何でも固めてしまう秋田の不思議な寒天文化をご紹介!
きりたんぽやはたはたなど、美味しい料理がいろいろあることで知られる秋田ですが、近年秋田の珍しい食文化としてスポットライトが当たっているものがあります。それは「寒天文化」です。秋田の寒天文化はどのような由来があるのでしょうか。またどんな文化なのか、秋田の寒天とのかかわりについて紹介します。
寒天文化の由来やおすすめ寒天料理も!
そもそも寒天を使った料理といえば、あんみつや羊羹など、全国の和菓子に多く見られます。ところが秋田では、そういった和菓子だけではなく、日常的に食べる料理も寒天で固めることが多いのだそうです。ですから中にはちょっと珍しい寒天料理などもあります。
なぜ秋田にはこれほどの寒天文化が根付いているのでしょうか。またその中でもどんなおすすめ料理があるのでしょうか。秋田の人気寒天料理もあわせて紹介していきましょう。
まずは秋田へのアクセスから
まずは秋田に行ってみましょう。秋田は東北地方北部、日本海側にある県です。秋田へのアクセスは飛行機、新幹線、高速バス、車などが使えます。
一般的に利用が多いのはやはり秋田新幹線でしょう。秋田新幹線「こまち」は最短3時間37分で東京と秋田を結びます。全車指定席なので、行く場合は早めにチケットを確保することをおすすめします。また飛行機は秋田空港と大館能代空港があり、羽田のほか大阪、名古屋、札幌、ソウルなどと結ばれています。
また高速バスは新宿、横浜、仙台からの便があり、時間はかかるものの、リーズナブルな値段でアクセスができます。さまざまなアクセス方法があるので、出発地から都合がよいルートを選ぶのがおすすめです。
秋田で人気の寒天ってそもそもどんなもの?
さて、秋田の寒天文化について紹介する前に、そもそも寒天とはなんぞやということから紹介していきましょう。寒天というとぷるぷるした食感が人気で、先ほど述べたように和菓子などに多く使われていますが、そもそも原料はなんなのでしょうか。またどのような特徴があるのでしょうか。
寒天の原材料は天草
寒天というのはテングサ(天草)、オゴノリといった海藻の粘液質を凍結、乾燥させて作ります。江戸時代前期、現在の京都市伏見区にあった旅館の主人が、偶然トコロテンを凍結させてしまい、それが昼の気温で溶けて乾物状になったものを見つけたことに由来します。
この乾物状のものはトコロテンより美味しく、海藻の臭みも抜けており、それを黄檗山萬福寺の開祖である隠元が「寒天」と命名したと言われます。
寒天はゼラチンよりも低い濃度で固まり、また一度かたまると85度以上の温度にならないと溶けません。ですから、気温の変化に強く、ぶるぷるした食感が続くという特徴があります。
寒天とゼラチンの違い
寒天とともによく使われるゼラチンは、コラーゲンに熱を加えて抽出されます。そのため主成分はタンパク質であるというのが寒天との大きな違いと言えるでしょう。
タンパク質でできているため、フルーツなどでタンパク質を分解する酵素が含まれるものを使うと固まらないことがあります。その場合はこの酵素を除くために加熱するか、缶詰などを利用する必要があります。
弾力と粘性が強く、また20度以下で固まり、25度以上で崩れるため、口に入れるとプルンと柔らかい食感で口どけもよいのが特徴です。冷たく冷やして食べる料理に使うのがおすすめで、ゼリーなどが人気です。
寒天とアガーの違い
アガーはカラギーナンという海藻やローストビーンガムという豆などの種子から抽出したものです。寒天やゼラチンに比べて透明度が高いのが特徴で、最近人気の水ゼリーのような、透明度を活かした料理に使われることが多いです。
また、30度から40度で固まり、常温で型崩れしないという性質があり、無味無臭であるため、お菓子などで持ち運びをしたいものなどにもよく使われています。
ダマになりやすい性質があり、砂糖を混ぜるとダマになりにくくなるため、最初から砂糖をまぜて販売されていたり、そうでない場合は砂糖を加えて混ぜる事でダマを防ぐことができます。
秋田の寒天文化の由来
さて、このような秋田の寒天文化ですが、そもそもなぜ秋田にこのような寒天文化が根付いたのでしょうか。たとえば秋田県は東北地方だからと考えてみても、他の東北の県で寒天文化があるという話はあまり聞きません。秋田にはなにか寒天に由来する特別な事情があるのでしょうか。その由来について見ていきましょう。
秋田の寒天文化の由来①:寒い冬の保存食
秋田の寒天文化の由来について考える際にポイントとなるのは、やはり「寒さ」です。先ほど寒天について紹介した時に述べたように、もともと寒天はトコロテンが凍り、それが溶けることで水分が抜け乾燥したものに気づいたことに始まりました。
そのため、寒天という食材そのものが長野や岐阜などで多く作られています。冬に寒いということは、寒天を作る上では重要なポイントなのです。さらに乾燥させている、つまり乾物なので長期保存も可能です。
寒い冬が長い秋田では、寒天のような保存が利く食品はとても大切です。寒天は秋田で保存食として広まり、それが寒天文化の由来となっていると考えられています。
秋田の寒天文化の由来②:お祝いに欠かせない料理
寒天の魅力は、その美しい見た目にあります。さまざまな具材を寒天に入れてかためると、透明な中に具材が入ることで、とても美しく見える料理ができあがります。このような美しい料理は、婚礼料理をはじめとするお祝い料理にはぴったりなのです。
また、寒天そのものは乾物ですし、寒天で具材を固める場合には砂糖を使うことが多くなります。砂糖には防腐効果があるため、それが加えられることでそのままにしておくよりも日持ちがするというメリットもあるのです。
見た目が美しく、日持ちもよい寒天料理は、まさにお祝い料理にはぴったりのおすすめの一品になるのです。こちらも寒天料理の人気の由来と考えられるのです。
秋田の寒天文化の由来③:お客様をもてなすお茶菓子
見た目が美しく、お祝いの料理にぴったりの寒天料理は、もちろんお菓子にもぴったりです。その上寒天は先ほど述べたように一度固まると高温でないと溶けださないので、気温が高い夏などでも透明感ある涼しげな状態がきれいに保たれるのです。
そのため、他の土地でもそうであるように、秋田では寒天を使った美しく涼しげなお菓子がお客様をもてなす時のお茶菓子としてとても人気です。
さらに後で述べるように、秋田の寒天料理は甘い味付けになっているものが多いため、フルーツなどばかりでなく、いわゆるおかずに使われる具材を寒天で固めた料理もおやつ代わりに食べられることもあり、人気となっています。このような点も秋田の寒天文化の由来と考えられます。
秋田で使われる寒天の種類
では、秋田で寒天料理を作る際に使われる寒天にはどのような種類があるのでしょうか。料理やお菓子作りを実際にしている方はご存知かもしれませんが、現在一般的に販売されている寒天には大きく分けて3つの形態のものがあります。形態の違いはそれぞれの特徴の違いにもつながっています。そのあたりを見ていきましょう。
寒天の種類①:棒寒天(角寒天)
寒天と言ってすぐに思い浮かぶのが棒寒天(角寒天)です。その名前の通り四角い棒状になっており、先ほど述べたテングサとオゴノリを混ぜて作っています。だいたい1本が8グラム程度となります。
使う際は流水で洗った後、水に30分以上浸します。乾燥しているため、長く浸すほど戻り、柔らかくなって扱いやすくなります。戻せたら手でちぎり、沸騰した湯、だしなどに加え、よく煮溶かして使います。
基本的には煮溶かしてから具材などを入れて冷やし固めますが、そのままちぎってサラダにトッピングしたり、スイーツなどに使うこともできます。
寒天の種類②:糸寒天
糸寒天はテングサから作られ、細い糸状の形状をしていることから細寒天とも呼ばれます。棒寒天1本分が糸寒天では同じく8グラム、だいたい24本から26本分程度になります。
使い方は棒寒天と同様に、水に30分以上浸して柔らかくしてから、沸騰した湯やだしで煮溶かして使います。ただ、糸寒天はその糸状の形をいかし、そのままサラダにトッピングして飾りにもしながら使う使い方もできます。その場合は水に浸してある程度柔らかくなったところで、水気をしぼってトッピングします。
寒天の種類③:粉寒天
粉寒天はオゴノリから作られ、唯一工場で作られる寒天です。名前通り粉状になっているため、必要な分量を量り、水で戻さずにそのまま振り入れて使うことができるため、使いやすいということで人気となっています。
使い方は鍋にその分量の水やだしを入れて、それに粉寒天を振り入れてよく混ぜます。底に沈みやすいので丁寧にかき混ぜ、沸騰してからさらに2分ほど火を弱めながら加熱して均一な寒天液を作ったら、具材をいれ固めます。
分量は棒寒天一本分が粉寒天ではだいたい4グラム、小さじ2杯分と考えるとよいでしょう。手軽に寒天料理を楽しみたい方におすすめです。
秋田で人気の寒天料理
それでは次に、秋田で人気が高い寒天料理をいくつか紹介していきましょう。先ほど由来のところで述べたように、秋田では寒天料理は単なる「おやつ」ではなく、お祝い料理などにも使われます。そのため寒天料理の種類も多く、一般的には寒天にはしないような具材も多く使われ、人気となっています。
秋田で人気の寒天料理①:サラダ寒天
最初に紹介するのは「サラダ寒天」です。サラダ寒天というと、先ほど少し触れたように、ふつうの野菜サラダの上に糸寒天や棒寒天を食べやすいサイズにしたものをトッピングしたものをイメージしますが、秋田のサラダ寒天はそうではありません。
秋田でサラダ寒天というのは、一般的によく食べられるサラダをそのまま寒天で固めます。できあがりのイメージはポテトサラダが四角に切られたものという感じです。白い中にニンジンやきゅうりのオレンジや緑が映えて、とてもきれいです。
サラダ寒天のおすすめレシピ
ではどのようにしてサラダ寒天はつくるのでしょうか。今述べたように、サラダ寒天は見た目はポテトサラダを四角くしたように感じですが、ジャガイモは入れずにニンジンやキュウリなどの色がきれいな野菜がおすすめです。これらを千切りにし、一部のニンジンは花形にします。
この野菜につぶしたゆで卵とマヨネーズを混ぜます。寒天を煮溶かして砂糖を加え、しっかり溶けたらサラダに入れてタッパーなど四角い容器に流し込みます。花形にしたニンジンを飾りに入れ、冷やし固めて切り分けます。
砂糖が入っているため、そのままサラダを食べるより甘さが感じられ、おかずはもちろん、おやつとしてもおすすめの一品となります。
秋田で人気の寒天料理②:フルーツ寒天
「フルーツ寒天」は秋田に限らず、全国で食べられている寒天料理です。透明な寒天の中にさまざまなフルーツが入れられている様子は、見た目も涼やかで美しく、好きなスイーツだという方も多いでしょう。
寒天はゼラチンと違い、タンパク質分解酵素が含まれる果物を使っても固まらないということがないため、季節の旬のフルーツを使うこともできますし、もちろん缶詰なども利用できます。一種類の果物だけ入れるもの、いろいろな種類のものを入れるものなど、バリエーションも豊富です。
フルーツ寒天のおすすめレシピ
フルーツ寒天は先ほどのサラダ寒天のサラダの部分をフルーツに変えれば、あとは作り方としてはほぼ同じです。フルーツの場合はジュースなどを入れることもできます。
またフルーツ寒天の場合はタッパーなどに流しいれるだけでなく、カップなどにいれるのもおしゃれです。オレンジのフルーツ寒天にするのであれば、中身を使った皮を入れ物に使うこともできますし、いろいろ工夫ができそうです。
秋田で人気の寒天料理③:たまご寒天
次に紹介するのは「たまご寒天」です。実はたまご寒天は秋田だけではなく、山形県の名物料理でもあるということで、さらに北陸では「べろべろ」「えびす」などの名前で食べられているという、日本海側で広く知られた料理です。
お祭りやお祝い事などの時に食べられる料理として知られ、見た目もきれいで人気があるそうです。ぜひ上手に作ってみましょう。
たまご寒天のおすすめレシピ
たまご寒天は砂糖と醤油を入れて普通に寒天液を作ったところに、溶き卵を流し入れます。いわゆるかきたま汁のようにふわふわっと流し入れるのがポイントです。流し入れたらかきまぜないようにして、ふわふわに見えるように作ってみましょう。
あとはタッパーなどに流し入れて、そのまま固めると完成となります。こちらも砂糖が入るので甘みがあり、醤油のちょっとあめ色になった中にふわっとたなびく黄色い卵がとてもおしゃれです。
秋田で人気の寒天料理④:雷寒天
次は「雷寒天」です。雷と唐突に言われてもどんなものかなかなかイメージできない方も多いかもしれません。実はこの雷寒天はこれができたらいい嫁と言われるという、秋田の特に県南地方では重要な料理なのだそうです。いったいどんな料理でどこが「雷」なのでしょうか。
雷寒天のおすすめレシピ
雷寒天は棒寒天1本になんと卵を9個も使う料理です。ボウルに卵と牛乳を混ぜておき、別の鍋で寒天を煮溶かし、砂糖などを加えておきます。寒天が煮溶けたらそこにこの卵と牛乳を混ぜたものを少しずつ入れ、かき混ぜていきます。
ただひたすらかき混ぜ続けると、やがて卵のかたまりの部分と液体が分離し、ゴロゴロができてきます。これを固めてできあがりです。ゴロゴロができるところが「雷寒天」の名前の由来のようです。
秋田で人気の寒天料理⑤:そうめん寒天
寒天で固めるのは野菜やフルーツ、卵などだけでありません。フルーツや卵などならばいわゆるお菓子としての寒天とそんなにイメージが変わらないので、さほど違和感はないかもしれませんが、秋田の寒天文化ではなんと「主食」すらも寒天で固めます。その一例が「そうめん寒天」です。
そうめん寒天のおすすめレシピ
そうめん寒天というと、糸寒天というものもあるイメージで、そうめんの麺が寒天でできているとイメージしますが、そうではありません。秋田のそうめん寒天は、夏の定番麺類の「そうめん」を寒天で固めたもののことをいいます。
寒天の中にそうめんや具材などを入れて固めてあるもので、つるつると食べるのではなく、四角に切ったものをそのまま口に入れるような形になります。カラフルな具材を入れると、そうめんが天の川のように見えて、七夕の時の料理などにもおすすめです。
まだまだある!秋田の変わり種寒天
このように、秋田ではさまざまなものを寒天で固めます。ここまでで紹介したほかにも、それこそ家ごとにいろいろなアレンジの寒天料理があると言ってもいいほどに多様な種類のものがあるのです。
なかには秋田の名産品である「じゅんさい」を寒天で固めたものなどもあり、いかにも秋田らしい一品として郷土料理店などで供されることもあるそうです。秋田に行ってみたら、ぜひいろいろな寒天料理を楽しんでみてはいかがでしょうか。
秋田で人気の寒天イベント「天使の寒天博覧会」
せっかく秋田に行くのなら、さまざまな寒天料理を体験してみたいという方もいるかもしれません。ここまで述べてきたように、寒天料理そのものはごくふつうの家庭でも作られる料理であり、スーパーや郷土料理店などでも販売されています。そしてなんと「天使の寒天博覧会」なるイベントまで行われます。
天使の寒天博覧会の主役「寒天使」
このイベントの主役は「寒天使」です。寒天使というのはなにかというと、おもてなしの心でさまざまな寒天料理を作り出す、秋田のおかあさんたちのことを言います。寒天を使いこなす秋田の人達を「寒天使い」イコール「寒天使」と呼びます。
この寒天使の方々は、日夜新たな寒天料理を生みだし、秋田の寒天文化の担い手となっています。そんな方々はまさに寒天を操る「天使」と言えるでしょう。
天使の寒天博覧会のイベントの様子
この「天使の寒天博覧会」というのは、秋田のフリーペーパー「のんびり」の企画から生まれました。2012年から開催され、不定期で開催されており、さらに開催場所もさまざまで、ある意味では「幻」のイベントとも言えます。
このイベントは秋田県内の各地から公募した個人や店舗などの参加者が寒天づくりの腕前を競うというもので、腕前を競うことからさまざまなオリジナル寒天料理が考案され、発表されるということで注目を集めています。
幻のイベントということで、このイベントに合わせて秋田に行くというのは難しいかもしれませんが、秋田に行く予定ができたら調べてみてはいかがでしょうか。そしてもしタイミングが合えば、新たな寒天の魅力を発見できるよい機会となるかもしれません。
秋田で人気の寒天料理を味わおう!
秋田には、さまざまな食材を寒天で固める文化があります。寒天は食物繊維が多く、体にもよいということで人気ですが、どうしてもお菓子のイメージでとらえることが多いのではないでしょうか。秋田のさまざまな寒天料理は、その寒天の食べ方の幅を広げてくれるでしょう。ぜひ秋田でさまざまな寒天文化を体験してみてくたさい。
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