オーストリアってどんな国?
ヨーロッパというと、旅行などで訪れたい、または訪れた経験があるという方も多いでしょう。中でもオーストリアは、首都のウィーンが人気の観光スポットということもあって、人気が高い国です。ではオーストリアの国旗はどういう意味や由来があるのでしょうか。オーストリアの国旗についてその歴史や意味、由来などを紹介します。
オーストリアの地理
まずはオーストリアというのがどのような国なのかというところから始めましょう。オーストリア共和国は中部ヨーロッパの内陸にある国で、位置としてはドイツの南にあります。基本的には中欧に分類されています。
国の大きさは日本の北海道とほぼ同じくらいで、アルプスが国土の62パーセントを占めるという山がちな国です。気候は大きく3つに分かれますが、アルプスのあたりは夏が短く冬が長い、東部は大陸的、それ以外は中部ヨーロッパらしい気候となっているようです。
オーストリアの歴史
ところで、「オーストリア」というのはどういう意味なのでしょうか。実はオーストリアを表わす言葉として「領地も人口もたくさんあるがオーストリア民族はない」と言う言葉があります。
オーストリアという言葉はドイツ語で「東の国」という意味があります。これはフランク王国のころにこのあたりに東方辺境領(オストマルク)が作られたことに由来しています。オストマルクというのは「東の守り」という意味です。
実はオーストリアという国はもともと、オーストリア大公が統治していた領地のことを漠然と指したものでした。そのため1804年にオーストリア帝国が成立した時も、オーストリアという国の範囲は明確にされなかったのです。
ですからその後1918年にオーストリア・ハンガリー帝国が解体されて「オーストリア」ができた時も、かつてのオーストリア家の通称をそのまま利用したものだったのです。つまりオーストリアと言う国名は、この地域を統治した家の名前に由来しているわけです。
オーストリアの人種構成
歴史のところで述べた「オーストリア」はオーストリア家が統治した範囲を意味していると述べましたが、現在のオーストリアはこの範囲のみから成り立っているわけではありません。ドイツ人の神聖ローマ帝国に由来する複数の土地に由来する場所から成り立ちます。
現在のオーストリアはいわゆるオーストリア人が全人口の約91パーセントを占めるとされますが、血統的にはさまざまな民族が入り混じっていると言われます。次の言語にも関係しますが、オーストリアではドイツ語を母語とするため、民族的にはゲルマン民族とされています。
なお、オーストリアは1938年にナチスドイツによって合邦し、第二次世界大戦の惨禍に巻き込まれます。この統治下でいわゆる「オーストリア人」というアイデンティティを持つに至ったとされています。1955年、オーストリア第二共和国が成立し、現在に至ります。
オーストリアの言語
人種構成にも関わりますが、オーストリアの言語はドイツ語が公用語で、ほとんどの住民が日常的に使っています。先ほど述べた91パーセントのオーストリア人というのは、ドイツ語を母語とするオーストリア人ということになります。
とはいうものの、日常的な会話で使われているドイツ語はいわゆる標準ドイツ語とは似ているものの、独特の発音や言い回しが今も残ります。メディアなどでは標準ドイツ語が使われています。
オーストリア国旗の特徴
それでは次に、オーストリアの国旗について紹介していきます。オーストリアという国は観光などで人気の国ではあるのですが、ではオーストリアの国旗はどのようなものか覚えているでしょうか。後で述べますが、似ている国旗もあるので、なかなか思い浮かばないという方も多いのではないでしょうか。
赤・白・赤の3つのライン
オーストリアの国旗は赤と白が使われたものです。横に3つに分かれており、上から順番に赤、白、赤に塗り分けられたものです。
後で改めて触れますが、オーストリアの国旗には実は2つのデザインがあります。一般的に使われているのはこの赤、白、赤に塗り分けられたものなのですが、実は中央の部分に鷲がデザインされたものもあります。こちらの鷲がデザインされたものは政府旗として使われています。
現在使用されている世界最古の国旗のひとつ
オーストリアの国旗の歴史については後の歴史のところで改めて詳しく触れますが、実はオーストリアの国旗はデンマーク、スコットランドの国旗とともに世界で最も古い歴史を持つ国旗の一つに数えられています。もともとは13世紀に戦闘旗としてデザインされ使われたものと言われます。
オーストリア国旗の意味や由来
それでは具体的に、オーストリア国旗の意味や由来などについて紹介していきます。先ほど触れたようにオーストリア国旗はもともと戦闘旗としてデザインされたものであり、世界の国旗の中でも古い歴史を持つものです。さらに中央に鷲がデザインされたものとされていないものとが使い分けされているのです。
元々は戦闘旗としてデザインされたもの
オーストリアの国旗が国旗として正式に制定されたのは1918年のことなのですが、先ほど触れたように制定されたのは13世紀のことです。当時のオーストリア公だったバーベンベルグ家のフリードリヒ2世が、神聖ローマ皇帝に反乱を企てた時に制定されたものです。
先ほど触れたように、当時この旗の位置づけは戦闘の際の戦闘旗でした。フリードリヒ2世の祖父に当たるレオポルト5世が第3回十字軍に参加した時、敵の返り血をあびて全身赤く染まりました。しかしベルトの部分だけが白く残ったという伝説から、この旗がデザインされたという由来を持ちます。
とはいえ、もともとはあくまでもそういう扱いであり、当時のいわゆる国旗は黒と金に半分に分かれたハプスブルグ家の旗とされていました。ところが第一次世界大戦で敗北し、オーストリア・ハンガリー帝国が解体され、独立したことで、民間旗として採用されたのです。
オーストリアの民間旗と政府専用旗の違い
今「民間旗」と述べましたが、オーストリアには国旗が2種類あります。デザイン的にはもちろん似ているのですが、中央に鷲があるかないかという大きな違いがあります。この国旗の違いには何か意味があるのでしょうか。
鷲がない方は民間旗として一般的に使われており、鷲があるほうは政府専用旗として政府庁舎などで使用されます。この鷲はオーストリアの国章なのです。
国章の鷲の意味
ではこの鷲にはどのような意味や由来があるのでしょうか。もともと双頭の鷲は古くからある紋章のデザインであり、帝国の権威の象徴を示すものとしてよく使われていました。オーストリアの場合はハプスブルグ家の紋章に使用されていたことから現在でも国章となっています。
オーストリア国旗の鷲は単頭で王冠をかぶり、かぎ爪にはハンマーと鎌、足首にはちぎれた鎖が描かれています。王冠はブルジョア、ハンマーは労働者、鎌は農民を意味しています。また鎖はナチスドイツからの脱却を意味しているのです。
このように、オーストリア国旗の鷲はオーストリア地域を統治したハプスブルグ家に由来しながら、ここまでの歴史を表わして作られているものと言えるでしょう。
オーストリア国旗の歴史
それでは、オーストリア国旗の歴史について見ていきましょう。オーストリア国旗の歴史はそのままオーストリアという国の歴史を反映しています。ここまで触れて来たように、現在のオーストリア国旗はもともと戦闘旗だったものが国旗になったという歴史を持っています。
13世紀 オーストリア国旗の始まり
先ほど紹介したように、現在のオーストリア国旗が国旗として制定されたのは13世紀のことです。フリードリヒ2世が神聖ローマ皇帝に反乱を企てた時に国旗として制定したのです。しかしフリードリヒ2世は喧嘩公、闘争公ともあだ名され、結果的には領土の多くを神聖ローマ帝国に没収されてしまいました。
1919年、第一次世界大戦後のサンジェルマン条約により、オーストリアはドイツとの合邦を禁じられ、国名もオーストリア共和国となりました(第一共和制)。この国旗はこのオーストリア共和国の国旗として使われたのです。
第二次世界大戦中 国旗が廃止
しかし1938年、ドイツ軍がオーストリアに侵攻、オーストリア・ナチスが政権を掌握しました。もともとナチスドイツのヒトラーはオーストリア出身で、母国をドイツと統一させたのです。オーストリアは第三帝国に編入され、独立を失い、オストマルク州となりました。
独立を失ったことでオーストリア国旗は廃止され、赤地の中央に白い丸があり、その中にハーケンクロイツがデザインされたドイツ国国旗が使われるようになります。
1945年 オーストリア国旗が復活
1945年4月、ソ連軍のウィーン攻勢によってウィーンが陥落すると、速やかにウィーンに臨時政府が樹立され、4月27日に独立宣言を行い、第三帝国からの分離が宣言されました。これにともなってオーストリアの国旗がふたたび国旗として復活することになります。
1945年から55年まで、オーストリアはドイツなどと同様に分割占領されました。そして1955年、オーストリア国家条約が締結されたことによって、オーストリアは完全な独立国となったのです。同年、オーストリアは永世中立国を宣言しました。
1984年 「国章・国旗法」により明文化
現在、オーストリアの国旗が国旗として法的に認められる根拠となっているのは、1984年に成立した「国章・国旗法」によります。これによって先ほど紹介した鷲が国章であり、今の国旗が国旗であるということが認められています。
オーストリアの国旗は古い歴史を持つ国旗ではありますが、それがちゃんと国旗として明文化されるまでには、当時のヨーロッパの歴史とのかかわりでさまざまな紆余曲折を経ているのです。
オーストリア国旗と似ている国旗
さて、オーストリアの国旗についてここまで紹介してきたのですが、このオーストリア国旗は意外とはっきり記憶している方は少ないかもしれません。なぜかというとオーストリア国旗は似ている国旗が多く、それらと混同して覚えている方も多いからです。それでは似ている国旗をいくつか紹介しましょう。
ポーランド国旗
まずは同じヨーロッパの国であるポーランドの国旗です。色はオーストリアの国旗と同じ白と赤ですが、オーストリアは赤、白、赤と横に3つに分けられているのに対して、ポーランドの国旗は横に2分割され、上が白、下が赤となっています。
もともとはポーランドの建国者が夕日を背景に飛ぶ白鷲からこの旗を作ったとされています。しかし19世紀に起こった独立運動の中で、白は共和国の尊厳、赤は自由を表わすという意味に変わりました。
国内では白地のほうの中央にポーランドの国章である鷲の紋章を入れたものも使われています。確かに色は似ているのですが、2つに塗り分けられているものと3つに塗り分けられているものという違いがあるので、思ったほどは似ている印象はないかもしれません。
インドネシア国旗
「似ている」という点からすると、むしろオーストリアよりもポーランドの国旗に似ている印象があるのがインドネシアの国旗です。なぜならばポーランドの国旗の上下、つまり赤と白の部分を入れ替えるとインドネシアの国旗となるからです。
インドネシアの場合、赤は勇気と情熱、白は真実と聖なる心を表わすものという意味があります。この旗は民族主義運動の中で民族旗として使われ、後に独立した時に正式な国旗となりました。
なお、モナコの国旗はインドネシアの国旗と似ているというよりもほぼ同じに見えます。実はこの2つの国旗はデザインが同一で、縦横の比率が違うだけなのです。話し合いが持たれたこともありますが、国が離れていること、同じくらいに歴史があることでそのまま使われています。
ラトビア国旗
ポーランドやインドネシアの国旗は色が似ている国旗でしたが、デザインが似ているという点であげられるのがラトビア国旗です。横に3つに分けられ、海老茶色(ラトビアン・レッド)、白、海老茶色の順に上から塗り分けられています。
デザイン的には似ているのですが、赤と海老茶色の違いがあることと、白の面積が少ないためか、それほどは似ている印象はないかもしれません。1280年前後に起こった戦争の際に瀕死の負傷を受けたラトビア兵士を包んだところ、両端が赤く染まったことに由来を持ちます。
国旗としてデザインされたのは1917年ですが、ソ連併合の後は使われず、1990年に独立した後から再度使われるようになり、現在に至っています。
オーストリアの観光スポット
オーストリアには多くの観光スポットがあります。何と言っても首都ウィーンは音楽の都であり、クラシックが好きな方には魅力あふれる国です。さらにチロル・アルプスの大自然、ハプスブルグ家が残した多くの世界遺産などもあり、地域によりさまざまな魅力を持っています。
行く方それぞれの興味や好みを考えながら、ウィーンだけではなく、ほかの都市も加えることで、さらにオーストリアの魅力的な観光地を楽しむことができるでしょう。ぜひオーストリアのいろいろな魅力に触れる旅を楽しんでください。
国旗を通してオーストリアの知識を深めよう!
多くのヨーロッパの国々がそうであるように、オーストリアも多くの戦争などを乗り越え、現在に至っています。オーストリアの国旗の由来で述べたように、最初は戦闘旗だったものが、後に国旗となり、それがナチスドイツへの併合、再度の独立とさまざまな紆余曲折があるのです。ぜひオーストリアの国旗を見つつ歴史を学んでください。
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