神武寺は逗子にある人気の古刹
お寺や神社の中には、山の麓や山頂近くにあるものもあり、ハイキングや登山の出入口や途中の観光スポットとなっている場合があります。逗子にある神武寺もそんなお寺の一つで、ハイキングを楽しむ人や参拝する方など多くの方が訪れます。神武寺の人気の秘密について紹介します。
神武寺の由緒
神武寺は山号を医王山、院号を来迎院と言い、天台宗の寺院です。724年、聖武天皇の命を受け行基が創建したお寺です。行基はこの時に十一面観音・釈迦如来・薬師如来を彫刻して祀ったとされます。その後857年に円仁により中興し、天台宗になりました。
鎌倉幕府の歴史書である「吾妻鏡」の1209年の記事には、鎌倉幕府三代将軍の源実朝が「神嵩と岩殿観音堂」に参詣したという記述があります。この「神嵩」は神武寺のことを指すとされており、鎌倉将軍にも信仰されていたことがわかります。また初代将軍の源頼朝も妻北条政子の安産祈願に神馬を奉納しています。この時生まれたのが実朝です。
しかし1590年、豊臣秀吉の小田原攻めの際にこの辺りも被害を受け、神武寺の諸堂は焼失してしまいました。そのあと1598年に薬師堂が再建され、さらに他の堂宇の再建も行われ、現在の姿になっています。
神武寺の見どころ
それではまず、神武寺の見どころについて紹介していきましょう。今述べたように神武寺は古刹であり、いったんは焼失したものの、歴史のある建造物などが今に伝わっていることには違いがありません。神武寺にはどんな人気の見どころがあるのでしょうか。いくつか見て行きます。
神武寺の見どころ①:客殿宝珠殿
まずは客殿から紹介します。客殿は宝珠殿という名前がつけられています。中には本尊である阿弥陀三尊像、のほか、鎌倉荏柄天神社より伝来したとされる十一面観音像、釈迦如来像などが安置されています。おそらく円仁により改宗された後の本堂だったのでしょう。
とはいえ、先ほど述べたように、神武寺は豊臣秀吉の小田原攻めにより焼失してしまい、現在の客殿宝珠殿は1841年に再建されたものとなっています。ちょっと周囲よりも低いところにあり、上から覗くような形で見ることになります。
せっかくですから、中を見たいところではあるのですが、本堂へと降りて行く階段は「立ち入り禁止」となっており、中を見ることはできません。ぜひ上の方から本尊の参拝をしてください。
神武寺の見どころ②:薬師堂
次は薬師堂です。神奈川県の重要文化財になっている薬師堂は、1598年の棟札が見つかっています。現在神武寺にある最も古い建物ということになります。中には逗子市の重要文化財に指定されている秘仏の薬師三尊像と、十二神将像が祀られています。
薬師信仰は衆生を病苦から救うということで、古くから篤い信仰があり、「吾妻鏡」の中にも源頼朝や北条政子などが信仰を持っていたことが記載されています。また、薬師三尊像は秘仏ということで、本来は33年に一度開帳が行われることになっています。近年では2017年に行われました。
そうすると次の御開帳まではだいぶ時間がありますが、神武寺では毎年12月13日にすす払いが行われます。この時に御本尊を拝むことができるチャンスがあるということで多くの方が参拝に訪れます。もし可能ならば行ってみてはいかがでしょうか。
神武寺の見どころ③:総門
神武寺の総門は1733年に造られたもので、もともと、表参道に至る現在の東逗子駅の近くにあったとされています。しかし第二次世界大戦の際にいったん表参道の登り口のあたりに移され、1976年に現在のところに移築されました。
木鼻や斗栱などの、いわゆる寺社に見られる伝統建築の木組などは用いられておらず、全体に簡素な四脚門となっています。簡素でありながら落ち着いた雰囲気があるので、じっくりと見てみてください。
神武寺の見どころ④:鐘楼
神武寺の鐘楼は切通しの岩の上に置かれています。「神武寺の晩鐘」ということで逗子八景の一つにも数えられる、人気スポットの一つとなっています。現在の鐘楼堂は1859年に再建されたものです。
中の梵鐘はもともとは1623年に造られた古いものだったのですが、第二次世界大戦の際に供出されてなくなってしまいました。現在の梵鐘は1950年に改鋳されたものとなっています。
神武寺の見どころ⑤:楼門
楼門は薬師堂の前にあります。1761年に建立されたもので、初層、上層とも桁行三間、梁間二間のいわゆる「三間楼門」というタイプのものです。落ち着いた朱塗りの門で、正面には山号「医王山」の扁額が掲げられています。
なお、先ほど薬師堂のところで触れた2017年の御開帳に合わせて仁王尊像と天井の四神画が建立され、安置されました。こちらもぜひ通る際に見て行きましょう。
神武寺の見どころ⑥:なんじゃもんじゃ
神武寺にはもう一つ、文化財があります。それが「なんじゃもんじゃ」です。なんじゃもんじゃとは不思議な名前で、それこそ「なんじゃもんじゃ」という感じですが、実はホルトノキという珍しい植物です。植物の名前がわからなかったので「なんじゃもんじゃ」と呼ばれたのです。
この木はかながわの名木100選にも選ばれたという大木で、常緑高木でありながら古い葉が落ちる前に紅葉するという珍しい性質があります。そのため常に一部の葉が紅葉しているのだそうです。日本では本州の西側より南の地域によく見られます。
神武寺の御朱印情報
次に神武寺の御朱印について紹介します。寺社を巡り、御朱印をいただくのが楽しみという方も最近多くなり、人気の寺社では多くの方が御朱印の授与を願い、参拝し、行列を作っています。神武寺では御朱印はいただけるのでしょうか。またどのような御朱印がいただけるのでしょうか。
神武寺の御朱印の授与所
まず、神武寺の御朱印を授与していただく場所からです。神武寺の御朱印の授与は客殿で行われています。しかしここまで見てきた方は疑問を感じるかもしれません。そう、客殿はたしか立ち入り禁止のはずでしたが、どうすればいいのでしょうか。
実は客殿のところにある「立ち入り禁止」の看板をよく見ると、「檀信徒、関係者以外立入禁止」とある横に「御朱印の方は受付します」と書かれています。御朱印をいただく方はこちらに入ることができるのです。知らないと少しうろうろしてしまうので、御朱印をいただく方は覚えておきましょう。
神武寺の御朱印
こうしていただくことができる逗子の神武寺の御朱印ですが、種類は1種類となっており、志納金は300円です。中央に御朱印が、右上には「三浦薬師如来霊場札所第一番」、左下には「神武寺印」がそれぞれ捺されます。そして中央に「瑠璃光殿」、右に「奉拝」と日付、左に「神武寺」と揮毫が入ります。
比較的シンプルな御朱印ではありますが、瑠璃光殿という言葉のせいもありどちらかというと素朴な雰囲気が漂う御朱印です。ふつうの寺社と違い、いただく場所が少しわかりにくいため、知る人ぞ知るという人気の御朱印でもあります。
神武寺~鷹取山のハイキングコースが人気!
逗子の神武寺は寺そのものも古刹で人気ではあるのですが、もう一つ、ハイキングコースとしても人気か高い場所です。神武寺そのものも逗子市の山の中にある寺院であり、海抜139メートルの鷹取山の一部にあるため、ハイキングで訪れる方も多いのです。次にハイキングコースについて紹介します。
神武寺から鷹取山への所要時間は約25分
もともと鷹取山は凝灰岩でできており、1923年の関東大震災が起こる前にはその凝灰岩が逗子市などで塀などの材料として使われていました。それが関東大震災の影響で廃れると、今度は神武寺から鷹取山を通り、京急田浦駅、追浜駅に至るハイキングコースが人気となりました。
つまり、神武寺は鷹取山と同じく、凝灰岩の岩場に囲まれた森林の中にあります。そのため周囲に比べ気温が低く、相対的に湿度も低いため、シダ類なども多く繁茂しています。
神武寺の薬師堂の脇道からスタートするハイキングコースは、指導票などもちゃんと整備されているためアクセスしやすく、また高さもさほど高くないため、あまり経験がないという方でも比較的楽にアクセスできると人気が高いです。
鷹取山はロッククライミングの名所!
この鷹取山はもともと、第二次世界大戦が終わって10年ほどしたあたりから、ロッククライミングの名所として人気が高まりました。しばらくして周辺が住宅地になっていったものの、岩場は公園のような形で残されて、若者だちが相変わらず楽しんでいたのです。
しかし、鷹取山は先ほど述べたように、凝灰岩でできた山です。凝灰岩というのは柔らかくもろい性質があるため、ロッククライミングをするためには逗子市の隣の市である横須賀市に許可を取ることが必要となっています。またロッククライミングの方法に関しても規制がありますので、事前のチェックをしておきましょう。
鷹取山の頂上展望台
神武寺を後にしてどんどん登っていくと、やがて大きな岩場が見えてきます。これが親不知と呼ばれるロッククライミングの場所です。その上にあるのが頂上展望台です。ここまで来たらあと少し、頑張って展望台までアクセスしてみましょう。
この展望台は360度視界がひらけており、天気さえよければなんと富士山、伊豆半島、房総半島などまでが見えると言われています。眼下には横須賀港などが見えますし、ここまでハイキングで来るのは少し大変でも、その努力が実ったような気分になると人気です。
なお、この展望台からは向かい側にもう一つ岩場が見えます。こちらは親不知に対して子不知と呼ばれていて、こちらもやはりロッククライミングを楽しむ方々に人気のスポットとなっています。
鷹取山の磨崖仏
展望台のあたりがちょうど鷹取山の山頂となるわけですが、ここからもう少し子不知の脇の道を進んでいくと、先ほど述べた追浜駅の方面に進んでいくことになります。この途中にあるのが「磨崖仏」です。
神武寺について紹介したあとの磨崖仏なので、もしやこれも神武寺に関係があるのではと考えてしまいますが、実はこちらの磨崖仏は1965年ごろに地元の彫刻家により彫られたものなのだそうです。岩壁を利用して掘られた仏様は古代遺跡にでも迷い込んだような、不思議な気分にさせてくれ、ハイキングコースの中でも人気です。
神武寺の基本情報
それでは神武寺の基本情報について紹介します。神武寺はハイキングコースもあり、さまざまな見どころがあ人気観光スポットですが、どのようにしてアクセスすればよいのでしょうか。また、車でアクセスした場合の駐車場などはあるのでしょうか。その駐車場情報なども含めて紹介していきます。
所在地
まずは神武寺の所在地です。ここまで述べてきたように神武寺は神奈川県逗子市にありますが、住所としては神奈川県逗子市沼間となっています。逗子市の東部にあたり、鷹取山が隣の横須賀市と逗子市にまたがるようにあって、その逗子市側の山の中腹あたりに神武寺はあるという位置関係になります。
問合せ先
神武寺に問い合わせなどが必要な場合はどうしたらいいのでしょうか。基本的に神武寺は特別な定休日などがないため、いつでも自分の都合がいい時にアクセスすることが可能です。ですから特に問い合わせなどはいりませんが、なにかある場合は直接神武寺に電話で確認するとよいでしょう。
参拝時間
次に参拝時間です。今述べたように、神武寺には特に定休日などは設定されていないため、自分で都合がつく日に行くことができます。参拝時間は8時から17時までとなっており、特に鷹取山ハイキングも楽しもうという方は早めにアクセスした方が時間が自由になるためおすすめです。
料金
神武寺に拝観に行く場合のお金ですが、こちらも無料となっています。自由に行ける時に行って、参拝するということができるようになっているのです。ただし御朱印をいただきたい場合には、先ほど述べたように志納金というかたちで300円を納めることが必要となります。小銭を用意しておくと安心です。
神武寺へのアクセス:3つの参道
次に逗子の神武寺にアクセスする方法についてです。ここまで述べてきたように、逗子の神武寺は鷹取山のハイキングコースの一部となっており、ルートによっては少しアクセスが大変な場所があります。体力に合わせてアクセス方法が選べるので、それを参考にして考えるとよいでしょう。
なお、神武寺の最寄り駅はJR「東逗子」駅、京急逗子線「逗子」駅となります。最寄り駅が2つあるのですが、それぞれの駅から参道が始まっており、どの参道を使うかによって最寄り駅も変わります。神武寺にアクセスする場合はそのあたりも考えましょう。
表参道
JR「東逗子」駅からスタートするのが「表参道」ルートです。東逗子駅の改札から出て右に進み、緩やかな上り坂を進んで「天台宗神武寺」の石塔から入っていきます。石塔からは徒歩で15分前後見るとよいでしょう。
このルートは石塔を進んで少し行くあたりまでが舗装路、その先が山道となっています。山道といっても整備がよくされているため歩きやすく、多少急な石段はありますが初心者でも大丈夫な道です。
裏参道
京急の「神武寺」駅から進むのが「裏参道」ルートです。駅から線路に沿って歩いていき、逗子中学校から少し進んだ老人ホームの横から山道に入って進んでいきます。山道に入ってからは20分ほどで神武寺までアクセスすることができます。
こちらは表参道に比べると山道が多いですが、スニーカーに普段着でもふつうに進めます。多少滑りやすい場所があるので注意しましょう。湧水の沢があったり、豊かな森に覆われた自然豊かなルートなので、ハイキング気分で行くならこちらもおすすめです。
法勝寺口
「法勝寺口」ルートはJR東逗子駅から進むルートで、踏切を渡ってから線路沿いに進み、法勝寺の看板から進みます。こちらのルートはすべて舗装路で、多少急な登りはあるものの体力に不安がある方でも登りやすいルートとなっています。
どのルートを通ったとしても、二つの駅から神武寺までのアクセスはだいたい30分程度です。それぞれ特徴があるルートなので、自分の体力やアクセスしやすい駅などを考えて決めるといいでしょう。
神武寺周辺の駐車場
神武寺に行く方の中には車でアクセスする方もいるかもしれません。ハイキングで鷹取山コースを進む場合は別の駅に降りることになるため、駐車場などが難しいのですが、神武寺を参拝するだけならば、駐車場に車を停めて参拝することもできます。
車でアクセスする場合は横浜横須賀道路の「逗子」ICが最寄りとなります。気になる駐車場に関しては、20台程度停められる駐車場が20台分程度あります。神武寺を参拝するだけであれば、この駐車場を利用すれば問題なく行けるでしょう。
一方、ハイキングコースも楽しむ場合、駐車場の場所は少し難しくなります。神武寺鷹取山コースは神武寺から京急田浦駅、追浜駅に降りるため、いずれかの駅近くの駐車場を利用し、そこから電車などでもう片方の駅に移動するほうが駐車場の面でも楽でしょう。
神武寺の周辺観光スポット
最後に神武寺周辺の観光スポットを簡単に紹介します。神武寺周辺には先ほどアクセスで紹介した法勝寺があります。この法勝寺は源頼朝の父である義朝の亭があった場所と言われており、「吾妻鏡」などにも名前が出てくるお寺です。
また、鷹取山のハイキングコースの中にも見どころは多く、さまざまな楽しみ方ができます。ハイキングと組み合わせていろいろと楽しむのもおすすめです。車の場合でもうまく駐車場を設定して、いろいろ楽しんでみてください。
神武寺を観光して鷹取山へのハイキングを楽しもう!
神武寺は有名な鎌倉幕府の将軍たちにも関係がある古刹で、見どころも多い人気のお寺です。また鷹取山ハイキングコースにも組み込まれているため、ハイキングと寺社巡りの両方を楽しみたいという方にも人気となっています。ぜひ時間をゆったりとって、ハイキングと寺社巡りを楽しんでみてはいかがでしょうか。
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