意外と知られていない?香りを聞く日本芸能「香道」をご紹介
日本には能や歌舞伎、茶道など古くから続く芸能が多く存在します。その中でもなかなか知られていない芸能として紹介するのが、香道です。香道は読んで字のごとく、香りを用いた芸能になります。
実は他の芸能と同じく長い歴史を持っており、京都や東京など主要都市で体験教室を開催しているところも多くあります。初心者も気軽に利用できるものが多いですが、体験するのであれば予め、下調べを行っておくとより楽しめるのでおすすめです。
日本三大芸能の一つ
香道は、沈香と呼ばれる天然香木を使って行われる日本芸能です。香室と呼ばれる部屋に入り、専用の道具を使って香りを聞きます。イメージとしては茶道に近く、複数人で行うケースもあり、正しい作法を求められます。
どうして香りを「聞く」というのか?
香道では、「香りを聞く」という言葉が用いられます。言葉の由来は諸説ありますが、「聞く」と言う言葉には感覚を研ぎ澄ますような意味合いを持つためと言われています。嗅覚だけでなく、あらゆる感覚を使って香りをかぎ分けると言った解釈をするといいでしょう。
香道の歴史
香りに関する歴史が最初に確認されているのは、4000年から5000年前のエジプトと言われています。エジプトでは日本芸能のように文化として発達したわけではなく、遺体の保存状態をよくするために香木などが使われていたことがわかっています。
1400年以上の歴史を誇る
香道が誕生したのはエジプトと言われていますが、日本では日本書紀にその記録が確認されています。その始まりは諸説あるものの、1400年以上もの歴史が現代に至るまで続いている、由緒ある伝統芸能であることがわかります。
現在は二つの流派が存在
長い歴史を持つ香道ですが、時の流れによって流派は大きく分けて御家流と志野流の二つ存在します。歴史を遡ってみると元々は一つの流派だったそうです。
流派の違いとしては、御家流は香りを楽しんで心を満たすことに重きを置いており、志野流は修行の一環として心を鍛錬するために行われていると言われています。
香道で使う道具を解説!
香道は流派によって違いはあるものの、基本的に使用する道具に大きな違いはありません。体験教室によっては初心者も利用しやすいように、予め道具が用意されていることもあります。
しかし、予め道具の知識を理解しておけば、香道をするうえでスムーズに進められます。また、必要な道具を揃える際の参考にしてください。
乱箱
乱箱は、香道に必要な道具を収納する箱です。乱盆と呼ばれる場合もあります。基本的に乱箱は四角形や長方形のデザインがスタンダードですが、流派によって多少違いがあります。基本的に専門店だけでなく、通販サイトでも販売している場合が多いです。
手記録紙と手記録盆
手記録紙と手記録盆は、組香の時に使われる道具です。組香は、幾つかの香りを聞いて、その香りがなんであるか答える遊びです。
流派などによっては香札が使われる場合があります。手記録紙は答え記入する紙で、手記録盆は答えを記入した手記録紙を回収する役割を担っています。
銀葉と銀葉盤
銀葉は敷物に近い役割を持つ道具です。香木は直火で焚いてしまうと焦げてしまい、香りを損なってしまいます。
そういった失敗を防ぐために、香道では銀葉を使って火加減を調整するのが基本です。銀葉盆は、銀葉を乗せる道具として使われます。
本香盤と試香盤
本香盤は、銀葉盤とも呼ばれている道具で基本的に役割に大きな違いはありませんが、貝や象牙を使った花形文の小片が張り付けられています。
一方、試香盤は本香盤と似たデザインではあるものの、5から6区画に分けられており、サイズが小さめです。流派によっては使用されない場合があります。
火道具
香道をするうえで欠かせない道具として挙げられるのが、火道具です。主に香木を焚く際に用いられる道具ですが、その種類は多岐に渡ります。香木を焚くだけでなく、灰を押したり、整えたりと道具によって役割が異なる点も特徴です。
香筋建
香筋建は、火道具を差すようにおさめるために使われる道具です。筒状になっているのが特徴ですが、流派によって型に違いがあります。また、香筋建を使用する際の作法として、決まった形式で火道具を差すのが基本です。
重香合
重香合は、香木や銀葉を入れるための道具です。重箱に近いフォルムをしており、三重か四重になっているのがスタンダードです。基本的に一番下の部分にっ銀葉を入れるのが一般的なので、その部分だけ金属が使われている場合もあります。
総包・惣包
総包・惣包は組香を行う際に使われる道具です。一般的に、組香に使用する包みのことを指します。特徴としては、組香にちなんだ色や模様が使われることが多いので、デザインのバリエーションが豊富です。有名なものとしては、三十組惣包があります。
聞香炉 二の香炉、一の香炉
聞香炉は、香を聞くために使われる道具です。一対で使われるのが一般的なので、二の香炉、一の香炉と呼ばれる場合もあります。青磁や染付のものが一般的ですが、木製のものもあります。三脚がスタンダードで、直径は6cm前後、高さは7cm前後のものが多いです。
打敷と地敷
打敷は、仏具として用いられる道具ですが、香道の場合は畳に敷く際に使われます。基本的な作法として、香元が手前にいる状態で道具を並べます。流派によっては地敷と呼ばれる場合もあり、道具の使い方はほぼ同じです。
香包
香包は、香木を包むために使われる和紙です。竹紙が使われる場合もあり、総包と呼ばれる場合もあります。サイズは縦2cm、横4cmのものが一般的です。香包は試香包と本香包の2種類があり、試香包は趣向を凝らしたデザインのものが使われ、本香包は高級品が使われる傾向にあります。
香炭団
香炭団は、香木を焚くために使われる炭のことを言います。一般的な炭と大きく異なるのは、直径2cm程度の小さなサイズのものが一般的です。そのため、セットで売られているケースが多くあります。香炉の灰に埋めるようにして使う道具です。
香道の作法をご紹介
香道を究めるために大切なのは、作法を理解することです。香道では正しい作法が求められますので、体験教室などを利用する初心者の人も、予め調べておくのがおすすめです。香道の作法は流派によって、少し異なります。今回は、基本となる作法を紹介します。
一礼して香室に入室する
香道は、香室と呼ばれる部屋で行われるのが基本です。そのため、香道の作法は香室に入室ところから始まります。基本的な作法としては、入室前に一礼するのを忘れないようにしてください。初心者や上級者など立場は関係なく、香道を嗜むために礼儀を大切にしましょう。
仮座に客一同が着座
香室に入室したら、速やかに着座します。その際は仮座となる位置に移動して、着座するのが基本です。この仮座と言うのは、香室に入室する人の妨げにならない位置を指します。
全員が入室し終わったら、仮座から本座へ移動します。この時、移動する順番は上客からとなりますので、焦らず順番が巡ってきたら移動するようにしてください。
香元の灰手前が終わると、執筆が乗客の前に重硯を運ぶ
正座に着座が完了したら、香元が灰手前を行います。香元は香会の主催者を指し、灰手前は香木を焚くための準備です。
この灰手前が終了したら、執筆と呼ばれる組香を記録する係の人が、乗客の前に重硯を用意していきます。重硯は筆記用具で、組香をする際に手記録紙に答えを書き記す際などに使用します。
香炉を右手で取り上げる
全員で一礼したのち、出香と呼ばれる合図が出たら、香炉を回していきます。香炉はお正客と呼ばれる格式が高い順が回っていくのが一般的です。自分の番が回ってくるまで、静かに待ちましょう。自分の番が回ってきたら、右手で香炉を持ち上げてください。
時計の針と反対に回して右手のひらで軽く覆う
香炉を持ち上げたら、香を聞きます。作法としては、まず香炉を反時計回りに移動させてください。香炉が正面になるのを避けるのを意識しましょう。そして香りを聞きやすくするために、右手の平で軽く覆うようにして少しだけ顔を近づけてください。
ポイント
香りを聞く際、香りを集めるのを意識して手の平を覆ってください。香道で使われる香木の匂いはかすかなものなので、しっかり覆っていないと香りがきけなくなってしまう場合があります。香炉を上から蓋をするイメージをしてみてください。
右回りに戻し、次の客の硯中央を目当てに送る
香りを聞くのが終わったら、次の人は回す準備を行います。作法としては、まず香炉を右回りに戻してください。次に、相手の硯中央を目当てにして香炉を贈りましょう。香りを聞く工程はこれで完了となります。
答えを書く
全ての香りを聞き終わったら、答えを予想していきます。流派などによって違いはありますが、香之図と呼ばれる図柄を使って答えを書いていくのが基本的な作法となります。答えの記入が終わったら、答え合わせをしていきます。
京都の「薫玉堂」で香道を体験しよう!
香道を学ぶのであれば、京都の「薫玉堂」がおすすめです。「薫玉堂」は1594年に創業した老舗と言われている有名店で、全国の寺院へお香を納めています。お香やアロマなど香りに関する商品を多く取り扱っており、香道の体験教室も開催しています。
日本最古の御香調進所
香りを取り扱っている店舗は多くありますが、京都にある薫玉堂は日本最古のお店と言われています。創業した1954年は、安土桃山時代の文禄三年に当たります。
もともとは薬種商と言う健康食品など様々な商品を取り扱っている店舗でしたが、時代の移り変わりを経て御香調進所として今も現存しています。
450年以上に渡り調合を続ける老舗店
薫玉堂は京都で創業して以来、450年以上もの歴史を持っているお店です。薫玉堂では代々伝わる調香帳が存在し、その内容に合わせて調合した香りを販売しています。全国の寺院などにも香りを納めており、御香調進所として日々多くの人が訪れるお店です。
初心者でも気軽に参加できる◎
京都にある薫玉堂では、初心者も気軽に参加できる体験教室を開催しています。体験教室の内容としては、「聞香」と呼ばれる香りを聞くのも楽しむものです。また、その他の体験も申し込みが可能です。
薫玉堂で開催している体験教室では、初心者でも参加しやすいように作法を教える以外のサービスも提供しています。京都の老舗とされるお店で、ぜひ香道を学んでみてください。
なんと素敵なお土産までついてくる!
香道の体験教室は様々な店舗で開催していますが、薫玉堂ではおまけとしてお土産がついてきます。その他にも抹茶や和菓子などもセットでついてくる場合もあります。抹茶やお菓子を楽しみながらリラックスして香道を学べるだけでなく、お土産ももらえる点が魅力です。
申し込み方法【2022年12月現在休止中】
薫玉堂の体験教室は、電話のみの受付になります。予約必須となっているので、参加したいのであれば連絡してください。注意点として、申し込みは参加する日の10日前までになります。
また、電話の受付は午前9時から午後5時30分までです。第1・3水曜日と年末年始はお休みになっているので、電話するタイミングにも注意してください。
支払い方法
聞香体験の場合、支払い方法は店頭で前払いするか、郵便振込の2種類になります。店頭で支払う場合は、参加する7日前までになります。郵便振込の場合は、郵送された振込用紙が届き次第、支払いの手続きを済ませれば完了です。
注意点として、店頭で支払う場合は7日前を過ぎてしまうとキャンセル扱いとなります。郵便振込は、郵送される用紙以外のものを使用した場合、手数料は参加者が負担となります。その他の体験の場合は、内容によって支払い方法が異なるので店舗に問い合わせてください。
店舗情報
薫玉堂は、京都市の下京区に店舗があります。西本願寺の向かいにあるので、寺院を目印にすると見つけやすいです。営業時間は午前9時から午後5時30分です。定休日は第1・3水曜日にあります。その他の店舗として、東京の丸の内にも支店があります。
住所 | 京都府京都市下京区堀川通西本願寺前 |
電話番号 | 075-371-0162 |
東京で香道を体験できる場所はある?
香道は薫玉堂など、京都を中心に店舗が多くあります。実は東京にも香道の体験教室を開催しているところが多くあります。流派によって作法に違いはある者の、基本的に初心者も参加しやすいところが多いです。気になる方は、チェックしてみてください。
誰でも気軽に参加できる施設が多数!
香道が体験できる東京の店舗の多くは、老舗とされている有名どころが多くあります。店舗によっては体験教室だけでなく、香道に必要な道具なども販売されています。東京の体験教室を参加するメリットとしては、正しい作法を学びながら香道が楽しめる点です。
中には初心者を対象にした教室も◎
東京で香道が学べるところが、ある程度の知識が求められる場合がありますが、店舗によっては初心者を対象にした教室を開いている場合があります。初心者向けの教室は、必要な道具を揃えてくれるだけでなく、懇切丁寧に作法を教えてくれるのが魅力です。
大体の予算
東京で香道の体験教室に参加する場合、熟練度によって価格が異なります。初心者向けの場合は、2000円から学べるところもあり、気軽に参加しやす所が多いです。なかには茶菓子付きなど、様々なサービスがおまけとしてついてくるので、予算と併せて検討してください。
香りを聞く「香道」で雅なひとときを過ごしてみては?
香道は流派によって違いはあるものの、初心者も気軽に学びやすい日本芸能です。京都の薫玉堂だけでなく、東京でも体験教室やワークショップを開催しているところが多くあります。香道を通して、日本の伝統芸能を学んで教養を深めていきましょう。
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