東寺の五重塔を特別公開時に拝観しよう
真言宗総本山の寺院である京都東寺にある五重塔は、通常一般公開をしておらず、京都のランドマークタワーとして外からしか伺えません。その五重塔は、毎年春の時期と冬の時期の2回に分けて特別公開をしています。ここでは、五重塔そのものの歴史と構造美、内部の様子などと合わせて、特別公開の時期、その内容などを含めて紹介していきます。
東寺と五重塔の歴史を知ろう
日本の歴史上における一大事業、平安京遷都は、西暦794年11月22日に桓武天皇によって、長岡京から京都平安京に計画的に行われました。これは、唐の首都長安城に倣って計画都市として建設されたもので、当時の街路がそのままに現存してます。京都の街は、1200年以上経ったいまでもその歴史を物語っています。
東寺の歴史は、平安京遷都が行われた794年から2年後の796年に、平安京の正門にあたる羅城門の東西に東寺、西寺という2つの寺院のひとつとして建立されました。それから27年後の823年に第52代天皇である嵯峨天皇が、唐で密教を学んで帰国した弘法大師空海に東寺を託します。その後に講堂、五重塔などが建立されることになります。
東寺の中心となる金堂
京都東寺の中心となる金堂は、諸堂塔のうち最も早く建設され、空海が東寺に関わり始めた時には完成をしていたとされます。当初の堂は、1486年の土一揆で焼失しその後1世紀近くそのままでしたが、1603年の江戸時代が始まった年に再建され今に現存しています。建築様式は、和様と大仏様が併用され貫や挿肘木を多用した高い天井が特徴です。
金堂内部の本尊は、無病息災のご利益があるといわれる薬師如来と日光菩薩、月光菩薩です。薬師如来は、薬壺を持たない古い様式の仏像で、光背に七対の化仏を配する七仏薬師如来です。その薬師如来の右側に日光菩薩、左に月光菩薩が配置されています。薬師如来の台座には、本尊を守りその願いを成就する十二神将がぐるりと取り囲んでいます。
東寺の創建に尽力した空海
京都東寺の五重塔の創建に関わり、弘法大師の贈り名で知られる真言宗の開祖、空海は平安時代初期に活躍した歴史上の高名な僧です。讃岐の国で生まれ、14歳で平城京に上り、18歳で京の大学寮に入り学問を学びます。その後31歳の時に学問僧として唐に渡り真言密教を会得し、膨大な数の経典や法具を持ち帰り真言宗の普及に努めました。
その後、嵯峨天皇から勅命を受け東寺の創建に関わることになった空海は、東寺を真言密教の根本道場と位置づけます。さらに空海は、東寺の造営という大事業と平行して、高野山に壮大な伽藍の建立を進めます。都にある東寺を密教の根本道場に、高野山を修禅道場にするという計画です。空海は、平安という歴史の中に生きた大プロデューサーでした。
空海が奔走した東寺講堂と五重塔の大工事
空海が東寺の創建に関わり初めに手懸けたのが講堂です。東寺の境内は東西255m、南北515mの長方形で、其の中で大伽藍が建っているエリアは、東西南北255mでほぼ正方形になっています。ここで空海は、この講堂の位置を東寺の中心に据えます。つまり密教の中心的建物であり、そこに安置される大日如来は宇宙の中心としたのです。
講堂内部にあるのは、密教の世界をよりリアルに表現した豪華絢爛な立体曼荼羅です。曼荼羅を抜け出した、如来、菩薩、明王、そして天部の二十一尊の仏さまは、弘法大師空海の教えを、いまを生きる私たちに語り続けています。堂内は撮影禁止ですので、その一部を販売されていた写真で紹介します。写真は、右が降三世明王、左が持国天です。
空海に東寺が託された際には、境内の建物は金堂だけでした。空海は、講堂の建設に着手し続いて五重塔の大工事に着手します。しかし、当時は資材も労働力も不足していました。実際に五重塔が完成したのは、空海の没後50年後のことですが、手をこまねいていたわけではなく、東山に木材を見つけ朝廷に木材運搬の協力を申し出たりしています。
空海が居を構えた御影堂
京都東寺の境内西北部に建つ御影堂は、かつて空海が住房としていた仏堂で、前堂、後堂、中門の3部分からなる複合仏堂です。南側の後堂には、空海の念持仏とされる不動明王坐像が安置されています。空海はここに住を構え五重塔をはじめ講堂、綜芸種智院という学校などを建立し、密教浄土の世界を知らしめ人々の救済に力を注ぎました。
御影堂の内部では、毎朝6時に、弘法大師空海が住んでいた時と同じように、一の膳、二の膳、お茶をお供えする生身供が行われます。空海が師恵果から与えられて唐から持ち帰ったと言われている仏舎利を入れた袋が参拝者の頭と手に授けられます。どなたでもご参拝できますが、御影堂は現在修復工事を行っており、2019年に竣工予定です。
世界遺産東寺境内の全体を分かりやすく紹介する動画です。2014年1月17日にYoutube上に公開されています。各場面の展開が早過ぎてそれぞれの位置関係が分かりづらくはありますが、全体の雰囲気は分かります。五重塔の紹介は、最後の方で紹介されています。五重塔を下から見上げた雰囲気は、まさに威風堂々とした形容をしています。
東寺境内に建つ五重塔の構造
京都東寺の五重塔は、高さ54.8mで木造塔としては日本一の高さを誇ります。五重塔が最初に竣工したのは883年、現在の五重塔は五代目江戸時代の再建です。高くなるに従い狭まる五重の屋根、骨組である塔身、屋根から突き出た相輪、中央の地盤から相輪まで延びる心柱、中央の心柱を囲む4本の四天柱と外に面した12本の側柱からなる木造建築です。
五重塔は、独立した5つの層が下から積み重ねられた構造をしており、5層の頂部には、露盤、伏鉢、受花、九輪、水煙、竜車、宝珠の7つの装飾物から成る相輪が取り付けられ、心柱の先端部分に被さっています。この部分はインドの仏塔であるストゥーパの上に重ねられた傘の名残りと言われ、五重塔は他には見られない歴史的特徴を持っています。
観る角度によっては、未曾有の建築美を見せる五重塔は、ドイツハンブルクにあるチリハウスにも似たファサードを持ち、観るものをその場に立ち尽くさせ圧巻の迫力で迫ってきます。五重塔は、当時の建築技術からして緻密に計算しつくされたわけではなく、日本の持つ匠の技と古来伝統美の歴史が培われてきた軌跡の結晶がそこにあります。
五重塔の心柱が果たす役割とは
五重塔には、多くの耐震機能の要素が含まれており、特にその中心をなす心柱の果たす役割は重要です。地震による浮き上がりが激しくなると、転倒、落下の危険性が生じますが、五重塔ではこの時に心柱が層の傾斜を抑制し、転倒、落下の防止する働きをしています。五重塔は、地震国の日本において、まるで耐震設計の教科書のような存在です。
五重塔の心柱がそのままハイテク技術で現代に蘇ったのが東京スカイツリーです。スカイツリーの内部は、直径8m、高さ375mの鉄筋コンクリート製の円柱が貫いています。これは世界で初めて採用された心柱制振といわれる制振構造で、五重塔の内部に立つ心柱を現代に再現したものです。歴史的建築物として五重塔がいかに優れていたかが分かります。
通常公開されてない五重塔内部
五重塔は五階建になっているわけではなく、内部が吹き抜けになっており実際は初層のみとなっています。中心に心柱があり、五重塔の最上部まで貫かれています。仏像や菩薩像が安置されている須弥壇の下の一部が開いており、心柱が礎石の上に乗っているのを確認することができます。天井も煌びやかで折上小組格天井となっています。
五重塔初層内部は、極彩色に彩られた密教空間が広がっています。真言の教えが空海に伝えられた歴史を表しています。五重塔内部の壁や柱に両界曼荼羅や真言八祖像が描かれており、須弥壇には心柱を中心にして金剛界四仏像と八大菩薩像が安置されています。真言密教の中心尊である大日如来の像は、五重塔内部にはなく心柱を大日如来としています。
東寺の五重塔特別公開の時期はいつ
京都東寺の五重塔は、毎年春と冬の2回に分けて特別公開されます。この特別公開は、五重塔1階部分にあたる初層階内部を拝観することになります。五重塔に関しては、平成30年度の特別公開は、すでに終了しています。次回は、平成31年度の新春1月1日からの予定です。五重塔特別公開の詳しい時期に関しては、東寺専用HPで確認してください。
東寺五重塔特別公開の料金は
2018年の五重塔春期特別公開は、2018年4月27日から5月25日まで毎日午前8時から午後5時まで行われました。特別公開時の拝観料は、金堂、講堂の拝観料もセットになっていて大人1名800円、高校生700円、中学生以下が500円です。また30人以上は団体割引で1割安くなります。他に宝物館、観智院もセットになった1300円の共通券もあります。
東寺の境内には樹齢120年を超える不二桜があります。この桜の木はもともと岩手県盛岡市のある旧家で育てられ、平成6年、秋田県を経て三重県鈴鹿市の鵜飼農園が譲り受け、大切に育てられた八重紅枝垂桜で、平成18年の空海帰朝1200年を記念してこの地に移植されました。樹の高さが13mもあり、3月末から4月の初めに見事な花を咲かせます。
東寺境内の西門近くにある大師堂そばには、鐘桜があります。室町時代の1348年に完成しています。石組み台座に建つ切妻反り屋根四つ足の鐘桜で、寺の開門を告げる梵鐘は、室町幕府の初代征夷大将軍であった足利尊氏から寄贈された鐘とありますが、残念ながら現存しているものは複製の鐘です。消失した理由は定かではありません。
東寺五重塔以外の通常時の拝観は
通常の開門は午前5時で、閉門が午後5時です。ただし金堂と講堂の開門は午前8時、宝物館、観智院の開門は午前9時となっています。御影堂と食堂の拝観は無料となっています。その他の拝観料は、金堂と講堂が合わせて500円、宝物館、観智院がそれぞれ500円となっていて、五重塔以外全部拝観できる共通券は1000円となっています。
東寺では、祖師空海入寂の3月21日を期して毎月21日に御影堂で行われる御影供のことを指して弘法市といいます。当初は年に1回行われていたものが、1239年以降は毎月行われるようになっています。現在では多数の露店が立ち並ぶ縁日となっていて、境内のすぐ横まで広がる露店に毎月大勢の人が訪れ京都の名物市となっています。
弘法市は、毎月21日の朝5時ごろから日没の夕方4時頃まで終日行われていますが、開店閉店時間は季節や天候、出店者によって変化します。年配者だけではなく、若者や家族連れ、外国人なども多く、歴史ある弘法大師信仰の場と一緒に立ち並ぶ露店は、店の人とのやりとりや珍しい品々を見ているだけでも楽しめる活気ある縁日です。
東寺の五重塔春のライトアップ
毎年、東寺では春の桜が満開になる頃に合わせて、艶やかに咲き誇る夜桜が鑑賞出来るライトアップを行っています。2018年は、3月17日から4月15日までの約1ヶ月間毎日、午後6時半から午後9時半まで開催されました。午後9時まで入場可能ですので、夕食後にぶらりと夜桜観賞に訪れることができます。来年の春も開催予定で楽しみです。
東寺の五重塔へのアクセス
東寺へのアクセスは、京都市南区九条町1番地にあり、JR京都駅から徒歩15分、近鉄東寺駅から徒歩10分の距離にあります。九条通りと大宮通りが交差する一角に位置します。車の場合は、京都南ICより国道1号線を北に約3.5km進んだところに位置します。何処からでもランドマークの五重塔が見えるので目印になりアクセスしやすくなっています。
JR京都駅を出て、東寺まで歩いて約20分の道のりを紹介する動画です。2015年8月21日にYoutube上に公開されています。京都の街は、曲がりくねった道がなくて、ほとんどが直線道路で見通しがいいので、まず間違うことはありません。しばらく歩いていくと、進行方向に高く聳える五重塔が見えてきます。あとは五重塔目指して進むだけです。
東寺の五重塔で真言密教の世界に触れてみよう
京都の世界遺産東寺には、日本伝統の匠の技が生きる五重塔をはじめ、歴史的価値の高い数々の木造建築や仏像、菩薩像など、その当時の平安京の最高峰の文化が凝縮されています。その五重塔の特別公開は年に2回と定められています。その時期に合わせて、空海が作り上げた密教曼荼羅の世界を体現しに出掛けてみてはいかがでしょうか。
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