アカエイってどんな魚?
魚でありながら非常に特異な形をしたアカエイは、見た目がまるで他の惑星から来たエイリアンのようです。このアカエイ最大の特徴は長い尾びれにある毒針です。その毒はかなり危険で刺されたら激しい激痛に襲われます。ここでは、そのアカエイの特性とさばき方や食べ方、毒針に刺されたときの対処の仕方などを紹介していきます。
見た目の特徴
アカエイは通常の魚と異なり、平べったい扁平形をしていて、尾を除いた体の部分だけで80cmほどの大きさになります。口と鼻、鰓孔は下に、目と吸水口が背中にあります。
アカエイは、通常の魚を三枚おろしにしたような形をしており、泳ぐ姿は水中円盤のように見えて、腹側から見ると鼻の穴が目と間違いそうで笑っている顔のように見えます。どことなくトボけたような雰囲気が水族館などでは女性や子供に人気の高い海魚です。
味の特徴
アカエイの身は脂肪分が少なく繊維質で、柔らかくしっとりとした味です。煮付けやムニエルなどに料理でき、その美味しさは料理人や釣り人からも高い評価を得ています。
アカエイの身は水分が多いですが、脂肪分が少なくカロリー低めです。一方、アカエイは鮮度が落ちるとアンモニア臭が出てきます。アンモニアは水溶性なので水につけておくことで臭みをとることができ、酢味噌や酒、ショウガなどに漬け込んで臭みをとります。
アカエイの名前の由来
アカエイの名前は背面が赤いことに由来し、学名ではDasyatis akajeiといい、akajeiは和名のアカエイからつけられています。またエイの由来には諸説あります。
尾の長い部分が枡の柄に似ているという説や、アイヌ語で棘を意味するアイが訛りエイになったとする説、背面の瘤状の突起を刀の滑り止めの柄に使ったためとする説、など様々ですが、同じ日本列島の中でも地方によって呼び方が違います。
アカエイの地方名
アカエイは、大きくは東日本と西日本で名称の違いが見られます。東日本では、「かすべ」「からげ」といい、西日本では「アカエイ」「エイタン」「エイ」といいます。
主に北海道から青森、秋田、岩手、宮城で「かすべ」、山形で「からげ」、富山、石川、三重、奈良、大阪で「アカエイ」、岡山では「えいぶた」、山口の久賀町では「えいたん」と呼ばれ、それぞれ刺身や煮物にした食べ方が一般的です。
サメとアカエイの関係
アカエイとよく似た海魚にサメがいますが、腹側から見ると何となくつくりそのものがよく似ていることに気づきます。実はサメとエイは仲間の種とされています。
アカエイはサメと同じ全身の骨格が軟骨で構成される軟骨魚類に属し、遥か昔の中生代ジュラ紀にサメの一部から底生生活に適応したエイに進化したと考えられています。
そのためカスザメと呼ばれるエイと区別のつかないサメやシノノメサカタザメのようにサメと呼ばれるエイも存在します。サメとエイとの区別は、エラの位置にその違いがあり、サメは側面にエラが開くのに対し、エイは腹面にエラが開きます。
アカエイのヒレとフカヒレの違い
アカエイのヒレは体の一部で、これを動かしながら泳ぐため軟骨があります。一方、フカヒレは尾ビレの先にありひらひらとさせ、筋糸という筋肉繊維ですが軟骨はありません。
サメの場合はフカヒレスープという料理がありますが、アカエイのヒレをスープにすると軟骨だけが残ってしまうことになります。アカエイはサメと同じ種類の軟骨魚類でありながらヒレの部分の構造そのものが進化の過程で変化していったということです。
アカエイの生態
アカエイは昼間でも活動しますが、夜になると活発に捕食しに動き回る夜行性の海魚です。海面付近を漂っていることもありますが、普段は浅い海の砂泥底に生息しています。
砂泥底に浅く潜っているときには、目と噴水孔と尾だけを砂の上に出した状態で潜んでいます。海中を泳ぐ際は、鳥が羽ばたくように左右のひれを波打たせ海底付近を遊泳します。肉食性で貝類、甲殻類、魚類などの底生生物を幅広く捕食します。
アカエイの生息域
北海道南部から九州南岸までの瀬戸内海を含む沿岸域、広くは東南アジアや東シナ海、小笠原諸島に広く分布しています。遠くはフィジーやツバル海域でも記録されています。
アカエイは、基本的には暖かい海の沿岸部の浅瀬に生息していますが、完全な海水でなくても生きることができます。そのため河川の汽水域まで上げ潮にのって溯上する場合があり、東京湾から入り込む都市河川などにも見ることができます。
アカエイの旬の時期
アカエイは1年を通して活動しますが、特に活発に動き回るのは、海水温が上がる4月から11月ごろで、夏場の7月から8月にかけて最も活発に動き回ります。
アカエイの産卵期は夏場となり、この時期に向けて栄養を体に溜め込むため最も美味しい旬の時期とされています。またアカエイと同科の他種でメガネカスベというエイがいますが、こちらは夏場は産卵せず11月から12月の冬場が旬となります。
アカエイの仲間で飛び跳ねるトビエイ
アカエイの仲間であるトビエイは、海中をかなりの速度で泳ぎ回り海面からジャンプをするという変わった生態を持っています。群れをなしてジャンプする姿は圧巻です。
トビエイとアカエイを見分けるポイントはヒレの形です。大きさはアカエイとほぼ同じぐらいですが、トビエイのヒレはほぼ三角形をしており、体全体を俯瞰で見るとカイトのような形をしています。一方、アカエイのヒレは丸みがあるのが特徴です。
アカエイの毒針に注意!
アカエイの尾の付け根の部分には毒針があり、先端は尖っていて刺されたら抜けないようにカエシも付いています。釣り上げた際に攻撃されるとゴム靴などは貫通します。
人に対する警戒心が強いアカエイは、通常はよほどのことがない限りは、毒針がついた尾を使うことはありません。これまでの事例でいえば、相手を狙って攻撃するというよりも、浅瀬で誤って人に踏まれたりすると反射的に防衛行動に出るということです。
毒針に刺されたらどうなる?
毒針に刺されたらかなりの激痛を伴います。ときには毒針に刺された部分だけでなく、急速に他の箇所にも激痛が広がることがあり、刺された痛みは最大90分ほど持続します。
アカエイの毒に冒されると血圧の低下や発熱、呼吸障害などを引き起こします。さらに時間の経過とともに患部の細胞が壊死し紫色に変色していきます。また強いアレルギー反応が出るアナフィラキシーショックで死亡する場合もあります。
毒針に刺されたら通常は6時間から48時間かけて、傷みは徐々に消滅しますが、ときには数日または数週間持続する場合もあります。この毒針の毒素は末梢血管を拡張させ、過去に海外で胸部を刺された場合など死亡に至った事例もあり注意が必要です。
毒針に刺された時の対処法
刺された棘が刺さったままになっている場合、頸部や胸部、腹部などを貫通してなくて手の指先や足の表面部分で損傷していない場合のみ、刺されたその場で取り除きます。
出血の場合は、局所の圧迫などで止血します。刺された箇所を温水に浸けること推奨されていますが、それが刺された場合の効果的治療だと実証されたわけではありません。毒針に刺されたら応急処置の後、外科診療での早期治療をおすすめします。
アカエイの釣り方
堤防釣り、船釣りなどの釣り場では何かと外道扱いされがちなアカエイですが、それなりに狙って釣るととても魅力的なターゲットで食用としても優れています。
アカエイ釣りには、アカエイの釣れる場所や時期、時間帯などの他、アカエイ独自の習性などがあるので、それらをよく理解した上で、それ相応のタックルや仕掛けが必要となってきます。サイズそのものが大きいため釣った時の充実感も大きいです。
アカエイ釣りの時期と時間帯
アカエイは、1年を通して釣ることができる海魚ですが、海水温が上がる4月から11月の時期が高活性化する時期です。特に夏場は最も活発化します。
またアカエイは夜行性の生態を持つ海魚なので、夕まずめ以降の時間を狙っていくとより効果的な釣りが期待できます。海水温が上がる夏場の夕まずめ以降に釣りで出かけることが、アカエイ狙いの効果的な釣りのポイントです。
アカエイ釣りの場所
アカエイは基本的にどのポイントでも狙えますが、特に漁港や魚市場の排水口エリアは、魚のアラが流れるのをアカエイはよく知っていて狙い目となるポイントです。
アカエイはシーバスと同様に汽水域にも生息しています。河川の合流部分などは上流からエサが流れてくるために絶好のポイントとなっています。また内湾になっている砂地エリアもアカエイが好んで生息する砂泥底になっていて絶好の釣りポイントです。
アカエイ釣りのタックル
アカエイは、尾の部分まで入れると2m近くにもなり成人の身長よりも大きい場合があります。そのため引き上げる際は強めのタックルを使い暴れさせない工夫が必要です。
アカエイは大きいもので、数十キロサイズになり足場によってはタモ網が使えないこともあります。その場合は、掛かってからスロープがあるところまで誘導しずり上げます。堤防エリアはタモ網がないと引き上げるのは厳しいかもしれません。
ロッド
アカエイ釣りのロッドは、アカエイの強い引きに対応できるよう強烈なファイトを見せる雷魚ロッドやしなやかさを併せ持つ磯竿5号などのロッドがおすすめです。
ロッドの硬さは、ミディアムヘビーアクションかヘビーアクションの硬さが必要です。また長さは7フィートから8フィートがおすすめです。遠投性、パワー、アプローチのバランスを考えた場合、7から8フィートの長さが理想です。
リール
リールはスピニングリールでも問題ないですが、巻き上げ力の強いベイトリールの方が重量のあるアカエイ釣りには適しており、比較的スムーズに引き寄せることができます。
おすすめはバス釣りで人気の高いアブガルシアのブラックマックスシリーズです。当たりが来た瞬間からブレーキが確実に効くマグネット方式のmagtraxブレーキシステムを搭載し、引き寄せの力強さがどんな強い当たりでも逃がさないおすすめのベイトリールです。
ライン
ヒットすると体ごと持っていかれそうな勢いを持つアカエイですが、タックルに使うラインもロッドなどと同様に引っ張られて切れる心配のないラインが必要です。
時には海面にヒシモやハスなどのカバーが覆い被さっている場合もあり、カバーごと引き上げる状況もあります。ヒットしたアカエイを確実に取り込み、ラインを切られないようにリリースするためには、6号以上のポリエチレン製ラインがおすすめです。
仕掛け
アカエイ専用の仕掛けは、アカエイそのものが釣りのターゲットとして確立されていないこともあり、アカエイ釣り専用の仕掛けというのは商品化されていません。
基本的には、針、ハリス、テンビン、オモリ、スイベルの5つの仕掛けが必要となってきます。4号以上の太いチヌ針、VEP製法の10号以上のハリス、長形のイシダイ用テンビン、15号のオモリ、強度の高いスイベルなど大物狙いの仕掛け仕様となります。
釣りエサ
アカエイ釣りのエサには、必ずしも生きた魚を用意する必要はありません。スーパーなどで売っている廃棄寸前の値引き商品やダシ用のブツ切りなどで十分です。
アカエイの口はあまり大きくないので、エサをつける時は大きさを考えて、手の平サイズぐらいを目安として選ぶのが理想です。アジやイワシ、サバ、サンマなど魚屋で売っているものや丸ごと冷凍しておいたハゼなどでもよく釣れます。
アカエイ釣りの注意点
仕掛けを投入したら仕掛けを海底につけて、あとは当たりが来るのを待つだけですが、この時に竿を放置しておく場合は当たりに注意する必要があります。
当たりが来てアカエイが沖へ向かって走りだしたりすると、比較的強度のある大型のタックルでも岸壁の柵を越えて海に落としてしまうことがあります。その場合はドラグをゆるめに調整しておくか、尻手ロープなどで手摺などに固定しておきます。
アカエイ釣りに必要なアイテム
アカエイは尾の部分も合わせると大人の背丈以上ある大物海魚なので、釣りの際はできるだけ足場のしっかりした場所を選ぶように心掛けましょう。
最低限の必須アイテムとして、ヘッドライトやライフジャケットの装備などは、状況を判断して安全第一を考える上でなくてはならないものです。特に夜間の釣りの場合は、足元などが滑りやすく海に転落する危険性もあり安全面を重視したアイテムが必要です。
アウトドア用の持ち運びに便利な高輝度LEDランタンを1個持っていくだけで、夜釣りの場合に周辺を明るく照らすことができ非常に便利なアイテムです。
またライフジャケットは、アカエイの強い引きに対応できるように、動きやすく軽めのライフジャケットをあらかじめ装着しておくだけで、安心してアカエイ釣りを楽しむことができます。ライフジャケットとランタンなどのライトは必須のアイテムです。
アカエイの下処理方法
アカエイを釣って持って帰ったら、まずは下処理を行います。一番危険な毒針を取ってぬめりを取り、食べられる部分に分けるためのさばき方などがあります。
アカエイのさばき方を間違って毒針に刺されないようにするため、まずは毒針を切り落とします。そうしておいて、さばき方を間違わないようにぬめりを落とします。あとはさばき方の手順に従って内臓を取り除きブロックに分けていくようにします。
毒針の処理
アカエイを持ち上げるときは、目のすぐ横にある噴水孔に指を引っ掛けるようにします。毒針が自分に向かないように腹を自分の方へ向けます。
アカエイの尾のさばき方は、100均などで売っているペンチで押さえつけておいてニッパーなどですばやく切り落とします。この際に尾をムチのように振り回してくるので非常に危険です。切り取った尾は非常にやっかいなのですぐに廃棄処分が必要です。
ぬめりを落とす
食べ方にもよりますが、主にアカエイの食べる部分はヒレと肝です。特に料理して美味しいのはヒレ部分です。ぬめりはこのヒレの部分を包丁かタワシを使い取ります。
アカエイの体の中心から外側に向けてヒレの部分のぬめりを取っていきます。すべる場合は目の辺りの窪みを掴んですると取りやすいです。しっかりと取るとヒレの色が変わってくるのが分かります。表が終わったら裏返して同様にぬめりを削いでいきます。
アカエイのさばき方
アカエイのさばき方は、ヒレとブロックを分けます。ヒレは軟骨と平行幅に切り、皮の上に包丁を入れてすべらせ皮を剥ぎます。ヒレでないブロックは塊にして切り出します。
アカエイのさばき方は、人それぞれですが、両側のヒレと中心部の本体を切り分けて内臓を取り除くというさばき方が基本です。こうして3つに分けるさばき方が出来上がれば、あとは料理方法によって切り分けていくというさばき方になります。
さばき方のコツは、ヒレを切る際はエラの外に沿うように切ります。軟骨魚類とはいえ、エラの周りの骨は分厚いので包丁が止まって切るのが大変です。少しエラから外れた場所は軟らかいので、無理に切り込むよりも外側を切って行くのがさばき方のコツです。
アカエイの美味しい食べ方
アカエイは、古くから東北、近畿、中国地方の海から遠い内陸部や山間部などにおいて、大晦日や正月、秋祭りの行事食として欠かすことのできない魚として親しまれています。
アカエイは、魚肉、ひれ、骨のすべてが食用になり、軟骨特有の歯応えや煮物料理でできるゼラチン状の煮こごりなどの食感は、日本人の嗜好によく合います。また乾物にして保存でき、日持ちのする無塩ものとして料理するなどいろんな食べ方ができます。
刺身
アカエイおすすめの食べ方のひとつが、ヒレ部分を刺身に切り出し、醤油、ワサビ、生姜、酢味噌などにつける食べ方です。弾力のあるコリコリとした食感が絶品です。
刺身の料理方法は、あまり厚めにすると弾力があり食べにくいので、ブロックに包丁を入れて薄目に削ぎ切りします。お皿に盛りつけたら完成です。薬味にネギやミョウガを乗せてワサビ醤油や酢味噌につけて食べるとより一層美味しくいただけます。
煮付け
アカエイの最もポピュラーな食べ方が煮付け料理です。特に東日本では煮付けにした食べ方が親しまれており、コラーゲンが多く含まれているため美肌効果もあるようです。
アカエイの身は、淡白でクセがなく煮付けに最適で、豚足のような柔らかくプルプルとした食感が楽しめます。料理方法は、水分を落としたアカエイの身を、醤油、料理酒、砂糖、みりんなどを入れ沸騰させた鍋に入れ、弱火か中火で10分ほど煮たら完成です。
唐揚げ
アカエイは軟骨が多いため、唐揚げにした食べ方でコリコリとした食感が楽しめます。アカエイの唐揚げでおすすめは焼肉のタレを使った料理方法です。
唐揚げ粉の代わりに焼肉のタレを使います。ひと口サイズに切ったアカエイの身を焼肉のタレに漬け込み軽く揉んで20分ほど寝かせます。170度に熱したサラダ油に、漬け込んだアカエイの身を入れ、こんがり揚がったら出来上がりです。
ムニエル
アカエイの食べ方は、刺身や煮付けが一般的ですが、洋食ではムニエルに料理する食べ方が定番です。クセがなくしっかりとしたアカエイの旨味が楽しめます。
ムニエルの料理方法は、アカエイの身に塩とコショウを振って10分ほど馴染ませ小麦粉を薄くまぶします。フライパンにオリーブ油を入れて中火にかけ、アカエイを入れて両面を丁寧に焼き上げます。ワインやレモン汁をかけ、パセリなどを乗せ完成です。
毒針に気を付けてアカエイを釣って美味しい料理を楽しもう!
アカエイには毒針があり釣りの場合やさばき方などには注意が必要です。毒針にさえ注意をすれば、アカエイそのものは大変美味しい魚です。刺身や煮ものなど料理の仕方でいろんな食べ方が楽しめます。アカエイは近場の堤防や汽水域でも簡単に釣れるので、釣り上げたら毒針に注意したさばき方で、美味しい食べ方を試してみてはいかがでしょう。
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