心霊スポットファンにおすすめ!北海道の常紋トンネル
日本各地にある心霊スポットの中には、天災などがきっかけで人骨が出たなど、単なるうわさではなく、その裏付けのようなものがあるという場所もあります。常紋トンネルも心霊スポットと言われていますが、その背景にはタコ部屋など、大変な過去がありました。そのあたりも含めて常紋トンネルについて紹介します。
常紋トンネルとはどんな場所?
心霊スポットということで、すでに廃線になったトンネルを想像しますが、常紋トンネルは今でも使われているトンネルです。JR北海道の石北本線の生田原駅と金華信号場の間にあり、常紋峠という峠の下を通っています。ですから電車に乗っているとそこを通過することになります。
心霊スポットの場所は、北海道北見市遠軽町
常紋トンネルがある常紋峠というのは北海道北見市と紋別郡遠軽町の間にあります。もともとトンネルがつくられた頃はそれぞれ常呂郡留辺蘂町と紋別郡生田原町でした。「常紋」という名前は常呂郡の「常」と紋別郡の「紋」からつけられています。
常紋トンネルが着工したのは1912年のことで、湧別線常紋隧道ということで着工されました。しかしこのあたりは石北本線の中でも特に難所として知られたところであり、標高約347メートル、全長507メートルのトンネルを掘るのに3年の歳月を要し、開通したのは1914年でした。
このあたりは急こう配のところでもあり、かつては鉄道の写真撮影や録音などの名所として知られていました。特にD51重連の写真撮影などではにぎわったところだそうで、2017年までは西留辺蘂側坑口付近に常紋信号場が存在しており、ここを仮乗降場としてこれらの人々を客扱いしたこともあったそうです。
常紋トンネルへのアクセス
今述べたように、常紋トンネルは今でも運行が行われている路線なので、電車でアクセスすることができます。もちろん、このトンネルを実際に通ることも可能であり、毎日この場所を何本もの列車が通過しています。石北本線は旭川から北見・網走方面を結ぶ最短経路でもあり、観光シーズンなどには多くの観光客が利用しています。
常紋トンネルのある場所は石北本線の遠軽駅と北見駅の間になります。最寄り駅は「生田原」駅と「西留辺蘂」駅です。以前は西留辺蘂駅の手前に金華駅という駅があったのですが、2016年3月で旅客扱いが廃止され、現在は金華信号場となっています。
生田原駅のほうが旭川駅側になるので、こちらから常紋トンネルを通る方が多いと推測しますが、生田原駅そのものは特急「オホーツク」、「大雪」が停車するなど、全列車が停車する駅となっています。そのため札幌駅からならば「オホーツク」を、旭川駅からは両方の特急を使うと一本でアクセスすることができます。
ただし、次の駅である西留辺蘂駅は、普通列車のみが停まる駅なので、西留辺蘂駅で降りるなら、生田原駅での乗り換えが必要です。常紋トンネルを通るだけなら上記の特急を利用すれば、乗り換えすることなくさらに先の留辺蘂駅まで行くことができます。
いずれにしても、石北本線そのものはそれほど列車の本数が多い路線ではありません。オホーツクや大雪に関しても1日に2往復程度ずつなので、常紋トンネルの心霊体験をしてみたいというのであれば、時間などきっちり確認して行くことをおすすめします。
常紋トンネルが気味の悪い場所になった理由
ところで、電車のトンネルはそれこそ世界中にあるというのに、なぜ常紋トンネルが心霊スポットなどと言われるようになったのでしょうか。たしかに常紋トンネルのあたりはあまり人気の多い場所ではないので、北海道の原野からなにかが出てくるような気がするのかもしれませんが、実は様々な噂がこの場所にはあるのだそうです。
運転士や周辺の人たちの噂
そもそも石北本線が今も走っているということは、運転士の方などはそれこそ毎日のようにこの場所を通るわけです。その結果として、なにやら見てしまったという運転士さんの証言は多く見られます。特に夜になり、あまり乗客がいない状況の時に運転士さんが窓に映った姿を見たなどはごく普通のようです。
また、その昔、だれもいないはずの電車の車両の中をだれかが歩く気配を感じ、見てみると、通路にそれまでなかった足跡の形がついていて、しかも濡れていたのを運転士さんが発見したなどというものもあるそうです。
さらに、常紋トンネル周辺は山なので、山菜などを採りに行く人が多くいますが、これらの人々が人間の手や足の骨を拾ったという話も以前はよく言い伝えられていました。このように、運転士はもちろん、地元の人々にとって、心霊体験らしきことはよくあったようです。
さらに、先ほど紹介したように、このあたりはかつて列車の撮影や録音をするスポットとして知られていました。特にD51重連の撮影では有名な場所だったのですが、この場所で撮影をして、夕方になると、悲しそうな顔をした人がこちらを見ているのだそうです。
そのことを駅にもどって、駅員さんや、電車の運転士さんなどに聞くと、あっさりと「またですか」と言われたという話が残ります。つまり常紋トンネルにはそれだけこういった噂が多く、そこで働いている駅員さんや運転士さんにとっては珍しいことではなかったということなのです。
ちなみにその見える「人」は労働者風の姿で、悲しそうな顔でこちらを見ているという共通点があります。運転士などが見ている「姿」もそういう感じなのだそうです。もはやこのあたりの運転士にとっては、それだけ当たり前の光景であるらしいのですが、なぜ「労働者風」なのかという種明かしは次に回します。
十勝沖地震が発生したときの出来事
このあたりはまだ運転士や撮影をしていた人などが偶然に見てしまった、気のせいではないかと言いたいところなのですが、この「証拠」らしきものが実際に出てきたことがあります。それは1968年に起こった「十勝沖地震」という大きな地震がきっかけでした。
十勝沖地震は青森県東方沖を震源とする地震で、北海道から東北北部で最大の震度は5、津波の被害などもあり、50人以上の死者を含め多くの死傷者が出ました。この時に常紋トンネルの壁面が崩落したため、1970年から改修工事が行われました。
常紋駅口から3つめの待避所の工事をしていたところ、レンガでできた壁の奥から、頭蓋骨に損傷がある人骨が発見されました。その後の発掘調査で、トンネルの入口や山の斜面など複数の場所からさらに人骨が発見されたのです。それ以前にさまざまな噂があったことが、事実であったことが判明した瞬間でした。
常紋トンネルで監督の指示に従わなかった労働者が、頭をスコップなどで殴られたという噂はそれ以前からあり、頭蓋骨に損傷があるということでこの噂も事実であったとされました。先ほどの「労働者風の姿」というのはこの労働者たちのことではないかとされたのです。
常紋トンネルで見つかった人骨の事実?
常紋トンネルは北海道でも有名な心霊スポットではあるのですが、なぜ心霊スポットになったのかということについてはそれまでは噂の域を出ませんでした。しかしこのように人骨が出てくるに至り、噂は真実だということが判明したのです。ではどのような「真実」があったのでしょうか。
「タコ部屋」労働者の骨だった!
実は常紋トンネルは「タコ部屋労働」と呼ばれる、凄惨で過酷な労働によって造られました。タコ部屋労働というのは、本州から集められた「タコ」と呼ばれる労働者たちを身体的に拘束し、非人間的環境下で肉体労働をさせるものでした。
明治維新後、北海道開拓が行われるようになると、屯田兵が置かれて道路などが造られていきました。しかしそれだけでは人手が足りないため、道内の集治監に収監されていた受刑者を建設労働力として使うようになりました。しかしあまりにも過酷であるとして批判が起こり、1894年に廃止、かわって登場したのがこの「タコ部屋労働」でした。
労働は朝早くから夜遅くまで行われ、給料は日給制、食事は立ったままで簡易的な造りの掘っ立て小屋に外から施錠し、外出ができないような状況でした。食事も粗末であり、脱走者などは拷問を受けたこともあって多くの命が失われたのです。常紋トンネルの場合、工事が終わるまでに100人を超える死者が出たとされています。
いずれにしても、このタコ部屋労働が非常に過酷であったことは確かなことであり、その過酷な労働の中で栄養不足による脚気などの病気、過酷な労働からの脱走が見つかっての拷問などが待ち受けました。さらに運よく逃げられても、タコ部屋そのものが山の中などにあるため、結局遭難してしまったということも多かったようです。
また、このような形で北海道に集められた労働者の多くは、そもそも逃げ出して社会に戻っても貧困であるため、結局は再びタコ部屋労働のために北海道に戻ってしまうということも多かったそうです。このような過酷な労働は最終的には第二次世界大戦が終わるまで続けられました。
「タコ部屋」とは?
これらの人々が収容された部屋が「タコ部屋」です。タコ部屋は建設工事の場所が変わるとき移転しやすいように簡易的な造りの掘っ立て小屋となっていて、タコ部屋労働者は契約期間の間そのタコ部屋に拘束され、厳しい労働に従事させられていました。
なぜ「タコ」というのかということについては、いくつかの説があります。タコは一旦岩に吸いつくと死ぬまで離れないことから、タコ部屋労働者が必死で労働する姿がそれに似ているから、タコは最後の食料として自分の足を食べてしまうと言われ、その様子が前借金などを負った労働者が自分の肉体を切り売りするさまに似ているなどがあります。
また、これらの労働者たちはいわゆる「ポン引き」と呼ばれる斡旋人の甘い言葉に乗せられ北海道にやって来て他人に雇われる、つまり「他雇」であることからという説もあるそうです。
常紋トンネルで見つかった人骨は「人柱」なのか?
十勝沖地震で見つかった多くの人骨は、常紋トンネルのタコ部屋労働に関係するさまざまな噂が事実だったという「証拠」とされました。1980年、当時の留辺蘂町などを中心に金華信号場西方の金華小学校跡地である高台に「常紋トンネル工事殉難者追悼碑」が建てられ、命を落とした人々の追悼が行われています。
常紋トンネルで働いていた労働者の遺体の噂
十勝沖地震で人骨が出てきたとき、それを掘りだした人々の間から「みんなが人柱だと言っていた」という証言がありました。実はこの人骨が出てくる以前から、常紋トンネルで働いていた人々が「人柱」にされているという噂は多くあり、これが心霊スポットの噂や運転士が悲しげな労働者の姿を見たという噂につながっていました。
人柱というのはそもそも、城などの大規模な建造物を建てる際に、災害や敵による破壊を避けることを神に祈願するために、その建造物の近くに生きた人間をそのまま土中や水中に埋めることを言います。事実はどうであれ、人柱に関する伝説を持つところは多く、人柱となった霊魂を神に近い存在と見るわけです。
しかし、常紋トンネルの場合の人柱は、これらの本来的な人柱とはニュアンスが違います。常紋トンネルの人柱はむしろ、監督の指示に従わなかったり、逃げ出したりした人を見せしめにするために拷問し、その結果命を落とした人々をそこに埋めたというものです。
先ほど述べたように、常紋トンネルの工事では、その工事期間内に100人以上の労働者が命を落としました。もちろんその中には、重労働で体を壊したり、粗末な食事で脚気などになった者もいましたが、これらの人々も治療などをされることもなく、亡くなると隧道や現場近くの山林などに埋められていたと言われます。
先ほど述べたように、常紋トンネル近くの山林で山菜採りなどをしていたら、人間の骨を拾ったという噂が出てきたのは、このように山林などに埋められた人々の骨だと言われています。
そのせいか、十勝沖地震が起こる以前にも常紋トンネル内で列車が急停車したことなどがあったため、1959年に常紋トンネルの近くに歓和地蔵尊というお地蔵さまが造られ、毎年供養祭が行われていました。
いずれにしても、常紋トンネルはタコ部屋の過酷労働によって建設された場所であることは事実です。常紋トンネルはこのような人々の大いなる犠牲の上に生まれたものと言えるでしょう。
北海道にある「常紋トンネル」は心霊スポットとしておすすめ!
北海道の常紋トンネルはタコ部屋労働という悲しい歴史を持ったトンネルです。ただその一方で、今も使われているトンネルであるため、電車に乗って簡単にアクセスすることができる心霊スポットでもあるわけです。ぜひこのトンネルを通る時はそのような労働者の人々にも思いをはせてみてはいかがでしょうか。
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