日本の伝統文化お座敷遊び
江戸時代に隆盛を極めた花街文化は、現在もその格式ある伝統をしっかりと受け継ぎ、東京や京都をはじめとして全国各地に残っています。その花街のお座敷で行われるお座敷遊びは粋な大人の遊びです。ここでは、そのお座敷遊びの種類や料金、お座敷でのルールやマナー、服装など、初めての方にも安心して体験できるよう紹介していきます。
お座敷遊びとは
お座敷遊びのルーツを辿ると、平安時代の歌舞を興じる白拍子にあったとされ、その後江戸時代のお茶屋で飲食を伴いながら芸舞妓の歌と踊りを楽しむようになったのが、今に伝承されているとされています。そのお茶屋が料亭として栄え、そこで歌舞を披露する芸舞妓と一緒になって、それなりの服装で楽しむ究極の大人の粋な遊びです。
一般的にお座敷遊びというと、敷居が高い、堅苦しいというイメージがありますが、お遊びというぐらいですから、芸妓さんと一緒になって気軽に楽しむというのが基本です。芸を習得した芸妓さんの唄と踊りを鑑賞し、飲食をしながら一緒に語らい、余興に興じてわいわいとみんなで楽しむという粋な大人の遊び、それがお座敷遊びです。
お座敷遊びをもてなす芸妓とは
いろんな種類の舞踊や音曲、鳴物などで宴席に興を添え客をもてなす女性を芸者、芸子といい、京都では芸妓といいます。その多くは、一人前の芸妓と見習いに区別され、京都では芸妓、舞妓と呼び、東京では、芸者、半玉又は雛妓といいます。また舞踊を受け持つものを立方、唄や三味線、鳴物を受け持つものを地方といい、それなりの修練が必要です。
芸妓、舞妓には、厳しい伝統としきたりがあります。舞妓になる前の段階を仕込みといい、15歳頃から置屋で共同生活をしながら、踊りの種類や行儀作法、着物の着付けなどの修業を行い、約1年後に舞妓としてデビューします。さらに舞妓として5年間ほど、踊りや三味線、お囃子、お座敷でのいろんな種類の接客作法を学び、晴れて芸妓となります。
お座敷遊びの種類
お座敷遊びにはたくさんの種類がありますが、大抵簡単に参加でき、ルールに従い勝ち負けを競います。負ければお酒を飲むというのが基本のルールです。百戦錬磨の芸妓さんを相手に、いろんな種類のお遊びに勝ったり負けたりして盛り上がります。もちろん身なり服装は大事で、熱くなって脱いだりせず服装はきちんと整えておく必要があります。
隠岐地方民謡で有名な金比羅舟々
「金毘羅舟々追風に帆かけてしゅらしゅしゅしゅ」の唄に合わせて、向かい合った2人が座布団上に置いたビールの袴を使って遊びます。交互に袴の上に平手を載せ、片方が袴を取ってしまうと片方が手を拳にして座布団上へ置きます。袴が戻るとまた袴に平手を載せるといったルールで進めます。曲のスピードが次第に速くなり盛り上がります。
源氏物語や百人一首になぞらえた投扇興
桐箱の台に立てられた「蝶」と呼ばれる的に向かって扇を投げ、その扇・蝶・枕によって作られるいろんな種類の形を、源氏物語や百人一首になぞられた点式のルールにそって採点し、その得点を競います。台の位置は扇4つ分の距離なので、軽く投げれば届きます。運の要素もあるので、初心者でも高得点を出すことができ大いに盛り上がります。
近松門左衛門の浄瑠璃とらとら
近松門左衛門の浄瑠璃「国性爺合戦」を題材に和唐内と老婆、虎の三すくみのジェスチャーで行います。和唐内は虎には強いが老婆には弱い、虎は老婆には強いが和唐内には弱い、老婆は和唐内には強いが虎には弱い、というルールで2人の間に屏風を置き、客と芸妓がそれぞれに扮したジェスチャーを披露し勝ち負けを競います。
お座敷遊びのとらとらの進行内容を説明する動画です。司会者の説明と芸妓さんの実演で紹介しています。東京赤坂の料亭で撮影されたもので、2011年1月9日にYoutube上に公開されています。いわゆるジャンケンポンと一緒のルールですが、小唄に合わせて興じるお遊びで趣があります。続けて勝ち抜き戦でやると、それなりに盛り上がっていきます。
お座敷遊びのルール
お座敷遊びには、一定のルールともいうべき楽しむための極意と作法があります。まず身なりや服装は大事で、特に初めての場合は、それなりの服装で好印象を持ってもらうことが重要です。基本はスーツにネクタイという服装がベストで、着物の服装やそれなりの清楚な感じのする服装が理想です。靴や靴下は高価でなくても新しいものが理想です。
飲食を伴うのがお座敷遊びですが、酒癖の悪い人はお断りになります。お金を払えば何をしてもいいというのは、花街では通用しません。本人はもちろん、紹介者の評判まで下がることになります。お酒はきちんとした服装で紳士的に飲み、芸妓さんに対してそれなりの敬意を払うことによって信頼を得ます。お座敷遊びは人間磨きを体験する場です。
踊りや小唄が始まったら黙って聞くというのが基本のルールです。芸妓さんはそれなりの修錬を積んで来た芸の達人です。芸を売るのが芸妓の仕事、きちんと観るのはお客としての礼儀です。また、芸妓のことを「お姐さん」と呼びます。たとえ何歳であっても「おばさん」とかいうのはご法度です。芸妓さんに呼び方の種類はなく皆お姐さんになります。
気になるお座敷遊びの料金と支払い
気になるお座敷遊びの料金の内訳は、芸妓、地方の花代がほとんどで、花代の料金は決まっています。お客の人数増えても花代はかわらないため、参加人数が多ければ一人当たりの料金は少なくなります。あとはお酒と料理の料金が加算されます。芸妓、地方各1名にお客が4名とした場合で、そんなに飲み食いしなければ、一人数万円の料金です。
お座敷では、お金のやりとりはありませんし、そういった料金の話も一切しません。料金は数週間後にお客の手元に請求書が届き銀行振込をする、という掛け払いが通例となっています。これは、お客との関係が断ち切れになってしまうのを嫌ってのことで、逆にいえば、それだけ信頼があるとお座敷に認めてもらっていることの証でもあります。
初心者向けお座敷遊びのセットプラン
花街近くの宿泊施設には、観光客や初心者向けのお座敷遊びを宿泊料金とセットにしたプランなどがあります。基本一見さんお断りの世界といわれる花街のお座敷遊びは、紹介者を通じてというのが原則で、その紹介者の替わりになってくれるのが地元の花街との関係が深い宿泊施設や旅行会社です。初めての体験として活用するのに便利です。
東京でお座敷遊びができる花街
江戸時代に発祥した花街は今も全国に点在しており、中でも東京の六花街は有名です。東京六花街とは、溜池付近に発生し明治に発展した赤坂、歌舞伎の芝居小屋から今の花柳界が残る浅草、風情ある石畳が残る神楽坂、芸の新橋といわれ花柳界からも一目おかれる新橋、下町風情溢れる向島、現在の日本橋人形町にあたる芳町の六箇所です。
新橋料亭の老舗金田中
大正時代の中頃に創業した老舗料亭、金田中は、京都の祇園と並び花柳界に置いてその伝統と格式を守り続ける新橋花街を代表する料亭です。見目麗しい料理の数々とともに、芸を極めた新橋芸者の華麗な舞や小唄を体験することができます。料金も最高級で夜は最低5万円からで、それにお座敷遊びをすると6桁以上の料金は覚悟した方がいいようです。
伝統ある江戸割烹米村
米村は、江戸の味にこだわり、伝統ある老舗の味を今に伝える江戸割烹です。東京新橋花柳界に店を構え、伝統の江戸の味を守り続けています。料理人向けの専門書や美味談義の本が登場するなど、江戸後期に繁栄した料理文化の中から、現代風にアレンジした新江戸料理と合わせて、本格的な東京新橋花柳界のお座敷遊びを体験することができます。
無形文化財にも指定される京都のお座敷遊び
現在、京都にある花街は、上七軒、祇園甲部、祇園東、嶋原、先斗町、宮川町の6つの花街があり、総称して京都の六花街と呼びます。また嶋原以外の京都花街組合連合会に加盟する5地区を総称して五花街と呼ぶこともあります。京都の花街は、神社や寺院と同様に、京都の観光スポットとなっており、春と秋に行われる五花街の踊りは人気のイベントです。
京料理花咲萬治郎
京料理花咲萬治郎は、花見小路や八坂神社などの京都観光名所から徒歩5分の好立地で、清水寺から知恩院への東山観光ルート内、ねねの道にあります。築120年の町屋風情を色濃く残した元旅館店内には、ゆったりした座敷や坪庭の見える個室があり、様々な京会席料理を堪能しながら、芸妓さんを呼んでお座敷遊びを体験することができます。
市中の山居ぎおん畑中
ぎおん畑中は、都に居ながら閑寂の境地を味わう市中の山居の趣を大切にした宿です。町屋風情のある離れや、お寺の参道の木々が望める本館の部屋などがあり、ゆったりとした雰囲気で、旬の素材を盛り込んだ優雅な京料理の数々を堪能することができます。またお座敷遊びを楽しめるディナーショーがあり、お座敷遊びの入門編として体験できます。
伊豆下田のお座敷遊び
江戸時代より東西を結ぶ船の中継点として栄えた下田港には、その隆盛の中、小人やお役人をもてなす花街ができ、唐人お吉の名で知られる下田一の人気芸者が生まれたりしました。現在は、下田芸者の置屋である桝屋から各ホテル、旅館、料亭まで芸妓さんを派遣しています。スナックや喫茶にも派遣可能で、港町ならではの庶民的さです。
老舗のクアハウス石橋旅館
クアハウス石橋旅館は、下田の奥座敷、蓮台寺温泉にあり、竹林の中に佇む創業130年余りの老舗旅館です。客室はすべて純和風で、部屋でも掛け流しの温泉が楽しめます。伊豆ならではの季節の山海の素材を使った創作会席を頂きながら、下田芸者と共にお座敷遊びに興じてみてはいかがでしょうか。旅館を通じて呼んでもらうことができます。
新潟市古町のお座敷遊び
新潟市中央区古町にある古町芸妓は、最盛期には約400人もの芸妓がいて隆盛を極め、京都の祇園、東京の新橋と並び称されていました。古町芸妓は、昔ながらの置屋所属の正統派ベテラン芸妓である「姐さん」と、柳都振興株式会社に所属する通称「柳都さん」に分かれます。また新潟では、芸妓を留袖、見習いを振袖と呼びます。
有馬温泉のお座敷遊び
有馬温泉は、昭和の中頃が湯治客をもてなすお座敷遊びのピークで、置屋が15件、160人もの芸子さんがいましたが、現在は田中席という置屋が1件、芸子さんは14名となっています。この田中席は、一七四さんというベテラン芸妓さんが運営しており、祖母の代から3代目となり、その格式高い妓芸は若い芸子に伝承されています。
天地の宿奥の細道
有馬温泉にある天地の宿奥の細道は、料理の鉄人で知られる大田忠道氏がプロデュースする宿です。山の幸、海の幸、川の幸、などたくさんの天地の恵みを使って、料理の鉄人が腕によりをかけます。部屋からは四季折々の有馬の自然が望めます。夜は、極上の料理を堪能しながら格調高い有馬芸妓の華麗な踊りとお遊びを体験することができます。
愛媛松山のお座敷遊び
愛媛県松山市には、大正から昭和初期の全盛期には、県内で検番が約40軒、置屋が439軒、芸妓が1350人もいました。現在そのお座敷文化の伝統を継承するため、明治時代より続く松山検番を法人化し、一般社団法人松山検番として平成30年4月5日に設立されました。市内の料理旅館では、四国の郷土料理を味わいながらお座敷遊びを体験できます。
九州博多のお座敷遊び
博多では、芸妓の事務所のことを券番といい、好景気に沸く大正時代には5つの券番がありましたが、現在は全ての券番がひとつにまとまり博多券番として活動しています。冷泉町にある博多伝統芸能館では、博多芸妓をはじめさまざまな伝統芸能を鑑賞することができます。鑑賞のための参加費は、一人5000円で事前振込みが必要です。
博多の老舗料亭老松
料亭老松は、昭和2年1927年の創業で、店名の由来は、清元の名手で芸妓出身の初代女将の源氏名です。数奇屋造りの建物は、昭和20年の博多大空襲で焼けたあと、2年後に再建されています。随所にこだわりをちりばめた趣のある部屋が歴史を感じさせます。下関近海や玄界灘で獲れた旬な魚を使った博多の味を堪能することができます。
お座敷遊びで粋な大人の遊びを体験しよう
お座敷遊びは、粋な大人のお遊びです。お座敷へ上がる際にはそれなりの服装が基本で、さらに服装だけでなく、芸妓さんに対する立ち振る舞いも重要です。でも堅苦しく考えず楽しく過ごすことも大事です。ようはある程度の節度を持って、芸妓さんの芸に敬意をはらいつつ基本のルールを守って、いろんな種類の楽しいお座敷遊びを体験しましょう。
RELATED
関連記事
RELATED
- 京丹後の観光でおすすめをまとめ!温泉もはずせない、カフェでランチも人気!
京都府といえば観光の中心は京都市内になります。しかし京都府の北には日本海に面している京丹後地方があるのです。京都観光にはな...
Tmax
- 京都の抹茶パフェ特集!美味しいおすすめスイーツ店TOP21!
皆さんは京都に抹茶を使ったスイーツが沢山あるのをご存じですか?その中でも是非食べて頂きたいのが「抹茶パフェ」です。京都には...
スズシロ
- 京都のわらび餅はココ!お土産にもおすすめの人気店11選!
大人気の観光地・京都には美味しいものもいっぱいありますよね。特に「食の芸術」といわれる日本伝統の和菓子の中でも、老若男女問...
フミヅキ@品川
- 京都の日本酒特集!おすすめの居酒屋から人気のお土産もご紹介!
今回は、京都の日本酒についてご紹介します。京都には日本酒を取り扱う人気店が多数あり、日本酒好きの方が足を運ぶ姿が良くみられ...
kuroe339
- 京都のそばランキング21選!美味しいおすすめの名店をご紹介!
お寺が菓子屋にそば切りを依頼したことが基となっている、京都のそば。関西風と異なる味わいが地元の人・観光客問わず人気を集めて...
ck
- 京都と奈良を観光!修学旅行に人気のお土産やアクセスもご紹介!
京都と奈良、これは修学旅行先としては定番の組み合わせですね。しかしどちらも観光スポットが多すぎてどこに行くべきか迷いそう、...
okyk2514
- 京都で新撰組ゆかりの名所めぐり!人気グッズやお土産もチェック!
観光でも人気の都市、京都。そんな京都には、幕末に活躍した新撰組の名所がたくさん残っています。江戸から京都へ移り、新しい日本...
niroak
- 京都のよーじやカフェ特集!人気商品やメニュー・おすすめのお土産も!
京都にあるよーじやカフェについてご紹介いたします。よーじやカフェに行ったことのない方もいるかと思いますが、耳にしたことのあ...
ちーみん
- 京都のゲストハウス特集!おしゃれで格安のおすすめはココ!予約の取り方は?
見どころ溢れる京都旅行、このせっかくの機会、なるべく宿泊費を抑えてその分いろんな観光地を巡りたいですよね。そんなときは迷わ...
rikorea
- 京都の飲み屋特集!女性にもおすすめの安い飲み屋街をご紹介!
京都にも安い飲み屋街がいくつもある事をご存知でしょうか。その中でも女性も行きやすいおすすめの飲み屋を紹介します。飲み屋に慣...
AyumiMK
- 京都のうなぎ名店特集!ランチにもおすすめの人気店21選をご紹介!
うなぎの焼き方には、関東風と関西風の2種類がありますが、京都のうなぎは、どっちでしょうか?。京都は、いにしえより、うす塩を...
R.Haguro
- 京都で人気の宿坊ランキング!座禅・写経や精進料理も!気になる予約方法は?
京都にはお寺に宿泊できる「宿坊」が一杯!座禅や写経を体験できる宿坊や女性専用の宿坊もあり、若い女性の間で注目を集めています...
スズシロ
- 「伊根の舟屋」の遊覧船や絶景ランチ!周辺のおすすめ観光スポットも!
「伊根の舟屋」は京都の北、丹後半島の伊根湾にあります。海から直接舟を格納する様に造られた日本でも非常に珍しい高床式舟屋の群...
Hokey Pokey
- 京都のディナーはココ!記念日やデートに人気の店TOP21!
京都には伝統的なお漬物やおばんざいなどの和食や、イタリアンやフレンチまであらゆるグルメが集まる街です。そんな京都では、記念...
MEG_TEA
- 京都の焼肉食べ放題ランキング21選!おすすめランチもご紹介!
お漬物などで有名な京都には、焼肉食べ放題のお店がいっぱいです。夜の食べ放題はもちろん、お昼から焼肉を味わえるおすすめランチ...
Megu
- 嵐山のデートスポット!浴衣を着て歩こう!花灯路の時期もおすすめ
嵐山で人気のおすすめデートスポットをご紹介します。夏なら浴衣を着て京都の歴史ある街並み散策もおすすめです。日本の歴史を感じ...
Lete
- 京都で着物をレンタル!観光地周辺にあるおすすめ店をご紹介!当日もOK!
日本の風情が溢れる常に大人気の観光スポット・京都府で着物を着て街散策をしませんか?京都には外国人にも大人気のレンタル着物店...
Miku Nakamura
- 京都のパンケーキ特集!人気の美味しいスイーツ店TOP21!
京都は日本人以外にも外国人の観光客で連日にぎわっている様子です。日本料理も良いですが今回は、世界でも共通に愛されているパン...
LOOK
- 京都道の駅おすすめランキング9選!人気の温泉や特産品情報もご紹介!
京都といえば、清水寺や嵐山など有名な観光地があります。連日多くの観光客で賑う京都ですが、京都の郊外にも京都の特産品や温泉を...
chanaya7
- 京都の和菓子TOP21!老舗の人気から定番のお土産まで!
古くからの街並みを数多く残す日本屈指の観光地・京都。そんな京都でお菓子を買おうとすると、やっぱり和菓子に目がいってしまう…...
しいろ
- タンドレスは京都の有名パティスリー!週3日のオープン日は行列必至!
京都の閑静な住宅街に佇む一軒家の「パティスリー タンドレス」。シェフが丹精込めて作る、芸術的な美しさと美味しさを誇るフラン...
Suzy