大楠山でハイキングを楽しむ！おすすめコースやアクセスもご紹介！

海のレジャーのイメージが強い神奈川県の三浦半島ですが、実はハイキングが楽しめる山もあるのです。今回は、そんな三浦半島にある大楠山をご紹介します。大楠山の登山ルートを始め、大楠山の見どころやアクセス方法をお伝えします。大楠山周辺のおすすめグルメや日帰り温泉もご紹介します。

大楠山は神奈川県横須賀市の三浦丘陵の一部となっている山で、関東百名山の100番目の山としても知られています。三浦丘陵は三浦半島の中央にあり、その中の大楠山は標高241.3mとさほど高い山ではないものの、三浦半島の山では最高峰となっています。三浦半島周辺の小学校では、遠足で大楠山に登山することも多いそうです。

大楠山の周辺には遮る山や高い建物がないため、山頂からは東京湾や相模湾、遠くは富士山までを一望できます。その眺望は、かながわの景勝50選や関東の富士見百景にも選ばれる美しい景観で、かの司馬遼太郎も「三浦半島記」の中で「その山頂からの眺望は、日本国のどの名山よりもすぐれている、という」と記しています。

大楠山には主に5つのハイキングコースが設けられています。どのコースも登山道は整備されていて、幅広い年代の人が気軽にハイキングを楽しめる山となっています。ここからは、大楠山の5つのハイキングコースをご紹介します。大楠山でどんな1日を過ごしたいか、イメージしながらチェックしていきましょう。

大楠山の南西、相模湾方面からのハイキングコースは「前田橋コース」です。前田川のせせらぎを楽しみながら、川沿いの遊歩道を進む人気のコースです。登山口から山頂までは徒歩およそ70分、3.2kmの行程です。遊歩道は歩きやすく整備されている箇所や岩の上を歩く箇所など様々なので、滑らないように注意しましょう。

山に入ってからの登山道は丸太の階段や坂道が続きますが、難易度の高い場所はありません。木が生い茂る樹林帯の登山道は、夏は涼しく野草の花が見られたり、秋には紅葉が楽しめたりと自然を満喫できます。登山道の所々には、山頂までの距離と横須賀市に関するクイズが書かれた看板が立っていて、次が楽しみになります。

前田橋コースの南側をほぼ平行に走るのは「大楠芦名口コース」です。登山道は林道と言っても良いほど道幅が広く平坦で、大楠山の5つのハイキングコースの中では最も登山しやすいコースと言えます。所要時間はおよそ60分、2.9kmの行程です。なお、大楠芦名口コースの登山口にはトイレがあるので、出発前に済ませておくのがおすすめです。

「塚山・阿部倉コース」は、大楠山の北側から山頂を目指すハイキングコースです。ハイキングコースとは言うものの、田浦駅から阿部倉温泉までは舗装された一般の道路が5km近く続き、実際に山道を歩く距離は2km程度と短いです。ただ合計の距離は長いので、体力のある人におすすめのコースです。

塚山・阿部倉コースは1本道ではなく、阿部倉温泉までは道路がたくさん通っています。周辺には歴史スポットもたくさんあるので、立ち寄りたいスポットに応じて自由にルートを決めることができます。阿部倉温泉を越えると葉山国際カンツリー倶楽部の脇を歩く山道となります。ややアップダウンがあるものの、難所はありません。

横須賀駅方面から大楠山へ向かう時は「衣笠コース」がおすすめです。衣笠コースは、衣笠山公園のある衣笠山を越えて大楠山に登るコースなので、低山ではあるものの縦走登山となり体力のある人には手応えのあるコースです。所要時間はおよそ2時間20分、6kmほどの行程です。衣笠山周辺の道は舗装されている箇所も多く、難易度は高くありません。

なお、衣笠コース後半の大畑橋から先は平成32年3月31日まで工事のため通行止めとなっています。阿部倉コースへ合流する迂回路は、大畑橋を渡らず横浜横須賀道路と並行に走る北側の道を進み、坂本芦名線へ出たら左へ進んで阿部倉温泉方面へ向かいます。阿部倉コースへ合流する迂回路は遠回りとなるため、時間に余裕を持っておくのがおすすめです。

大楠山の西側から山頂を目指すのは「湘南国際村コース」です。登山口から山頂までは45分という、5つのハイキングコースの中では最短ルートとなっています。前半の道は舗装道路で、視界が開けているので開放感たっぷりでハイキングが楽しめます。登山道は葉山国際カンツリー倶楽部の南側を通ります。山道も階段が整備されています。

大楠山のハイキングコースには見どころがたくさんあります。その中でも人気があるのが前田川遊歩道です。前田橋コースの登山口へと続く前田川遊歩道は、大楠山から流れてくる前田川の清流沿いを散策する道です。川は浅いので入って遊ぶこともでき、暑い日にはハイキング客の他にも水遊びを楽しむ子どもや犬の散歩に訪れる近所の人の姿も見られます。

前田川を流れる水は水質が良く、アユやスジエビといった生き物が生息しています。ハイキングの足を止めて前田川を覗いてみるのも楽しそうです。また、周囲は樹木に囲まれていて、美しいカワセミの姿が見られることもあります。野鳥の鳴き声や川のせせらぎに耳を傾けながら、癒しのひとときを過ごせる散策路です。

大楠山の登山中に見える山頂付近の白い塔はレーダー雨量観測所です。国道交通省が全国26ヶ所に設置した観測所の一つで、塔の高さは55mです。ちなみに、レーダー雨量観測は実際に観測所で雨水を貯めて雨量を測定するのではなく、アンテナから発せられた電波が雨滴に当たって跳ね返るのを感知して雨の強さを測定するのだそうです。

レーダー雨量観測所の高い塔の隣にある丸い屋根の建物は展望所です。展望所からは横須賀市街が一望でき、天気の良い日には海の向こうに伊豆大島も見えます。また、上から花畑の全景を撮影するのもおすすめです。展望所は無料で入場できます。

レーダー雨量観測所の周辺は、大楠平という平地になっています。山頂ではありませんが、開けた場所になっているので休憩やお弁当タイムにおすすめのポイントです。大楠平には地元のボランティアの方々が作った花畑があり、春には菜の花、秋にはコスモスが咲き揃います。菜の花の見頃は3月中旬から4月上旬、コスモスは9月上旬から10月上旬が見頃となります。

大楠平から10分ほど歩くと、いよいよ大楠山の山頂へ到着です。山頂は平らな砂地となっており、ベンチがあるので休憩をとることができます。楽しみな絶景は、らせん階段の展望塔「大楠山ビューハウス」から眺めるのがおすすめ。大楠平のレーダー雨量観測所の塔も眼下におさめ、三浦半島の360度パノラマ風景が見渡せる絶景スポットです。

大楠山ビューハウスの1階は売店になっています。売店ではペットボトルの飲み物や缶ビールの他、お菓子やカップラーメンなどの軽食が販売されています。甘酒や味噌田楽の販売もあります。店内にはカウンターテーブルが設けられているので、寒い日には暖をとりながら休憩ができます。

衣笠コースのスタート地点となる衣笠山公園は、2000本もの桜が見られる人気のお花見スポットでもあります。衣笠山をそのまま公園にした衣笠山公園には、桜の森、小鳥の森、昆虫の森、わんぱくの森という4つのエリアがあり、自然散策だけでなくアスレチック遊具もあるので大人から子どもまで楽しめます。大楠山へ向かうのを忘れてしまいそうです。

衣笠山公園から県道27号線を越えると衣笠城址です。平安時代から鎌倉時代にかけて活躍した三浦一族の城で、城郭は残っていませんが戦の時に物見に使ったと思われる大岩があります。また、衣笠城址の隣には大善寺と御霊神社もあります。衣笠コースから大楠山へ向かう時は、時間に余裕をもってゆっくり衣笠山公園周辺を散策するのがおすすめです。

塚山・阿部倉コースの途中には、国指定重要文化財がひっそりと佇んでいます。「三浦安針墓」は、江戸時代に活躍した三浦安針(みうらあんじん)とその妻のお墓。三浦安針はイギリス人で、本名はウイリアム・アダムスといったそうです。お墓の形は宝筺印塔といい、中国に古くから伝わる仏塔が元となったものです。

太平洋を航行中に遭難して九州に流れ着き、徳川家康の信を得て外交顧問に就任した三浦安針は、三浦郡逸見村に250石を与えられて日本で暮らすこととなりました。元々オランダ東インド会社の水先案内として航海をしていた安針は航海術や天文学、造船技術の知識に富み、当時の造船技術の発展に大きく貢献しました。

大楠山登山の大きな楽しみは、山頂からの景色はもちろんハイキングコースの様々な見どころにあります。5つのハイキングコースはそれぞれ趣が異なるので、往路と復路で別々のコースを歩いてみると楽しみも一層増えそうです。また、真っ直ぐ大楠山山頂へ向かうのではなく、寄り道して三浦半島の名所巡りを楽しみながらゆっくりと散策を楽しむのもおすすめです。

大楠山を始めとする三浦半島一帯は、太陽を富士山の頂上に置いたような「ダイヤモンド富士」が見られるポイントとして有名です。三浦半島のダイヤモンド富士は毎年4月上旬と9月上旬に見られ、大楠山周辺や三浦半島の海岸にはたくさんのカメラマンたちが訪れます。なお、三浦半島では日の出のダイヤモンド富士は見られず、日没のみ見ることができます。

また、月が富士山の山頂に重なる現象は「パール富士」と呼ばれています。赤いダイヤモンド富士とは趣の異なる幻想的な風景が楽しめます。月は太陽と違い沈む時間が毎日変わるので、事前に調べておきましょう。大楠山でダイヤモンド富士やパール富士を見る場合、下山は暗い時間帯となるので懐中電灯を用意しておくと安心です。

大楠山の周辺は公共交通機関が充実しているので、多方面からアクセスしやすくなっています。JR逗子駅と京急新逗子駅からは前田橋コースと大楠芦名口コースの登山口へバスでアクセスできます。長井行き、横須賀病院行き、佐島マリーナ入口行き、電力中央研究所行き、湘南なぎさ行き、大楠芦名口行きのバスに乗り、「前田橋」または「大楠芦名口」バス停で下車します。

また、JR横須賀駅や京急横須賀中央駅からもアクセスが便利です。湘南佐島なぎさの丘行きに乗り、「衣笠山公園」で下車すると衣笠コースへ入れます。また、「衣笠山公園」の2つ先は「衣笠城址」バス停で、衣笠コースをショートカットすることも可能です。そのままバスに乗っていると「大楠芦名口」へ到着し、大楠芦名口コースの登山口へアクセスできます。

衣笠コースへバスを使わずにアクセスするなら、JR横須賀駅の隣駅の衣笠駅からスタートするのもおすすめです。JR衣笠駅から徒歩20分ほどで衣笠山公園までアクセスが可能です。体力や時間に応じて、アクセス方法を計画しましょう。

塚山・阿部倉コースはJR田浦駅または京急安針塚駅が最寄り駅です。歩いてのアクセスも可能ですが、JR逗子駅と衣笠駅を結ぶ京急バスの「池上住宅入口」バス停で下車すると歩く距離が短くなります。また、京急汐入駅から運行している湘南国際村行きのバスも「池上住宅入口」バス停へアクセスできます。

大楠山の登山口には登山客専用の駐車場がなく、コインパーキングも少ないです。ですから、車でアクセスする場合は駐車場が近くにある登山口からハイキングするか、駅周辺のコインパーキングに駐車してバスを利用する方法があります。駐車場が近くにあるのは衣笠コースで、衣笠山公園の駐車場が利用できます。

前田橋コースや大楠芦名口コースの最寄りの駐車場は、立石公園の駐車場がおすすめです。塚山・阿部倉コースの周辺にはアクセスに便利な駐車場がないようです。なお、湘南国際村センターの横の敷地を駐車場として使用している人もいるようですが、公に駐車場として運営されているわけではないのでおすすめできません。

5月から6月は、塚山・阿部倉コースから寄り道して「横須賀市立しょうぶ園」の散策もおすすめです。およそ7000平方mの敷地には様々な種類の花菖蒲が植えられ、その数は14万株にも及びます。花菖蒲が見頃となる4月から6月の期間は入園料大人310円、小中学生100円がかかります。7月から翌年3月までの期間は入園無料となっています。

入園無料の期間でも、横須賀市立しょうぶ園には様々な花が咲くので十分楽しめます。春先にはシャクナゲやモクレン、ショウブの前には藤や牡丹。ショウブが終わると蓮が咲き始めます。そして秋には四季咲きのバラや彼岸花がきれいです。また冬は水仙も咲きます。横須賀市立しょうぶ園は毎週月曜が休園日ですが、4月から6月は無休となります。

前田橋コースと大楠芦名口コース登山口の中間にある「芦名ベーカリー芦兵衛」は地元で人気のパン屋さんです。ハード系からスイーツ系まで種類が豊富で、しらすや桜エビをトッピングした海沿いの街ならではのパンが人気。営業時間は8時から17時までですが、売り切れ次第閉店となるそうです。毎週月曜と第3火曜は定休日です。

大楠芦名口コースの芦名堰近くにある「SYOKU-YABO農園」は、自分たちで育てた安全で新鮮な野菜や無添加の食材をふんだんに使った料理が人気のレストラン。席はログハウスやウッドデッキなど広い敷地のあちこちに点在していて、開放的な雰囲気で食事が楽しめます。11時30分から14時まではランチタイム、14時から17時まではティータイムです。

大楠山登山のお土産は、三浦半島名物のしらすがおすすめです。前田橋登山口から程近い秋谷海岸の手前にある「紋四郎丸」は、しらす漁師が営むしらす専門店。獲れたての釜揚げしらすを始め、ちりめんじゃこや佃煮など様々なしらす製品があります。なお、イートインはありません。営業時間は8時から17時までとなっています。

ハイキングの後は温泉に入って汗を流したくなるもの。塚山・阿部倉コースの途中にある阿部倉温泉は残念ながら現在は営業しておらず、登山客に人気となっているのが衣笠駅近くの天然温泉「のぼり雲」です。地下800mから湧き出す佐野天然温泉は美肌効果があり、お風呂上りはさっぱりすべすべに。入館料は大人1000円、小人500円です。

三浦半島の最高峰、大楠山のハイキングコースや見どころをご紹介しました。大楠山を擁する三浦半島は、都心からのアクセスが良く海や山の自然に恵まれているので日帰りでのお出掛けにおすすめのエリアです。絶景を楽しんだり自然や歴史に触れたりと、楽しみの多い大楠山。今度の休日には、大楠山ハイキングでリフレッシュしてみてはいかがでしょうか。