近年人気の龍潭寺
ドラマやアニメの舞台として取り上げられた場所は「ご当地」として多くの観光客が集まるものです。龍潭寺も古くからある有名な古刹なのですが、先年大河ドラマの舞台として取り上げられたことから、多くの人が訪れるようになりました。そんな龍潭寺のアクセスや拝観料、見どころや御朱印などの情報を紹介します。
龍潭寺とは
龍潭寺(りょうたんじ)は、万松山龍潭寺と言い、臨済宗妙心寺派の寺院で、天平年間に創建されたと言われる古刹です。特に井伊家の菩提寺として古くから知られていました。また美しい庭園は国の名勝に指定され、四季折々の美しい自然で観光客を出迎えてくれています。
龍潭寺はどこにある?
龍潭寺があるのは、静岡県浜松市北区です。場所としては奥浜名湖にあり、風光明媚なところとして知られています。この辺りは井伊谷と呼ばれる地で、井伊谷川と神宮寺川が合流するところに位置しており、水が豊富な地としても知られる土地でした。
龍潭寺へのアクセス
それでは龍潭寺へのアクセスを紹介します。龍潭寺へのアクセスですが、電車の最寄り駅からは距離があり、バスを利用してアクセスすることになります。利用できる最寄駅はJR「浜松」駅と、天竜浜名湖鉄道の「金指」駅、「気賀」駅となります。
遠方などから新幹線を利用してアクセスする場合は、浜松駅で下車することになります。ただ、駅の距離だけを純粋に考えると、天竜浜名湖鉄道の駅の方が龍潭寺には近いです。タクシーを利用するつもりであれば、「掛川」駅で下車し、天竜浜名湖鉄道を利用したほうがいいかもしれません。
天竜浜名湖鉄道の駅ですが、金指駅のほうが距離は近く、タクシーで5分ほどです。一方気賀駅からはタクシーで10分ほどかかります。龍潭寺から気賀駅に行くバスは一日に一本、浜松市自主運行バスがあります。「龍潭寺」バス停までは徒歩で5分ほどなので、時間が合えば帰りに利用してもよいでしょう。
浜松駅から龍潭寺までのアクセスは、タクシーで40分ほどかかります。バスを利用してアクセスする場合は遠州バスから「奥山線」もしくは「渋川線」に乗ります。渋川線は「井伊谷」バス停で、奥山線は「神宮寺」バス停で下車し、徒歩で10分ほどで龍潭寺にアクセスします。
このように、龍潭寺へ公共交通機関を利用してアクセスするのは、あまり便がよいとは言えません。ですから車でアクセスする方も多いです。車でのアクセスの場合、最寄りICは東名高速道路の「浜松西IC」、「三ヶ日IC」、新東名「浜松いなさIC」となります。
それぞれのICからの所要時間は、浜松西ICからは国道257号線経由で北へ約20分、三ヶ日ICからは国道362号線を東へ約25分、浜松いなさICからは257号線を南へ約10分となります。アクセスする場所からの距離を考えて、一番便利なところを選ぶとよいでしょう。
気になる駐車場ですが、龍潭寺には駐車場が4か所あります。そのうち大駐車場は大型バスも停められる駐車場、1つは障がい者専用の駐車場となっています。普通の乗用車で80台程度は駐車できるので、特別な時以外は問題なく停められるでしょう。料金はいずれの駐車場も無料です。
龍潭寺の由緒
次に龍潭寺の由緒について紹介します。龍潭寺が創建したのは天平年間の753年で、創建したのは有名な行基とされています。この地域には縄文時代や弥生時代の遺跡、古墳などもあり、古くから水に関わって開けた土地だったようです。
創建時は地蔵寺という名前だったのですが、1093年、井伊共保が葬られた時にその法号から自浄寺と改められました。この人物は遠江の国司をしていた藤原共資の養子となり、後に故郷の井伊谷に居館を構え、井伊氏と名乗ったという説があり、井伊家の初代とされています。
これ以降、平安時代には龍潭寺は井伊家の菩提寺となり、1507年には井伊直平が黙宗瑞淵を招き、この寺の名前も龍泰寺と改められました。ところが直平の孫にあたる井伊直盛の代になると、井伊家は今川氏の配下となり、1560年の桶狭間の戦いで家臣16人と共に討ち死にしてしまいます。この直盛の法名から寺名は「龍潭寺」となりました。
この後龍潭寺は代々の井伊家の菩提寺となり、井伊家の保護を受け、江戸幕府からの朱印状も得ることとなります。以来現代に至るまで、井伊家に関わる寺として、また美しい庭園を持つ古刹として多くの観光客が訪れる寺院となっています。
龍潭寺の拝観料は?
では、龍潭寺の拝観料は必要なのでしょうか。寺社によって拝観料が必要なところ、不要なところがありますが、龍潭寺は拝観料が必要な寺院です。まず拝観時間ですが、9時から16時30分で、17時には閉門となります。龍潭寺は境内が広いため、拝観時間は1時間程度見ておくとよいでしょう。
拝観料ですが、高校生以上の大人の拝観料が500円、小中学生の拝観料が200円となっています。拝観料にはこのほかに団体料金(30人以上)、障がいのある方の料金などの設定もあります。ちなみに拝観料の団体料金ですが、大人、小中学生それぞれ30人以上でこちらの料金になり、事前の予約が必要となっています。
この拝観料は本堂などはもちろんですが、有名な庭園の拝観もできるようになっています。ですから、龍潭寺に行ったらぜひ時間をかけて、庭園などもゆっくりと拝観することをおすすめします。
龍潭寺は井伊家ゆかりの寺
龍潭寺は井伊家ゆかりの寺として現代まで存続してきました。井伊家代々の菩提寺であることもそうですが、その寺名が井伊家の当主に関係していることでもわかります。しかしその井伊家が江戸時代を通じて存続した背景には、龍潭寺に関わる一人の領主が深く関係しています。
井伊家は今川家の配下となって、桶狭間の戦いに参戦します。すでによく知られているように、桶狭間の戦いでは、最初は今川氏が優勢だったのですが、織田信長の急襲を受けて今川義元が打ち取られ、今川氏が惨敗しました。その時に時の当主である井伊直盛も討ち死にしたのです。
直盛には女子しかおらず、養子となっていた従弟の井伊直親が家督を継ぎます。しかしこの直親もまた、今川義元の子氏親への謀反を疑われ討ち死にしてしまいます。そこでこの女子、次郎法師が家督を継ぎ、「井伊直虎」として女領主となるのです。
直虎は当時の龍潭寺の住職であった南渓和尚(直平の息子にあたります)の後見を受けながら、直親の遺児に当たる虎松の後見人となり、井伊家断絶の危機を乗り切ります。虎松は成長し井伊直政となり、徳川家の家臣となり、「徳川四天王」に数えられる功臣となりました。このことによって龍潭寺は江戸幕府からの朱印状を受けることとなります。
井伊家は浜松?
この直虎を中心とする歴史については、最初に述べたように、先年大河ドラマのテーマとして取り上げられ、そこで龍潭寺や井伊谷が舞台となったことで、浜松と井伊家の関係について広く知られるようになりました。しかしそれ以前は井伊家といえば彦根だと思っていた方も多いのではないでしょうか。
井伊直政が徳川家康に仕え、多くの武功を挙げたことで、井伊家は徳川氏に取り立てられます。直政は1590年、家康が関東に入府する際に上野国箕輪に12万石をいただきます。そして関ヶ原の戦いの後、近江国佐和山に18万石を与えられ、1604年には彦根に築城したのです。
井伊家はこの後、江戸時代を通じて彦根藩を治め、30万石の譜代大名として幕政に参画します。一般的によく知られている大老井伊直弼はその子孫にあたるのですが、直弼のほかにも5代6度にわたり大老となるなど、譜代大名筆頭の家柄として存続しました。
龍潭寺は滋賀県にも?
そのため、龍潭寺という寺は滋賀県にもあります。こちらの龍潭寺は直政が佐和山に転封となったため、龍潭寺の五世の昊天禅師を招き分寺したもので、現在滋賀県彦根市にあります。こちらには江戸時代の俳人森川許六の襖絵と昊天禅師による枯山水と池泉式庭園がよく知られています。
龍潭寺の見どころ1:伽藍
それでは龍潭寺の見どころについていくつか紹介します。まず伽藍ですが、本堂など6棟が県の指定有形文化財となっており、実際に見ることができます。境内に入る前に道路を挟んだ反対側にあるのが「共保公出生の井戸」です。井伊家の祖である共保は1010年にここで生まれたとされており、井伊氏の旗印の井桁、家紋の橘はここから取ったとされます。
山門は1656年に再建されたもので、山号額は朝鮮通信使の雪峯が彦根の井伊氏のもとで書いたものだとされています。東門は龍潭寺で最も古い建物で、直政の母が再婚した松下氏の養子となった松下一定により寄進されたものです。
龍潭寺本堂は1676年、彦根藩4代目藩主井伊直興により再建されたもので、中には秘仏となっている本尊虚空蔵菩薩が祀られています。特に知られているのが床で、鴬張りになっており、歩くと美しい音がなります。
また、歴史に興味があるという方におすすめなのが、井伊家の墓所です。龍潭寺には共保から直政までの墓地が境内にあるのですが、注目してほしいのは直虎の墓です。直虎は生涯夫を持たなかったのですが、直親が許嫁として直虎と結婚し、井伊家を継ぐ予定だったのです。
しかし、ちょうど結婚する時期に直親の父が今川氏に殺され、直親自身も命を狙われたことから、直親は井伊谷を出奔し、直親が死んだと思った直虎は出家してしまいます。後に直親が戻ってきたとき、直親は既に妻をめとっていました。この直親の墓は直虎と妻の間にあるのです。
龍潭寺の見どころ2:彫刻など
次の見どころとして、彫刻を紹介します。開山堂のなかにある龍の彫刻と恙なしの彫刻は、有名な左甚五郎の作として知られています。これは江戸時代中期に仏殿に使用された蛙股の彫り物で、「甚五郎作」という札がついているのですぐにわかるでしょう。
それから、釈迦如来坐像は1729年に建立されたもので、寄木造の仏像です。「丈六の仏」と呼ばれています。この仏像で目をひくのが、仏像の体や顔に残る傷跡です。この傷跡は廃仏毀釈の際につけられたもので、当時の歴史を物語る一品となっています。
このほか、井伊家の赤備えと呼ばれる甲冑、1584年、小牧長久手の戦いに出陣する直政に龍潭寺から授けられたという日月松風図扇面画賛などがあり、それらはタイミングがよければ展示されているようです。もし展示されているタイミングに当たったらじっくりと見てきてください。
龍潭寺の見どころ3:庭園
龍潭寺の見どころとして外せないのがその庭園です。前述しましたが、龍潭寺の庭園は1936年、国の名勝に指定されました。今のように龍潭寺が有名になる前から、この庭園を見たいということで訪れる観光客は多かったようです。
この庭園は池泉鑑賞式庭園で、小堀遠州によって作庭されたと言われます。江戸時代初期に本堂の北庭として造られ、代表的な寺院庭園とされています。中国の道教に由来する「蓬莱神仙思想」の影響が見られ、「不老不死」「永遠の繁栄」の意味が込められているそうです。
この庭園は庭そのものの美しさもさることながら、桜やさつき、紫陽花に紅葉、梅に椿と、四季折々の自然を楽しむことができるという面でもとても魅力的な庭園となっています。美しい日本庭園の四季のうつろいをぜひ楽しんでください。また予約をすると500円で抹茶をいただくこともできるそうです。
龍潭寺で御朱印をいただく
龍潭寺に行ったら御朱印もいただきましょう。龍潭寺の御朱印はお守りなどを扱う授与所でいただくことができます。前述したように大河ドラマの舞台となったことで混雑が見込まれますので、参拝前に先に御朱印帳を預けてゆっくり参拝するのがおすすめです。
ちなみに龍潭寺にはオリジナルの御朱印帳があります。青と赤の二色あり、表には橘の模様が、裏には「井伊直虎ゆかりの寺 龍潭寺」と金で書かれています。もし御朱印帳を持っていないのであれば、こちらを購入して御朱印集めをしてみるのもいいかもしれません。
御朱印の初穂料は300円で、中央に御朱印が捺されるほか、右側に「直虎之寺」、左側に「遠江国井伊谷龍潭寺」という印が捺されます。中央には本尊である「虚空蔵仏」という揮毫が入ります。参拝の間に書いておいてくれますから、ぜひ御朱印もいただきましょう。
龍潭寺の周辺観光スポット
井伊谷宮
井伊谷宮は龍潭寺のすぐそばにある神社で、後醍醐天皇の第四皇子宗良親王を祀ります。明治維新の際に建武中興に尽力した人を祀る神社が多く造られたのですが、この神社もその一つで、彦根藩知藩事で当時の井伊家の当主であった井伊直憲により建立されました。
井伊谷城
1032年、井伊共保により造られた城と言われます。龍潭寺はこの城の南に位置しており、南北朝時代にはこの城が井伊氏が平時に居城していた城だとしています。江戸時代以降には城の役割がなくなり、廃城となりました。現在二の丸、三の丸跡などが残っています。
龍潭寺で井伊家に思いを
大河ドラマで取り上げられたことにより、井伊家は浜松に勢力を持っていたことが知られるとともに、龍潭寺もまたその菩提寺としてよく知られるようになりました。井伊家につながるさまざまな遺跡が残る場所でもありますので、歴史が好きな方はもちろん、美しい庭園を見たいという方もぜひ浜松の龍潭寺を訪問してみてください。
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