福建省伝承の長崎の郷土料理ハトシ
江戸末期の頃、唯一諸外国との交易を行っていた長崎において、中国福建省からの卓袱料理のひとつとして伝承されたのがハトシと呼ばれる料理です。その後、長崎市内の中国料理店や料亭を中心に食べられるようになり長崎の郷土料理として定着しています。ここでは、そのハトシを食べることが出来るおすすめの名店などを紹介していきます。
ハトシが出てくる福建省伝来の卓袱料理とは
ハトシは、中国福建省の卓袱料理のひとつとして長崎で広まりました。卓袱料理は円卓に座って全員でそれを取りながら食べる、というこれまでにないスタイルで、江戸をはじめ京都、宇治、大坂へ一時的に普及しましたが、その後衰退し、後に長崎で復興しました。その後ハトシは、長崎の郷土料理として残り今日に至っています。
異文化交流の中から生まれた卓袱料理
17世紀初め、江戸幕府によって朱印船が廃止され、対中国貿易が長崎港に限定されたことにより、多くの中国人が長崎市内に滞在するようになりました。お互いを招き合い食事をする機会が生まれ、そうした異文化交流の中から卓袱料理が伝わり、やがて日本流にアレンジされ、その中からハトシが長崎の郷土料理として残り普及していきました。
卓袱料理の内容
鯛の身と鰭が入った吸い物で始まり、その後に小菜、これは主に冷たいもの、次に中鉢、これは暖かいもので、ハトシはこの中で出されます。そして季節の材料を使った和の盛り合わせの大鉢、そして水菓子、梅椀と呼ばれる甘いもの、一般的にお汁粉が出され、ポルトガルの甘いもの、中国の薬膳、日本の漆器と三国の要素が混ざってます。
ハトシの語源と海外での呼ばれ方
ハトシを漢字に直すと「蝦吐司」と書きます。広東語で「蝦」は海老のことで、「吐司」はトーストという意味です。まさに料理そのものを表しています。エビのことを日本では一般的に「海老」と書きますが、これは長い髭と曲がった腰が老人のように見えることから、日本で作られた当て字です。蝦は中国から伝わった漢字です。
中国や東南アジアでのハトシ
ハトシは、日本の長崎以外にも本場広州では、広東語で「ハートーシー」と呼ばれ「蝦多司」と書かれています。また台湾では「蝦土司」又は「蝦吐司」と呼ばれ広東料理店でのメニューのひとつです。タイやベトナムでは「シュリンプトースト」と呼ばれ、特にフランス領だったベトナムでは、パンにバケットを使っています。
宮崎県都城市に本社を置く酒造メーカー霧島酒造株式会社のテレビコマーシャル「九州の味とともに」シリーズの中で、長崎の郷土料理「ハトシ」を素材に使ったTV-CMの動画です。2011年6月28日に公開されています。ハトシの素材である練り物作りから最後に油で揚げるシーンまで美味しそうなハトシが作られる様子が紹介されます。
気軽にテイクアウトで食べられるハトシ
長崎では、中華街の中華料理店や老舗の料亭などで、郷土料理のひとつとして食べることが出来ますが、実は手軽に食べられるように、グルメ観光の名物としてテイクアウトして食べることができるお店が、思案橋通りや新地中華街にあります。コンビニやファーストフード店で売ってるような揚げ物風に紙包みに入れて売られています。
お手軽テイクアウト出来るハトシ
最近は、ファーストフード店やコンビニなどで揚げ物を売るようになり、簡単にテイクアウトして食べ歩きしている人を見かけます。ハトシは片手に持って食べるのにちょうどいいサイズで、新地中華街やハトシ専門店などでテイクアウト出来るハトシを売っています。揚げたてはアツアツなので、寒い冬のシーズンにはおすすめの一品です。
ハトシサンドが大人気
ハトシをカツサンド風にアレンジして食べやすくしたのが長崎杉浦の「ハトシサンド」です。大きなハトシサンドが3枚入って、値段が税込350円です。全国の百貨店などで開催される九州関連の郷土料理などの物産展などで必ず出てくるおすすめグルメ商品のひとつです。たっぷりとしたエビのプリプリ食感が美味しいおすすめの一品です。
ハトシサンド
— ろんろん (@ronron_611) November 3, 2017
食べてみました。
(見た目が西多士)
:thumbsup::type_1_2::thumbsup::type_1_2::thumbsup::type_1_2::thumbsup::type_1_2::thumbsup::type_1_2:
めちゃウマ:heart_eyes:
オーブントースターでリベイクしたら、表面がサクサク、パリパリ。
海老の練り物の塩気と海老の風味がとても良く、しかもパンに弾力があるのに驚いた!
これ、美味しい!
ハトシサンド最高:thumbsup::type_1_2: pic.twitter.com/WTXjTDoEuq
このハトシサンドを作っているのは、長崎市の大浜町というところにある長崎杉浦という蒲鉾製造の会社。大浜町は長崎市の稲佐山の西側海岸付近にあり、長崎杉浦では恵まれた地の利を生かし、近海で獲れた新鮮な海の幸を材料に練り物である蒲鉾を作っています。そんな練り物専門の会社がこの長崎の郷土料理ハトシサンドを作っています。
長崎のハトシ有名店その1:山ぐち仕出し店
長崎の隠れた名物ハトシ…遂に実食。これでわたしもハトシストw @山ぐち仕出し店(長崎市) pic.twitter.com/cSrcI6V042
— おんぱぱ (@2Onpapa) February 27, 2017
長崎市万才町の県警本部や県庁新館が並ぶ通りを浜市アーケード街へ向って50mほど進んだところの左手に「山ぐち仕出し店」があります。ハトシと言えば、まずこの「山ぐち」の名前が上がるほど地元ではハトシ専門のグルメな名店として有名です。卓袱料理のひとつして伝承されて来たハトシの伝統の味を伝えるおすすめの仕出し店です。
山ぐちが作るハトシの特徴は、厳選した海老を使用しそれぞれの素材の持ち味を生かしています。すり身に使う海老はクセのない甘さと淡白な美味しさを、そして具材部分の海老は食感を、とそれぞれ使い分けこだわっています。そのため最初に噛んだ時のパンのこんがり焼けた部分とぷりぷり海老の食感との美味しさが絶妙でおすすめです。
山ぐち仕出し店のハトシ断面。練り物っぽくなりがちな市販品ハトシの中で、ここのは海老プリ感があったと思う。 pic.twitter.com/cMg9vddOKE
— じろまるいずみ (@jiromal) September 17, 2016
「長崎伝承ハトシ」の名前で商標登録をしていてハトシを作る本気のグルメ度が伺えます。ギフトパックでの販売もしており、5個入りパック2セットの値段が税込3300円、家庭用5個入りパックの値段が税込1500円となっています。テイクアウト用に揚げたてアツアツのハトシを1個だけ買うこともでき、値段は1個税込320円でおすすめです。
長崎のハトシ有名店その2:史跡料亭花月
寛永19年の1642年に当時「引田屋」という名で創業された「花月」は伝統ある史跡料亭です。江戸時代から幕末にかけての貴重な資料展示や国賓の晩餐会などに使われる「竜の間」、日本最古の洋間といわれる「春雨の間」などの格式ある部屋、そして元禄時代の作庭とされる800坪の庭園などがあり、長崎県指定史跡の料亭となっています。
長崎の歴史を今に伝える史跡料亭「花月」で、卓袱料理に舌鼓 観光・旅行情報サイト【ぐるたび】 https://t.co/OmTGY2TLEK via @gnavi_gurutabi
— DID@KA-Z (@jp_vampire616) September 4, 2016
花月では、朱塗りの円卓を数人で囲み大皿の料理を直箸で取り分けて食べる伝統的グルメの卓袱料理を食べることができます。花月の卓袱料理は、内容を簡略化することなく伝統を守り、原点に忠実な献立を組んであり、もちろんハトシもこの中で食べることができます。コース料理の値段は、一人15000円からとちょっと高めの値段です。
あ~~~~~~~長崎史跡料亭花月行ってきたーーーーーーー:pray::pray::pray::pray:あーーーーーすごかった……圧巻やった……人生で一番の贅沢だった……あーー!!素晴らしかった…… pic.twitter.com/lJ4GboG5a4
— おさむ(☜) (@drrnya) December 18, 2016
江戸時代の鎖国政策の中で諸外国の料理を巧みに取り入れ、日本独自の料理として出来たのが長崎の郷土料理である卓袱料理です。女将の「御鰭をどうぞ」の言葉から始まり、鯛の胸鰭が入った吸い物をいただき、乾杯や主催者の挨拶を行います。その後は決まり間はなく円卓に並んだ料理を好きなように食べるのが卓袱料理の楽しみ方です。
史跡料亭花月の庭園を紹介する動画です。長崎の三大庭園のひとつとされ、元禄時代の作庭と言われる800坪の庭園は、今も当時の面影を残しており、丸山という地名のとおり丸い地形を活かし、各部屋から眺めることができます。鯉が放たれた池や灯篭、石垣、盆栽などまさに贅を極めた歴史と由緒ある庭園です。
長崎のハトシ有名店その3:料亭一力
長崎市諏訪町にある料亭「一力」は、文化十年の1813年に創業された200年余の歴史と伝統ある老舗の料亭です。幕末維新の立役者や明治大正時代の文化人などが数多く訪れた由緒ある料亭として知られ、2社14寺院が立ち並ぶ石畳のある寺町通りにある、情緒豊かな佇まいと屹立した風格をした長崎郷土料理おすすめのグルメな名店です。
「一力」おすすめのグルメ料理は、お昼限定のランチメニュー「姫重しっぽく」です。伝統的な卓袱料理の中から欠かすことの出来ない料理を厳選し、贅沢な三段重に詰めた味わい深い逸品料理です。お昼限定メニューですが、あらかじめ予約が必要です。値段は、税込3240円となっていて、お手頃な値段でおすすめのグルメです。
長崎のハトシ有名店その4:江山楼
朱色と金色が眩い派手な外観の建物をした「江山楼」は、長崎新地中華街にある中華料理店です。店主は北京出身だそうですが、日本でもお馴染みの一通りの中華料理が揃っており、豪華な店構えのわりには大衆的な値段で食べることができます。一押しのおすすめメニューは、観光客にも人気のグルメ、長崎名物「ちゃんぽん」です。
江山楼 中華街本店の3000円コース。春巻とハトシ(エビすり身) http://t.co/canDHgkj pic.twitter.com/6Xb2Y6U6
— ろひの宮 (@rohinomiya) September 30, 2012
コース料理は事前に予約して個室で食べることができます。人数とメニュー内容を伝えてコース料理を決めることができます。一品料理もその都度単品で注文することができます。江山楼おすすめメニューのひとつ「ちゃんぽん」以外にも、揚げ物メニューとして「ハトシ」は長崎の名物郷土料理の観光客にも人気のグルメな逸品です。
長崎のハトシ有名店その5:長崎一番
長崎一番のハトシロールは、長崎県産のアジを主原料に、牛と豚のミンチと玉ネギと一緒に練りこみパンでロール状に巻いたものです。9個入り詰め合わせタイプは、3個ずつ個包装になっていて、それぞれプレーン味が2袋、チーズ味が1袋入っています。値段は税込1980円となっていてお土産、贈り物に最適です。長崎空港の売店で売っています。
今日の #チキチキ遠藤nami乗りジョニー
— チキチキジョニー石原 (@chiki2johnny14) November 15, 2017
のコーナーで紹介した長崎一番さんの「ハトシロール」はこちらです(*^^*)
長崎からお持ち帰りできるハトシ、ハトシロール!!冷蔵庫で解凍して、トースターで約8分♪♪#ハトシ #長崎名物 pic.twitter.com/Tb2PFNqRXF
長崎一番のハトシロールは、バラで購入することもでき、全部で3種類の味が楽しめます。値段は、プレーン味540円、チーズ味640円、エビ味900円でいずれも税込価格で3個入りです。冷凍してあるので、冷蔵庫で解凍してトースターで焼いて食べます。第50回農林水産祭の水産部門で内閣総理大臣賞を受賞しています。
長崎のハトシ有名店その6:まるなか本舗
「まるなか本舗」は鮮魚小売商としてスタートし、現在は蒲鉾店として長崎県内を中心に10店舗を構えるお店です。獲れたて新鮮な海の幸を素材に、合成保存料を使用しない蒲鉾を主力に店頭販売しています。海老のすり身をやわらか食パンで包んだハトシロールは、蒲鉾製造で培った技法で完成させた逸品です。値段は1個324円です。
長崎土産にハトシを買いました❣️
— たまご (@tamago524649) October 27, 2017
長崎浜屋のデパ地下、まるなか蒲鉾さん。空港にもあるお店で美味しいのだ( ◠‿◠ ) pic.twitter.com/TYitBE36FZ
まるなか蒲鉾の店舗は、観光客に便利なデパ地下や空港売店にありお土産に買って帰ることができます。もちろんその場で単品で購入してテイクアウトで食べることも可能です。揚げたてほくほくのハトシは、ぷりぷりの海老とカリッカリの食感がブレンドされて美味な美味しさを楽しむことが出来ます。長崎グルメを賞味できる名店です。
長崎のハトシ有名店その7:蘇州林
長崎新地中華街にある本格中華料理店「蘇州林」は、お店の外にテイクアウトして食べられるメニューを置いていて気軽に買って食べることができます。長崎名物のハトシをはじめ、角煮まんじゅう、胡麻だんごなど、あつあつの揚げ物が単品で買えて新地中華街をぶらぶらと散策ついでに買えるとあって大人気のお店です。
蘇州林さんの胡麻だんごとハトシ:musical_note:
— なお:star:️滝翼と安藤さんがだいすけだあ:heart:️ (@iorimizuk28329) November 28, 2016
ハトシ大好き( 〃▽〃) pic.twitter.com/uMxs8ibKN3
蘇州林は、本格中華料理のお店なので、長崎名物ちゃんぽんはもちろん、皿うどん、ラーメン、中華丼、など日本人にもお馴染みのメニューの他、本格北京料理、四川料理など中国料理が楽しめます。他にも通称よりより棒と呼ばれる麻花兒や胡桃が入った月餅などの中国菓子もこの店の人気メニューです。
ハトシを家庭で食べられる簡単レシピ
今でこそ長崎のお店か料亭でしか食べられないハトシですが、もともと江戸時代末期には大ブームを呼んで広まって、その後、すり身を作る手間から徐々に衰退していき、今では中々家庭で作られることはありません。でも意外やレシピはさほど難しいものではなく、簡単に作れます。代表的なものでホットサンド風、ゴマハトシなどがあります。
家庭で作れるホットサンド風ハトシ
パンは耳を切りニンニクチューブ入りとマーガリンを両面に塗る。海老を叩いてミンチにし、はんぺん、マヨネーズ、溶き卵、塩胡麻、ニンニクと一緒に混ぜ合わせる。それをパンに塗り上から海老を2本並べ、更にその上から混ぜ合わせた具材を乗せて焼く。ぷりぷり海老のホットサンド風ハトシの出来上がりです。
胡麻味がマッチするゴマハトシ
エビのすり身とマヨネーズ、塩胡椒、一味唐辛子を少々混ぜ合わせたものをパンに塗り、その上からさらにパンをかぶせ白胡麻をまぶします。白胡麻の量はお好みでどうぞ。一旦ラップに包み8分ほど蒸します。その後に、プライパンにサラダ油を入れ、こんがりときつね色に焼けたら食べやすい大きさに切って出来上がりです。
ハトシを食べて長崎の街を満喫しよう
江戸時代の長い鎖国政策の間もオランダ、ポルトガル、中国との交易を続け、今もその異国文化が漂う長崎の街は、沢山の見どころ満載で幕末からの歴史とロマンが残る街です。中国福建省から卓袱料理のひとつとして伝えられた「ハトシ」は、そんな異国文化を伝える長崎グルメの代表的な食べ物です。まだ食べてない方は一度ご賞味下さい。
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