磯の王者「イシダイ」釣り方や食べ方を解説!
磯釣りは、様々な海釣りの中でも野趣溢れる人気の釣りスタイルです。荒波と対峙しながら、大物を相手に強い引きを楽しむワイルドな磯釣り。そんな磯釣りの人気ターゲットのひとつが、今回ご紹介するイシダイです。
磯の王者とも称されるイシダイとはどんな魚なのでしょうか。イシダイの釣り方や、釣った後のさばき方、そして美味しい食べ方をたっぷりご紹介します。
イシダイってどんな魚?
イシダイの釣り方を紹介する前に、まずはイシダイとはどんな魚なのかをおさらいしておきましょう。イシダイは、スズキ目イシダイ科イシダイ属の海水魚で、体長は50cmほどの大型の魚です。
磯釣りの経験がない人でも、水族館などで一度はイシダイの姿を見たことがある人は多いことでしょう。黒い縞模様が特徴のイシダイは、幼魚ほど黒い縞模様がはっきりとしており、老成するにつれて体表が青褐色になり、縞模様が薄れていきます。
イシダイの生態
イシダイは浅い海の岩礁域で、底付近の岩陰や洞窟に潜んで生活しています。普段は底を泳いで、貝類やウニ類、小さなエビやヤドカリなどを捕食しています。幼魚は波打ち際のタイドプールや防波堤に姿を現すこともあります。
イシダイは好奇心旺盛な魚として知られていて、ダイバーや海水浴客がいても逃げなかったり、時には人間の体を口でつついたりすることもあるそうです。
ただ、イシダイは貝やウニの殻を噛み砕くことができるほどの強い顎と歯を持っています。イシダイの口は、まるでオウムのくちばしのように突き出しています。うっかり手を出して、指を噛まれることのないように注意しましょう。
イシダイの主な産地
イシダイが釣れる地域は、北海道以南の暖流の海です。イシダイの数はあまり多くなく、幻の魚と言われることもありますが、西日本沿岸では比較的まとまった数のイシダイがいると言われています。
九州南部、四国南部、紀伊半島、伊豆半島南部、伊豆諸島では、7kgを超える大型のイシダイが釣れることが多いことから、水温によって成長に差が見られることが分かります。
イシダイの旬
イシダイが最も美味しくなる旬の時期は、秋から冬にかけてです。旬のイシダイはしっかりと脂が乗って、小さなイシダイでも旨味たっぷり。刺身にして美味しくいただけます。
ただ、旬のイシダイを市場で購入しようとしても流通量はとても少なく、主に料亭などで高級食材として扱われます。秋から冬にかけて、旬のイシダイが釣れたらぜひ美味しく食べましょう。
イシダイの値段
高級魚として人気のイシダイは、どれくらいの値段で流通しているのでしょうか。重さ250g前後、体長20cm前後の小型のイシダイは一尾1000円以下という手頃な値段で購入できます。
また、重さ1kg前後のイシダイの値段は7000円前後、重さ2kg前後のイシダイの値段は1万円を超えることが多く、概ね値段は高めになっています。
イシダイは市場での流通量は多くなく、大漁だから値段が下がるということはほぼありません。旬以外でも、1年を通じてどの季節も値段は安定しています。市場には天然のイシダイの他に、養殖ものも入荷します。
イシダイと呼ばれる魚は2種類ある?
イシダイは黒い縞模様が特徴の魚ですが、同属の魚に模様の異なる魚「イシガキダイ」がいます。イシダイとイシガキダイは大きさや生態が似通っていて、自然の交雑種が生まれることもあるのだそうです。
ここでは、イシダイとイシガキダイの違いについて解説します。地域や成長と共に変化する呼び方についても紹介していきます。
シマ模様の別名「シマダイ」「クチグロ」
まずはイシダイです。イシダイは先ほどからご紹介している黒い縞模様の魚です。イシダイは成長と共に呼び名が変わります。
幼魚のイシダイは黒と白の縞模様がはっきりしており、「シマダイ」や「サンバソウ」という別名があります。そして、老成するにつれて体表が鈍い銀色に変わっていくことから「ギンワサ」や「ギンカゲ」と呼ばれることもあります。
また、イシダイは成長するにつれて口の周りが黒くなる特徴があります。口の周りが黒くなった老成のイシダイは「クチグロ」と呼ばれています。
豹柄模様の別名「クチジロ」
そして、イシダイと同属の魚「イシガキダイ」は、体表に黒い豹紋があります。体形や大きさはほぼ一緒で、模様だけが異なる魚です。
イシガキダイは、老成が進むにつれて口の周りが白っぽく変化していきます。このことから、イシガキダイは「クチジロ」という別名を持っています。
ちなみに、イシダイとイシガキダイはまれに自然環境下でも交雑することがあります。自然交雑種は、縞模様と豹紋が両方表れると言われています。
イシダイ釣りの基本情報
ここからはいよいよ、イシダイ釣りについてじっくり紹介していきましょう。まずは、イシダイがよく釣れるおすすめのシーズンやポイントについてです。
市場で高い値段で取引されているイシダイは、購入するよりも自分で釣る方が楽しく、かつ美味しく感じられることでしょう。
イシダイ釣りのシーズン
イシダイを釣るのにおすすめのシーズンは、海水がイシダイの好む水温になる16度から23度の時期がおすすめです。地域にもよりますが、4月下旬から11月頃が釣りやすいと言われています。
また、イシダイの産卵は春から初夏にかけて行われ、春には食欲旺盛なたくさんのメスイシダイが浅場へやって来る乗っ込みの時期を迎えます。
サンバソウと呼ばれる幼魚は、夏から秋に釣れる人気のターゲットです。サンバソウは夏に旬を迎えるので、釣れたら美味しくいただきましょう。
イシダイ釣りのおすすめポイント
イシダイ釣りが盛んな地域は、九州の男女群島や五島列島が有名です。関東エリアでは、房総半島、三浦半島、伊豆半島のほか、伊豆諸島が人気の釣り場になっています。
その中で、地磯や沖磯がイシダイがいる主な釣りポイントとなっています。シマダイやサンバソウの別名を持つイシダイの幼魚は、浅場の岩場、堤防やテトラ帯付近でも狙えます。
イシダイ釣りのおすすめ装備
磯釣りは釣り座が安定しないので、ライフジャケットや磯用ブーツ、グローブといった安全のための装備品は必須の持ち物になります。また、ごつごつした岩場に座っても痛くなりにくいヒップガードも用意しておくと便利です。
特に日差しの強い夏は、偏光サングラスがあると海面のラインが見えやすくなるほか、目の保護にもなるので、使用するアングラーは多いです。
イシダイの釣り方
イシダイの釣り方には様々な方法があります。地域によって人気の釣り方が異なるのも面白く、出掛けて行ってその土地ならではの釣り方を試してみるのもおすすめです。
ここでは、イシダイの主流な釣り方である「遠投釣り」、「宙層釣り」、「カカリ釣り」の3つの方法について解説していきます。
関東の釣り場で人気【遠投釣り】
関東の海は水深が浅く、遠投釣りがイシダイを狙えるおすすめの釣り方です。遠投釣りは投げ釣りの一種で、元々はサーフから沖を狙う釣り方です。磯からの遠投釣りは、イシダイ向けにアレンジされた独特の釣り方と言えます。
遠投釣りは、オモリをつけた仕掛けを沖の遠くまで投げる釣り方です。華麗なフォームで100m近く飛ばす釣り人もいて、キャスティングの飛距離を競う大会もあるようにスポーツとしての要素も魅力です。
遠投釣りをするおすすめの時間帯は、朝マヅメがイシダイの活性が高くおすすめです。日中になると海風が陸地に向かって吹くために、キャスティングがしにくくなってきます。
イシダイ遠投釣りの仕掛け
イシダイの遠投釣りの仕掛けは、捨てオモリ仕掛けと遊動テンビン仕掛けの2種類があります。釣り場の底の地形や潮の状況によって使い分けましょう。
捨てオモリ仕掛けは、根掛かりが起きてもオモリだけが切れるように、オモリに細めの糸を使います。オモリは30号から40号が適しています。ハリスには、イシダイの丈夫な歯で噛まれても切れないワイヤーを使います。
遊動テンビン仕掛けは、イシダイ用遊動サルカンに30号から40号のオモリとハリスをつけます。ハリスの長さは15cmから30cmが適当です。
イシダイ遠投釣りのエサ
イシダイを遠投釣りで狙う場合、勢いよくキャスティングしても取れないエサがおすすめです。サザエやトコブシを3つくらい数珠掛けにすると効果的です。
ヤドカリは貝から出してハサミと足を取ってから、ウニ通しで頭から尻尾にかけて穴をあけて針を通します。イシダイ以外のエサ取りが多い場合は、頭を針先に持ってくると他の魚に喰われにくくなります。
ヤドカリは活き餌と冷凍ものが販売されています。活き餌の場合は1匹単位で販売している釣具店もあり、サイズごとに値段が変わります。また、サザエはイシダイ用の小粒サイズがおすすめです。値段はキロ単位でつけられていることが多いです。
九州エリアで人気【宙層釣り】
九州の磯は足元が急に深くなっている海が多く、底を探る釣り方よりも宙層を狙う釣り方が主流です。宙層釣りは「南方宙釣り」とも呼ばれ、九州でイシダイを釣るにはおすすめの釣り方です。
宙層釣りは落とし込み釣りの一種で、磯では足元に仕掛けを落として宙層で止め、手元でアタリを取る釣り方です。遠投釣りのように置き竿ではなく、手で竿を持ってアタリを待つ釣りの醍醐味が味わえます。
イシダイ宙層釣りの仕掛け
イシダイ宙層釣りの仕掛けは、道糸の先端にサルカンをつけ、2m前後の瀬ズレワイヤーの中ほどに中通しオモリ20号をつけます。その先端にワイヤーのハリス30cmを結びます。
大物のイシダイが掛かると、サルカンには大きな負荷がかかります。ですから、サルカンは強度のあるものを選ぶのがおすすめです。ハリスワイヤーもしっかりと結びましょう。
イシダイ宙層釣りのエサ
イシダイの宙層釣り仕掛けに使うエサは、イシダイの好物のウニがおすすめです。ウニは棘をカットし、ウニ通しで穴をあけて針を通します。
また、イシダイの活性を上げるために、ウニガラなどの寄せ餌を撒くこともあります。ウニガラは撒き餌用の冷凍ものが販売されていて、値段は1斗缶入りで1000円から2000円前後です。
岸から狙えないポイントを攻める【カカリ釣り】
カカリ釣りとは、磯からは届かない釣りポイントへ船で行き、イシダイがいるポイントの上に船をアンカーで停めて釣りを行う釣り方です。
カカリ釣りのメリットは、高確率でイシダイを釣ることができる点です。イシダイ釣りを行っている釣り船の値段の目安は、仕立ての値段が3万円から4万円前後、乗り合いの値段は1万円前後です。
イシダイカカリ釣りの仕掛け
イシダイのカカリ釣りの仕掛けは、釣り船でオリジナルのタックルや仕掛けが用意されている場合もあるので、船の予約の際に問い合わせてみましょう。
カカリ釣りは繊細なアタリに素早く合わせる釣り方です。仕掛けは針掛かりを良くするために、イシダイ用の中でも小さめの針を2本結びます。
カカリ釣りの仕掛けの構成は、捨てオモリ仕掛けと似ています。2本の針の間隔は3cmから4cm程度とします。
イシダイカカリ釣りのエサ
カカリ釣りの仕掛けにつける餌は、カラス貝がおすすめです。カラス貝はフランス料理やイタリア料理でおなじみのムール貝に似ていますが、釣り餌として使われているのは正式には「ムラサキイガイ」という名前なのだそうです。
釣り餌のカラス貝は冷凍の剥き身のほか、殻つきの活きたタイプも販売されています。いずれも値段はさほど高価ではありませんが、イシダイ釣りを始める前に堤防などでカラス貝を採集する人も多く、これなら餌にかかる値段を節約できます。
イシダイのさばき方
イシダイは生息数が多くないため、釣れてもリリースして帰る釣り人もいます。ですが、せっかくイシダイを釣ることができたからには、実際にさばいて食べてみたいといういう人も多いのではないでしょうか。とりわけ旬のイシダイなら尚更です。
ここでは、イシダイのさばき方の手順をご紹介します。イシダイのさばき方は、他の魚のさばき方と大きく変わるところはありません。
さばき方と下処理の方法によってイシダイの食味も変わってくるため、イシダイを美味しく食べるために、さばき方はしっかりチェックしておきましょう。
釣れたらすぐに活け締めを
イシダイのさばき方と共に大切なのが、さばく前の処理です。イシダイに限らず多くの魚は、活け締めをすることにより鮮度が長く保たれるだけでなく、身の質も良くなります。釣り場で活け締めができる環境であれば、イシダイが生きているうちに活け締めを行いましょう。
イシダイの活け締めの手順は、イシダイを平らな場所に置いて、目の斜め後ろ上にある脳を目掛けて太い針を刺します。針が刺さった状態で、かき回すように針を動かします。この時イシダイが暴れますが、顔を押さえておきます。
イシダイが動かなくなったら、エラの膜を包丁で少し切り、背骨の真下にある動脈を1本だけ切断します。その後は水につけて血抜きをします。
1.ウロコとぬめりを落とす
イシダイのさばき方の手順は、まず始めに体表のうろことぬめりを取ります。ぬめりは流水で洗い流すと取ることができます。
うろこを取るには、魚専用のうろこ取りや包丁の背、スチールタワシなどを使います。この時、うろこが飛び散ることがあるため、流し台の中で行うのがおすすめです。
尾びれから頭に向かって、まんべんなくうろこを取っておきましょう。なお、頭の部分は落としてしまうため、うろこを取る必要はありません。
2.頭と内臓を取り除く
うろことぬめりが取れたら、次のさばき方の手順は頭と内臓を取り除きます。頭は、胸びれの後ろから包丁を入れて切ります。この時はまだ完全に切断しません。表側と裏側の両方から包丁を入れるさばき方だときれいに仕上がります。
内蔵は腹側をさばきます。さばき方は、エラの下から肛門に向かって切り開いていきます。胃、腸、肝、白子は美味しい食べ方があるので、傷つけないように注意します。切り開いたら頭を胴体から離し、同時に頭とつながっている内臓も引き出します。
3.三枚におろす
さばき方の次の手順は、食べやすいように3枚におろしていきます。3枚におろす前に、ワタを取り出した腹の中を流水で洗い、水気を拭き取っておきます。
まずは、尾びれの付け根に切り込みを入れます。腹の身を軽く持ち上げながら、尻びれに沿って包丁を入れて尾びれの切込み部分まで包丁を進めます。中骨に沿って包丁を滑らせることを繰り返し、背骨まで切り進めます。
ここまでできたらイシダイの向きを逆さまにし、今度は背びれに沿って背中側を尾びれから首元に向かって切り込んでいきます。半分ほど切り進めたら、尾びれ側の身を持ち上げて水平に包丁を動かし、身と骨を剥がしていきます。
ここまでが片側のさばき方です。もう片側も同じさばき方で行い、3枚おろしが出来上がります。
4.身を整えてサクにする
3枚におろした後は、食べ方に応じて身を整えます。腹の周りの骨は削ぐように切り、小骨が並んでいる部分を境にして背側と腹側のサクに切り分けます。まずは小骨と背側を切り離し、続いて腹側に残った小骨を腹側のサクから切り落とします。
刺身などの食べ方をする場合は、皮を引いておきましょう。尾の付け根にきっかけを作り、包丁を身と皮の間に平らに入れながら引っ張るようにするときれいに皮が引けます。
イシダイの美味しい食べ方 おすすめ4選
秋から冬にかけては、産卵前の脂が乗って特に美味しくなるイシダイの旬の時期です。また、小型のイシダイは旬でなくても味が良いことで知られています。
イシダイの美味しい食べ方にはどんなメニューがあるでしょうか。ここでは、旬のイシダイを味わうためのおすすめの食べ方をご紹介します。
最も美味しい食べ方【刺身】
イシダイに限らず、釣った魚の人気の食べ方と言えば刺身です。イシダイの身は弾力があり、コリコリとした食感が感じられるほど身が締まっています。
イシダイを刺身で食べるなら、釣った当日よりも冷蔵庫で1日から数日熟成させるのがおすすめの食べ方です。
また、旬のイシダイは、腹の周りにたっぷりと脂が乗っています。脂の乗った部分は、塩とすだちでさっぱりといただくのも人気の食べ方です。
なお、イシダイには人間に害のある寄生虫などはいないため、刺身のような生の食べ方でも安心していただけます。
簡単で美味しい【煮付け】
ご飯のお供におすすめの食べ方は煮付けです。鍋に入るくらいの小型のイシダイであれば、3枚におろさず頭や皮がついたままでも料理できる手軽な食べ方です。皮は厚く硬いので、切込みを入れて煮付けるとしっかり味が染み込みます。
また、3枚におろした後で残ったアラの部分を煮付けにするのもおすすめです。臭みを取るためにさっと湯通しし、生姜やネギと共に煮ると一層美味しくなります。
臭みが消えて美味しい【西京焼き】
食べきれずに残ってしまったイシダイを美味しく保存するには、味噌漬けがおすすめです。上品な味わいのイシダイは、西京味噌で漬けこんだ西京焼きでも美味しくいただけます。
西京焼きの味噌床は、白味噌に煮切ったみりんと砂糖を混ぜて出来上がりです。味噌床をイシダイの切り身全体に塗って密封すると冷凍庫で保存することができ、いつでも旬の味を楽しめます。
日本酒がよく合う【カルパッチョ】
イタリア料理の前菜として人気のカルパッチョも、イシダイの美味しい食べ方のひとつです。カルパッチョとは、薄切りにした肉や生魚にオリーブオイルやソースをかけた料理です。
魚介のカルパッチョには白身魚が使われることが多いですが、ポイントは魚の水分をしっかりと取っておくことと、なるべく薄切りにすることです。
ちなみに、カルパッチョとよく似た料理にマリネがあります。マリネはフランス発祥の調理法で、オリーブオイルや酢などを合わせたソースに漬け込んで食材を柔らかくすることです。もちろん、イシダイをマリネしても美味しくいただけます。
旬のイシダイを釣って美味しく食べよう!
磯の王者と称される釣りの人気ターゲット「イシダイ」をご紹介しました。黒い縞模様が特徴的なイシダイは、強引なファイトとは裏腹に上品で繊細な味わいの白身が魅力の魚です。まだイシダイを狙ったことがないという人は、磯の王者イシダイをターゲットにしてみてはいかがでしょうか。
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