北アルプスの穂高連峰「涸沢岳」へ!
3000m級の山々がそびえる日本の屋根、北アルプスの穂高連峰は名峰揃い。今回は穂高連峰の中の一座で、紅葉が美しい涸沢カールで有名な「涸沢岳」にスポットを当てて、おすすめの登山ルートや登山口までのアクセス方法、山行中の大切な拠点となるヒュッテなど、初心者に役立つ情報をたっぷりご紹介します。
涸沢岳ってどんな山?
涸沢岳は、長野県と岐阜県の県境にある穂高連峰の一座です。ギザギザでこんもりとした形の涸沢岳は標高3110mで、その隣に美しい三角形の涸沢槍を従えています。涸沢岳が有名なのは、山頂よりも中腹の涸沢カール。日本最大規模のカールには、夏は青々とした高山植物が、秋には美しい紅葉が見られる絶景スポットです。登山のベストシーズンは7月から9月頃となっています。
涸沢岳登山ルート1:上高地ルート
涸沢岳を始めとする穂高連峰の山々では日帰り登山は難しいです。自分の体力や技術に合わせて、余裕を持った登山計画を立てましょう。初心者におすすめのルートは長野県側からのアプローチ。上高地をスタートして梓川沿いに歩きます。途中の徳沢はロッジや旅館があるリゾートエリアで、道も整備されているので森林散策気分で楽しく歩けます。道はその先の横尾まで続き、出発地点の上高地からはゆっくり歩いて約2時間です。
ヒュッテやテント場のある横尾からは、いよいよ登山の様相になってきます。横尾谷にかかる本谷橋は吊り橋になっているので、立ち止まらずに慎重に渡りましょう。河原で休憩を取るのもおすすめです。本谷橋地点の標高は1780mです。本谷橋正面の屏風岩をぐるりと迂回してガレ場を進むと、いよいよ涸沢カールが見えてきます。
標高2300mの涸沢カールは雲上の楽園とも呼ばれ、高山植物の花畑や紅葉が楽しめる一大観光スポットとなっています。涸沢カールは穂高連峰に囲まれるように位置しており、残雪のある初夏にはスキーを楽しむ人の姿も。涸沢カールには涸沢ヒュッテと涸沢小屋という2つのヒュッテがあります。涸沢カールに宿泊したら、穂高連峰が赤く染まる朝焼けのモルゲンロートもお楽しみに。
涸沢カールからは、向かって左側のザイテングラートと呼ばれる岩の稜線を登ります。ハイマツ帯を抜けるとハシゴや鎖場が現れます。十分なステップがあるので難易度は見た目よりも高くはありませんが、上からの落石や滑落に注意しましょう。また、ハイシーズンには登山客が増え、ハシゴ場が渋滞することもあるので焦らずに。安全のためにヘルメットを着用しましょう。
ザイテングラートを越えると、涸沢岳山頂と奥穂高岳の谷間に当たる白出のコルへと出ます。ここからいよいよ穂高連峰の稜線です。涸沢岳山頂まではもうすぐですが、稜線はガレ場の急斜面となっており、高度感もあるため初心者には勇気がいる場所。また、見事登頂を果たしたら下山は急な下りとなります。滑落には十分気をつけましょう。
上高地ルートのヒュッテ
奥上高地にある便利な立地のヒュッテ「横尾山荘」
長野県側から涸沢岳へ登山する場合は、ピストンでも2泊3日以上の日程で計画を立てるのがおすすめ。山行中はヒュッテやテント場で宿泊することになります。横尾山荘は、穂高連峰方面だけでなく北の槍ヶ岳や東の蝶ヶ岳方面への登山拠点として便利な立地で、紅葉シーズンには予約が取れないほどの人気。ランチは誰でも利用できますが、お風呂は宿泊客専用です。
涸沢カールの絶景が見渡せる「涸沢小屋」
涸沢小屋到着#上高地#涸沢小屋 pic.twitter.com/9VHVqAZiA4
— 青空 (@2525aozora5963) October 4, 2017
涸沢カールには2つのヒュッテがありますが、涸沢岳の南斜面に沿って建つのが涸沢小屋です。涸沢小屋は、古くから「涸沢の岩小屋」として猟師や登山家を守ってきた歴史あるヒュッテ。宿泊はもちろん、食事や休憩で多くの登山客が訪れています。見晴らしの良いテラスで、おでんやラーメンをおつまみに生ビールを飲むのは格別の気分!ハイシーズンは混雑するので、宿泊する場合は予約をしておきましょう。
診療所や救助隊もいる「涸沢ヒュッテ」
涸沢小屋より裾野にあるのが涸沢ヒュッテです。長野県警山岳遭難救助隊が常駐し、さらに夏季には診療所が開設されるなど、登山家たちの重要拠点となっています。宿泊や食事、休憩はもちろん、アイゼンやストック、テントのレンタルも。涸沢ヒュッテと涸沢小屋の間は広々としたテント場で、色とりどりのテントが所狭しと並ぶ光景もきれいです。
涸沢岳上高地ルート起点へのアクセス
長野県側から涸沢岳へアプローチする時の起点となるのが上高地バスターミナルです。公共交通機関でのアクセスは、JR松本駅またはアルピコ交通新島々駅からバスで1時間強。東京からのアクセスも新宿駅や東京駅から直行バスが運行していて便利です。また、上高地バスターミナルのアルピコ交通窓口で登山届の提出と山岳保険の加入ができます。
涸沢岳登山ルート2:白出沢ルート
歩き易い右俣林道を進みます。
— 山中年男子 (@_yamadanshi_) August 16, 2014
雨が降りましたが、明日の晴れ間に期待を! pic.twitter.com/bDlTh2I05p
涸沢岳のもう1つの登山ルートは、岐阜県側からのアプローチ。新穂高温泉を起点とし、穂高連峰の西側から登山します。穂高連峰を大きく巻いて登山する長野県側の上高地ルートと違って、岐阜県側のルートはほぼ一直線に山頂を目指すため初心者にはおすすめできないハードなルートです。新穂高温泉を出発してしばらくは、緩やかな上り坂の右俣林道を歩きます。
林道は奥穂高岳登山口まで続きます。ここは槍ヶ岳登山道への分岐地点となっており白出小屋と呼ばれることもありますが、現在はもう小屋はなくテント場になっています。ここから先はいよいよ本格的な登山。白出沢が増水すると渡れなくなる重太郎橋を過ぎて、岩切道という絶壁の鎖場を進みます。足元だけでなく上からの落石にも注意が必要です。
11時35分。
— くの (@2012Kuno) October 4, 2015
荷継沢(小屋跡)通過。
ココからはガレ場かな? pic.twitter.com/04Kz9sHep8
荷継小屋跡を過ぎると、最大の難所とも言える急勾配のガレ場へと入っていきます。この付近は登山道が分かりにくいので、特に下山の際は道迷いに注意を。所々にある小さなマーカーと、足場がしっかりしている場所を探しながら一歩一歩進みましょう。うっかり浮石に着地してしまうと落石や転倒のおそれがあります。
セバ谷出合を過ぎると雪渓です。西側斜面のため遅くまで雪が残る年もあるそうです。上が見えているものの、急勾配な上に足場が不安定な登山道のためなかなか登り切ることができず、疲れが出てくる頃です。休憩したくなりますが、落石のおそれがあるので一気に登り切りましょう。そして階段状の石段を上がると、白出のコルへと合流します。
白出沢ルートのヒュッテ
涸沢岳ふもとの素泊まりヒュッテ「穂高平小屋」
白出沢ルートのヒュッテは、ふもと付近と山頂付近の2ヶ所となっています。右俣林道沿いの「穂高平小屋」は、夏休み期間と9月の土日祝日のみ管理人がいる不定期営業のヒュッテ。管理人がいない日は避難小屋として使うことができます。宿泊の場合は食事がつかず素泊まりですが、太い木の幹をくりぬいて作られた風情あるお風呂には入ることができます。
穂高連峰の老舗ヒュッテ「穂高岳山荘」
穂高岳山荘ナウ。風が冷たい pic.twitter.com/pAHC5JbPoP
— nsym (@nsym00) October 8, 2017
涸沢岳山頂が間近に見える白出のコルには、有名な「穂高岳山荘」があります。創業は大正時代と言われる老舗のヒュッテで、穂高連峰縦走登山者にとっては重要な拠点です。畳の大部屋でゆっくり休んだり、隣のテント場で絶景と星空を満喫したりと、思い思いの楽しみ方ができます。
涸沢岳白出沢ルート起点へのアクセス
登山届提出 (@ 新穂高登山指導センター in 高山市, 岐阜県) https://t.co/NUDIOG7Bcw pic.twitter.com/rnmEtSgvDR
— K.Watch (@kuwatama510) August 8, 2017
白出沢ルートの起点は、新穂高ロープウェイ新穂高温泉駅の近くにある「新穂高登山指導センター」となります。ここで登山届を提出して出発しましょう。公共交通機関でのアクセスは、JR高山駅から濃飛バスで1時間40分。マイカーでのアクセスなら、東海北陸自動車道高山ICまたは北陸自動車道富山ICが最寄りとなります。
涸沢岳初心者には登山ツアーもおすすめ
【レポート更新】「山ガールネット 涸沢♪紅葉トレッキング」取材レポートを掲載しました。https://t.co/xuYGkna55T pic.twitter.com/pUj8k2lM0L
— 山好きな女性 (@lihilifyxac) October 29, 2017
3000m級の涸沢岳登山は、やはり初心者でも簡単にとはいかず長い時間と体力が必要です。滑落事故や山岳ヘリが出動することもしばしば。初心者だけど穂高へ行ってみたいという人は、長野県側の上高地から涸沢カールまでをトレッキングする登山ツアーに参加するのも一計です。山頂へ挑戦する場合は、ソロ登山は絶対に避けましょう。
涸沢岳登山にチャレンジしてみよう
穂高連峰の一座、涸沢岳の登山ルートやヒュッテなどのお役立ち情報をご紹介しました。長野県側にある涸沢カールを始め、あちこちで大自然の絶景が満喫できる涸沢岳。険しい岩場を越えてそのピークを踏む時の感動を楽しみに、しっかり山スキルを上げておきましょう!
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