この記事の目次
はじめに:岩崎弥太郎生家への旅のご案内
この記事では三菱の創業者である岩崎弥太郎の生家を訪ねる旅についてご説明します。生家は高知県安芸市にありますが、記事ではまず岩崎弥太郎の生い立ちや三菱財閥を築く様子をご紹介したうえで、生家への旅を紹介していきます。さらに安芸市の観光についてもご案内します。実りある旅のお役に立てれば幸いです。
岩崎弥太郎とは何者?(要約)
岩崎弥太郎は、幕末に現在の安芸市に生まれました。武士の最下層の出身で、時代に翻弄されながらも三菱財閥の創業者となり、経済面で新しい日本を作るのに貢献しました。政治で活躍した坂本龍馬は弥太郎より1年後に生まれ、この二人は明治維新前後の日本に欠かせません。このような岩崎弥太郎の生家を旅してみてはいかがでしょうか?
三菱創業者の生家のある「安芸市」とはどんなところ?
安芸市は高知県の東部、土佐湾に面した人口1万8千弱の都市で、高知市からは鉄道やバスで1時間ほどです。美しい海岸の町で、観光スポットとしては、岩崎弥太郎の生家、安芸城跡、野良時計などがあり、またプロ野球阪神タイガースのキャンプ地としても知られています。幕末から明治の歴史を探訪しながらいろいろと旅をお楽しみください。
岩崎弥太郎の生家の歴史は?
弥太郎の生家は、安芸駅から約3km、昔の中心地の安芸城跡から1kmあまりの所にあります。岩崎家は甲斐武田氏の流れを汲むといわれ、家紋にそれが感じられます。武田家本家は四菱で、一族には三階菱も使われますが、岩崎家の家紋は「重ね三階菱」(下の写真)です。三菱マークは創業者の家紋などから生まれますが、後でご説明します。
岩崎弥太郎の生家の暮らし向きは?
祖先は農業をしていましたが、江戸時代の中期に山内氏に仕え下級武士である郷士となりました。なお、上級武士は上士という土佐藩の身分制度です。ところが弥太郎の曽祖父のときに、郷士の資格をお金に換え地下浪人(じげろうにん)となりました。これは苗字帯刀は許されますが、禄はなく農業などで生きていくしかありません。
岩崎弥太郎の青年期まで:生家での生い立ちは?
弥太郎は1835年(天保5年)に岩崎家の長男として生まれました。明治維新の33年前です。生計は苦しかったはずですが、親戚筋の儒学者に学びました。そのためか、19歳のとき別の学者の従者として江戸へ出て、そこで朱子学の安積艮斎の塾で学びました。上の写真は生家付近の風景。
生家にいた時代の岩崎弥太郎の才覚は?
幼少期から学を好み、藩主の巡行時に詩を献上し、褒美をもらったとされます。そのように才能を高く評価されていますが、一方ではかなりのやんちゃであったようです。また、江戸へ行く前に、裏の妙見山(上の動画)に登りそこの星神社の板壁に、「吾れ志を得ずんば、再び帰りてこの山に登らじ」と書いたいわれ、その気性が伺われます。
江戸から生家に戻った岩崎弥太郎
江戸へ行ってから1年ほどして、父親が暴行を働いて投獄されたため帰国し、その不当性を奉行所の壁に書いたことにより弥太郎も投獄されてしまいました。獄中で商人と知り合い、商売や算術のことを教えられ、それがその後のビシネス活動に道を開いたといわれています。
岩崎弥太郎と坂本龍馬は幼なじみ?
岩崎弥太郎と坂本龍馬は1年違いの生まれですが、龍馬の生家は高知市の中心部であり、弥太郎の安芸市とは車で1時間ほど離れていますから、小さいときに交流していたとは思われません。2010年に放映されたNHK大河ドラマ「龍馬伝」では福山雅治さんの龍馬と香川照之さんの弥太郎が幼なじみとして描かれていますが、フィクションのようです。
龍馬と弥太郎が出会ったのは、長崎だったようです。龍馬は海援隊を率いて活動し、弥太郎は藩命でその手伝いをしており、1年あまりの間ですが交流し親しくなっていたようです。大河ドラマでは龍馬が暗殺されたことを知って弥太郎が非常に悔しがっていますが、そのような心のつながりはあったかもしれません。
岩崎弥太郎の土佐藩における初期の仕事
弥太郎は前記のように投獄されますが、釈放後(弥太郎23歳)、後に土佐藩の重役になる吉田東洋の塾に入り、ここで後藤象二郎(上の写真)などとの人脈ができます。吉田東洋が藩政に携わると弥太郎も役人に取り立てられ、長崎に派遣されたりします。
弥太郎はその後大阪へ行ったり、藩内の騒動に巻き込まれ、役人を罷免されたこともあり、31歳位までは特筆するような仕事はしていません。私的には、大金を借りて曽祖父が売った郷士の株を買い戻し、結婚もするなど足元を固めた時期でもあります。なお、郷士の株は売買されており、意外と融通がきく身分制度だったようです。
岩崎弥太郎は藩のビジネスを担当
弥太郎が32歳、明治元年の前年に長崎へ赴いています。当時土佐藩には貿易を行う開成館があり、その長崎出張所の主任となりました。ここでは土佐の樟脳や鰹節を売り、武器や船舶を輸入しており、また、坂本龍馬(上の写真、長崎にて)の海援隊が土佐藩の管理下になったため、その残務整理を弥太郎が担当しました。
ビジネスの取引相手にはイギリス人やオランダ人がおり、その中には武器商人のグラバー(長崎のグラーバー園で有名=上の写真)もいました。彼は後に三菱に雇われ高島炭鉱の所長などを務めています。
九十九商会に関わる
1869年(明治2年)に土佐藩は土佐開成社という会社を作ります。これは廃藩置県(1871年)を機に藩営が禁止されるため私企業の形をとったもので、ここで弥太郎は事業監督となりましたが、1870年には土佐藩の大阪藩邸の責任者となりました。(上の写真は高知の坂本龍馬記念館展示品)
土佐開成商社は1870年に私商社の九十九商会となり、弥太郎の役割は藩の立場から事業を監督するものでした。九十九商会には藩の船も払い下げられ、海運業などを行っていました。(上の写真は桂浜)
三菱の創業:「三菱」の名前を使う
廃藩置県により岩崎弥太郎は土佐藩の役人ではなくなり、私人としてビジネス活動を行います。共同経営で発足した九十九商会は、社名を三川商会に変え、さらに1873年には「三菱商会」に改め、弥太郎が代表に就任しました。また翌年には三菱蒸気船会社となり、拠点を東京に移しました。(上の写真は維新の志士、高知の坂本龍馬記念館蔵)
九十九商会は数人の共同経営でしたが、ビジネスの経験知識は岩崎弥太郎が中心でした。ほかのメンバーも弥太郎に頼ることが多かったようで、弥太郎に任せることとなり、弥太郎も自分の会社としてやっていくことを決断したというのが経緯のようです。(上の写真は高知市山内神社、家紋は三つ柏)
三菱の創業時期は?
前記のように1873年に「三菱商会」となりますが、三菱の創業時期については、三菱グループの資料によると、1870年の九十九商会の発足のときを創業としています。岩崎弥太郎が関わっており、事業の継続性からそういえるようです。当然、弥太郎が創業者です。
三菱マークの誕生:生家の家紋が関係
スリーダイヤで知られる三菱マークについては、三菱グループの資料によれば、元になっているのは土佐藩の山内家の家紋である「三つ柏」と岩崎家の「重ね三階菱」(前記)です。上の写真は岩崎弥太郎生家にある説明文です。また、下の写真は生家にある銅像の台座のレリーフです。
なお、三つ柏は土佐藩の船の旗に使われていましたが、九十九商会の船の旗ではそれを変形した「三角菱」が使われました。菱がやや細長い形でしたが、その後岩崎家の家紋と合わせて、現在の端正な三菱マークになったとされます。
三菱の事業の体制確立
三菱の事業は九十九商会から引き継いだ海運業を主体でしたが、次第に他事業にも展開していきます。例えば、銅山を買い取り、現在の三菱マテリアルにつながります。あるいは、新政府の貨幣を発行するにあたり、三菱は諸藩の藩札を買い占めて利益を得たといわれます。上の写真は創業者岩崎弥太郎。
また、明治政府が台湾出兵するときや西南の役のときに政府側の輸送を請負い、船舶を供与されるなどを受けながら協力しました。同時に大きな利益も得たといわれます。この過程で体制を強化するために社名も「郵便汽船三菱会社」として整備、これが後の日本郵船株式会社となります。上の写真は同社の氷川丸(横浜港)。
創業者岩崎弥太郎の死去とその後の体制
その他長崎造船所(上の写真)や高島炭鉱を買い取り、事業が多角化します。さらに、東京海上保険や明治生命保険、三菱為替店(銀行)なども設立し、三菱財閥が形成されてきましたが、岩崎弥太郎は、1885年(明治18年)に50歳で亡くなりました。その後三菱の2代目は弟の彌之助、3代目は弥太郎の息子の久彌に引き継がれていきます。
三菱の本部の組織形態としては、1885年に三菱社、1893年に三菱合資会社とし、分社化を進め今日でも存立する多数の三菱系の会社を擁するほどになりました。1940年には「株式会社三菱社」として株式を公開し、1945年の終戦時には株式の約半分は一般投資家が占めていました。
第二次大戦後の三菱
第二次大戦後は財閥解体となり、中心であった「三菱社」は解散させられ、傘下各社も分割されるなどされました。その後の苦しい時代を各会社が乗り切り、一部では分割された会社が合併するなどしながら、最大の企業集団といわれる三菱グループを形成しています。(上の写真は東京・六義園で、明治期に弥太郎が購入し、後に東京都に寄贈)
三菱グループの明確な定義は不明ですが、グループの中核会社の社長会「金曜会」は29社で構成されています。その関連会社は約650社ともなり、これを三菱グループということもあります。また、その総売上は日本のGDPの約10%ともいわれています。岩崎弥太郎の事業がそこまで拡大したといえます。(上の写真は旧岩崎邸、現東京都の公園)
岩崎弥太郎・三菱の経営理念:国のためになど
三菱の経営理念には、「国への協力」があります。台湾出兵時も、他社が応じないために弥太郎に協力が求められ、「国のために」協力を決断しました。このような例から、三菱の綱領の第一に「所期奉公」が挙げられ、これは事業を通して社会へ貢献することを意味しています(三菱グループ資料より)。(写真は旧岩崎家別邸 現三菱開東閣)
三菱の創業者・岩崎弥太郎の生家への旅
岩崎弥太郎は現安芸市井ノ口の岩崎家(上の写真)で生まれました。安芸市の中心部から約3km,、車で約10ほどの郊外にあります。建屋は曽祖父が建てたものを、修復保存しているもので、現在も創業者の岩崎家が所有しています。一般に無料で公開されていますので、歴史を旅してはいかがでしょうか?
生家の基本情報
所在地:高知県安芸市井ノ口甲一ノ宮1631-1 TEL:0887-34-8344 (観光情報センター) 開設時間:8:00~17:00
岩崎弥太郎の生家:鬼瓦・庭など
生家は建坪約30坪、茅葺きの平屋で、4間ありますが、農業を営み、つつましい生活をしていた様子がうかがわれます。土蔵があり、その鬼瓦には前記のように岩崎家の家紋である「重ね三階菱」が備えられ、壁には三菱マークが飾られていますので、ご覧ください。
生家の庭には上の写真のような石組みがあり、これは弥太郎が少年時代に自分で組んだ日本列島であるといわれてます。子供のときから壮大な心構えを持っていたようです。
生家の周辺の見るポイント
上の写真の銅像は生家の前に建っています。弥太郎の生誕150年を記念して有志により別の公園に建てられたものですが、2015年に現在地に移されました。
生家の前には童謡「春よ来い」の曲碑(上の写真)があります。実は作曲の弘田龍太郎は安芸市の出身で、雀の学校、浜千鳥など10曲の碑が市内各所にありますので、旅の途中で訪ねてみてはいかでしょうか?
岩崎弥太郎の生家の裏山「妙見山・星神社」
岩崎弥太郎の生家から西北西に約1kmの所にある標高448mの山で、弥太郎はよくここで遊んだと伝えられています。そして前記のように星神社に「吾れ志を得ずんば、再び帰りてこの山に登らじ」と書いた所です。眺望もよいスポットですので、ハイキングの旅もおすすめです。上の動画は生家の動画ですが、星神社のことも出てきます。
安芸市の旅・野良時計
野良時計は、岩崎弥太郎生家と並んで安芸市の代表的な観光スポットです。この時計は個人の住宅にあるもので、昔時計が一般的でなかった時代に、地主が野良にいる人にも時を分からせるために、自分で作りあげました。モデルはアメリカの八角形のもので、何回も分解して、製法を習得したそうです。外部からの見学となりますが、駐車場もあります。
野良時計前のヒマワリ満開:sunflower:
— 小松幸司 (@Komatsu_Koji) July 25, 2016
晴れた日に撮っておいた:grin:#ヒマワリ #ひまわり #野良時計 #安芸市 #高知 #日本 #花 #風景 #安芸市を代表する場所 #sunflower #aki_city #kochi #japan pic.twitter.com/J9lE0saVJT
【基本情報】 所在地:安芸市土居638-4 TEL:0887-35-1011(安芸市観光水産課)
安芸市の旅・城跡と武家屋敷
岩崎弥太郎生家からもほど近い土居地区に安芸城跡(上の写真)があります。戦国時代末期まで安芸氏が治めていましたが、長宗我部氏に破れました。当時の土塁、堀などが残り、江戸時代に山内氏によって造られた館もあります。また、土居廓中には武家屋敷(下の写真)も保存されていますので、当時をしのぶ旅をすることができます。
【基本情報】 所在地:高知県安芸市土居廓中 TEL:0887-35-1122(安芸市観光協会)
安芸市の旅・市営球場
安芸市営球場は、1965年以来阪神タイガースの春季・秋季のキャンプ地として使われています。そのため愛称も「安芸タイガース球場」と制定されています。ファンの応援も多くありますので、タイミングが合えばお立ち寄りください。
【基本情報】 所在地:高知県安芸市桜ケ丘町2248−1 TEL:0887-35-1020
安芸市の旅・赤野休憩所
高知方面から国道55号線で安芸市に向かうとき、市街地に入る前の高台に「赤野休憩所」があります。眼下に高知・桂浜方面へ続く海岸や土佐湾を望み、特に夕陽は絶景ポイントとしてカップルにも人気があります。安芸に来たなら雄大な海岸は見逃せませんので、お立ち寄りください。
【基本情報】 所在地:高知県安芸市赤野甲(赤野駅から徒歩約15分) TEL:0887-35-1122(安芸市観光協会)
まとめ:三菱創業者の生家の旅は興味がいっぱい
三菱の創業者・岩崎弥太郎の生家への旅をご紹介しましたが、いかがでしたか?安芸市の貧しい家に生まれながら勉学に励み、試練にも遭いながら、三菱財閥の創業者となった波乱の生涯もご説明しました。この旅により、生家とともに近代日本の経済の立ち上がり時期について理解が深まれば幸いです。併せて安芸の観光もお楽しみください。
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