デメニギスは頭が透明な深海魚
デメニギスは、まだまだ謎も多い、頭が透明な深海魚です。まるでコックピットの中に操縦席があるかのような、アニメの世界のキャラクターのようでもある、気になる深海魚デメニギスを特集します。
デメニギスの特徴や生態、研究の歴史や食用になるか、どの水族館でみられるかなど、透明な頭のデメニギスについて詳しくご紹介していきます。
デメニギスの特徴
透明な頭が特徴的な深海魚のデメニギス。その名前の由来は意外なところからきています。デメニギスの分類、形態、名前の由来、生息地について詳しくご紹介していきます。より深く、デメニギスを知りたい方は要チェックです。
デメニギスの分類
デメニギスは、学問の分類上ではニギス目デメニギス科デメニギス属に分類され、デメニギス属に分類される魚としては唯一の魚です。
ニギス目には約202種類の魚が属していますが、その全種が海水魚で、ほとんどが200m以深の深海に生息しています。
デメニギス科に分類されるのは19種類で、1000種類以上いるコイ科、800種類近くいるサバ科など比べると、種類としてはかなり少ない方の魚といえます。
デメニギス科に分類される魚は、水深1000mまでの中深層が生息範囲で、クロデメニギス、ヒナデメニギス、ムカシデメニギス、ヒカリデメニギスなどがいます。
デメニギスの形態
透明な頭が特徴のデメニギスの体長は15cm位です。体に対して大きなエラを持っていますが、これは主に姿勢を安定させるために使われています。
デメニギスは、捕食時以外に活発に泳ぐことはほとんどありません。口は小さく、体のほとんどは大きなウロコによって覆われていて、口の上にある目のようなくぼみは鼻孔です。デメニギス類の内は一般的に小さく、あごには細かい歯が無数に並んでいます。
デメニギス最大の特徴である液体で満たされた透明なドーム状の頭の中には、緑色で筒状の管状眼と呼ばれる眼球が2つあります。眼球は軸を回転させることによって前方や真上に向けることができ、上部から差し込むわずかな光によってできる獲物の影を頼り捕食をしています。
クラゲなどのゼラチン質の浮遊生物をエサとしている深海魚は珍しく、浮遊するクラゲをついばむように食べる習性あり、腸管が長いのもデメニギス科の特徴です。
目には特殊なフィルターが備わっていて、捕食対象の生物の囮の光をしっかり見破ることができると考えられています。
エサは、小魚やクラゲで、獲物を見つけると眼を双眼鏡のようにくるくると回転させ、体全治を獲物と直線状に並ぶように動かします。デメニギスよりも上層の深海に生息しているクラゲを、目を前に動かし焦点を合わせながら下から直角に狙います。
ニギス目の魚に共通して言えるのが、エラの上部にクルメナール器官と呼ばれる複雑な構造があるということです。
デメニギスに関しては研究が進んでいないため、この器官がどんな役割を果たしているのかは、定かではありませんが、同じ器官をもつセキトリイワシの仲間は、捕食したクラゲをクルメナール器官によって細かく粉砕し、毒を含む刺胞を取り除いて体外に排出しています。
デメニギスの名前の由来
デメニギスの名前は実は日本語が由来です。金魚のデメキンは、目が出ている金魚ということでつけられた名前ですが、デメニギスもデメキン同様、目が出ている鱚に似ている魚ということから「出目似鱚」と呼ばれるようになりました。
デメニギス科に分類される魚は19種類いることは先にもご紹介しましたが、これらの魚もすべて光出目似鱚、黒出目似鱚、昔出目似鱚、黒光出目似鱚などの字が使われています。
デメニギスの分布・生息地
透明な頭が特徴のデメニギスは、太平洋北部の亜寒帯海域に分布しています。水深400~800mに生息し、日本近海では、岩手県以北の沖合に分布しています。深海魚ですが、海底からは離れて暮らす中層遊泳性の魚で、深海の海中を漂うに生活しています。
深海について
デメニギスが生息する深海に明確な定義はありませんが、一般には200m以深の海域を指します。高水圧、低水温、暗黒などの過酷な環境条件で、深海に生息する生物は特異な形態や生態を持っているものも存在しています。
暗黒とは言うものの、水深1000メートル程度まではわずかな日光が届いていて、深海の生物はそれを感知できる大きな目を持っているものが多いのも特徴です。
デメニギスの生態
実は見た目のインパクトとは相反し、体長は15cmと小さいデメニギス。その生態はどうなっているのでしょうか。エサや水族館での飼育例など、デメニギスの生態について詳しく説明していきます。
エサはクラゲ
デメニギスのエサはクラゲや小魚などの動物性プランクトンです。先にも述べましたが、深海魚の中でゼラチン質のクラゲを捕食する種類は珍しいと言えます。
実際に捕食するクラゲはデメニギスよりも体長が小さいものが多いですが、実際にクラゲを捕食する以外にも、クダクラゲ類が捕食した獲物を横取りする習性も指摘されています。
クダクラゲの仲間は、一般的な傘をもったクラゲとは違い、細かい飾りのついた紐状や、気泡からたくさんの触手が伸びるなど色々な形をしています。多くは細長い形状をしていて、中には全長50mを超えるマヨイアイオイクラゲのようなクラゲもいます。
デメニギスがエサを横取りすると考えられているクダクラゲは、強い棘の触手を持っていることも知られていて、デメニギスはそれらに上手く対処しながらエサを捕獲しています。
水揚げ時はボロボロになってしまう
デメニギスは、これまで定置網などにひっかかって偶然他の魚と一緒に引き上げられることがありました。
しかし、そんな場合、デメニギスの体は傷だらけで、頭部はすでにボロボロに潰れてしまっていたと言われています。網にかかって、偶然水揚げされた時にはすでにデメニギスは絶命していることがほとんどです。
水族館での飼育は現在はない
デメニギスは2009年頃にアメリカ合衆国カリフォルニア州のモントレーベイ水族館で生体展示されていたことがあります。また、標本の状態なら、東京豊島区にあるサンシャイン水族館に展示されていたこともあります。
しかし現在まで、日本の水族館でデメニギスの本物の展示を行ったことがある水族館はなく、生態なども未知数の部分が多々あります。
静岡県の沼津にある沼津港深海魚水族館はシンカイウリクラゲやベニカワムキなど珍しい深海魚を飼育、展示している水族館ですが、そんな水族館でもデメニギスの展示は未だ行っていません。
ただし、沼津港深海魚水族館の館長のツイッターにはデメニギスの模型の写真が上がっていて、コメントなどもあることから、今後に期待されています。
沼津港深海魚水族館
沼津港深海魚水族館は、日本で初めて深海をテーマにしている水族館です。シーラカンス・ミュージアムも併設し、1階は目の前に広がる日本一深い駿河湾や世界中の深海生物を展示しています。
2階には3億5000万年前から深海で生き続けているシーラカンスのはく製と冷凍個体も展示していて、冷凍個体を見られるのはこの水族館だけです。
沼津港深海魚水族館の深い海コーナーには、深海生物の新種や初公開の生物など希少生物が数多く展示され、生態などを観察することもできます。
沼津港深海魚水族館の営業時間は10時から18時で、年中無休です。入場料は大人1600円、小中学生800円、幼児400円、65歳以上の方、100円引きです。アクセスは、JR東海道線の沼津駅南口からバスで15分、タクシーで5~10分です。
住所 | 静岡県沼津市千本港町83番地 |
電話番号 | 055-954-0606 |
モントレーベイ水族館
デメニギスの生体が展示されていたこともあるアメリカカリフォルニア州にあるモントレーベイ水族館は、世界最高峰の水族館と言われています。550種類以上、3万点以上の展示が行われ生態を観察することができます。展示されている多くの種類はカリフォルニア州固有の生き物です。
中でもジャイアントケルプといわれる全長9mにも及ぶ巨大な海藻群は見ごたえがあります。クラゲやペンギン、ラッコなども見ることができ、海の生物と直接触れ合えるタッチプールもあります。
映画ファインディング・ドリーのモデルになった水族館で、入場料金は大人49.95ドル、3~12歳が29.95ドル、65歳以上と13~17歳が39.95ドルです。オンラインで前売りを購入することができます。
モントレーベイ水族館の基本の営業時間は10時から18時ですが、夏の器官と祝日の一部は9時半から営業しています。
また、夏の期間の土・日曜日は20時までの営業です。さらに冬の期間は10時から17時までです。12月25日以外は毎日営業しています。アクセスは、サンフランシスコから車で2時間ほどです。
住所 | 886 Cannery Row Monterey, CA 93940 |
電話番号 | - |
デメニギスの頭が透明な理由は目を守るため
デメニギスの最大の特徴であるコックピットのような透明な頭は、深海という暗い場所でデメニギスが生きていくために進化した結果です。
どんな生き物もエサを食べ、敵から身を守って命をつないでいきますが、エサの捕食方法は生物によって様々です。デメニギスは、コックピットの中にある目でエサの存在を感知し、捕食します。透明なコックピットはその大事な目を守るために進化したと考えられています。
深海魚だが目が発達している
デメニギスの生息する深海とは、水深200m以上の深さを言います。太陽の光はほとんど届かない暗黒の世界です。
そんな深海で、光を感知することをあきらめた深海魚は、目が小さく退化し、目の代わりに獲物を見つけるための器官が発達しました。
一方、深海魚でも、デメニギスのように暗い深海のわずかな光を取り込んで獲物を狙うように進化した魚は、目が大きく発達しています。馴染みのある魚でいうと、キンメダイが大きな目の深海魚にあたります。ラットフィッシュという深海魚の目はまるでエイリアンのような大きさです。
デメニギスの目は360度見渡すことができます。エサとなるクラゲを、より広い範囲で探すことができるように進化したと考えられています。
クラゲは生物発光をして深海の中でも目立つ存在です。デメニギスはクラゲよりもさらに深い深海からクラゲの発する光をキャッチするのですが、この時、わずかな太陽光も同時に感知し、クラゲの位置を正確に特定することができません。
デメニギスの目の緑色はそんな状況から太陽光だけを取り除き、エサとなるクラゲの発光のみをキャッチするためのフィルターの役割をしていると考えられています。
頭の内部には液体が入っている
デメニギスの透明な頭の内部には液体が入っています。透明なドーム型は、わずかな光でも獲物を探し当てるためのモニターの役割を果たしています。
液体で満たされたゼラチン質の頭部は、クラゲの棘から大切な目を守るための防御壁の役割も果たしていると考えられています。
デメニギスの研究の歴史
透明な頭が特徴のデメニギスの存在は以前から知られていましたが、その全貌が明らかになったのは、最近になってからといえます。まだまだ生態など謎も多く魅惑の生物であるデメニギスの研究の歴史について詳しくご紹介していきましょう。
1939年に発見された
デメニギスが発見されたのは80年以上前の1939年のことです。漁師の網に偶然かかっていた魚が当時の学者たちを驚かせたといいます。地上に上がってきた時にはすでに頭はボロボロで、摩訶不思議な生き物になっていたため、その全貌が明らかになることはありませんでした。
2004年に観察が進んだ
2004年、カリフォルニアの中央沿岸部の深海で遠隔操作無人探査機によって初めて水中を漂うデメニギスが発見され、その撮影に成功しました。
アメリカのモントレー湾水族館研究所による約54秒間の映像により、この時初めてデメニギスの透明なドーム型の頭や緑色の眼球、奇妙な全貌が明らかになりました。
獲物を探しているのか、眼球を上向きにしてゆっくりと泳ぐデメニギスの姿が映しだされています。
しかし、映像が全世界に向けて発表されるのは、数年後のこと。この時点でモントレー湾水族館研究所の無人潜水艇は5600回以上の潜水を行っていましたが、デメニギスに遭遇したのはたったの9回だとういことを明かしています。
2009年に成果が発表された
2004年に発見され撮影された映像が発表されたのは2009年です。アメリカのモントレー水族館が生きた健康なデメニギスの観察を継続し、得られた成果を発表します。
眼球が固定されて上方向しか見ることができないとされていたデメニギスが実は眼球を動かすことができる魚であるという新しい生態がわかったのもこの時です。
情報に獲物を見つけると、体の向きはそのままで、目だけを素早く上方から前方に、つまり口の方向に回転させて獲物をゲットします。デメニギスの目は、探索のための機能と捕獲の機能の両方を備えていることが明らかになったのです。
全世界に向けて発信されたデメニギスの動画は、強い衝撃とともに人々の間に広まりました。エイリアンのような深海魚の存在が全世界を驚愕させました。
青森県沖でデメニギス科が発見
デメニギスの存在が広く世界に発表された2009年、実は日本の青森県太平洋沖でも日本初のデメニギス科の魚が採取されています。ヒナデメニギス属に属するヒナデメニギスは、日本初のデメニギス科の魚として記録されています。
各国の保有する深海探査船
深海魚の特徴や生態の研究に欠かせない深海探査船は、各国が保有しています。1970年頃から活発になった深海調査では、数々の新種生物が見つかっています。
日本の所有する有人深海探査船はしんかい2000としんかい6500で、しんかい2000は、2003年に引退し、現在はしんかい6500だけが稼働しています。
6500mまでの潜航が可能で、3名乗車することができ、うち2名がパイロットで、オブザーバーと呼ばれる深海調査を行う学者は1名のみが乗車することができます。秒速0.7mで潜水し、水深6500mまでは約2時間で到達します。
また、日本の無人探査機は数種類ありますが、最も深く潜航できるのはかいこうです。7000mまでの潜水調査が可能で、潜航深度としては現存する世界のどの探査機よりも深くなっています。
アメリカ合衆国が所有するアルビン号は水深4500mまで潜航できる有人深海探査船で、パイロットは1名、オブザーバー2名が乗船できます。
1964年に完成した古い探査船ですが、耐久性に優れていて、いまだに現役の探査船で数々の発見をしています。その他、ロシアの保有するミール、スイスで設計されたトリエステなどもあります。
デメニギスは食べられる?
深海魚であるデメニギスは、果たして食べることはできるのでしょうか。そもそも深海魚って食べられるの?思っている方もいるかもしれませんが、実は知らないうちに食べているかもしれない、美味しい深海魚はたくさんいます。
例えば、沼津で多く食べられているオニヒゲは、すり身などにも使われることがある深海魚です。メヒカリの名前で流通しているマルアオメエソやアオメエソなども脂のりの良い美味しい魚です。
キンメダイによく似たヒウチダイやツボダイ、アンコウやドンコ、ノドグロなどは圧倒的な美味しさを誇る深海魚です。こういった食用として美味しい深海魚がいる中で、デメニギスはどうなのでしょう?
現在食べた人はいない
デメニギスは現在食用になるかどうかは定かになっていません。もともと漁獲自体が少ない魚ですから、まだまだ食用にするよりも、研究対象として貴重な魚として扱われることが多いようです。そのため、デメニギスを実際に食べたという人はいないのが現状です。
毒性はないと確認された
生態などまだまだ分かっていないことも多いデメニギスですが、分類上はニギス目になります。そんなニギス目の魚は食用として日本でも鮮魚店で出回っています。
深海魚の中にはアブラソコムツなどのように毒性が強く食用が禁止されている魚もいますが、研究機関で解剖した結果、デメニギスにはそのような毒性はなかったと確認されています。
美味しいニギス
デメニギスが属するニギス目の魚で、ニギス科ニギス族に分類されるニギスは、デメニギスと同じ似鱚と書く魚です。青森から九州までの広範囲にわたって生息していて、主に水深200m程度の海底に生息しています。
体長は20cmほどで、形状は左右から押しつぶされたように平べったい円筒形をしています。旬の9~10月には脂がのって、とても美味しく、刺身の他、天ぷら、フライ、煮つけ、焼き魚やソテーなど。
癖のない白身魚なので、和食から洋食まで色々な料理にぴったりです。見た目以上の美味しさに驚くことは間違いなし。新鮮なニギスの選び方のポイントは、目と身の透明具合です。また、小ぶりのものより大きめのもの、幅の広めのものを選ぶと脂がのっています。
魚重食堂
沼津港深海魚水族館の近くには深海魚料理専門店の魚重食堂という飲食店があり、げぼうの天丼や、深海小えびかき揚げ丼などの深海魚メニューを堪能することができます。いつの日か、魚重食堂でデメニギスを食べられる日が来るかもしれません。
営業時間は月、火、金~日曜日の11時から14時、定休日は毎週水曜日と木曜日です。アクセスは、戸田停留所下車すぐです。店内は30席あり、駐車場も完備されています。
住所 | 静岡県沼津市戸田303-5 |
電話番号 | 0558-94-2381 |
デメニギスはこれからの研究成果が期待される深海魚
いかがでしたでしょうか。デメニギスは強烈なインパクトを放つ透明な頭が特徴的な深海魚です。まだまだ分かっていないことも多く、特徴や生態など、これからの研究成果が期待される深海魚です。
沼津港深海魚水族館やモントレー湾水族館などの動向に注目しながら、デメニギスの存在を楽しんでみてはいかがでしょう。
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