惑以外のなにものでもありません。
釣り情報をまとめたサイトなどを見ると、このクサフグがかからないようにする方法を教えてくれているものも存在しまするつまりそれだけクサフグは釣り人にとっては敬遠される魚だということです。
理由の2つめはクサフグの「毒」です。毒については後で詳しく触れますが、他のフグと同様にクサフグにも毒があります。釣れた新鮮な魚を刺身などに調理していただくというのは釣りの醍醐味の一つですが、クサフグの場合には自分で調理することは避けるべきです。
そのため、残念ながらクサフグは人気がなく、釣りでは「外道」呼ばわりされ、市場にも出回らないというちょっと残念な魚の一つでもあります。
クサフグには毒がある?
ではその気になるクサフグの「毒」についてです。フグに毒があり、素人は調理できないということはご存知でしょう。フグの毒はテトロドトキシンというもので、人間の場合では口から食べた場合には1ミリグラムから2ミリグラムで致死量に達します。有名な毒薬青酸カリのなんと850倍程度の毒性だそうです。
しかもフグの毒のこわいところは、300度以上に加熱しても分解されることはありません。つまり、刺身ならだめだけれども加熱調理したら食べられるということはないのです。どんな食べ方をしても危ないというのですから、本当に危険な毒です。
クサフグの毒がどの部位にあるのかというと、内臓、皮に多く含まれます。特に肝臓、腸、卵巣は毒性が強く、大変危険です。しかもクサフグが大変なのは、筋肉部分にも微量ですが毒が含まれているという点です。つまりさばき方がどうであろうと、毒から逃れられないということになります。
最初にクサフグの別名は「ナゴヤフグ」というのだと紹介しましたが、これは「フグの毒に当たったら身の終わり」の身の終わりを「美濃」「尾張」とかけて「名古屋」につなげたというだじゃれから生まれました。これだけフグの毒は危険だと知られているわけです。
ちなみに後でフグのさばき方について触れますが、フグをさばいた後、毒がある部分もきちんと処理をする必要があります。海などに投げても海鳥たちは識別して食べないと言いますが、人間を含めた陸上の動物はその識別ができないため、処理がよくないと事故が起こりかねないからです。
クサフグの毒をまぬがれる方法は?
そのため、クサフグの毒をまぬがれる方法は現実的にはないと言っていいでしょう。とはいえ、筋肉部分の毒は少ないですから、筋肉部分を刺身などで少しだけいただくのであれば命にかかわることにはならないと言えます。
実はクサフグは身が小さい上、筋肉にも毒が少し含まれるため、あまり食べられてはいないのですが、透明感のある白身で身が締まっており、淡白でおいしいと言われています。次に述べますが、食べるなら専門の方に頼んで刺身などに調理していただくようにしましょう。
クサフグ調理はだれでもできる?
このようにクサフグの調理は、素人には危険がいっぱいです。一般に鮮魚店などで販売されているフグと違い、クサフグは釣りなどで手に入れる方が多いでしょうが、特に初心者は絶対に自分で調理してはいけません。
もし釣りでかかって、ぜひ食べてみたいという方は、各都道府県が定めた「フグ調理師」の資格を持っている方にさばき方を見せていただいて、調理していただくのが一番です。インターネットなどでさばき方も載っていますが、絶対に無理はしないようにしてください。
なお、クサフグに限らず、フグに関しては、ちゃんとふぐ調理師の資格を持っている方がさばいたものであれば、危険なく食べることができますし、またその身の部分を刺身にしたり、鍋にしたりと調理する場合のさばき方はちゃんとあります。
クサフグのさばき方は?
このように、クサフグを自分で調理するさばき方は、ここで教えることはできません。ですがさばき方の基本的な考え方だけについてはここで紹介しておきます。おそらくこのさばき方の注意点を見ると、いかにフグの毒が危険なのかがわかるのではないでしょうか。
まず、クサフグのさばき方で最も気をつけなくてはならないことは、毒を食べる部分につけないということです。毒がある部分はそのたびによりわけておき、血もつけないように徹底して水洗いを行いながら調理していきます。
先ほど調理の仕方で少し触れましたが、クサフグに限らずフグはこの有毒な部分をとりのぞいたものが「身欠き」という名前で販売されています。この「身欠き」状態にまでなっていれば、あとは食べ方に応じてさばき方を工夫し、調理して安全に食べることができます。
クサフグの食べ方1:鍋
それでは具体的にクサフグの食べ方を紹介していきましょう。先ほど述べたように、クサフグは市場に出回らないうえ毒があるため、なかなか食べる機会はありませんが、身はなかなか美味と言われています。旬は秋から冬になります。
食べ方の1つめは鍋です。味噌汁や鍋など、加熱調理して食べる方法ですが、身が小さいものの、美味しく味わうことができます。他のフグ鍋と同様に、好みの具材と合わせていただくとよいでしょう。
クサフグの食べ方2:刺身
次に紹介する食べ方は刺身です。フグといえば刺身というほど、フグの刺身は美味しくてしかも高級な食べ方として知られており、フグを釣ったからにはやはり新鮮なうちに刺身でという方も多いのではないかと推察します。
一般的にフグの刺身というと向こうが見えるほど透き通った身を思い浮かべますが、クサフグでもあのような刺身を薄造りにすることはできます。ただ身が小さいこともあって、調理をするのは手間がかかります。筋肉の部分のみを刺身にして少し食べるようにすれば、フグの淡白でありながらうまみがある味を堪能できるでしょう。
ちなみにフグはなぜ刺身にすると身が透き通って見えるような薄造りにするのかというと、ちゃんと理由があります。理由の1つめはフグの身がかたいということです。
先ほど述べたように、フグは怒るとぷくっと膨らみます。あれはフグが身の危険を感じたときに、自分を大きく見せるためなのですが、体を丸く膨らませるために体内にあばら骨がないのです。フグはあばら骨をなくすかわりに内臓を守るために筋肉を固くするように進化したのです。
また、理由の2つめに挙げられるのは、フグの身は味が淡白で、ゆっくり味わうことでその淡白な味を存分に堪能できるということです。食べることに集中しないとフグの味をすべて味わうことはできないのです。
ですから、フグの身をふつうに切ると身が固く、噛むことにばかり集中せざるをえなくなります。そのため薄造りにすることで、その淡白な味わいも十分に堪能できるよう、工夫したということなのだそうです。
クサフグの食べ方3:揚げ物
フグの刺身、フグの鍋とともにフグの食べ方として知られているのが揚げ物です。フグの唐揚げもまた、高級料亭などで食べられる特別なメニューとして記憶している方も多いのではないでしょうか。
先ほど述べたように、フグの毒は揚げたからといってなくなるわけではありません。しかし、鍋や刺身などの他の料理と同様に、揚げ物にすると絶品のフグ料理が味わえます。クサフグは小さいのであまり大きな唐揚げにはなりませんが、ぜひその味わいを楽しんでみてください。
クサフグの飼育はできる?
今まで述べてきたように、クサフグは釣りに行くとよく釣れる魚です。しかしその反面、食べればおいしいとはいうものの、毒があるために自分で調理することが難しいという面もあり、釣り場の周辺に捨てていってしまう人もいると言います。
クサフグはふつうのフグに比べてサイズが小さく、大きくもなりません。またフグのパタパタ羽ばたくように泳ぐ姿や、怒ってぷくっと膨らむ姿は愛らしく、飼育用として出回ることもあります。釣ったクサフグをせっかくだから飼育してみたいという方もいるでしょう。
ただ、クサフグを含めたフグ類は気性が荒く、大きめな水槽に1匹だけ飼育するという形でないとうまくいきません。また先ほども述べたようにフグにはうろこがないため、環境の変化などに弱いデリケートな一面も持っています。細菌などが繁殖しないように、清潔を保つことは最重要ポイントと言えるでしょう。
ですから、クサフグを飼育するのは難しく、初心者の方にはおすすめできません。もし飼育したいというのであれば、ペットショップなどできちんと指導を受けるのがよいでしょう。また、クサフグは砂に潜る習性を持っている(スナフグというのはここから来ています)ので、底に砂を敷いて潜ることができる環境を作ることも大切です。
クサフグを楽しもう
クサフグは有名なトラフグなどに比べて釣りなどでもかかりやすく、釣り人にとって身近な魚です。小さくぷくっと膨れたりしながらゆらゆら泳ぐ姿は癒されるという人も多いかもしれません。反面、食用部位にも毒があるため、多く食べると危ないというほど危険な魚でもあります。上手に毒を避けて、クサフグを楽しんでみてはいかがですか。
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