八王子城跡を散策しよう
八王子市元八王子町にある八王子城跡は、戦国時代には後北条氏の支城として存在し、関東の西に位置し、軍事上の拠点としての役割を果たしました。八王子城は、深沢山(現在の城山)に築かれた山城で、北条氏三代目、北条氏康の三男、北条氏照によって築かれました。ここでは、そんな八王子城跡について、見どころやアクセス、ハイキング、夜景、心霊情報などを織り交ぜて紹介します。
八王子城跡へのアクセス
見どころたっぷりの八王子城跡へのアクセス方法は、電車とバスによるアクセスの場合、土日、祝日のみ、JR中央線の高尾山北口1番のバス乗り場から八王子城跡行きのバスが運行しています。平日は、バス乗り場から西東京バス「高尾の森わくわくビレッジ」や「宝生寺団地」行きなどに乗車し、バス停「霊園前・八王子城跡入口」下車後、徒歩15分でアクセスできます。
八王子霊園南門で降りる方法を取れば徒歩8分ほどでアクセスできます。バスは、午前6時台から午後7時台まで1時間に1本ほどしかないため、帰りの時間も含め、時刻表を事前にチェックしておくことをおすすめします。そこから見どころの多い御主殿までは徒歩いずれの場合も15分以内でアクセスできますが、山頂までは約40分を要します。
車によるアクセスの場合は、圏央道八王子西インターから高尾方面へ約10分ほど行ったところとなります。あるいは、中央道八王子インター第出口から甲州街道を経由すれば、40分ほどでアクセスできます。ただし、カーナビで八王子城跡を入力しても、システムによっては適切なルートが案内されないことがありますので、その場合には文化財課に問い合わせることをおすすめします。
見どころに溢れた八王子城跡は八王子城跡公園となっており、この公園の駐車場には、大型バスが4台、普通車50台、身障者用2台の車が駐車できる他、思いやり駐車スペースが1台分確保されています。また、JR高尾駅から八王子城跡までの距離は3キロ強ですので、ハイキングがてら歩いても40分ほどでアクセスすることができます。
八王子城跡と八王子城の歴史
八王子城は後北条氏の本城であった小田原城の支城として戦国時代に北条氏三代目、北条氏康の三男、北条氏輝によって築かれた山城です。この城は、関東の西にあって、軍事上の拠点として位置づけられてきましたが、1590年の豊臣秀吉による小田原攻めの際に、前田利家、上杉景勝の軍勢に攻め入られ、落城しました。
八王子城の落城により、それまで籠城によって持ちこたえてきた小田原城も開城し、北条氏は滅亡、城主氏照も、兄氏政とともに切腹して果てました。八王子城は、古い時代の大半の山城に無かった「石垣」を採り入れているところに特徴があり、後に、安土城や関西の種々の城でこの方法が取り入れられるようになったそうです。
八王子城跡の周囲と見どころ
見どころたっぷりの八王子城跡は平成18年4月に「日本100名城」に選定されました。「日本の100名城」には、姫路城や松本城、江戸城など、世界遺産や国宝級の名城が選ばれており、そうした中に八王子城跡も加えられたのは、戦国山城としての城跡の状態が良好な形で保存されていることからだとされています。
城は、大きく分けて3区に分けられます。まず、城下町に相当する「根小屋地区」、次に城主氏照の館があった見どころの多い御主殿跡等を含む「居館地区」、そして戦いの時期には要塞となる「要害地区」の3区です。見学者が分かり易いよう、案内のための管理棟が造営され、広場には八王子城案内板が設けられています。夜景も含めて見どころの多いこの山城をハイキングしてみませんか。
落城後400年に当たる1990年に、御主殿地区の石垣や虎口などの通路、御主殿へと続く古道などが整備され、石畳や石垣は、往時の形に近づくよう復元されています。要害地区は、城山の地形をうまく利用して緻密に造られています。頂上に見どころの多い本丸が造られ、その周りに敵の攻撃を防ぐための曲輪(平場)が設けられています。
八王子城跡の山頂へのハイキング
八王子城跡の管理棟付近にある山頂への登山口には鳥居があります。そこからの道は新道と旧道の二手に別れていますが、ハイキングの途中にある見どころの多い金子曲輪を見ながら登る場合は新道を通ります。どちらの道を選んでも8合目で合流するため、行きと帰りで2つの道を通ることをおすすめします。山上付近では素晴らしい夜景を堪能できるスポットもあります。
旧道は金子曲輪を右側の沢を柵門跡まで登るコースです。柵門跡付近の石垣は、最近になってから、斜面にある杉の大木が倒れたことから、かなり荒れた状態になっています。道は石がごろごろして登りにくい面がありますが、見どころが多く往時の情景を彷彿とさせる旧道もハイキングで登ってみたいものです。心霊スポットと言われる御主殿の滝もこの旧道沿いにあります。
八王子城跡のボランティアガイドとガイダンス施設
八王子城跡のには約30名のボランティアガイドがいます。来場者の70パーセントは自然との触れ合いを求めてハイキングや散策、登山などの基地として利用する人たちで、リピーターも多くいます。残りの30パーセントは見どころに溢れた城跡の歴史の探訪が目的で来城する人たちです。日本百名城巡りの一つとして来城する人たちもこの中に含まれます。
ボランティアガイドは、曜日ごとに5名前後のメンバーが交代で担当し、年末年始及びガイドの月例会と集合研修日以外は年中無休となっています。ガイド時間は9時から16時までで、受付は15時で終了します。ガイド料は無料で、ツアー時間は30分から1時間半です。団体での申し込みの場合は、前もって予約をしておくことをおすすめします。
八王子城跡に近づくと、右手に白い八角形の屋根の建物が現れます。この建物が2012年にオープンしたガイダンス施設です。マイカーの場合は、駐車場に車を駐車した後、一旦この施設に戻り、ガイダンスを受けることをおすすめします。この施設では八王子城に関する種々の情報が得られますが、一番のおすすめは6分間のビデオです。ビデオをみてからこの山城のハイキングに移りましょう。
八王子城跡の立体模型の屋外展示
八王子城跡のガイダンス施設の上方にあり遊歩道沿いには立体模型の屋外展示があります。八王子城が関東平野の西側に位置し、この城が北条氏の支配する関東平野の押さえとなる要塞であったことが、この模型を見ればよくわかります。ここから見どころに溢れた山頂の本丸までは、まだ標高差で200メートルほどあります。
八王子城跡の城跡管理棟
城跡を巡る起点となるのが城跡管理棟前の広場です。この管理塔には八王子に関する情報がパネル化され、いくつものパネルが並んでいます。また、ガイドの詰め所もこの棟内にあります。心霊スポットや夜景も含めて見どころたっぷりの城跡ツアーはここからがスタートです。城跡内には随所に案内表示パネルがありますので、ガイド無しでも十分巡ることができます。
八王子城跡の石碑
八王子城は悲惨な落城であったため、地元の人々は心霊現象の多い「忌み山」として、近寄ることを避けてきました。そのため、城跡には石碑などは全く造られませんでした。大正時代以降になって、ようやく地元の有志が中心となり、3つの大きな石碑が建てられました。八王子城跡碑と八王子神社碑が松木曲輪に、八王子戦死者招魂碑が山王台に建立されています。
八王子城跡の夜景
八王子城跡に向かう登山ルートの9合目付近に、東京方面の美しい夜景を見ることができるスポットがあります。清新な空気の中で、ワイドに広がる夜景は、都心のビル街から見る夜景とは一味違う素晴らしさがあります。天気の良い日には、東京タワーや東京スカイツリー、レインボーブリッジなどの夜景を遠望することができます。
弧を描くように街を貫く中央自動車道の光跡も美しく見応えがあります。ただし、八王子城跡の夜景を見る場合は、危険を避けるため、懐中電灯の持参、登山靴などの用意、日中の下見が必要となります。夜景を見るには登山道を30分以上登る必要があるため、できれば日没前にに登ることをおすすめします。トイレが利用できる時間は8時半から17時までとなります。
八王子城跡の歴史スポット1:御主殿跡
居館地区にある、城主氏照の住んでいた御主殿の場所には解説版が設置されており、現在の城跡の説明や、北条氏の時代の御主殿造りなどの詳細が丁寧に解説されています。氏照が構想を練っていた城郭は大変スケールの大きなもので、落城時にはまだ完成途上の状態にあったようです。
登山道の虎口がら石段を登った後に現れる門が冠木門(かぶきもん)です。この門は、1990年に造られて以来、何度か作り替えられています。この門の向こうが御主殿曲輪です。御主殿曲輪は巧妙に築き上げられた要塞で、下に流れる城山川は天然の堀の役割をしてきました。御主殿曲輪は、1992年から1993年にかけて大規模な発掘調査が行われた地区です。
御主殿曲輪は、その後2012年から2013年にかけて、土台石などの復元のための整備が行われ、現在では戦国の様子が容易に想像できるまでになっています。ただし、本物の礎石は大切な歴史遺産保護のため、この地下60センチの場所に眠っています。もう一つの復元は、会所跡の遺構の床面までの復元で、文化庁の指示によって行われています。
御主殿曲輪の周辺は、現在は緑の木々で覆われていますが、戦国時代は木の無い禿山でした。それは、敵の攻撃や間者の侵入が即見通せるようにするためです。御主殿曲輪を囲む柵列には、当時の弓矢や鉄砲を撃つための穴がいくつも造られており、その穴からも、遠くの景色や様子を見通すことができました。
御主殿曲輪の土塁に登って、上方から曲輪を一望することにより、この城が、いかに堅い守りができるように造られているかを理解することができます。しかし、秀吉による小田原攻めの際には、城主や家来たちの不在により、婦女子と百姓のみで守らざるを得なかったため、この堅固な城も、わずか1日で落城せざるを得ませんでした。
八王子城跡の歴史スポット2:御主殿の滝
御主殿の滝は旧道沿いの沢にある滝です。八王子城が1590年に落城した際、御主殿にいた女や子供たちが滝の上で自刃したり滝に身を投げ、その血で城山川の水が三日三晩紅く染まり、麓の村では、この城山川の水で米を炊くと、米が赤く染まるほどであったという言い伝えが残されています。正にこの滝が心霊スポットと言われる場所です。
この心霊現象とも言うべきできごとがあって以来、地元の人々は、先祖の供養に、あずきの汁で米を炊いた「赤まんま(赤飯)」で供養をする風習が現在に至るまで続いているそうです。城があった当時は、滝の林道側には高さ約3メートルの土塁が積まれていたようです。この土塁を使ってダムのように堰き止め、上流に大きな溜池が造られていたという説が有力だそうです。
八王子城跡の歴史スポット3:北条氏照と家臣の墓
八王子城跡には、氏政の弟であり城主であった北条氏照とその家臣を供養する墓があります。小田原城開城後に、氏照は、秀吉の命令により兄氏政とともに自害します。この墓は、氏照の死後100年を経た後に、家臣であった中山勘解由(かげゆ)の孫であり水戸藩家老の中山信治が建てたものです。その両側には、勘解由と信治の墓が並んでいます。
秀吉の小田原攻めの際、別動隊1万5千のこうげきを受けた八王子城は約1日で落城しました。当時、北条氏照と家臣のほとんどは小田原の合戦に行っており、婦女子と農民を合わせた千人余りが籠城していましたが、八王子城での合戦は、見せしめのためほとんどの人が惨殺されました。婦女子の大部分は首を刎ねられたり自刃しています。
八王子城跡の歴史スポット4:本丸跡
八王子城跡の本丸跡(山頂曲輪)を4つの大きな曲輪が囲んでいます。その中でも特に松本曲輪には、テーブルや椅子が置いてあり、景色の良い場所でもあるため、最適なランチスポットになっています。関東平野を眺めながら、ハイキングの休憩がてら、みんなでゆっくりとランチを満喫することができます。
八王子城跡の歴史スポット5:八王子神社
八王子神社は八王子城跡の山頂付近にある神社です。八王子権現は、近江国牛尾山の山岳信仰と天台宗、山王神道が融合した神仏習合の神で、華厳菩薩妙行が深沢山(現在の城山)山頂で修業中に、牛頭天王にと8人の子供(八王子)が現れたことから、916年、深沢山に八王子権現を祀ったと云われています。
八王子城跡の怪奇現象
北条軍記には、「落城の日には人馬、鉄砲、女の叫び声が聞こえ、里の人は踏み込まなかった。」と書かれ、桑都日記には、「晴れた時でも、落城の日は雲が立ち込めて、剣の音が響き、悲鳴が聞こえる。」と書かれているように、大きな悲劇のあった後には、その翌年以降も種々の奇妙な心霊現象が起こっているようです。
後にこの地を治めた徳川家により、八王子城は廃城となりましたが、これらの伝承やうわさは今でも語り継がれており、八王子城跡は不思議なことが起こる心霊スポットとして話題に上っています。その心霊スポットの中心的な存在が御主殿の滝です。この滝の付近で女や武士の姿や生首を見たという人が大勢いる他、甲冑の音やすすり泣きの声を聞いた人もいます。
八王子城跡近隣の住民は、旧暦の落城日(現在の8月10日)前後には、心霊現象を恐れて城跡に近づかないといったうわさがあり、赤飯を炊いて死者の供養する風習を続けている住民もいるそうです。心霊スポットを訪問するにあたり、自然の中で身と心を清め、死者に対する冥福を祈り、往時の歴史や人間模様に思いを馳せるのが良い訪ね方ではないでしょうか。
八王子城跡に登ろう
八王子城跡は東京都八王子市にある城址で、「日本百名城」に名を連ねる山城跡です。この城は、戦国の時代に籠城した北条方の婦女子たちのほとんどが惨殺され、あるいは自刃した悲劇の城としても知られています。ここでは、そんな八王子城跡について、アクセスやハイキング、心霊現象、おすすめの夜景スポットなどを交えながら説明してみました。
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