ニュージーランドの言語は3種類！英語やマオリ語に並ぶ3つ目の公用語とは？

ニュージーランドは日本から観光で行く方も多いですし、留学先としても人気の高い国です。ではニュージーランドではどのような言語が公用語となっているのでしょうか。ニュージーランドの公用語について、その特徴などを紹介します。

ニュージーランドの公用語としてまず挙げられるのが「英語」です。ニュージーランドで使われている言語としてはほとんどの方が英語を使っており、全土で使われているので、英語が話せればさほど不自由なく過ごすことができるでしょう。

そのため、ニュージーランドでの英語の位置づけは、公用語として認められているというよりは、ニュージーランドの誰もが使う「事実上の公用語」というような位置づけになっているとされています。

ただし、後で述べるように、ニュージーランドで使われている英語は「ニュージーランド英語」と言われます。日本の学校で学ぶ英語はアメリカ英語なので、多少の違いが見られます。やや違和感を感じる場合もあるかもしれません。

なぜニュージーランドでは英語が公用語として使われるのかというと、それはニュージーランドの国旗を見ればわかります。ニュージーランドの国旗を見るとイギリスの国旗がデザインに取り入れられています。

8世紀から9世紀ごろ、無人島だったニュージーランドにマオリ人がやってきて住み着くようになります。そこに1642年、オランダ人のアベル・タスマンがやってきて、ヨーロッパ人にニュージーランドが「発見」されました。

ニュージーランドという国名の「ジーランド」というのはオランダの「ゼーランド」のことです。「新しいゼーランディア」という意味で、これが英語の「ニュージーランド」のもとになりました。

ニュージーランドは1769年、イギリス人の探検家であるジェームズ・クックが上陸し、その後イギリスの植民会社が植民活動をしたことで、多くの入植者がやってくるようになりました。

捕鯨や交易、宣教などを目的として人々がやってくるようになると、ニュージーランドは捕鯨船の寄港地となり、イギリス、アメリカなどの多くの国籍の船が入るようになりました。そして1840年、イギリスの植民地となりました。

これらの人々は当然英語を話していたため、ここで入ってきたイギリス英語がベースとなり、ニュージーランド英語が作られていきました。ですからニュージーランドでは、このイギリス英語をベースとした英語が公用語となったのです。

そのため、ニュージーランドの公用語であるニュージーランド英語は、イギリス英語をベースとしてできたものです。さらに次に述べるように、ニュージーランドの先住民である、マオリ族が使うマオリ語も加わってできています。

具体的には、マオリ語からの借用語や、発音の影響が英語にもあるということであり、たとえば英語の「Hello」の意味でマオリ語の「Kia ora」を使うなどが挙げられます。

そのため、ニュージーランド英語は、英語という言語の中では新しい言語とされ、近年の150年の間に発達した最も新しい英語であると言われることもあります。

とはいえ、あくまでもニュージーランド英語のベースはイギリス英語です。たとえば「can't 」を「カーント」、「ask」を「アースク」と発音するなどは、イギリス英語由来の発音です。

また、母音の発音などにも違いがあり、「today」を「トゥダイ」と発音するなどがあります。「Good day」はニュージーランドではあまり使わず、「Thanks」や「Bye」の意味で「Cheers」というのもよく聞かれます。

先ほども述べたように、日本で学ぶ英語はアメリカ英語がベースなので、イギリス英語とは発音などに違いが見られます。そのためニュージーランドの英語の発音にはやや違和感を感じることがあるかもしれません。

ニュージーランドの公用語として次にあげるのが「マオリ語」です。こちらは知らない方が多いのではないでしょうか。マオリ語というのはニュージーランドの先住民である、マオリ族の使う言語で、1987年にニュージーランドの公用語になりました。

マオリ語に関しては、特に近年、テレビ番組などでも使われるなど、復活の兆しが見られます。2015年の時点ですが、マオリの成人の半数がマオリ語に関する知識を持っていると言われます。

マオリ語そのものは東ポリネシア諸語の仲間であり、クック諸島のマオリ語やタヒチ語などと深い関係がある言語とされています。

マオリ語は今述べたようにニュージーランドの先住民が使う言葉ですが、公用語になったのはそれほど古いことではありません。このマオリ語が公用語になったのには、ニュージーランドの政策が大きく影響しています。

第二次世界大戦まで、マオリ族の人々はマオリ語を第一言語として使うことが多かったのです。しかしこの時期ごろからマオリ語を話す人が急速に減少し、マオリ族の子供たちすら、マオリ語を話さなくなってしまうのです。

この状況に危機感を抱いた政治家たちは、マオリ語の復活プログラムを始めます。そしてマオリ語が公用語となったことで、近年ではマオリ語がニュージーランドの共通の国家遺産として人気を得るようになってきています。

今述べたように、マオリ語は英語とは違う言語系統に属しています。まず、マオリ語には日本語と同じく、母音が5つあり、さらに短母音と長母音があります。子音は8つあり、whとngの2つも子音に数えます。

また、母音の長母音には「マクロン」という記号をつけます。また、人称代名詞や否定形などに英語と違う特徴がみられます。

なお、マオリ語の中にはニュージーランド英語で使われている言葉もありますし、魚の名前は多くがマオリ語になっています。そのため、切り身の魚だと日本人など知らない人はなにかわからないと言われることもあります。

さて、ニュージーランドにはもう1つ公用語があります。それが「ニュージーランド手話」です。手話が公用語というのはかなり珍しいことですが、2006年、ニュージーランドではニュージーランド手話が公用語に認められました。

実は手話は世界共通の言葉ではなく、それぞれの国で独自に発展してきた言語です。また、手話を公用語としている国はニュージーランドの他にもヨーロッパを中心にいくつかあります。

なお、ニュージーランドの場合は正式な公用語として認められているのがマオリ語とニュージーランド手話で、ニュージーランド英語は「事実上の」公用語という扱いになっています。

このように、手話を公用語として認めている国は、世界的に見てもあまり多くありません。ではなぜ、ニュージーランドではニュージーランド手話が公用語になったのでしょうか。

ニュージーランドにはイギリスの入植者と共にイギリス手話が伝わりますが、一時期手話を使うことが禁じられた時代がありました。それが1980年代後半、大学でニュージーランド手話の研究がすすめられたことで、学ぶ人が増えたのです。

ニュージーランドでニュージーランド手話を使っている人は2013年のデータで約2万人と言われます。この人数はニュージーランドで日本語を話す人々の数とほぼ同じと言われており、近年ではろう者以外の方で手話を使う人も見られます。

では、ニュージーランド手話とはどのようなものなのでしょうか。ニュージーランド手話はイギリスからの入植者が持ち込んだイギリス手話がベースとなっており、イギリス、オーストラリアの手話の方言と見なされることもあります。

両手を使った指文字を使いますが、イギリス手話に比べて手話や顔の動きとともに使う唇のパターンが多いと言われます。これは先ほど述べた手話が禁じられた時代に、口話教育がなされたという歴史が反映されているとされます。

またニュージーランド手話にはマオリ語、マオリ族の概念やニュージーランドの地名を手振りで表現するものなども含まれていて、語彙もかなり豊富であるという特徴があります。

このように、ニュージーランドには一般に知られるニュージーランド英語のほかに、マオリ語やニュージーランド手話など、3種類の言語が公用語として使われています。ぜひニュージーランドに行ったら、それらの言葉に触れてみてください。