カナダの公用語は英語とフランス語の2つ!
公用語が2つあるカナダ。公用語とされる言語が2つ以上ある国は多言語国家と呼ばれます。スイスやベルギーほどたくさんの公用語ではありません。そして、カナダの全地域で英語・フランス語の両方が話されているわけでもありません。
しかし、カナダで英語・フランス語の2つが公用語となった背景とは一体どのようなものがあるのでしょうか。
2つの言語を使う背景や使用地域もチェック!
カナダの公用語、英語とフランス語は両方がまんべんなくカナダ全土で使われているわけではありません。これは他の多くの多言語国家でも同じです。英語もフランス語もそれぞれに一方がよく使われる地域が異なるのです。
ですから留学などで行きたい場合、英語を日常で沢山使いたいのにフランス語が主に使われる地域に行ってしまったり、その逆の間違いがないように行く地域の特徴を把握してから行きたいものです。
カナダの公用語の特徴
カナダの公用語の特徴としては、地域別に話されている言語が違うだけでなく、州ごとにも違う公用語が定められています。もちろんほとんどの州の公用語は英語なのですが、ニューブランズウィック州に関しては英語・フランス語両方を公用語としています。
しかし様々な商品のラベルは、全国どこでも2つの言語の併記となっており、片方を母語とする人が困らないようになっています。
カナダが2つの言語を公用語にした背景
なぜ、カナダは2つの公用語が話されるようになったのでしょうか?現在のカナダのあるアメリカ大陸北部地域は、主にイギリスから渡ってきた移民が住んでいた歴史があります。
それぞれが住む地域が分かれていたために、片方の言語を話す人が多い地域、他方を主に使う人が多い地域が分かれるという特徴が生まれたのです。
カナダの公用語の割合
では、カナダでは英語を話す人とフランス語を話す人の割合はどの程度なのでしょうか?カナダの公用語となっているこの二つの言語を母語とする人は、英語が58%、フランス語が22%となっています。
ではそれ以外はといいますと、中国語・パンジャブ語(インドやパキスタンで使われる)・ドイツ語などをはじめ200以上の言語が使われているのです。日本にはない特徴です。
英語とフランス語を両方話せる人は17%のみ
カナダ政府で仕事をする職員の人々は必ず2つの公用語を使えないといけませんが、一般の国民でこの2つの公用語を話せる人は17%しかいません。また商品のラベルなどは英語・フランス語両方で書いてあるのでフランス語が出来ないと困るようなことはそうそうカナダではないと思われます。
カナダの地域別の公用語
それではカナダではどの州でどちらの言語が州の公用語となっているのでしょうか?フランス語を話されることが多い地域、英語がほとんどの地域など、地域ごとの特徴はどうなっているのか、見ていきます。フランス文化が色濃く残っている地域を観光したい方には、参考になることと思います。
トロントの公用語
カナダ最大の人口を持つ都市、トロント。オンタリオ州にあるこの都市ですが、オンタリオ州の公用語は英語となっています。フランス語にも法的にある程度の地位がありますが、公用語と定められているわけではありません。
しかしフランス語人口はケベック州に次いで多く、50万人以上になります。しかしこれも、オンタリオ州の英語人口70.4%に比べると4.4%と少数派になるのです。
トロントではフランス語はほとんど使われていない
そうしたわけでオンタリオ州全体で見てもフランス語人口はかなり少なく、トロントという都市に限って言うとさらに少なくなります。トロントではほとんどフランス語が話されることはないといってもいいくらいです。
ただし、同じオンタリオ州のオタワ(連邦政府の首都)周辺、北オンタリオ地方ではかなりフランス語を話す人は多いです。北オンタリオで一番大きな都市であるサドバリーでは、人口の3割に上る人々がフランス語を使っているのです。
ケベック州の公用語
ケベック州の公用語と定められている言語は、フランス語です。ケベック州はカナダの中でも一番フランス語人口が多い州となっています。ただしフランス本国のそれとは異なる特徴が多く、ケベック州で話されるフランス語はケベック・フランス語またはケベコワとも呼ばれます。
ケベック州で話されているフランス語の特徴
カナダ人がケベック州で話すフランス語は、フランスの人々が聞いてそのままスムーズに理解出来るとは限りません。例えば、朝の挨拶「Bonjour」はケベック州では「Bon Matin」、フランス本国での「車」=「voiture」「auto」はケベック州では「char」となります。
現在ケベック州となっている地域にフランスからやってきた初期の移民は地方出身者が多かったので、フランス革命時代の発音や語形などが色濃いのが特徴です。
ニューブランズウィック州の公用語
カナダの州の中で唯一、英語・フランス語の2つを公用語とするのがこのニューブランズウィック州です。州民の実に32.6%がフランス語を話しています。都市ごとに見ると、フランス語人口が多いところは95.9%あるシッペガン、93.4%のエドモンストンなどの都市があります。英語人口が97.8%のハートランドなど英語話者が多い都市もあります。
2つの公用語があるカナダの言語事情
では、2つの公用語があるカナダで暮らしているとどのようなことがあるのでしょうか?日常生活をしていて、人と話すときに使う言葉で困らないにしてもいろいろなものの表示が、州によって違っていたりするのでしょうか。2言語公用語のカナダで、様々な場面で言葉がどのようになっているのか見ていきます。
カナダの言語事情①:行政機関のサービス
やはり国として2つの公用語を定めている以上は、公文書に書かれる言語は英語かフランス語のどちらかを選べるようになっています。時折英語での文書発行を希望したのにフランス語のほうで送られてきたなどのトラブルもあるようです。
連邦政府に勤める人は、カナダの公用語である2つの言語両方を使える人であることが必修になります。英語話者の多いところでも、役所ではフランス語で職員さんは対応してくれます。
カナダの言語事情②:商品のラベル
さすがに、どんな州でも公用語がフランス語または英語だからと言って人々が困らないよう、各商品のラベルには両方の言葉での表記がされています。法律で必ず両方の言語でラベルを付けるように定められており、食品・台所用品・家電製品などありとあらゆるところに2言語表示があります。
カナダの言語事情③:標識
道路標識も、2言語が公用語のカナダでは2言語で書いてあることもありますが、さすがに簡潔なマークの標識は字がないものが多いです。英語だけで字が書いてあるものもたくさんあります。
しかし日本と違う標識もたくさんあり、「停車禁止」を表す八角形のマークがついた道路標識などがあります。自然があるところだと「トナカイに注意」と一目でわかる道路標識があったりします。
カナダの言語事情④:国歌
カナダの国歌は旋律が美しく、歌詞の内容も印象的な歌です。カナダは2言語が公用語なので、オリンピックなどの場では英語・フランス語両方で歌われることもあります。
歌詞の内容に関しては議論が若干あり、2010年のバンクーバーオリンピックでカナダの女性選手が多くメダルを取った際、こうした場で「son」という男性を指す言葉を女性が国歌で歌うのはよくない、改訂するのがいいという提案を当時の首相に提出しました。しかし改訂したところ国民から批判が集まったためまたもとのように戻されたといういきさつがあります。
カナダの英語は具体的にどんなもの?
カナダも公用語は英語と一口に言っても、同じく英語を公用語とするイギリスやアメリカのそれとは細かい相違点が多々あります。アメリカとは陸地でつながっているので昔から人の行き来があり、公用語である言葉の発音もアメリカに近いのです。
しかしつづりはイギリスと共通しているものが多いです。例えば、私たちが見慣れたアメリカ英語でcenterという単語は、カナダ・イギリスではcentreというつづりになります。公用語が同じ英語といってもこんなに違うと、片方の英語を話せる人でも学習してからでないと相手の言葉が理解できにくいようです。
他にもあるカナダの州の公用語
さすがに多民族国家のカナダ、国としての公用語は英語とフランス語だけですが、カナダの州それぞれの公用語は他にもたくさんあります。カナダには「州」と「準州」がありますが、ヌナブト準州では国の公用語の他Inuktut(イヌクティトゥット)語、Inuinnaqtun(イヌイナクトゥン)語が公用語となっています。
ノースウエスト準州の公用語はもっと多く、先述の2つに加え、Cree(クリー)語・Dgrib(ドグリブ語)・Chipewyan(チペワイアン)語・SouthSlavey(サウススレイビー)語・NorthSlavey(ノーススレイビー)語・Gwich’in(グウィッチン)語・イヌビアルクトゥン語も公用語です。このうち、「イヌ」と付くのは先住民イヌイットの使う言葉です。その他はイヌイットと呼ばれる人々ではありませんが、いずれもカナダ先住民の使う言葉です。
カナダの公用語をチェックして旅行を楽しもう!
カナダの公用語を意識することなんて、日本に住んでいるとほとんどないものです。日本の公用語は何種類もあるわけではありませんし、カナダをはじめ外国の方が増えているといっても公用語でない言葉で話すのは観光客の方々くらいです。
多民族国家で複数の公用語を必要とするカナダ。旅に行くついでに、様々な背景の人が共存することについて思いを馳せてみるのもいいかもしれません。
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